21話
『爆弾魔』も油断せず、一切の躊躇なしに攻めに徹すれば少なくともゴンとキルアには勝利できただろうと思うレイアである。
今、私から約500m離れた場所でゴンとアゴの人が戦っている。
『こちらは、キルが予定通り『爆弾魔』の一人を拘束した。念能力については、まだ開発中といった所だ。オーラを電気に変える辺りはいい発想だが…いかんせん燃費が悪そうだな。おそらく、外部からの電気の補給は前提としているだろう』
『短期決戦向けの能力ですね。持久戦には弱そうですが、応用の幅が広そうな能力ですから今後に期待ですよ』
ゴレイヌからカードを貰った後、原作組の動向を監視している。無論、残りのカードを手に入れる為である。原作組が三人でこっちは二人なので、監視対象をゴンとキルアに絞った。原作と微妙なところで異なっている為、最悪の場合は私とミルキが助けに入る予定だ。
もっとも、そのような展開になる事は無いだろうね。
おっと、ミルキと電話で話しているうちにゴンが勝負に出た。『爆弾魔』の攻撃で片手を失いつつも、反撃にでていた。
この距離からでも分かるが、強化系の攻撃って一撃必殺過ぎて笑える。まだ、ウボォー程ではないが近い将来それに匹敵する能力者になる事は間違いないだろう。いや、ゴンさんという未来がある以上、ウボォーを上回るのか確実か。
ゴンの攻撃は外れて、落とし穴に二人が落ちていくのを確認した。
『ミルキ様、こちらも大詰めに入りました。予定通り、後を着けて合流しましょう』
『分かった。後は手筈通りに』
それからしばらく待って、ゴンが『爆弾魔』を引きずりながら歩いているのを追跡した。本調子のゴンなら私の尾行に気づけたかもしれないが、生憎とゴンも片手を失い怪我もひどく、それどころでは無さそうだ。まぁ、手伝う気もさらさらないけどね。
ゴンたちの地点から少し離れた場所にて。
これ以上近づいたらビスケに感づかれるという事でミルキと少し離れた地点から様子を監視しております。
これから行動を起こす前に言っておこう…私はとっても優しい!! なぜなら、『大天使の息吹』でゴンの腕が治るのを待ってあげたのだからね!!
「『同行』!! ゴン」
ギュイーーーン
その瞬間、数百メートルしか離れていない原作組の場所まで一瞬で移動した。
「キルアの予想通りだわさ」
「本当だ。すごいね キルア」
「まぁな、兄貴の今までの行動からして絶対にこいつら倒したら来ると思ってたからな」
もっと、ビックリして欲しかったけど私達の行動が読まれたっぽい。
「キルア様に完全に先読みされてしまいましたね ミルキ様」
「そうだな…どの道やる事は変わらん」
ごもっともだ。ここまで来た以上、引き返す事は出来ない。
「取引をしましょうキルア様。こちらが提供するのは、キルア様達が持っていない指定カード各一枚ずつ と 先にクリアできる権利を差し上げます」
「はぁ? なんだよその条件!? それでこっちは何を提供するんだ?」
原作組全員がいつでも戦闘出来る準備を取っている。
まぁ、無理もない。逆の立場なら胡散臭い事この上ない取引だ。だけど、これはこっちが確実にクリアするのに必要な事なのだ。安全かつ、確実にクリアするためにね。
「『爆弾魔』が持つ指定カード全てを破棄、無論ゲイン待ちのアイテムも含めてね。もし、破棄させるのが面倒だったら、『爆弾魔』の身柄をこちらに渡して欲しい」
身柄を渡すという事がどういう事を示すのかは、みなさんよくわかっているようだ。
「やられた!! 兄貴とアンタは、フルコンまで後何枚だ?」
「私の指定カードは97枚、ミルキ様は96枚です。残るカードは、ゲイン待ちの『大天使の息吹』一枚と『ブループラネット』の二枚」
「私達が『爆弾魔』に気を取られている内にゴレイヌを狙ったのね。やられただわさ…ゴレイヌもあんた達が相手だと流石に…」
ビスケがミルキの方を見た。
「勘違いされない為に言っておくが、ゴレイヌを潰したのは俺じゃない。初手は俺が攻めたが…その他は全てレイア一人でヤった事だ」
え!?
