18話
そろそろ、カード集めが詰んできたレイアです。
主要都市の主だったカードはあらかた揃え、残るはA/Bランク少々とSランクとSSランクが殆どになった。Sランク以上になると情報集めが非常に面倒で且つひらめきが必要になる課題が多く、煮詰まっている。
早く、対爆弾魔チームへのお誘い来ないかな…。
「最近、誰も襲ってこなくなりましたね…」
「そうだな。人を襲ってカードを奪おうなんて外道が減ったという事なのだろう」
本当に、『救世主(キラ)』さまさまですな。
弱いプレイヤーにとってこれほど過ごしやすい世界はない。いつ襲われるか分からずビクビクしなくて済むのだからね。
【他のプレイヤーがあなたに対して『交信』を使いました】
ミルキと宿で暇をつぶしていると突然システムメッセージが発せられた。
キタァーーーーーーー!!
『初めまして、こちらはカヅスールという者だ。急を要する状況の為、突然の交信すまない』
ミルキに目線を送ると、好きにやれと頷いてくれた。
『リストに私が居るという事はどこかですれ違ったのでしょうね。生憎とどなたか覚えていませんが…。それで、一体どういった用件で?』
『あぁ、実はもうすぐクリアしそうなチームが居る。ゲンスルーという三人組のリーダを知っているか?』
『会った事は無いが知っている。確か、スペルカードを集めていたグループの幹部だろう』
『知っているなら話が早い。そいつらがクリア目前なので残っているチームで対策を練ろうという魂胆だ。最悪、情報交換だけでも価値があると思っている。他のグループにも声を掛けているから、気が向いたら来てほしい。場所は……』
・・・
・・
・
『あぁ、必ず向かわせてもらうよ』
通信を終了した。
「「計画通り!!」」
ミルキと言葉がかぶってしまった。
やはり、言いたくなるよねこのセリフ。
マサドラから2km程離れた郊外にて。
到着してみると、原作チームはまだ来ては居ないようだ。おそらく、もう間もなく到着するのだろう。役に立つか立たないか分からないが…一応、原作組を面識のある私は変装をしておいた。
変装というより女装だけどね!! アイアイで手に入れた制服を着用している。おかげで視線がともて痛い。もっと他に化けてもよかったのだが…ミルキがそれじゃバレた時につまらんだろうといい。こういう展開になったのだ。
いや…ビスケに見られたら流石にばれる気がする。私に変態のレッテルをはりつけたいと見えるな。アイアイのスケルトン眼鏡事件の仕返しか!?
「ミルキ・レイア組だ。指定カードは68枚。始めた時期を考えれば驚異的ペースだ」
何やら勝手に自己紹介された。
まぁ、手間が省けていいけどね。
「会うのは初めてだが、男女のペアとはね。それにしても、どうやってそんな短期間でそこまでの指定カードを集めたんだい?」
「あたしらには届かないけど、どんな手品を使ったんだい?」
手品とか酷い…ただ、このゲームの手順に乗っ取り手に入れただけだというのに。
「ご想像にお任せします。それで、話し合いはいつから?」
「あぁ、もう一組が来てからだ。子供三人組のチームだが、こっちもカードを集める速度が異常だ。おまけに、出会ったころと比較して格段に強くなっている」
異常どころか常軌を逸しているよね。私とミルキで先手を打ってカードを手に入れているというのに、一体どんな手を使っているんだ。こっちは、かなり外道すれすれの事をやってこの程度だというのにね。
原作チームが来るまでにこいつらの名前と顔を一致させておこう。後から狙う為にも どのチームから潰すべきかしっかり考えないといけないからね。
数分後。
最後の一組が到着した。やはり、原作通りゴン・キルア・ビスケの三人組だ。
この場に集まっている者達のオーラを見てみるとその力量がはっきりとわかる。ミルキとビスケは、もちろん群を抜いている。ゴレイヌとゴンとキルアも実にすばらしい。身に纏うオーラが澱みなく、他の者達とは一線を画している。
そして目が合ってしまった。
「「あ!!」」
「変態だわさ!!」
三人と目が合った瞬間、一瞬で正体がバレた。しかも、ビスケに至っては変態とか叫ばれたよ。たかが、女物の服を着ただけでこの呼ばれは酷い。女性は、男性物の服をきても何も言われないのになんて理不尽な世の中だ。
「久しぶりにあった弟子にかける最初の言葉が『変態だわさ』ってかなり酷くありませんか。言っておきますけど、この恰好は」
「こいつの趣味だ」
「そうそう、趣味…えっ!!」
なんてタイミングで言葉を挟むんですか!!
