第43話
プフを完封し、コムギの治療に精を出すレイアです。
そして、もう間もなく治療が完了する。最も、重大な危機を回避できるレベルまでだがね。だが、それで十分である。その条件で契約を結んでいる以上、あと数分でピトーの全ては我が物になるのだ。
「もうまもなく、ボクの全てはレイアの物になるだろう。だから、その前に一つだけ教えてくれ」
グチャグチャ
手を休めることなく治療しているとピトーが何やら質問があるようだ。
このレイア、夢にまで見たピトーの頼みとあれば、常識の範疇内で程度は聞いてあげよう。まぁ、聞くだけになるかもしれないけどね。
「いつから…いつから計画していたんだ」
「それは、ピトーを自分のものにする計画をかい?」
「そうだ。どう考えてもその念能力…かけている制約が異常だ。ボクが生まれる前からボク専用に作っていた事が腑に落ちない。しかも、名前まで事前にレイアは知っていた。まるで未来でも知っているかのように」
「いつからといえば…そうだね。十数年前からかな。この日の為に血の滲むような努力をしてきたさ。あと、未来はね…まぁ、知っているといえば知っているかね」
ピトーも半信半疑で聞いたのだろう。だが、私の答えを聞き、それが嘘偽りでないことを悟ったようだ。だが、それを知ったからといって、今のピトーは何もできない。王からの勅命でコムギの治療に専念をしている。治療が終わればそのまま、私の念能力によりピトーの全ては私の物になるのだ。
「えっ、本当ですかご主人様。ご主人様って、そんな昔からHENTAIだったんですか。身の危険を感じるんですけど…」
「いやいや、タマモ殿。あれこそ、漢というものですぞ。そんな昔から、男の娘というジャンルを開拓していたとは…尊敬を通り越して恐ろしいとすら感じてしまう」
私に対する評価がよーくわかった。今回の一件が片付いたら、じっくりと話し合う必要がありそうだ。特に、タマモはな!! 手足を縛ってみかんの皮でプシューーと顔にかけてやる。
…後に動画サイトに投稿され一週間もせずに100万回も再生されることには露ほども思わなかった。
数分後。
ようやく、長い治療も終わる。
ゴンが見守る中での治療とは、本当に肩が凝る。口では何も言ってこないけど、「早くしろ」と目で言うんだよね。全く、そんなに早く終わらせたいなら自分で治療すればいいのにね。まぁ、脳筋タイプのゴンには辛い話かもしれないがね。
………
……
…
「手が止まっていますよピトー」
「王は、どうなる」
「…知ってどうするのですか、知ったところでどうせ全て忘れますよ」
王やアリの関する記憶は全て忘れてもらおう。といっても、人間の記憶が簡単に消去できるものではない。本当は、記憶を抹消したかったけど念の容量的にできなかった。私が行う処理は、パソコンで言うゴミ箱に捨てて削除するようなものだ。簡単に言えば記憶は頭にあるがそこへアクセスする術がなくなるといった物である。
「それでもだ。それでもボクは王がどうなるか知りたい」
ピトーの真剣な眼差しが突き刺さる。
そこまで王を崇拝しているとはね。カリスマを考えれば分からない話でもない。事実、王が無事でいた場合、本気で人類に恒久平和が訪れるやもしれない。無論、恐怖政治だがね。
「生きる意味を見つけられますよ。だから、安心して我が物になれ」
まぁ、そのあと死ぬんだがね!! これを教えると今からでも駆け出していきかねないから言わない。ただし、原作通りならばの話でもあるけどさ…事実、既に原作と異なりプフは死んだ。その為、生きがいを見つける前に死ぬだろうが、嘘入っていない。原作では見つけたのだ…だから決して嘘じゃない。
「そうか、よかった。これでボクは何の迷いもなくいける…ありがとうレイア」
そして、ピトーによるコムギの治療が完了した。
ゾワゾワ
その瞬間、ピトーの背後にSAM値を下げるような容貌をしたナニかが現れた。そして、ピトーに乗り移った。
「くあwrてわらおf@;@「おw!!」
ピトーが声にならない悲鳴をあげた。そして、うつ伏せに倒れ込んだ。
………
……
…
一瞬にして場の空気が凍りついた。
「し、死んでませんよねご主人様。というか、今のあれ何ですか。言いようのない不快感があったんですが」
「愛の結晶?」
我ならが上手い事を言ったと思う。だが、だいぶ禍々しかったが…愛だから仕方あるまい。誰も愛の形をいうものを知らぬだから、アレがそうだといえばそうなるに違いない。
「なるほど、あれが愛の形か…レイア殿の愛の深さがよく分かる」
私たちの明るい雰囲気とは裏腹に、目がどす黒く濁ったゴンがゆっくりと立ち上がった。
「おぃ…さっさと起こせ。行くぞ」
いくら治療を終えたからといってこのような環境にコムギを一人残していくなんて、助けた命を無駄にさせるようなものである。それを平然と要求してくるあたり、原作組はすごいと純粋に思った。
だが、そんなことを私が知ったことではないがね!!