ミルキがまさかの責任転換。俺はやってない、やったのは全て部下だとか…どこの政治家ですか!? 確かに、ある意味ヤったのは私だけどゴレイヌに関しては止めを刺したのはミルキ様じゃありませんか。
「まるで私一人が悪者に…酷過ぎますミルキ様。おっと、話がそれましたね…冗談はさておき、取引に応じるか応じないか今すぐ決断していただきたい。はっきり言えば、これ以上ないという条件で取引を持ちかけているつもりです」
「どうしようキルア」
・・・
・・
・
キルア達がひそひそと内輪で話している。悪だくみを計画しているのだろうか…それとも交渉決裂の際の行動を考えているのあろうか。
はっきり言えば、交渉決裂などあり得ない。
ゴン達が『爆弾魔』も連れて我々から逃げ切れるなら話は別だが…それは無理だろう。移動系カードもないし、ビスケを除いた二人は疲弊している。だが、念のためにくぎを打っておこうと思う。
「言いそびれましたが…交渉決裂時には、キルア様達にはこのゲームの外へ行ってもらいます。移動系スペルがない状態でゲーム内に戻ってきたとして、ここに来るまでどの位時間がかかるでしょうね」
一般的に『離脱』は、自分自身に掛ける物だが。あのカードは対象を指定する事も可能なのだ。ある意味、強制的にスタート地点に戻す事が可能なとてもエグイカードでもある。
・・・
・・
・
しばらくして、キルア達が交渉に応じた。
「わかった、わかったよ。その取引に応じる…ただし、『爆弾魔』に関しては先に治療をした後にカードを破棄させる。それでいいか?」
「交渉成立ですね。では、お約束のカードを先にお渡しします」
私は、キルア達が持っていないカードを一枚ずつ提供した。
数分後。
『爆弾魔』の治療を終え、ゴンのバインダーにすべての指定カードが収められた。その瞬間、バインダーからアナウンスが流れクイズ大会が行われる趣旨が説明された。そして、ゲーム内のプレイヤーが一斉にゴンの元に集まってきた。
私とミルキは生憎と真面にカードを集めた枚数はとても少ない。このクイズ大会では絶対に勝つ事は出来ない。だから、今回のクイズ大会で優勝する人の回答を丸々覚えて、原作組がクリアしたら再びクイズ大会を行う予定だ。
どうせ、こういうゲームのクイズは使い回しされると決まっている。
さぁ、ゴン君…君の回答を完全に記憶させてもらうよ。
「兄貴達は、クイズ大会に参加しないの?」
「あぁ、キル達に先にクリアさせる約束だからな…これに参加するという事は約束を反故する事になる」
キルアは、へ〜と言った感じで納得している。息を吐くかのごとく嘘をつく辺りが素晴らしいと思った。
クイズ大会は順調に進んでいき、私のカンニングぺーパーも順調に完成していった。
くっくっく、まさか自分の回答が私とミルキを勝利へと導く事になるとは思わないだろう。本当に感謝するよ ゴン君。
そして、予想通りにゴンが最高得点をたたき出して、景品を受け取った。
その後、すべてのカードをそろえたゴン達からカードを奪おうという不届き者が現れたが…生憎と成長したゴン達の敵ではなく、あえなく捕まった。
その後に優勝パレードが盛大に行われ、原作一行はグリードアイランドを去って行った。去り際にビスケからお説教という名の仕打ちを受けたのはつらかった。
優勝パレードが行われて、ゴン達が去った数時間後。
再び、クイズ大会が行われた。ゲーム内にいるプレイヤーは、バグじゃないかと思う者や先日のパレードの続きと思う者などが沢山いた。
後にも先にも一日に二人もクリア者が出る事は無かった。
「そういえば、レイアは何のカードを持って帰ってきたんだ?」
現実世界に出てから持って帰ってきたカードを確認した。
ちなみに、ミルキは『睡眠少女』『金粉少女』『発香少女』と漢のロマンを体現したかのようなカードを持って帰ってきている。ちなみに、全員に着せる服については私が以前にリアルマチ人形を作った際にプレゼントした物を着せるそうだ。
