第39話
王に服を献上し終え、生を満喫しているレイアです。
プフは、さり気なくあの場から王1/1フィギュアを持って早々に居なくなったのだが…その事を誰も咎める者はいなかった。そして、王も私が献上した服を着てくれているようで実に喜ばしい。
どうでもいい事だが、タマモや私は王を見かけた際は全身の筋肉を硬直させ決して笑わぬようにしている。他のキメラアント達も同様の技術を会得したらしく…全く持って使い道のない技術である。
「いや〜、それにしてもプフ様のナイス過ぎるフォローのおかげで生きて帰れましたね。今思い出しただけでも、良く生きていたなと思うばかりですよ」
「大丈夫だ、全て計画通り」
勿論、計画通りではなく偶然の産物だ。プフにはお世話になりっぱなしで本当に申し訳がない。今度、1/1メルエムだけでなく、ネンドロイドメルエムといったデフォルメのフィギュアをプレゼントしてあげよう。きっと、泣いて喜んでくれそう。
ムシャムシャ
「その事は置いておいて、タマモ………」
「な、なんですかご主人様」
いやね…最近、食事量がちょっと多い気がしてね。運動もせずに炬燵にばかりはいっていると必然的にどうなるか分かるよね。
「ウエストが……1.2cm大きくたね」
タマモが何故わかった!? と言った顔をしている。
そりゃさ…一目見れば相手のスタイルの全てが分かると言っても過言じゃない目を持った私ですよ。服の上からですら相手の全裸姿が完璧に分かるのだ、ウエストの増加位すぐわかる。
「こ、これはですね……その……」
「ちゃんと、運動しないからニャ」
「なのは や フェイトのスタイルを見習った方がいいですぞ」
ピトーのいう事は当然だが…デイーゴの意見は少し違う気がする。人形は一生、スタイルが変わる事はないでしょう。タマモがこうなった原因は、運動不足と間食だ。毎日食べては寝てを繰り返せば、キメラアントとはいえ太るのは当然。
「あ…ご主人様。それロンです」
………
……
…
そう、今私達…私とタマモとピトーとデイーゴの四人で炬燵に入り麻雀をしているのだ。お金をかけるのはナンセンスだったので、皆が持ち寄った自慢のおやつを景品にしている。
野生の勘と言うべきなのか…現在、タマモの独擅場である。その為、タマモに皆が持ち寄ったおやつが奪われていく。
「また、振り込んだかニャ。レイアは弱すぎるニャ」
いやいや、ピトーだってさっき振り込んだじゃん。
「まだチャンスはありますぞ。勝負はこれからですぞ レイア殿」
「タマモのおやつを何としても取り上げましょう、デイーゴ殿」
ここに打倒タマモを目標とするコンビが誕生した。
「酷い…ご主人様がデイーゴさんと組むなら私はピトー様と組みますからね。ピトー様、取り分は4:6でいかがでしょうか? 勿論、ピトー様が6で」
取り分が6だと!! そんな汚い手口でピトーを味方につけるなどなんて悪質な。
「乗ったニャ」
だが、まだこちらに分がある。なんせ、この麻雀の牌は、すべて私が用意した物だ。この、忍者スーツの機能を使えば牌が透けて見える仕様なのさ。今までは実力に頼っていたが…勝たせてもらおう。
「では、勝負続「大変です!! ピトーはいますか!?」…」
勝負を再開しようとしたその時、プフがトンデモナイ勢いで扉を蹴破ってきた。かなり、切羽詰まったご様子だ。
それと同時にピトーも何かを感じ取ったのだろう。すぐさま部屋を抜け出し王がいる場所へと駆けて行った。突然の出来事で、タマモもデイーゴも何が起こったのかさっぱりだったが…私は理解できた。
王が自らの腕をちぎり取ったのだと。
「何をしているのです。貴方も行くのです レイア」
え!?
「どちらに!?」
「王座です!! 王が自らの腕をちぎり取りました。元女王を治療していた事は知っています。最低限の心得があるのでしょう。死にたくなければすぐにいきなさい!!」
原作ならピトーだけで行った治療に私も加わる事になるだと!! 完全に予想外だ。確かにちぎり取っただけなら元あった場所に神経などを繋ぎなおすだけの作業。裁縫や彫刻などの面でマエストロ級の腕前をもつ私にとっては、決してできない作業ではない。
私が治療に加わる事態を想定して念の解除時間は一時間としたのだ。最悪、一時間以内に治療が終わった場合は、ノヴァには悪いが死んでもらうほかあるまい。
「ただちに!! デイーゴ殿、勝負は次の機会に。タマモは一緒においで」
「はいはーい」
王座にて。
既に、ピトーの治療が始まっており私は、そのサポートに入る事になった。神経を縫い付け担当になった。私が縫い付けた神経をピトーが念で補強を行う感じだ。
「王様、コムギ様お飲み物をお持ちしました」
私が治療に励む中、タマモは王とコムギの給仕を買って出た。王は要らぬと言うと思ったが…コムギが予想以上に狼狽していた為、それを落ち着かせる意味もあってタマモも行動に許しが出た。
まぁ、コムギもタマモの事を知らぬわけでもないし…問題なかろう。たまに、食事を配りに行っているからね。
「ありがとうございます タマモ様。そ、総帥様のご様子は…」
「大丈夫ですよ。今、ピトー様とご主人様が治療中です。もう、一時間ほどで元通りです。気にしたらダメですよ」
「ほ、本当だすか?」
「もちろん!! このタマモちゃんを信じなさい」
それを聞いたコムギが何やら気分が晴れてご様子で…再び軍儀に集中しだした。私が、軍儀というゲームをした事は無いが、王が横で敗北している様をみてコムギの才能に脱帽した。一分野とはいえ、王に勝つとは…半端ないな。
だが、私は想像を絶する窮地に立たされていたのだ。
王の真横で治療を行っているという事はだ…セイバーリリーのコスプレをした王を目の前で直視しており…笑わないように筋肉を硬直させ続ける事に限界が着そうだったのだ。数分なら、まだしも硬直させる事など無理だ。
更に20分後。
もう限界だ。これ以上は、硬直が解けてしまう!!