この恰好は、完全にミルキ様の趣味でしょう。このままでは、レイア=変態という図式が成り立ってしまう。とりあえず、ミルキの趣味だという事でファイナルアンサーだ。
「そっか、趣味なんだ」
「趣味なら仕方ないね」
「それならそうと早く言いなさいよ。すぐに、割のいいバイト紹介してあげる。カメラに写るだけの簡単のバイトだわさ。バイト料の方はジェームズに出させるから期待していいだわさ」
ビスケの目が今まで見たことない位に輝いている。だが、瞳以外の場所はなぜか腐っているようなそんな気がした。
「何故このタイミングで、ジェームズ師匠が…」
ゴンとキルア、そしてビスケまでもがミルキの言葉を完全に信じ込んだ。どこの世の中に女子の制服を着て歩き回るのが趣味な男がいるか!! ゴンもキルアもそういう一般常識をもっと学べ。普通に考えてありえないだろう。
後、ビスケ師匠の割のいいバイトもいろいろな意味で危険がいっぱいありそうで怖い。主に尻的な意味で…。
周りの連中からも、この状況を理解している者とそうでない者がいる。理解している者は、私を白い目で見てくる。理解してない者は、何言ったんだコイツラという目で見ている。
「まぁまぁ、知り合いのようだけど積もる話は後にしてくれ。それに、女装が趣味だっていいじゃないか。人の性癖にどうこう言うのは大人として感心しないな。あまり時間もないので、はじめさせてもらおう。まず、よく集まってくれた礼をいう」
全然フォローになっていないフォローをされた。そして、私の趣味で全員が疑いもせず納得してしまい、どんどん話が進んでいった。もう、申し開きができる雰囲気じゃないよ これ。
マジでどうすんだよ…ミルキ!!
・・・
・・
・
話が進んでひと段落した後。
そういえば、キルアってミルキの存在に気付いたっけ?
何のリアクションもないし、特に目線も送られてこない。ハンター試験の時にイルミに気づかなかった前科があるからな。もしかして、気付いていない?
「ミルキ様、その姿でキルア様と対面した事ありますか?」
「何をしたいか分からんが、家出して以来 直接はあっていない。キルとは、生まれてからの付き合いだ。姿が変わっても俺だと気付いているはずだ」
では、試してみましょう。
私は、カード帳を眺めているキルアを手招きして呼んでみた。
きっと、初めて会った私と同じ反応をするだろうね。実に楽しみだ。
「そういえば、あんたってビスケの元で修行してたんだって?あんまり、強そうに見えないけど実力を隠しているとか?」
「隠すも何も今がベストだよ。ビスケ師匠に聞けばよくわかるよ。話は変わるけど…こっちのイケメンの人誰だかわかる?」
ジーーーー
キルアがアゴに手を当てて考えている。
恐らく無理だろうな。私でも分からなかったしね。というか、このレベルの変わりようだと分かる人の方が少ないと思う。
「すげー強いのは分かるけど、誰? あんたの知り合い?」
「キルア様…ご兄弟の顔を忘れるのは、ちょっとどうかと思いますよ」
「マジでいってんの?」
「嘘は言っていませんよね。ミルキ様」
「キル……少し合わなかったからと言って肉親の顔を忘れるのはどうかと思うぞ」
その後の行動は、私とまるっきり同じであった。携帯を取り出して、ミルキの顔を見比べる。
