36話
テレビニュースを見ながらまったり過ごしているレイアです。
どの番組もUMAのニュースでもちきりである。方々に散ったキメラアント達が好き勝手暴れており、死亡者の数は日に日に増すばかりだ。そして、とうとうハンター協会が対応する事態にまで発展していたのだ。
「懐かしい顔ぶれが映っていますね。みんな元気そうで何よりだ」
仲間以外には、厳しいという一点を除けばいい連中だった。人間の様に腹黒いのは…居たけど、絶対数が圧倒的に少なく非常に付き合いやすい連中だったわ。もっとも、食文化についてはついていけない所が多かったけどね。流石に人間は食えんわ…。
「いいなぁ…私もテレビデビューしたいです ご主人様。きっと、私の魅力でみんなメロメロですよ。いっそう、ピトー様とユニット組めば結構いい線いけると思うんですよ」
一瞬、殺人犯として指名手配写真を載せたいのかと思ったが…どうやら違ったようで安心した。それにしても、アイドルユニットね……いいんじゃなか。ある意味、モラウが実行しようとしているキメラアント保護にも繋がるし、決して悪い考えじゃないと思う。
「いい線どころか、トップアイドルも夢じゃないんじゃない」
「ですよね。後、なのは と フェイト も一緒に混ぜるというのも手ですよ!! 容姿受けもするだろうし、歌なんか既にプロ級に上手いじゃないですか」
タマモは重要な勘違いを一つしていたのだ。確かに、歌はプロ級に上手いが…真実はこうだ。
「…あれ?タマモは、知らなかったけ? なのは と フェイト は、以前に私が作った人形でデイーゴの念能力で動かしているんだよ。そして、声はデイーゴのお得意の腹話術で……」
「ま、まじですか!? 男であの声だせるとか既に変人の領域じゃないですか。しかも、たまに三人同時でしゃべっていませんでしたっけ?」
すでに腹話術の領域を超えてそうだが…あれも大層な変態だからな。きっと、私の手先が器用なのと同じく、かなり特化した才能でも持っているのだろう。
まぁ、それはそれで楽しそうだな。将来的に機会があれば、国家元首つれてミルキの元でアイドルマスター(笑)をやってみるのも一興だな。
スポンサーのミルキ、マネージャーのデイーゴ、衣装作りや作詞作曲を担当する私。そしてキメラアントのピトーとタマモ、人形のなのはとフェイト…実に楽しい面子じゃないか。アイドルの中に誰も人間がいないという辺りがエロゲーみたいな展開だぜ。
ピピピピピピ
セットしていた目覚ましの音が鳴り響く。
「時間のようだね。それじゃ、私達も行くとしましょうか。お仕事しないと王の餌になっちゃいますからね」
「服が汚れる仕事は、好きじゃありませんが。生きる為には仕方ありません」
ピトーによる選別が始まってから今日に至るまで、成果は順調に上がっていた。しかし、ここ最近急にペースが衰え始めたのだ。調査に向かったキメラアント達は帰らず、原因の究明が進んでいない。そして、その原因調査に私達とライオン型のキメラアントであるハギャ達が担当になったのだ。
ハギャは、王になるとか旅立ったのにも関わらずハンターに返り討ちに王宮に逃げ込んできたのだ。本人は、その件の恩返しと言っているが…誰がどう見ても、隙あらば王を…と考えているのが丸わかり。護衛兵や王を間近で見てそこまで夢物語を語れる辺りが、あるいみ大物な気もしないでもない。
だが、ハギャの事情など私には関係ない。どのみち死ぬ運命の奴だ。
ハギャの事は置いておいて…今回の一件、原因がキルアとゴンによる選別の妨害なのは知っている。そして、今回キルアが窮地に陥る事も知っている。原作より性能が向上しているキメラアント相手だとキルアが不覚をとって死亡する可能性もある為、元々このタイミングで外に出たかったのでグットタイミングであった。
「そういえば、ご主人様。王の服って完成したんですか? どっちの仕事も優先度高いと思いますが、服を完成させないまま他の仕事をするのは不味くありません? 」
「何を言っているんだ。王の服など先日完成させたわ。……怖くて、まだ持って行っていないけどね!!」
そう、先日ネットで酷い目にあってから除念師まで持ち出したのが他の護衛兵にもばれちゃってね。色々と言われて死に物狂いで後れを取り戻したのよ…まぁ、取り戻すどころか勢い余って完成させちゃったのね。
「か、完成させたんですか!? もしかして、あそこに飾ってある白い服が!? 流石ご主人様ぱねぇーす。それで、渡しに行くんですか? 私その日に警邏のシフト入れるんで是非教えてください」
「ははは、面白い事を言うね。タマモも一緒に持っていくと既にピトー殿に伝えて快諾を得ているから無駄な足掻きさ!! 死ぬ時は、一緒だお…」
「どう聞いても巻き添えで…ご主人様が非道です…常識的に考えて」
さて、バカやってないで働きに行きますかね。
王宮から離れた丘の上にて。
「何者ですかあの子…ポテンシャルが余裕で師団長上回っていますよ。後数年もすれば、戦い方次第で倒せないにしても護衛兵ともそれなりに勝負出来るんじゃありません?」
「まぁ、人間世界最強の殺し屋集団の子供だからね…エリート中のエリートですよ」
キルアの超人ばりの戦いを遠くから眺めているのだ。猿がベースとなったキメラアント数体を木上で一瞬にて葬るとか凄いな。円を広範囲に展開しているわけでもないのに背後からの奇襲もしっかりと回避して次の攻撃につなげている辺り飛んでもない戦闘センスを感じる。
