16話
グリードアイランドに向かう為に、準備を整えて終えたレイアです。
グリードアイランドの攻略目的のプレイヤー陣営には、私では歯が立たないだろう。能力を使えば何とかなるかもしれないが…生憎と名前が分からない。ゲーム内で配布される本を利用する事で名前は判断できるだろうが、実名で登録しているとも限らない。実際、ヒソカが団長の名前を語るという例があるからね。
後、あまり知られていないがグリードアイランドは現実世界で行われている。現地特有の病とかもあるかもしれないから事前に可能な限り予防も完璧にしておいた。ミルキのように稀有な毒耐性は持っていないからね。
「そろそろ、出発するぞ。準備はいいな?」
「勿論!!」
滞在期間がどの程度になるか分からない為、キャンプ用品一式と当面の食料として一週間分の保存食を用意しておいた。
後、念の為にゾルディックから毒ガスや手榴弾などの持ち運びやすい兵器を拝借しておいた。武器はあるに越した事は無いからね。ウボォークラスの念能力者でもない限り、この手の道具は十分に使える。
「まさか、現実世界で行われているとはな……通りでゲームが再現できないわけだ」
確か、セーブデータからゲームを復元したんだっけな。普通に考えてセーブデータからゲームを全て再現するなど不可能だ。一体どういう原理で復元したのが激しく興味がある。
「では、どちらから先に行きます?」
「俺から先に行こう。万が一、爆弾魔が先にいた場合レイアでは対処できんだろう」
その通りです。
親切なプレイヤーを装って、爆弾をセットされるか…最悪、その場で殺されそうだな。名前を憶えていれば最悪は回避できただろうが、生憎と忘れてしまった。爆弾魔としか覚えてない自分が憎い。
ミルキがゲーム機に両手を当てた。
その瞬間、ミルキが消えた。
大陸間を移動させる程の念能力とは恐れ入るよ。本当に優秀な連中が作ったのがよくわかる。いくつもの制約を課していると思うけど、それでも十分にすごいわ。
自分が放出系なら是非ともこういう瞬間移動系の能力がいいよね。
まぁ、私の能力もある意味 放出系(笑)だけどね…相手が放出する的な意味でね。
「さて…私も行くとしますか。念願の『支配者の祝福』を手に入れてみせる!!」
ゲーム機に両手を当てて『練』を行った。
グリードアイランド内にて。
うーーん……
ゲームの説明をしてくれたあの子はNPCなのだろうか。それともゲーム製作者の関係者なのだろうか。NPCだったらどこまで精巧に作りこまれているか全裸にひん剥いてみようと思ったが、ゲームを始める前から退場を受けるとまずいので止めておきました。
男の子だし探究心って大事だよね。
「自然の青臭い匂いがたまらんな」
都会育ちの私にとって青臭い匂いが大自然を連想させる。
何やら今日はいいことがありそうな予感だ。
キョロキョロ
受付を降りた場所の辺りを見回してみるが、ミルキの姿が見えない。先に来ているはずなのだが…便所でも行ったのかな。
ピリリリリリ
ミルキに用意してもらった携帯が鳴った。
グリードアイランドでは、本来携帯の電波などは入らない。その為、放出系の能力者を極めた能力者が作ったというゾルディック仕様の電話を用意してもらった。
『悪いなレイア……二日程で戻る』
ミルキが何を言っているか理解できない。
二日で戻るという事は、今一体どこにいるんだ!? というか、私より先に中に入ったよね。この数分の間に一体あんたは何をやったんだよ。
『ちなみに、今どちらに?』
『よくわからんが、どっかの大陸だ。だが、近くに町が見える』
『えぇーーと、私の理解を超えているので少し説明を…』
ミルキから聞いた話を纏めてみた。
ゲームの説明をしてくれた女の子がどこまでNPCなのか確かめる為に脱がそうとしたらしい。すると、何やら警報装置みたいなのを鳴らされて、ガテン系のオッサンが出てきてゲームマスター専用のカードを使われて退場に追い込まれたそうだ。
誰しもやってみたいと思ったことを平然とやる辺りがしびれるよ。流石、ゾルディック…俺らに出来ない事を平然とやってくれる。
だが…憧れないけどね。
『そういう訳で二日間死ぬな』
そう言い残されて電話が切られた。
「———本当にクリアできるか改めて不安になってきた」
予想外の出来事で躓いてしまったよ。
それにしても、ゲームマスターが介入してくるとか反則だろう。確かに、あの受付はゲーム内と言われれば非常にグレーな場所だけどさ。
ともあれ…ミルキが居ない以上、この場に留まるのが一番いいだろう。
町に行けば危険がいっぱいだ。幸い、サバイバル用品と食糧は十分にある。大自然の中で野宿とシャレ込みますか。
数分後。
「ふぅ〜」
建物のすぐそばにテントを張った。蚊帳も用意してきており小さい羽虫への対策も万全だ。後は、ミルキを寝て待つのみ!!