数分後。
「あ、私達は対爆弾魔チームには参加しないんで皆さんで行ってきてください。人数的(・・・)に考えて私たちは不要です」
勝手に話が進み、全員で『一坪の海岸線』を探しにいく雰囲気だったので丁重に断っておいた。私とミルキは、生憎とバッテラ氏に雇われた者じゃないのでね。それに、原作と異なり人数的に発生しなくなる可能性もある。
「無理強いはしないさ」
「まぁ、あんたの目的は知らないけど。あんまり、ハメを外しすぎるんじゃないわよ……それとさっきの件、気が変わったらいつでもココに電話をしなさい。待ってるだわさ」
ビスケからカメラに写る気があるならここに電話をしなさいと何やら名刺をもらった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
爆弾魔に対抗するために集まってきたのはいいが…どいつもこいつも胡散臭い面をしている。俺等からカードを奪った奴もいるんだから、正直何処まで信用していいか微妙だ。
一通り、全員の顔を見てみると案の定知り合いはいな…
「「あ!!」」
「変態だわさ!!」
思わず口に出してしまった。
知り合いと呼べるほどの奴かと言えば、実に微妙だ。俺の知り合いというよりブタくんの知り合いだ。相変わらず妙なところで縁がある。この間は、ヨークシンでダイヤの指輪を持っていかれたしな。
それにしても…一瞬、女の恰好をしているから分からなかったが、アルビノである事と弱弱しいオーラが特徴的で分かった。
それと、横にいる男は初めて見る。全くと言っていいほど隙が見当たらない。それに周りの連中と比べるまでもなく相当出来るのが分かる。
今の俺では太刀打ちできないな。
しかも、話を聞いていると兄貴のお気に入りはビスケの弟子だという。もし、それが本当だというならクラピカから聞いた旅団三人を相手に逃げ切ったという話の信憑性も増すな。
後でちょっとだけ聞いてみるかな。
まずは、さっきから俺らにふざけた事を言っている女から情報を引き換えにカードを引き出すか。
・・・
・・
・
しばらくして、お気に入りに呼ばれた。
「そういえば、あんたってビスケの元で修行してたんだって?あんまり、強そうに見えないけど実力を隠しているとか?」
「隠すも何も今がベストだよ。ビスケ師匠に聞けばよくわかるよ。話は変わるけど…こっちのイケメンの人誰だかわかる?」
今の状態がベストね…俺なら秒殺出来そうだな。
「すげー強いのは分かるけど、誰? あんたの知り合い?」
「キルア様…ご兄弟の顔を忘れるのは、ちょっとどうかと思いますよ」
「マジでいってんの?」
兄弟にそんな面をした奴なんていねーよ。ハンター試験みたいに針で顔を変えていたら一発でわかるし、それに目が違う。兄貴のような生粋の人殺しの目じゃない。
ブタくんは、家から出るはずもない。それに、雑誌モデルのようなスタイルじゃないしね。まぁ、ブタくんと兄貴を足して割ればこんな感じかな。
「嘘は言っていませんよね。ミルキ様」
「キル……少し合わなかったからと言って肉親の顔を忘れるのはどうかと思うぞ」
キル……俺をそう呼ぶのは家族だけだ。
それに、ミルキ様と言ったな。そんな馬鹿な事があってたまるか!!