「私が持ってきたカードは『支配者の祝福』と…」
ジリリリリーーーン
ミルキにカードの詳細を話しているとミルキの部屋に直通電話が掛かってきた。どうやら、執事室からのお電話のようだ。
ミルキが電話の対応を終えて私に向き直った。
「喜べレイア。例の品がたった今届いた。これからレイアの注文に会ったように改良してやる」
「おぉ!! 流石ミルキ様!! 兵器を取り扱う会社にまでツテがあるとは流石です」
ライセンスを持つ身でも中々に手に入らない品物を裏から手に入れられるなんてゾルディックのすごさがよくわかる。
「それにしても、軍事用に開発されている強化外骨格にジョイステーションを搭載して無敵の鎧を作ろうなんてアホの極みだな。一体辺りの開発費がアホ過ぎだ…しかも、作れる数に上限がある」
これこそ、私が考えた対ゴンさん用最終兵器!!
名付けてG・Iアーマーなのだ…名前がダサいのは気にしたら負けです。名前はいまいちだけど、見た目はかっこいんだぞ!! 一言で見た目を言えばサイボーグ忍者と同じだ。
「申し訳ありませんが、よろしくお願いします。こっちも、例のフィギュア?造りを頑張りますので」
これで最後になるかもしれないフィギュアづくりだ。私の持てるものを全て使って作っている。髪の毛の一本から爪の一つに至るまで全身全霊をもって作成中だ。
「ふっ、構わんさ。もし、死んだら骨位拾って葬式をあげてやる」
「ありがとうございます」
ミルキのなりの励ましなのだろう。だけど、その素っ気なさは結構好きだと思うレイアであった。
***
***
***
ミルキに魔改造が終わったと呼ばれて、部屋まで遊びに来たレイアです。
「素晴らしい。流石、ミルキ様の魔改造だ」
ミルキがこちらの注文通りに強化外骨格(以下、忍者スーツと名称)を改造してくれた。もっとも、改造といっても根本的な所はそのままだ。軍事用に開発された兵器は、それ自体が機能性に特化している為、専門家でもない限り早々手を入れるのは至難なのだ。
私がミルキに依頼したのは、ジョイステーションに利用されている機材を取り込んで、忍者スーツでグリードアイランドが起動するようにしてもらったのだ。その為、忍者スーツの背中の箇所に不自然な膨らみが有ったりする。
「改造は、完璧。しかし、これには二つ問題があってな…」
「問題?」
私の完璧ともいえる計画にミスがあるとは…一体、何が問題だというのだ。
「一体、誰がグリードアイランドの中にいないといけないんだ?」
「———あっ」
そ、そうだった。
グリードアイランドは、中でゲームがされていない限り念での絶対防御が発動されない。これでは、ただの忍者スーツだ。もちろん、並の銃弾では傷一つ付かないから相当丈夫とも言えるが…生憎と念能力者相手では心もとない。
「それと、もう一つの問題は既に気づいていると思うがスーツを着る人間まで絶対防御は効果が無いという事だ。守られているのは、スーツの方であってそれを着ている人間にまでは効果は及ばない。だから、衝撃などはモロに食らう事になる」
「そっちの方は、なんとなく予想はしていましたが…やっぱり、そうですよね。流石に人体にジョイステーションの機材を埋め込むのはツライ。そんな状態じゃまともに動けなくなります」
「まぁ、そうだろうな。自分の体をジョイステーションにするのはお勧めしない」
「ミルキ様……度々で申し訳ないのですが、追加でお願いが…」
グリードアイランド内で死なずにこっちに帰還できるカードを手に入れられる程の念能力者は、雇い入れるのは難しいだろう。なんせ、バッテラ氏ですら参加者を大体的に集めて実力者を選定する程なのだからね。
だが、私の目の前には伝説の殺し屋と名高いゾルディックの次男坊であるミルキが居るのだ。ミルキの手駒ともいえる執事達は、全員が念能力者であり戦闘力もナカナカの物だと思う。
「はぁ〜、そういうと思って二人ほど人材を見繕っておいた。グリードアイランドの攻略情報を覚えさせている所だから、後数日あればすべて暗記するだろう」
