第42話
ネテロ会長が王と愛を育んでいることを知らずに、コムギの治療に専念するレイアです。
予想以上に順調にことが運んで怖いくらいだ。状況的に原作組がこちらに加担してくれたおかげで苦もなくピトーと契約を交わすことができた。
治療が終わった暁には、ピトーの身も心も全て私のものだ!!
だから…
「それ以上は近づかないで頂きたいプフ様」
予想以上に早いご到着だ。先程からの戦闘音から察するに、流れは原作通りではあるが、いささか進展が早い。これは、私が双方の念能力を売った結果なのだろうか。
「……あなたが声を掛けなければ確実に殺れていましたが。それにしても、ピトーに加えあなた方までいて侵入者を排除しきれていないとは、どういう事なのでしょうね」
「……この子は気づいていたよ。プフが殺意をもって近づけばこの子は迷わずコムギの方へ突っ込んできた。そんな一か八かはゴメンだ」
その通りである。むしろ、コムギの治療が契約に含まれている以上、私は殺意がなくてもバラしたけどね!!
「そんなわけで、ご主人様とピトー様はコムギの治療で忙しいのでお帰りはあちらですよ」
タマモがそういい、王と会長が向かった先を指さした。ビスケがゴン達の訓練で行ったように念で文字で王が置かれている状況と詳細な場所を書いて…。
「フ……お邪魔ですか。ピトーここは貴方に任せるとしましょう」
王のもとへ向かうということは死に行くも同意義だということを知らないプフが少し気の毒であったが…まぁ、気にするほどのことでもない。どうせ、遅かれ早かれ死ぬ予定だからね。
「そこにいろ。鱗粉を使って人を操るんだろ?そこから一歩も動くな!!」
ゴンの一言で場の空気が凍りついた。
人がせっかく、穏便に物事が進むようにタマモを使って王の状況や現在地を教えたと思っている。王の状況を知る今のプフは、我々の事など二の次で王の元へ向かうのは明白。その邪魔をするのはナンセンスだよ。
「私がそんな事を聞き入れると?馬鹿ですか貴方達は」
「プフ…頼む」
「正気ですか?何もせずただここに?そんな娘のために?」
「王のためだ。いうことを聞いてくれ」
プフから嫌なオーラが発せられてきた。
原作通りなら、王の状況を聞くために要求を呑んでくれるのだが…その雰囲気がまるで見えない。先に王の状況を伝えたのが間違いだったか。
「ピトー…貴方は侵入者と戦闘を行っていないから状況が見えていないようですね。間違いなく、こちらの念能力が相手にバレております。それが、どういった意味かはよくわかるでしょう…故に、一刻も早く王のもとへ!!」
その瞬間、プフの体が無数の小バエへ変わった。
「契約を守りたいんだろう。お前らが、あいつを始末しろ…」
ゴンの思わぬ一言に一瞬唖然とした。
あの純粋だったゴンがここまで濁るとは、外道にも程があるだろう。討伐部隊の超一流の念能力者ですら仕留めきれないプフを念能力者として最弱の部類の私に始末しろと…難易度はルナティックだぞ!!
「くっそたれが!! タマモ、デイーゴ…悪いが付き合ってもらうぞ」
「はいはーいご主人様。でも、勝算はあるんですか?」
「まぁ、レイア殿の念能力なら相性は抜群でしょうね。本体を特定次第、私が砲撃で始末しましょう」
そう…本来ならば難易度はルナティックなのだが、残念ながら相手の能力も知っている上に、倒し方まで既に考えてある。その上、私の能力をもってすれば小バエに分裂したプフの本体を探し当てるなど朝飯前でもあるのだ。
要するに…私は、対プフ戦のスペーズのエース的な存在なのだ。
「あなた方のことは気に入っていたのですが残念です。王の元へ行くついでに貴方達とコムギもろとも始末してあげましょう」
小バエの群集となりこちらへ突進してくる。無論、念能力で強化されており、その突撃だけで壁に穴が開くほどの威力だ。
「そういえば、私の念能力はまだお見せしたことがありませんでしたよね。…さぁ、至高の快楽に溺れるがいい『賢者タイム』7連続!!」
プフがこの部屋の空間のどこかにいて、本体も射程距離内にいるのは分かっている。ならば、条件が満たされれば私の能力は発動する。
ドピュドピュドピュドピュドピュドピュドピュ
………
……
…
タマモが鼻を摘んだ。獣だから臭いには相当敏感なのだろう。悪く思わないでくれよ…悪いのは私じゃない。
「し〜〜あ〜〜わ〜〜せ〜」
王に自らの身を捧げた時に見せたような幸せそうな笑みで自由落下する一匹のハエがいた。
………
……
…
「ご、ご主人様…間違いなくあれが本体ですよ。いや、本当にこんな手で見つけるなんて…呆れてものも言えませんよ」
タマモも流石に唖然としている。まさか、こんな手で本体を見つけるとは予想外だったのであろう。しかも、本体が戦闘不能になったことで他のハエの動きも止まった。
「…分散したのが仇となりましたね。あとは任せましたデイーゴ」
私が声を掛けるより前に既にデイーゴが貯めに入っていた。
ゴゴゴゴゴゴゴ
凄まじい念だ。しかも、アニメを忠実に再現するあたり、ある意味凄まじい執念を感じる。流石にシルバ程の域には達していないが、それでもすごい。
「王に傷を与えたこの技で確実に葬ってみせよう」
『全力全壊!! これが私の本気のスターライトブレイカーーーー!!』
ズドォォォーーーーン!!