そうだ、携帯だ。確か家族写真があったはずだ。電話は通じないが中に残っているデータは見れるはずだ。
ピピピピピ
光の速さで携帯を操作してミルキの写真を確認した。パソコンの画面に向かってギャルゲーをしているミルキの姿がそこにはあった。当然、ダイエット前の為 デブだ。
写真…実物…写真…実物。
うん、完全に別人だ。
「ダイエットしただけで、骨格まで変わる訳ないじゃん。ゴンもビスケ、ちょっとこの写真を見てくれ」
ゴンとビスケにも写真を見せてみたが、全員が絶対に別人でしょうといっている。
ミルキと名乗る男が、何を思ったのか急に上着を脱ぎ始めた。
「ここが、お前が家出する時に刺された際の傷だ。身に覚えがあるだろう」
「確かに家出する時にブタくんを刺したけど…たまたま同じ場所に傷あるだけじゃないの?」
ビスケが目の保養とか言ってニヤけているのがキモイ。
「これを使え『人生図鑑』というカードだ。使い方はわかるな」
この後、ダイエットは骨格まで変わるという教科書に載っていない新事実を知ると同時にプレイヤー中で『救世主(キラ)』と呼ばれている連中がミルキ達である事に気づくのだった。
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レイザー戦などまともに参加する気などないレイアです。
対爆弾魔チームを見送った後に私達もすぐに後を追った。理由は簡単だ、『一坪の海岸線』を手に入れるのに必須のNPCの所在を把握する事だ。ビスケの警戒範囲に入らないように、遠くの丘から望遠鏡を使って監視をしている。
流石に距離があり過ぎて何を言っているかまでは把握できないが、一人のNPCを複数人で囲んでいればおのずと答えは出てくる。
「あれがそうか」
「えぇ…って!! この距離から肉眼で見えるんですか!?」
直線距離にして2km近くあるというのに一体どういう視力をしているのだ。鳥より目がいいんじゃないかな。
「本当にレイアが想定していた通りに物事が進んでいくな。まるであいつ等が脚本を演じる役者のようだな」
「たまたまですよ、何時イレギュラーな事態が発生するかわかりませんよ」
私とミルキという異物が居る以上、その可能性は非常に濃厚だ。私とミルキのクリアが確実になるまでは裏方に回るのが一番。
「全員で動き始めたぞ…どうやら、レイザーとやらに会いに行くようだな。指定カード50枚以上集めた連中が束になってもクリアできないイベントとはな…ゲームバランス的にどうかと思うぞ」
「確かにそうですね…きっと、このゲームクリアにはミルキ様クラスの能力者が何人かいないと出来ない仕様なのですよ。俗にいうマゾゲーです」
通常のゲームとは異なり死ねば終わりという意味では、現実世界にあるどんなマゾゲーより難易度は高いだろうね。某マゾゲーで有名なソフトじゃないけど…『心が折れそうだ』と言いたくなるよね。
とりあえずは、監視を続けつつ飯でも食べるとしよう。
「今日もラーメンか…たまには肉が食いたくなるな」
「肉は…今度向こうに帰った時に燻製肉で良ければ持ってきますよ。日持ちしないのは厳しいので」
私だって本当は、お肉が食べたいよ。でもね…G・Iって野生の獣が全く居ないんですよ。代わりに、カード化される念獣はいるんだがね。まぁ幸い、島というだけあって海鮮物だけは手に入りやすい。
男二人で夜景を見ながらカップラーメンをすするとかマジでシュールすぎる。
原作一行がレイザーのいる灯台に入って数十分後。
全員が五体満足で灯台から出てきた。
これほど早く終わるという事は、原作通りゴン達が今のメンバーでのクリアを諦めたとみて間違いないだろう。それにしても、他のメンバーも一応とはいえクリアを目指しているのに今の機会を逃してどうやって『一坪の海岸線』を手に入れるつもりなのだろうね。
指定カードを50枚以上持っているメンバーが一堂に集まる機会など今後あるかもわからないのに。
「キルア様一行からお誘いが来たらプランAで行きましょう。無い場合は、プランBで」
「承知している」
もちろん、どちらのプランで行っても『一坪の海岸線』は手に入れるつもりだ。無論、その事で他のチームと敵対する事になるのも止む無しだ。
