23話
原作組…特にゴンは最後の詰めの甘さが致命的だと思うレイアです。
原作と異なり、キメラアントに襲撃された村には下級兵と兵団長クラスの蟻が多数来ていた。原因は、言うまでもなく私なのだろう。師団長と兵団長クラスが倒されれば、ある意味当然だ。
「あの二人ってハンター試験に来ていた子達よね。もう一人は知らないけど…みんな凄いわね」
「そりゃそうだ。全員プロハンターな上に、才能が保障されている血統証付の子供達だ。弱いはずがない。覗くのもいいが、辺り警戒を怠らないでくれよ」
「言われなくてもやっているわよ。死にたくないもん」
ポンズと一緒に原作組から2km程離れた高台の木陰から町の惨状を覗いていた。ポンズは、双眼鏡を私は忍者スーツの望遠機能を使っている。
30匹近くいたキメラアントがたった三人によって蹂躙された。
「だが、黒髪の子供は最後の詰めが甘い。兵団長クラスを殺しきれず、あまつさえ逃がしてしまうなど何を考えているんだ」
「何がいけないの?」
「念の洗礼だよ。恐らく、次に会う時は相手も念を覚えているとみて間違いないだろう。ただでさえスペックの高いキメラアントに念が加わったら脅威としか言いようがない」
もっとも、遅かれ早かれ念に目覚めるのは間違いないだろうがね。不幸中の幸いなのは、ポックルが居ないおかげで、ピトーの手により無理やり情報を抜かれる事が無い。この事により、多少成長速度が落ちるだろうと予想できる。
「それってかなりまずいんじゃない!? 早く、知らせに行かないと!!」
事態の重大さに気づいたのだろう。一刻も早くハンター協会に連絡して討伐依頼を出したいのは重々わかるが…そんな事はしない。
私は、ポンズに軽く手を振って『一人で行ってらっしゃい。ただし生きて国境まで帰れるならばね』と優しく語りかけてあげた。無論、ポンズは何を考えているんだこいつはと色々と文句を言ってきたがガン無視だ。
これから、嫁に会えるというのにそんな事をしている暇はないし、既にゴン達の仲間が協会へは連絡済であるからね。もちろん、そこら辺の事情はポンズには黙っている。だって…聞かれてないからね。
「安心しろ。私が嫁に会った後なら国境まで帰る彼らに会わせてあげるさ。それまでは、可能な限り守ってやっている分しっかり働け!! これから先は、敵も念能力を使ってくるかもしれないからいつも以上に警戒に力を入れてくれ」
「……もしかして、この国が蟻達に支配されている事やこれから何が起こるか知っていたりする? 最初は、ただの偶然だと思っていたけど あんたの準備が良すぎる。今回、私の手紙が誰に渡ってどういう行動を起こすか事前に分かっているのは偶然にしては出来過ぎているわ」
ミルキならその程度の事気にしなかったが、この女……ウザイな。
生きてこの場にいられるだけで感謝しろ!! 本当ならお前は、最初の襲撃で死亡していたんだぞと伝えてやりたい。だが、あったかもしれない未来を言ってもどうしようもないな。
「ただの偶然だ。仮に偶然でないとしても君にその理由を教える義理は無いさ」
「そうね。一応、助けて貰っているし…悪かったわ」
あぁ、それでいい。
私は決して蟻共の味方ではないさ…無論、敵でもないがね。
「動き出した。この距離からの肉眼での追跡には限界があるから、期待している」
「はいはい」
ポンズはいやいやながら返事をした。
無論、生き残る為とはいえ私に従わないといけないのが気に食わないのだろう。だが、そんな事 私にはまるで関係ないのだ。例え、ポンズが一人で帰るというならば止める事はしない。
ただし…道中蟻に捕まって私の情報が漏れるのを防ぐ為に、死体で帰ってもらう事になるけどね。だから、原作組以外と帰ろうとは決してしないでくれよ。
自分の為にもね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
救援要請の手紙を受け取りで急いで来てみれば、既に町は壊滅状態…手紙をよこした連中の代わりに待っていたのはキメラアントの団体だ。
俺一人でもなんとかなったが、カイトとゴンも一緒に戦ったおかげでスゲー楽だった。対キメラアント戦のいい練習にもなったしな。唯一の懸念があるとすれば、倒し損ねた決めアントの行方だけだ。
「見られているな」
「あぁ」
「うん」
ここについてから誰かに見られている。距離がある事と辺り一面森の為、位置までは分からないが確実に監視されている。だが…キメラアントのように完全に気配を絶ててないから、おそらくは人による監視だろう。
「わかるかゴン?」
「う〜ん、こっちが風上だから匂いが…」
ゴンの犬並の嗅覚があれば、何とかなると思ったが当てが外れた。
まぁ、コッチに監視が気づかれるような連中だ 大した事がないのは事実。カイトもその事を考慮してあえて放置しているしね。向こうが手を出してこない限り、何もしないって事ね。
「誰が何の目的かは分からんが…無理に対処する必要はないだろう。蟻共が回収していた仲間の死体を見る限り使う武器は、爆薬とナイフと拳銃といった所だろう。それにしても兵団長クラス以上を二体とも木端微塵…相当量の火薬を使ったのか」
カイトが見ているキメラアントの死体を確認した。
四散した死体を見る限り…近距離での爆発だろうな。兵団長クラスの蟻がロケットランチャーのような弾速の遅い物に当たるとも思えない。しかし、近距離で爆発となると自爆か……いや、まさかな。
次にナイフで切られたと思われる死体を確認してみた。
ものの見事に解体されていた…堅いキメラアントの殻の隙間から筋肉の目に沿って綺麗にばらされている。きっと、切断した直後なら元の位置に戻せばそのまま繋がりそうな程だ。並の手練れではないな…ナイフの扱いは俺以上、下手すれば親父並か。
最後に銃で殺されたキメラアントを確認してみた。
厚い鉄板並のキメラアントの殻を粉々に砕いている。普通の弾を使っては無いなそうだが…
「キルア、あまりその死体に近づくな」
「使っている弾を確認するだけだよ。まだ、残ってんだろう」
「既に確認した。その蟻共を殺すのに使われた弾は、大口径拳銃用の劣化ウラン弾だ」
「マジかよ。それって国際条例に思いっきり違反しているだろう」
「使った奴の目的などは分からんが…蟻共がこいつ等を巣に持ち帰ることを計算して使っていたのなら大層な野郎だ」
ナイフに拳銃、爆薬…おまけに国際条例無視の弾丸か。
・・・
・・
・
あっ!!
「いや、まさかそれはねーな」
流石に、こんな辺境であの野郎に会うなんてありえないだろう。それも、俺等より先にここにいるとか天文学的確率にも等しい。
「どうしたのキルア? もしかして、心当たりでもあった?」
「心当たりがあるかもしれないと思ったけど、勘違いだから気にすんな」
だが、キルアの予想は大正解であった。
しかし、この場にレイアが居ようと居まいとキルア達にとってはなんら関係ないので深く考えなかったのである。
次話…嫁とご対面予定です@@
ここまで長かった><執筆初めて一年くらいかかったような気がする。