念人形より放たれたビームもどきがプフ本体を飲み込んだ。集合しているときならまだしも、今の状況でプフが生き残る術はないだろう。
「再現率高!! リアルでその技が見られるとは思わなかったよ」
『このくらい当然なの…だけど、一日一回が限界』
「あれ…私の活躍の出番は?ご主人様」
出番がないタマモがorzとん嘆いているが気にしない。
だが、それよりも気になるのは横で空いた口が塞がらないピトーの方だ。何か悪い夢でも見たかのような顔をしている。体調が悪いのだろうか…まぁ、無理もない。ゴンの監視下での治療というストレスが溜まる職場だしね。
「ゴン君、ご要望通りプフは始末した。これで文句はなかろう。引き続き治療を再開させてもらおう」
「プフが…一瞬で…そんな馬鹿な」
治療の進行具合的に、恐らく10分程度で完了だ。
さぁ、今までの人生にサヨウナラをしてこれから私と歩む未来を楽しみに待とうじゃないかピトー。
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キルアの成長具合を確認できたのは良かったが…今回の仕事、本気で死にかけたわい。
帰ったら、話を聞かせてやるとするか…主に王について!!
「今から味わってもらおう。だけど、ビックリするなよ!!……」
キメラアントという種は、変わり者が多いようじゃの。まぁ、王ほど変わり者はいないのは間違いないが。二度と会いたくないのう…真剣に…本気で。
まぁ、ネテロが連れて行った以上、二度と会うことないだろう。
「はぁ…自分勝手の奴じゃのぉ。こりゃ見逃してくれと言っても無理か」
「ピンポンピンポーン」
いや、待てよ。ミルキ曰く…「もう会うことはないだろう」と言うのはフラグと言うやつで、それを口にすると再会するという運命があるとかないとか言っておったの。
「後ろ…気ィつけた方がええな」
「きゃは!! 古いね!! その手はくわないよ!! あんたの仲間が教えてくれたぜ。戦闘中に敵から目を離しちゃ……」
ズドゥン
威力も狙いも申し分ないの。
「ま、見ても見んでも結果はいっしょじゃ」
「生かしておいたほうがよかった?」
「構わんよ。それにしても…随分とゴツゴツした格好じゃの。新しい玩具かな」
あの引きこもりで太ったミルキが今じゃ、見る影もない。無論、良い意味でだ。最近じゃ、殺し屋業だけでなく社長業までやっていて手広く儲けているらしいからの。まったく、誰に似たことやら。
「いい玩具でしょう。レイアに渡したG・Iアーマーの改良型。今度は軍事産業にも手をつけようと思ってね。実践テストをしてくる」
元々念能力者として超一流のミルキが絶対防御を誇るG・Iアーマーを付けることによるメリットは計り知れない。間違いなく、護衛兵とガチで勝負できるだろう。
「あぁ、気をつけて行ってきな…と、もういないか。………あれは、絶対別の目的できておるの」
事実、そのとおりであった。建前的に実践テストだが…ミルキの本当の目的は『趣味じゃないが…獣人の男の娘を一人くらい確保しておくべきだろう。常識的に考えて』である。
ミルキのG・Iスーツのイメージは、MG4の雷電です。
プフがあっけないという方もいると思いますが…これが念能力者同士の戦いです@@相性が抜群だとこうなります。