「流石、ミルキ様!! 男前すぎて惚れ惚れしちゃいます。私が女だったら絶対惚れてますお」
「仮に、レイアが女でもそんな酷い能力を持った女とかこっちから願い下げだろう。常識的に考えて」
そんな馬鹿な会話ももうすぐ出来なくなるなと思うと少し寂しいものだ。
ミルキに目をかけてもらってから本当に色々な面で助けて貰い感謝してもしきれない位である。もし、無事にピトーを連れて帰って来れたならば一生かけて恩を返そうと思う。
数日後。
とうとう、ゾルディックの敷地を後にする時が来た。
もっと長い間ここで過ごしたかったけど、生憎と時間の猶予がない。自分で作った第二の念能力のせいで行動せねば死ぬ未来しか待っていない。もっとも、そんな理由が無くても自らピトーに会いに死地に赴くつもりでいるけどね。
「ミルキ様、今まで本当にありがとうございました。別れ際にこんな高価な忍者スーツまで頂いて」
「いや、それ使い終わったら返してもらうから。絶対無傷で持って帰ってこいよ」
「マジで!?」
「マジで」
どんな相手と戦うかもわからないのに無傷でというのは無理難題ですよ。
「ぜ、善処します。———それでは、ミルキ様 また会いましょう」
「あぁ、またな レイア」
素っ気ない別れではあったが、お互いこのくらいの距離感が心地よいと思っていた。
そして、お世話になった執事の方々にも挨拶を終えて車で空港まで送ってもらった。
ちなみに…忍者スーツ着用でNGLの隣国行の飛行機に乗ろうとした為、警備員に囲まれ非常に大騒ぎになってしまった。ヘルメットは着けていなかったが、一般人から見たらテロリストに思われたのだ。まぁ、ベンズナイフや拳銃、その他銃火器を満載したケースを持っていたのだからある意味当然と言えば当然だ。
この時、ハンターライセンスをミルキから返してもらっておいて良かったと思ったよ。アレが無かったら、今頃牢屋に入れられていた可能性は否めない。
NGL隣国にて。
万が一に備えて、忍者スーツは常時着用している。こういう治安の悪い国では、何時何とき襲われるか分からない。無論、ヘルメットまで被ると完全な不審者に思われる為、顔を出して全身のスーツは見えないようにダボダボのマントを着てごまかしている。
「さて、NGLまであと一歩なんだが…どうするかな」
街中を歩きながら、NGLについて情報を集めている。
本来であればNGLに直接乗り込むのがピトーに会う一番の近道なのだが、生憎とそれを行う事はできない。NGLは、かなり特殊な連中で天然素材の物しか持ち込めないといった制限などがある。しかも、ハンターライセンスの効力もかなり薄いと来た。
言うまでもなく、私の装備各種は天然素材どころか…最新鋭の電子機器や国際条例で禁止されている物が多々ある。ゆえに、まともに入国など出来るはずもない。
やはり、密入国しかないね。
国境警備隊らしき連中もいるらしいが…正直金さえ掴ませれば問題ない。実際、そういう事を商売にしている連中は、電脳ネットを使って調べはついている。だが、その密入国業者がちゃんと仕事をこなしてくれるかが問題なんだよな。
ぐぅ〜〜
腹の虫がなった。
とりあえず、腹ごしらえの為に肉を焼く香ばしい匂いがするお店に入って、軽いランチを注文した。こういう国で食べるのは、初めてで…正直、何の肉が使われているか不安はあったが、馴染みのある牛肉の味がしたのでちょっと安心した。
私が考え事をしながら昼食を食べていると、何人かが同じテーブルに座ってきた。
昼時という事もあり、テーブル席を一人で使っている私の場所に来たという事か…まぁ、仕方ないと思い、そのまま料理を食べ続けた。
ジィーーー
相席したグループの一人からやたらと視線を感じる。
人がおいしくランチを食べているのに、一体何の恨みがあって視線を送っているのか文句を言ってやろうと思い目線を上げてみた。