キィーーーーーーーン
そろそろ、来る頃ではないかと思っていた。初めて聞く音だが…これは、間違いなくスペルカードによる移動音だ。
視線などを感じられるほど私の感性は優れていないが、初心者をカモにしようとこの場を見張っている連中がいる事を知っている。
恐らく、ヘッドホンを付けた野郎が私というカモに目を付けたのだろう。
名前は分からない、実力的には相手の方がいくらか上だろう。本来であれば逃げるのがいいのだが、幸いこちらは準備万全でここにきているのだよ。
移動系のカードでここに来た事を後悔するといい。
ピピン
手榴弾(パイナップル)の安全ピンを抜き取り、相手の着地地点に放り投げた。そして、私は全力で建物の陰に隠れた。回避できないタイミング且つ至近距離での爆発だ…ほぼ即死だろう。
「あれぇえええええ!!」
ドドゥーーーン
少しタイミングが悪かったか…やはり、あまり使わない道具だから仕方ない。
爆発地点を見てみると血だるまになって地面に伏せている人間がいる。消えていない所をみるとまだ生きているのか…しぶとい。だが、どう見ても瀕死!! この状態ならば、一般人でも勝利確定だと言える位の状態だ。
ミルキが来るまでに少しだけ頑張ろうかな。
幸い、本を開いた状態だったので死ぬ前に集めたカードを頂くとしよう。
懐からベンズナイフ三号を取り出し、瀕死の男に向かって投げた。もちろん、男は回避できるはずもなく、そのまま足を掠って地面に刺さった。
瀕死に麻痺…これで相手は何もできない。
窮鼠猫をかむという言葉もあるしね…念には念を入れる必要がある。
はぁ…はっ…
男の息がだんだんと掠れてきた。急いでカードを回収しないとね。
「君のカードは、我々が有効活用させてもらうよ。安心して死んでくれ」
カード回収後に男の死体がゲームから消えた。
こいつ以外にも初心者をターゲットにした悪質なプレイヤーがいるかもしれないから、テントの周りには対人用のトラップを設置するとしよう。持ってきたクレイモアや地雷などをテントの周辺にセットして身の安全をまもるレイアであった。
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G・I内部に置き去りにされ二日後、ミルキと合流したレイアです。
この二日間、開始地点近くで野営をしていたが最初の一人以外 襲撃に来る馬鹿は居なかった。せっかく仕掛けたトラップが無駄になってしまったよ。移動系のカードでドビューーーンって来るのを待っていたのだがな。
ミルキが戻って来るまでに二人程 罠に掛かってくれれば30種類位集めたられたかもしれないのだが非常に残念だ。でも、あのバカ一号のおかげで移動系のスペルが少々とお金や低ランクのカードが色々手に入ったのは美味しい。
「それにしてもひどい目にあった。まさか、ゲームマスターが介入してくるとは予想外だった」
「そうですね…私も予想外でしたよ。ですが、世間一般的には うらやまけしからん って言われるレベルですよ」
ズルルルル
最初の町でミルキと食事をしながらそんな会話をした。
早くこの街からも移動しないと後続のバッテラ氏の子飼いチームがやってくるだろう。まぁ、会っても特に問題ないのだが…不測な事態はなるべく避けたい。ゴン達だけならまだしも爆弾魔チームにも目を付けられかねないからね。
「では、カードが殆ど無いうちに『奇運アレキサンドライト』を手に入れておこう」
「そうですね。あのカードは、何かと役に立ちます。入手方法をエサに有力プレイヤーからボッタくりましょう」
ゴンとキルアにより先に入手しておく、SランクまたはSSランクのカードを頂くとしよう。こちらがカードを入手していなければ相手は情報を信じてくれませんからね。
しかし…その前に少し掃除もしないといけないですね。
まさか、グリードアイランド内に私より使えない念能力者が居たとは…かなり初期のプレイヤーなのだろう。しかも、クリアを諦めて既にNEETみたいになっている。さっきから、チラチラとこっちを見てきている。
「あの程度の人なら私が掃除してきます。周りに第三者が居ないか探りをお願いいたします。最悪、あれが餌という事もありますから」
「この街に入った時から既に見られている。大したレベルの奴らじゃないな…数は4人」
既に把握済みですか…それにしても、全く気付かなかった。