確かにキルアは強い。1:1なら師団長クラスにも引けを取る事は無いだろう。そして、今回相手をしているような連中など本来これほど苦戦する事もあり得ないのだ。もっとも、体調が万全であると前提条件は付く。今のキルアは、寝る暇を惜しんで妨害活動をしているので本来の半分の力すら出せていないだろう。
「なんだ、お前等も来ていたのか。かなりのやり手だが、もうすぐ片付くさ。悪いが手柄は俺らの物だ」
私とタマモを見つけてハギャが近寄ってきた。敵味方問わず円の範囲には入らぬように細心の注意を払っていたのだが…良い目を持った部下がいるようでうらやましい限りだ。トンボが先ほどからこちらを見ているのにようやく気付いた。
「お久しぶりです ハギャ殿。仰る通りになりそうですね。ハギャ殿配下の部下を総動員しての持久戦…これを突破するのは至難ですからね」
「体力が落ちた所を強襲、更にタコの蚤攻撃による出血…最後は、洞窟に追い込みサメの餌ですか。なかなか、エゲツナイ事をしますね。まぁ、貴方達に倒される前に私とご主人様でトドメを貰うというのもありですがね」
タマモにはキルアを助ける予定という事は何も言っていないので、そう考えるのは当然の帰結だ。地下洞窟で起きる出来事は誰の目にも触れないし、タマモを口止めする事など持ってきたお弁当の稲荷寿司で十分だ。
「勝つ為には手段は選ばねーからな。それにしても、こいつがあの時の人間と狐か…」
「そんな、卑猥な目で見ないでいただけます。欲求不満なんでんすか?キモイので半径1km圏内に近づかないでください。それに、ハンターにやられてノコノコと逃げ込んで来た負け犬が今更手柄を立てたからといって褒美が貰えるとでも思っているのですか? もし、そうなら真性のアホですね」
ハギャの見下すような視線に対して、完全に気分を害したようでかなりの喧嘩越しだ。
確かに、ハギャの視線は不快ではあった。私のような人間をご主人様と慕う程度のキメラアントが強い訳が無いと完全に見下していた。だが、タマモにとってタマモ自身が他人からどの様に思われようが実際はどうでも良かったのだ。
タマモは、動物の本能でハギャがレイアを亡き者にしようと企てている事を感じていたのだ。そして、いつでも臨戦態勢になれるように構えていたのだ。
実際ハギャは、王へ恩義を売る為に自分より護衛兵や王に近い存在は邪魔でしかないと考えレイアを抹殺しようと考えていた。王宮内では、ピトーの円があり手が出せないが、外に居る今回を絶好の機会と考えたのだ。
「落ち着けタマモ…すみません、うちの子が失礼を」
「…ッチ、気にすんな。お互い様だ」
自分の命が狙われていた事など知る由も無く、ハギャの器の大きさに素直に感謝した。
「そうですね。お互い様という事にして置きましょう…次はありませんよ」
ハギャと一緒にトンボ達が一斉に私達の事から散って行った。
「目は気に食わなかったけど、一応はタマモを作る際に協力してもらった手前、ある程度は許してあげてね」
「ご主人様のいう事ですし、ある程度は許してあげますよ。ある程度は、ですけどね…」
うーーん、どうやらまだ不機嫌の様だな。部下のケアも上司の仕事だから…ここら辺でお昼にしてご機嫌でもとるかな。ちょうど、この下が地底湖だからキルアが来るまでランチタイムとしましょうか。
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「あのむかつく女狐め…絶対ぶっころしてやる」
同じ師団長で有りながらここまでコケにされたのは初めてで腸が煮えくり返っていた。しかも、その原因を作る一端を担ったのが自分ともあれば、この苛立ちをどこにぶつけたらいいのか分からなかった。
『あの場で仕掛ければ打ち取れたのでは?』
『無理だ。あの女狐の能力は分からないが…少なくとも正面からやりあって勝てる気がしなかった』
対峙してみて初めて分かった…現状では勝てない。王や護衛兵と違いしかるべき準備さえ整えば勝てる。たかが、ライオンをベースにしている俺が狐相手で逃げなければならない事が気に食わなかった。
もっとも、人間相手に敗北を経験していなければ間違いなくあの場で勝負に出ていただろう。そして返り討ちにあっていただろう。
まずは、勝つ為に能力の発動条件を満たす必要がある。念能力さえ封じれば、あの女狐とて敵ではないが…問題は、どうやって恩を売るかだ。一番簡単なのは、あの人間を使い、恩を売る事だが…そもそも、ほぼ24時間一緒にいるあいつ等をどうやって引き離すかが問題。
決してチャンスが無いわけじゃない。まずは、あの銀髪の餓鬼を始末する事に専念しよう。時間は、まだまだある焦らず完璧にやるそれが俺様のプランだ。
『イカルゴ準備は、出来ているな?』
『準備万端。いつでも…』
ワンサイドゲームの始まりだ。俺の出世の為に頑張ってくれてありがとよ人間の餓鬼。
『殺れ』
その瞬間、イカルゴから一発の凶弾がキルアに直撃した。
やっと、関西出張から解放された。
ペースは遅いですが、ゆっくりと執筆を開始。
後2話くらいで王へ服を献上する予定…さて、生還できるかな(汗
別件ですが、タマモの能力はガチ強化系で…某神父様並の再生能力を予定。オーラが枯渇するまで再生し続けます。