こういった貧困国の飯屋には、似合わない若い女性だった。しかも、某MMOのプリーストのような恰好をしている。こんな治安の悪い場所をそんな恰好で歩けるという事は何かしら武芸の心得があるのだろう。
「見られていると食べにくいんだけど、何か用?」
「ああぁぁぁ!! やっぱり、あの時ハンター試験にいた白髪頭じゃない。私の事、覚えてない?最終試験にまでは残れなかったけどさ……」
何やら目の前の女性が騒いでいる。
どうやら、私の事を知っているようだが…正直、記憶にない。そもそも、女性関係に縁のない私にこんな知り合いがいるとは思えない。
という事は、答えは一つだ。
生前に流行ったオレオレ詐欺の一種だろう。きっと、私の知り合いと言って金を出せとか脅してくるんだろう。
「生憎とそういう知り合い詐欺は、他でやってくれないか。食事位ゆっくりとりたいのだが…」
「ポンズさん、お知り合いですか?」
「直接的な知り合いって訳じゃないけどさ。私が受けたハンター試験で一緒だった人。ちなみに彼はプロハンター」
ポ、ポンズだと!!
今までピトーの事で頭がいっぱいだったから思い出せなかったが…確かに、ポンズだ。というか、なんでお前がこの国にいるんだよ。
そもそも、原作でポンズの出番なんてハンター試験以外には…………あったわ。
「あぁ…今思い出しました。ハチ使いの人でしたっけ?」
「そうそう、思い出してくれてよかったわ」
何が良かったのか分からないが、そろそろ食べ終わったのでお暇しましょう。
「それでは、お互い思い出してスッキリしたところで。お先に失礼」
「ちょ、ちょっと待って!! ここの支払いは、持つからもうちょっとだけね!!」
私が席を立ち去ろうとしたらポンズが全力で引き留めてきた。
周囲の飯を食べていた連中が何事かを私達のテーブルを見てきた。あらぬ誤解を生みそうだった為、おとなしく席に戻った。
「はぁ…で、要件はなんですか?手短にお願いします」
「実は———」
………
……
…
ポンズの話を聞いてみると、仲間同士でNGLから武器や麻薬が輸出されている件について調査を請け負ったらしい。だが、仲間の中に戦闘に長けている者が居なかった。NGLでは、銃火器で武装した連中と戦闘が想定される為、武芸に秀でた人物を探していたようなのだ。
本来、プロハンターを雇いたい所だったのだが…金銭的な問題からそれも難しく。各位、知り合いを当たったのだが全滅だったそうだ。
「私達を助けると思ってお願い!!」
「「お願いします」」
ポンズとその他二名が頭を下げてきた。
正直、そんな話をされても同情すらする気になれない。そんなタダ働きにも近い報酬で命を懸けて違法組織と戦えとか、どれだけ鬼畜なのだよ!! ○愛グループの会長も真っ青な位の鬼畜だよ。
だが、向こうが私を利用する気なら私が向こうを利用しても別に問題ないよね。
「私は、銃火器をメインとして使うが…NGLへの入国はどうする?」
「蛇の道は蛇っす!! 既にソッチのルートで入国する手筈も整っております」
その他Aが自信満々に明言してきた。
密入国をこうも偉そうに言ってくるとは、犯罪を行っているという意識が薄いのだろうか。まぁ、どちらにせよ好都合だな。
「身の危険を感じたらお前らを置いて逃げても良いなら、一緒に行ってもいい」
「うーーん、そう明言されると不安はあるけど……他に当てもないし、時間もないしな……お願いするわ」
約束は守るさ…身の危険を感じない限り守ってあげるよ。もっとも、NGLで身の危険を感じない事など皆無だと思うがね。
改めて考えると…私のポジションってポックルじゃない!! いくら、ピトーに会いたいからと言って、餌になる直前に会うとか御免こうむるぞと思うレイアであった。
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ポンズ一行の戦闘要員として雇われて、NGLに密入国を果たしたレイアです。