4人となると…人海戦術が可能な爆弾魔に殺される組だな。だとすれば、下手に爆殺するのは不味い。下手したら爆弾魔疑惑が掛けられてしまうか。
それに、弾丸も爆弾も数ある資源だから勿体無いよね。
———バラすしかないね。
相手の名前も念能力も分からない以上、仕方がない事とはいえ人殺しは少しだけ良心が痛むな。
「亭主、勘定を頼む」
昼食を終えて、私とミルキは人通りの少ない通りへと移動した。
「あの様にはなりたくないものだな」
「全くですねミルキ様。日々の糧を得る為に新参プレイヤーを付け狙うとはね。新人を狙うという事はカード目的ではなく、スペルカードを行使して私達の情報を売買するといったところでしょうか」
あの豚のように太った体格、身から漏れるオーラで分かるが…相当の弱者だ。なんとなく、ゴンとキルアにカードを奪われた野郎に似ている気がするな。
「抜かるなよ」
「モチのロン。ミルキ様も力んで殺さないようにお願いします」
曲がり角で更に人気のない小道に入り開始を開始した。ミルキは、すぐに気配を絶ちあっという間に消えてなくなった。戦闘力が低い連中が集まっているチーム相手にミルキを当てるのはちょっと相手に悪い気がした。
恨まないでくれよ。
さて…ベンズナイフ三号の麻痺毒では、相手が本を出す前に喋れなくなってしまうな。まずは、本を出させるか。
ドドドドド
私とミルキの気配が消えた事でデブが焦って近寄ってきた。
ミルキの『絶』ならまだしも、私の『絶』などお粗末だから二流の念能力者でも余裕で気配を探れるのだけどな。
「そんな、どこにい…」
ガシ
「死ねぇえええええ!!」
曲がり角に走り込んできたデブの首元を掴みあげ、そのまま地面に向かって全力で投げた。頭から地面に叩き付けられるように危険な角度での投げ技だ。心源流拳法を何年も習っている手前、何気こういう投げ技や関節技などは得意な方である。
骨が折れる鈍い音がした。
「があぁ!! いでぇーー」
一般人なら確実に死んでいる威力で投げたのだが…やはり、腐っても念能力者か。私は、すぐさまマウントポジションとりベンズナイフ二号をデブの首元に押し当てた。
「しゃべるな。こちらが質問した事に素直に答えろ。いいな」
「ひぃ、い…命だけは」
首元に当てられているベンズナイフのオーラを見たのだろう。『周』は、ビスケに褒められるレベルだからな…その一点だけ見れば私は超一流にも見えなくはない。ただし、全身を纏うオーラは糞位だがな。
ちなみに、ベンズナイフ二号を『周』で強化したら鉄柱すら大根を切るように切れる。要するにだ…人間の首を切るくらい屁でもないって事だ。
「死にたくなければ、持っている全てのカードを提供しろ」
「そんな事をしたら俺が生きて…」
ヒュン
ナイフをデブの顔を撫でるように振った。すると、ペロンと男の顔の皮一枚が綺麗に剥げた。デブな何が起こったのか理解できていないようだったので、切り取った顔の薄皮を引っ張り上げて見せてあげた。
「ナイフの使い方は得意な方だが、次は手が滑って肉を削いでしまうかもしれない。それで、君が次に何て言う言葉を喋るんだい?あまり時間が無いので早くしてくれよ。ちなみに、念能力を使っても殺す、ブック以外の言葉をしゃべっても殺す」
コクコクと小刻みにうなずき、男の顔がみるみる蒼白になっていった。
最初から念能力を使って戦いを挑んでいれば、私にならば勝てていたかもしれないのに…この世界に長くいたせいかカードに頼り過ぎだ。
どうせ、この程度の奴は碌なカードも持って無さそうだしミルキが持ってくる奴らに期待しようと思いナイフに力を入れた。
「ブ、ブック」
飯の種より命の方が大事だったのだろう。カードは、本から取り出しても一定時間は消えないので、すべてのカードを床に一度置いた。こちらも本を片手に出してしまうと隙ができてしまうからね。
それにしても思った通り、碌なカードを持っていなかった。予想通りとはいえ、がっかりだ。せめてもの救いは、数枚だけこちらが持っていないカードを所持していた事だ。
私は、慈愛の心をもって男に笑顔でこう言った。
「ゲームクリアおめでとう」
もう、この世界で悩む事が無いように救いの手を差し伸べた。
辺り一面が血だらけになっているが問題なかろう。どうせ、掃除用のNPCか何かが綺麗にしてくれるはずだ。
「そっちも終わったか。収穫はどうだ?」
「新規カードが数枚だけ…ミルキ様の方は?」