ちなみに、プランAとはゴンとキルアからの誘いがあった場合に『一坪の海岸線』は原作チーム・髭チーム・ゴレイヌに譲るから私たちが持っていない指定カードを二枚ずつ貰うというプランだ。もっとも、この条件を飲むかは定かではないが…現状、髭チームが独占しているカードは爆弾魔チームに奪われてない状況だ。だからこそ、この条件がまかり通る可能性はある。最悪、SSランクについては1枚でも構わないけどね。そして、この作戦の肝は、『一坪の海岸線』をゴン達の手元に行く前に私達が途中で抜け出して灯台の頂上にNPCを連行して出し抜くという事だ。まぁ、私とミルキで先に白星を上げた時に成功報酬としてカードを貰い終えているという条件をクリアしないといけないけどね。
プランBは、G・Iの入り口を見張っているゴレイヌからカードを強奪するというプランだ。奪うタイミングは、ゴレイヌが爆弾魔を尾行してG・I入り口を監視している時だ。その時ならば、髭チームのカードを全て持っているのは明白な上に一人だからね。
そして、AプランBプランの両方に共通して最後に大事な〆があるが…まだ、非公開だ。
細かいところは、修正しないといけないだろうが…幸い時間はある。状況に応じて修正できるようにプランを練ろう。
翌日。
やはり、昨晩中に誘いは来なかったか。まぁ、予想通りだな。
私とミルキもクリアを目標にしている以上、誘いにくいのは至極当然。1チームに1枚を渡すとしても出来るだけ人数が多いチームで且つ一定上の実力を持っている人を誘いたいのは当然だろう。
いつまでも待っているても仕方ないので、こちらもゲームを進めますかね。
「とりあえず、カード集めにでも精を出しましょう」
「全員狩れば、おそらくTOP連中に並ぶな」
その為に会議に参加したんだしね。あの連中には独占中のカードはないけど、それでも十分だ。
「では、さっそく『同行』使用!! カヅスール」
スペルカードを利用して、対爆弾魔チームでまとめ役をやっていた者の所へと飛んだ。こういう場合、頭から潰すのがいいと私は思う。戦場でも指揮官を潰すのが一番効果的だというしね。
私にとって相手は格上だ。だけど、全員の名前は分かっている…『賢者タイム』で動きを封じミルキが一人ずつ確実につぶす!! だから、全く負ける気がしない。
・・・
・・
・
数時間後、とある洞窟にて。
カヅスールを綺麗に始末して次の目標に移ったレイアです。
カヅスール組には、リーダーを残して『離脱』を使い強制的に島の外に追い出した後、戻ってきたメンバーをおいしくいただきました。いやー、スペルカードってチートすぎてワロス。
『『奇運のアレキサンドライト』とそちらが持っているSランクカード三枚と交換がしたい』
『へぇ〜、いいんかい?』
『構わないさ。このカードを持っていると爆弾魔チームに狙われる。私達では戦力不足でね…だからこそ、このカードを手放したいのさ。もちろん、タダで手放すのはもったいないからこうしてアスタ組に交渉をしているんだよ』
『分かった。その交渉を受けよう』
『『同行』は持っているな?可能であればそれで来てほしい。私達は、爆弾魔に会った事がないので下手に街中などにはいきたくないのでね』
『分かったすぐに向かおう』
交信を切った。
「ミルキ様、準備が整ったので始めますね。いくら、毒が効きにくい体質だからってちゃんと付けてくださいよ」
「分かっている」
ミルキと私がガスマスクを装備した。
何をするかと言えば、簡単だ。この洞窟の深部をガスで充満させて相手を始末するのだ。もちろん、ただのガスではない。ヨークシンでウボォーを麻痺させていたのと同じものを使用している。ウボォーすら動けなくしたガスだ。一呼吸したらそれでお終いさ。
スーハースーハー
この洞窟の入り口は一つだけで、ここに入ってきた瞬間に大岩で入り口を塞ぐ予定だ。もちろん、時間を掛ければ入り口をふさいだ岩を破壊できるだろうが…無呼吸でそんな事ができるはずもなく、力尽きる事は目に見えている。
スペルカードは、移動中に目的の変更や別のスペルカードを使えないのでそれを利用した作戦だ。ここに飛び込んできたら最後、ガスをすって全身麻痺、そしてクチュクチュと…おいしくカードをゲットする予定だ。
「相変わらず最低な作戦だな。惚れ惚れする」
「いやー、ゾルディックの人に褒めらえるなんて私もまだまだ捨てたもんじゃありませんね ミルキ様」
ちなみに、密閉された空間では移動系のスペルは不発するので逃げることは不可能。おまけに、入り口にはミルキが構えており絶望的だ。万が一ミルキが抜かれたとしても洞窟の細道には地雷を仕掛けてあり、仕掛けた場所を知らない限り走り抜けるのは至難。
キィイーーーーーーーン
洞窟内にスペルカードの移動音が鳴り響いた。その数十分後、三名のプレイヤーがクリアする事になった。