入国後は、速やかにガイドという名の監視役を撒いた他のメンバーと合流を果たした。ちなみに、密入国組は私とポンズの二人だけだ。ポンズも薬品関係を使うから密入国を行わないといけなかったようで、これでお仲間というわけか。
だが…入国してから後悔しても遅いのだが、やはりこのメンバーでここに来るのはかなりマズいな。聞いた話によれば、他にも5組ほど仲間がいるらしいが全員小物臭がプンプンする。
何が一番不味いか具体的に言うとだな…私とポンズ以外に念が使える人材が居ないという事だ。まぁ、ポンズが念を多少なりとも使えたのは嬉しい誤算だ…だが、ほとんど独学に近く練度は私より低く。『発』の開発にも至っていない。
キメラアントのポテンシャルがどの程度かは、漫画でしか知らないが…ゴンのパンチをくらっても死なない強い蟻が居るくらいだ。私のようにチートスーツがあるなら話は別だろうが、万が一 出会う事があればこいつ等は生きて帰れる事は出来ないだろうな。
原作でも死んでいたから、特に私が気にする問題でもないか。
そして、今向かっている場所はポンズが蜂を使って調べた武器工場なのだが、道中で銃声が聞こえた為 目的地を変えて山岳部を移動中だ。恐らく、原作でこいつらがキメラアントにやられた場所に向かっていると思って間違いないだろう。
このまま進めば間違いなく、キメラアントとご対面するのは確実。しかも、兵団長クラスがいるのも間違いない。戦ってみないと分からないが…万が一負ける事があれば、ポックル的ポジションにいる私への待遇は、ピトーに「アッアッ」されてしまうだろう。 ベッドの上だと大歓迎だが、それ以外の場所ではご遠慮したい。
ならば、私が生き残る手段は一つだな。
「それにしても、本当にゴツイスーツよね。見たところ軍用品らしいじゃない。期待しているわよ」
「あぁ、約束は守るさ。約束はね」
それにしても流石は、大自然がそのまま残っている国だ。野生の熊やオオカミなど肉食系の動物が結構住んでいた。しかも、人間をエサとしか見ていない様子ですぐさま襲ってきやがる。恐らく、銃火器などで威嚇等を今まで行っていない為、動物に完全になめられているのだろう。
きっと、こいつ等もキメラアントの素材になったのだろう。オオカミやクマみたいな奴も居たしね。
ポンズ一行と適当に会話を合わせつつ、逃げる算段を立てた。正直、ここまで一緒に来てあげた事で既に役目は果たしたと言ってもいいだろう。これ以上進むと、キメラアントの警戒網に引っかかると私の直感が言っている。
本来なら無言でおさらばしてもいいのだが…優しい私は最後の忠告をしてあげよう
私は歩みを止めて後ろからついてくる三人の方を向いた。
「悪いが、約束通り ここで私は別れさせてもらおう。これ以上は、進めない」
「ちょ、ちょっとどういう事よ。まだ、密売の証拠も掴めてないし。銃声が聞こえた現場もまだ先よ」
「銃声くらいでビビッてるのか?本当にプロハンターかよ」
ポンズとその仲間から非難を受けるが彼らの言い分も分からないわけではない。
だがね…いくら念能力を身に着けていないキメラアントだからといって相手は素での戦闘力は、凄まじく高い。並の雑兵なら何人居ようがこのスーツとベンズナイフがあれば三枚おろしには出来るくらいの自信はある。
だが、問題なのは原作ポックルを捕えたサソリの尻尾を持つやつと蜘蛛男だ。その二体のキメラアントは、後々旅団員によって直々に始末される運命があるんだが…それが問題なのである。
要するに、旅団員とある程度やりあえるキメラアントだという事だ。念を身に着けてはいないにせよ身体能力は、他の雑魚を比べて群を抜いているのは間違いない。
「何とでも言ってくれて構わないさ。君たちもうすうす気づいているだろうが…今のこの国は異常だ。悪い事は言わないから、即刻立ち去った方がいい」
「何を言っても無駄なようですから、行きましょう ポンズさん。後、この事は戻ったら正式にハンター協会に報告させてもらうからな」
何処へなりとも報告してかまわないさ…死んでも口がきけるならばね。