ミルキの両手には私達を監視していた者と思われる人達がいた。誰しも見覚えが無いな…原作で書かれていなかった連中なのだろう。
「とりあえず、気絶させただけだ。これから、一人ずつ知っている事を洗いざらい吐かせる」
これから彼らの身に降りかかる出来事に少し同情した。
「運のない人達だ…ちなみに、尋問はゾルディック式?」
「レイア…俺の名前を言ってみろ?」
「ミルキ・ゾルディック!!」
ミルキの口元がニヤっと笑っていた。
ゲームに迷える子羊達に救いの手を差し伸べるミルキ・レイアペアの誕生の一瞬である。
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カードを順調に集めつつ魔法都市マサドラを目指しているレイアです。
最初はいい具合に既存プレイヤーがカードを奪いに来たりしてくれたのだけど、最近は誰も来てくれません。おかげでカードの集まり具合が滞っています。
ちなみに、指定ポケットに30枚集まった。その殆どがプレイヤーから自主的(・・・)に献上された品なのだけどね。お礼にゲームを強制的にクリアさせてあげているのだからある意味 当然の報酬なのだけどね。
現在は、岩石地帯でモンスターカード集め中です。
持てる限界まで集めておいて、マサドラで売り払う予定なのです。そうする事でお金が貯まり、将来的にスペルカード組が全滅する予定なのでそれを機にスペルカード袋を大量購入する予定なのです。それが実現すれば、計算上指定ポケットの半数近くが集まる。
その他の指定ポケットのカードも当然 プレイヤーから集める予定だけどこれはその為の準備である。狙いは、対爆弾魔チームにお呼ばれする事にあるのだ。そこに集まったプレイヤーからカードを巻き上げれば恐らく指定ポケットの8〜9割は揃うだろう。揃わないのは、上位プレイヤーが独占しているカードのみになるはず。
「おっし!! バブルホースもカード上限達成だ」
「こちらも上限達成だ」
ミルキと私で岩石地帯一体にいるMOBをコンプリートした。攻撃力が高い巨人などはミルキに任せ、私はマリモッチやバブルホースなどの小技が必要なカードを分担して集めていた。
『凝』と『流』で全身のオーラを緻密に制御すれば何匹バブルホースが居ようとも私にとっては障害にならない。ただ…巨人のような攻撃力に特化した敵はまずい。弱点は分かっているのだが、一撃食らえば死ぬという恐怖に負けてしまう。
「では、ここにはもう用事がありませんね。マサドラにいって換金しましょう」
「そうだな。目標までまだ遠いから、マサドラで情報を集めると同時にカードも集めるぞ」
やっぱり、こういうゲームは心強い仲間とクリアするに限るよね。ミルキが居るおかげで本当に助かるわ。
「あ…そういえば、ミルキ様。『離脱』のカードが何枚かありましたよね?」
「3枚あるぞ。前に狩った奴が余計に持っていたからな。あっちに用事か?」
悪いね 原作主人公諸君。
君たちのアイディアを使わせてもらいますよ。
「このゲームで現実に帰りたいけど、帰れず困っている人って多そうじゃありませんか。そんな人がたまたまレアカードを手に入れているって事あると思いませんか?」
「ありうるな。さしずめ、『離脱』は餌か」
「Exactly」
「くっくっく、全くもっていいアイディアだ。それで、どうやるのだ?」
「『離脱』と手持ちカードすべてという交換条件でこちらから申し出てあげます。もちろん、こちらの『離脱』にも数に限りがある為、最低限Aランクのカード持ちを対象者だけに行います。交換後は、その者に宣伝して貰い帰りたい人を募ると…」
「Aランクと『離脱』の交換なら悪くはないな…それに宣伝も三人程度でちょうどよい。後から群がるアリどもはいつも通りにという事だな」
話が早くて助かるわ。
うまくいけば指定ポケットが10枚近く増えるだろう。ついでに、マサドラのカードショップのお得様になってBランクの指定カードも全て集めておこう。
そして、一通り作業を終えたら気休めもかねて恋愛都市にでも遊びに行く!! 私とミルキのギャルゲー歴を鑑みれば恋愛都市など片手間で落とせるだろう。ギャルゲーをリアルで体験できるなんてマジでG・Iに来てよかったわ。このゲームが全年齢対応版という事を考えれば、エロゲー的展開は期待できないだろうな。
いや、しかし…原作ではジンが息子の為に作ったと言っていた。だが、息子ではなく、ムスコの為に作ったゲームだったとしたら…ゴクリ。