「プフ殿!! 私に、一時休憩のご許可を!!」
「なりません。王の治療が最優先です」
その治療している私が殺されてしまう可能性があるんですよ!!
「5…いや、3分で構いません。これ以上、この精密な作業を連続で続けてしまうと私の方が先にくたばってしまいます!! お願いです!! 王に最高の治療を施すために!!」
「そうですか、しかし…」
「構わないニャ。少しくらい休んでくるニャ」
「よいのですかピトー」
「レイアが居たおかげで随分と捗ったニャ。王の治療にかかる時間が半分以下になったから、今の効率保つためなら休んでもいいニャ」
ピトー愛しているぜ!!
「そういう事なら構いません。3分で戻ってきなさい」
私は王に一礼をしてその場を離れて、1Fと2Fを繋ぐ中央階段に座り込み休憩に入った。
全く、王をまじかで見て分かったが…隙がねーな。片腕無くてもされ最強じゃん。ネテロが爆弾でしか倒せないと判断したのが良く分かるわ。
「ご主人様、お茶です」
私が休憩に入ったのをみてタマモが持ってきてくれた。よく気が利くじゃん。
気が効きすぎるせいで、あの場で笑いを堪えきれないという事を早々に判断し、自ら給仕を遣る事で、危なくなったら部屋を平然と退場していたけどね
「ありがとう。………ご主人様を置いて部屋から逃げるって酷くない?」
「えぇ〜、そんな事ないですよ。こうしてお茶を持ってきたじゃありませんか」
まぁ、なんとかなったし問題ないか。
………
……
…
あれ、そういえば、ここってノヴァが目印を書きに来る場所じゃなかったけ。
そう思い、1Fの階段付近を見てみたら…目が合った。
誰にって…そりゃ
「ノヴァさん、元気?」
「あれ? ご主人様、今のって…」
「さて、何でしょうね。我々は何も見なかった」
「………そうですよね。こんな王宮に誰も来やしませんからね」
再び、同じ場所を見た時には既にノヴァの姿は無く、能力で帰って行ったぽいな。どうやら、原作は忠実に再現されているようで安心安心。
それから、数日後(選別の前夜)。
王の治療も無事に終わり、ネテロ会長から私の口座に多額の現金も振り込まれ嬉しい限りです。
そして、なぜか今日もコムギと王がいる王座に待機させられている私とタマモです。タマモは主に給仕として、私は王が再び怪我をした際にいつでも治療が行えるようにする為といった感じで毎日特定の時間帯に呼びされております。
「総帥様のお名前は、何とおっしゃられるのですか?」
とコムギが去り際に言ったのであった。
王は、今になって自分自身の名前を知らない事に気づきすぐさま、護衛兵全員を招集したのだ。そして、その中になぜか近くに居合わせたタマモも呼ばれてしまった。実力的には、護衛兵の次に強いし…王にとっては弟的存在と言っても過言ではないから呼ばれる事自体は別段おかしくは無かった。なんせ、王が腹に居る時に産んでもらった卵から孵化したのがタマモだからね。
問題があるのは、それが原作に無く。名前を知ればネテロとの勝負の行方が分からなくなるという事だ。
こ、これは不味い!! タマモは王の名前を知っている。万が一、王がタマモに名を問えば答えるだろう。王の命令は絶対である、私がタマモに対して口止めをしても王の一言でそれは無かったものになる。
「タマモ」
王が護衛兵全員の名前を呼んだ後に、タマモの名前を呼んでしまった。
「わ、私ですか…王様のお名前ですよね。知っていますよ、元女王様の死に際に立ち会いましたので…ご主人様と一緒に」
………
……
…
やめて!! 最後の『ご主人様と一緒に』とか言わないで!! それじゃ、まるで私が知りつつ隠していたみたいじゃないですか。なぜ、そこで巻き込むかな。
王を含めた視線が私とタマモに集中した。
「余の名前を申してみよ レイアを名乗る人間よ」
王にお名前覚えられちゃったぜ。ネテロ会長…すまん。邪魔する気は、無かったんだが、自分の身には代えられん。
「元女王は『全てを照らす光』という意味を込めて「メルエム」という名前を付けたられておられました」
「メルエム…それが余の名か。今後、余の事をメルエムと呼ぶように」
「「「「「御意、メルエム様」」」」」
そろそろ、最終決戦にはいる。やっとここまできた><