ポンズともう一人も私の態度に呆れてなのか、失望したような目で見てくる。契約も守った上に忠告までしてあげたのだ。これで恨まれるのは筋違いもいいところだと思うが…まぁ、よい。
「何でもいいから早くいきましょうよ。こんなところで時間を食っている場合じゃありませんよ」
バコン
「ギャアーーーー」
ポンズの仲間が先を急かすが、男がしゃべり終わると同時に地面が盛り上がり地中からキメラアントが登場した。そして、ポンズの仲間の頭を綺麗に切り落とした。
普段はミルキが周囲を警戒してくれていたからこの距離まで敵に接近される事まずありえない。なぜなら、ミルキの広範囲な円を掻い潜る事は不可能だからだ。
それ故に、油断が生じた。
だが、うろたえる事はしない。この失敗を次に生かせば何にも問題ないのだ。それにさ、この程度の敵で狼狽えていたらゴンさんやピトーを前にした時に身動き一つとれないじゃないか。
「出たぁぁああああああ!!」
ポンズの仲間がその一言を叫んで死んでいった。首だけになって叫ぶとかスゲーと素直に感心した。
本当ならこんな展開になる前に逃げたかったんだが…自分で判断を間違ったのだ、自力で何とかするしかないな。
オーラを足に集中させて蟻との間合いを詰めた。
近づくと同時にお気に入りのベンズナイフを取り出し、蟻を突き刺した。
スーーー
そして、そのまま筋肉の目に沿ってベンズナイフを流れるように動かした。いくら堅い筋肉であっても目にそって切ればわずかな力で確実に切れる。無論、鉄柱ですら切断できるこのナイフならその必要もないが、今後の事も考えて念の消費は最小限に抑えたい。
蟻にとっても不思議であっただろう…目の前にいた人間が一瞬で間合いを詰めて自分の固い皮膚に覆われた体にヤスヤスとナイフを通したのだ。そして、痛みすら感じずに解体されるのだからね。
バラバラバラ
ナイフを蟻から抜いたところで蟻が綺麗に三枚になった。
ピクピク
三枚におろされても、まだ息があるようだ。脳を潰さないと一日くらいは生きられる等のは本当らしいな。全く、どこの超生命体だよと言いたくなるよ。
「ちっ、逃げ……られんな。恐らく、キメラアントは近くにそれなりの数がいるだろう。ポンズは蜂で可能な限り敵の位置を割り出せ、それと強いオーラを持つ者に手紙をだせ。後
男の方は、コレで相手に殴りかかれ」
逃げようとした矢先に山岳部の崖を上ってくる敵の気配を感じたので腹をくくる事にした。
山道でキメラアント相手に鬼ごっこするのは分が悪い。もともと、こういう地帯に生息していた生き物たちだ。人の足では逃げ切るのは困難だからね。それに、ポンズの蜂はまだ使い道がある。ここで死なすのは少し惜しい。
「わかったわ」
ポンズも命が掛かっている事を感じたのだろう。すぐさま蜂を辺りに放った。そして、男の方には煉瓦くらいのサイズの白いプラスチックを渡した。説明する時間が無かったので、具現化系の念だと言っておいた。それで殴ると相手が死ぬと…嘘じゃないよ。
「あぁ、生きる為だったら何だってやってやる!!」
そう、その意気だ。
「崖から上がってくる人の顔を持った蜘蛛が出てきたら、思いっきり殴れ。相手は、こちらを捕まえる事が目的だから殺すような攻撃はしてこない。そこを突くんだ」
「あぁ、分かった俺に任せろ」
悪く思うなよ。私だって生きる為だったら何だってやるんだ。それに、無駄死にするより私の役に立った方が有意義だろう。
ザザザザザ
ものすごい速さで駆けあがってきている。こっちも準備万端だけどね。
そして、蜘蛛男が私達の居る場所まで駆け上がってきた。
顔だけ親父顔で手足がいっぱいとか…キメラアントの生態が気も過ぎてワロス。もっとも、ピトーだけは別だけどね。
「ありゃ、下級兵が死んでる」
「うぉぉおおおおおーーー!! 仲間の仇だぁぁぁぁ死ねーーーー!!」
手に白い煉瓦のようなものを持って相手に特攻していった。まさか、私の言葉をここまで信じてくれるとは…まさに、逸材だ!!