まぁ、行ってみればわかるか。
「それにしても、順調に進み過ぎて怖い位ですね」
「まったくもってその通りだ。後、先ほどの岩石地帯には一人で行くなよ。こちらに危害を加えてこなかったから放置していたが、念能力者が一人いた。言うまでもなく、レイアでは敵わん」
「全く、気付けなかった」
岩石地帯にいたとなると…よく覚えてはいないが、髪の毛を食べる変態さんだったかな。やはりG・Iにいる念能力者は、レベルが高すぎるな。気配を消されるともう手がつけられないよ。
だが、このG・Iで必要なのが力だけでは無い事を証明して見せよう。
弱い者には弱い者の攻略方法があるのだ。まぁ、ミルキ頼りという作戦なのだがね。言っておくが、私だって役に立っているんだぞ!! 主にG・Iでの宿の手配や旨い飯屋の調査、指定カードの情報集め、そして私からカードを強奪しようとする連中のカモ役.etcといった感じだ。
自分でいうのも何だが…良い感じのペアじゃないかなとも思っている。私にもう少し才能あれば完璧だったのだが、そこまでは望むまい。正直、私レベルの能力者がここにいる時点でも奇跡に等しいのだからね。
「必ずしも一緒に行動しているわけではないから、必要に応じてスペルカードで飛んで逃げろ」
無論です。逃げ足の速さは自信あるぞ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
死の危険があるゲームとは、聞いていたけど拍子抜けだわさ。
審査を通ったレベルの念能力者といい、今この場にいる念能力者といい、はっきり言えば負ける気がしない。この程度の連中ばかりならば障害にはならない。
ただ、唯一の不安があるとすればG・Iがゲーム性に富んでいる為、カード効果等を覚えきれるかどうか…ゲームなんて生まれて今までで店頭に並ぶ画面しか見た事がない。おまけに、一人ではクリア不可能なイベント等が無いか不安だわさ
「まず、君たちが一番心配している事を解決しておこう。彼の死は、スペルによるものではない。このゲームでは……」
・・・
・・
・
なるほどね。
どんな連中かは、分からないけど随分と過激な事をやっている連中もいるって事ね。当面、注意を払うべきは『爆弾魔』といったところかしら。
新規プレイヤーの大量参入に合わせて人の多い場所で犯行を行い、碌なカードを持たない新規プレイヤーを狙う辺りが更に臭いわね。何の予備知識もないプレイヤーにとって、自身に掛けられたスペルが命にかかわるものかも知れない。そうなれば、藁にもすがる思いで話だけでもと思いこの場に集まる。
「まだ、未確定の情報だが…君達の為になる情報を提供しよう。ここ最近、『爆弾魔』以外にも公然とカードを略奪している二人組がいる。顔や名前は、不明だが我々のメンバーの能力でその二人組の後姿を撮影する事に成功した。一部のプレイヤーの間では、この二人組に会えばゲームをクリアさせて貰える とか 現実世界に返してもらえる などの噂話が横行しており、クリアを諦めた者達からは『救世主(キラ)』と呼ばれている」
取り仕切っているアゴが長い男が一枚のピンボケした写真を全員に見せた。
長髪の男性と右手にナイフを持っている色白の男性が写っている。この解像度では、誰だか特定できないだわさ。でも、色白の男性の方はピンボケしていて確信は持てないけど…非常によく見知った奴の気がする。
もし、想定通りだとしたら少しばかりお灸を据えてやらないといけない。プロハンターである以上、人殺し程度をどうこう言うつもりはないけど師匠に黙ってこんなおいしいゲームに参加しているなんて許せないだわさ。
「あんた達は、このゲーム内では最大勢力なのだろう?顔が割れていないにしても人海戦術で先手をうってやっつけちまえばいいんじゃないか?」
「それができた苦労はしない。我々には、戦闘に長けた者は殆どいない。おまけに分かっているだけで、我々のメンバーが数日前に4人、今日になって更に1人カードを奪われた上で殺されている。相手の実力が未知数であり、これ以上被害を出さない為にもそのような戦法は取れない」
その後もいろいろと説明があったが大した情報は得られなかった。
だけど…なんだか、少し面白くなってきたわ。一緒にゲームに参加をした子供二人組といい、『救世主(キラ)』と呼ばれるチームといい。
思った以上に楽しくなりそうだわさ。