さぁ、見せてくれ自爆特攻という王道を!!
ポンズの仲間が蜘蛛男に特攻をする。
だが、あっさりと下半身から放出された蜘蛛の糸に捉えられてそのまま空中をダイブしていた。
「うわぁああああああーーー」
パクン
蜘蛛と男の懐まで引っ張られた挙句にそのまま頭をぱっくりと食われてしまった。実に見事な食いっぷりだ。
「し、しまった。食っちゃったべ」
女王に提供する餌をつまみ食いした事を一瞬後悔したようだが…私の姿をみてすぐさま新しい獲物を見つけたといった感じの視線を向けてきた。
実に不愉快だ!!
「最後の食事は旨かったかね。それでは、死んでくれ」
ポチ
手に待っていた起爆スイッチを押した。
ドゥウウーーーーーーーン
けたたましい爆発音と衝撃が辺りに響いた。
私がポンズの仲間に手渡したのはC4…通称プラスチック爆弾というやつだ。もち運びもしやすく、威力も申し分ない。いかに、強い蟻とはいえ至近距離であの威力の爆発を食らってはひとたまりもあるまい。念を覚えたガチ強化系なら殺しきれんかもしれないがね。
さて…今の爆発音でほかの蟻共も集まってくるだろう。
「私達は、早急にここから逃げないといけないのでそこを退いてくれませんかね? キメラアントさん」
「あら?気づいてたの、残念だわ」
いいや…あんたの絶は完璧だったよ。ただ、居る事を知っていたから適当に言葉を言っただけなんだがね。
「残念だが、時間が無い。速攻で倒して逃げさせてもらうよ」
「あら、私相手にいい度胸じゃない」
サソリ女は自慢の尻尾で私の神経毒を使ってくるだろう。無論、ゾルディック一族のように特殊な体質でない私に毒は有効だ。ポックルのように解毒剤なども持ち合わせないから食らえば一発でアウトだ。
足にオーラを集中させて一直線にサソリ女目がけて疾走した。
雑魚とは違い、私の動きを完全にとらえ切れている辺りがキメラアントのスペックの高さを表しているだろう。念能力で強化しているこの動きに念なしで付いてくるとか卑怯すぎるよ。
「自ら接近してくれるなんて馬鹿ね。さっきの爆発は、この距離じゃ使えないわよ」
「普通ならね…」
ガシ
サソリ女は、何の抵抗もなく私に捕まってくれた。はたから見たら抱きしめているようにも見える。
「もし、仮面を取っていい男だったら一生飼ってあげるわ」
「悪いけど、タイプじゃないんだよね」
その瞬間、サソリ女の顔が鬼のような形相になり私の首筋に軽い衝撃が走った。
バキン
サソリ女の尻尾の針が私の首筋に当たったと同時に砕けたのだ。サソリ女は、唖然とした顔をしている。今までに針をさせなかった生物はいなかったのだろう。恐らく、普通に鉄板位なら問題なくさせた。だが、残念ながらこのスーツは特別な上に世界最強クラスの変態が集まって作ったアイテムを装備しているんだよ。並大抵の攻撃では、スーツの破壊はおろか、中の人間を殺すなどできないよ。
「これぞ、王道!! 起爆スイッチオン!!」
2個目のC4爆弾をゼロ距離で爆発させた。