「無論だとも。改めて確認させてもらおうゴン君。カイトを元通りに治療すればいいんだよね?」
「あぁ、その通りだ」
ゴンの鋭い眼差しが突き刺さる。ピトーを手に入れたことでこちらが裏切る可能性でも考えているのだろう。現状の戦力比を考えればゴンさんへの進化前であればこちらが断然有利なのは変わらない。その為、警戒するのは当然でもある。
「了解した。では、タマモ…予定通りに」
「はーい。ご主人様〜」
タマモが着物を翻し、持ち前の脚力でこの場から飛び去った。ゴンが一瞬静止させようとしたが、生憎とタマモの身体能力は護衛兵には及ばないが師団長最強である。今のゴンでは止め切れまい。
「安心してくれ。先に向かわせただけだよ」
「……信用できない」
「別に君の信用など欲しくはないさ。さぁ、ピトーを起こして約束通り治療を果たそう」
そして、私は床にうつ伏せに倒れているメイド…じゃなかった、ピトーの頬をツンツンした。
プニプニ
………
……
…
や、柔らかい…生まれたての赤ちゃんのようなモチモチの肌。それもその筈…事実生後一年未満なのだから。
まだ、意識は戻らない。この隙にスカートを捲ってみるのはどうだろうか。男の娘であるピトーには、当然メイド服に合うようにそれなりの下着もセットで渡している。それを着用しているか今の今まで確かめるすべはなかったが、今がチャンスではないか。
そうだろ、見ているみんな。
男なら誰だってスカートの一枚や二枚めくりたいと思うのは至極当然の反応だと私は思うのだ。だから、罪じゃない!!
音を立てず、完全に気配を消してピトーのスカートに手を伸ばした。絶に関して才能が乏しいレイアだが…この瞬間だけは超一流レベルにまで達していた。
●REC●REC●REC●REC
カメラ越しに何やら変な表示が出ているが問題あるまい。
そして、スカートに手をかけた瞬間!!
パシ!!
神速にも等しい速度で私の手首が掴まれた…もちろん、ピトーの手によって。
「………なにをしているのかニャ。ご主人様」
ピトーから放たれた『ご主人様』という言葉に、嬉しさのあまり涙が流れ出た。
今こそ確信した。ピトーが完全に我が物になったのだと!! 長年の夢を叶えることができたのだと!!
「ご主人様はね、メイドのスカートを捲る権利をもっているのだよ!! 知らなかったのかいピトー!! まさか、知らないなんてことありえないよね!! 常識的に考えて」
「それはさすがに…」
デイーゴの言うとおり流石に無理のあるいいわけではあったと自分でも思う。だが、ゲームとかだとよくある設定じゃん。
「そ、そんなの、と当然知ってたよ!! しょ、●●かけたっていいニャ」
すこし知性が低下しているようだが…これはこれでいいな!!
「どう思うデイーゴ」
「これは…ありか無しかと言われれば、ありでしょう!!」
流石、わが友!!
ドン!!
「いい加減にしろ!! 移動するぞ」
ゴンが痺れを切らせて壁ドンならず床ドンをしてきた。そして、この部屋から抜け走り出した。
「では、我々も行くとしようかピトー、デイーゴ」
「何処までもついて行くニャ」
「右に同じく」
ゴンの後を追うように我々三人もコムギ一人を残してこの場を去っていった。
念能力をもってしても死者蘇生は不可能である。幸いなことにゴンはアレがまだ生きていると思っている。だからこそ利用出来るのだ、この手が。ゴンの父親にはつくづく感謝せねばならないね。
私の切り札でもある『影武者切符』で翻弄されるといい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
王宮は、想像以上の被害で所々崩壊している。
そんな中を、足音すら立てずに優雅に歩く一人の男がいた。全身鎧を着込んだ男…フルアーマーミルキである。
「レイア達の邪魔をするのも忍びないな…とりあえず、こちらは噂の妊婦プレイが出来ると噂の男の娘でも確保しておこう。除念師としての能力持ちともあれば、色々と使い道はあるだろうからな」
………
……
…
レイアを通じて入手した情報を基に円を用いて既に対象の居場所を把握しており、あとは現地に行くだけなのだが。邪魔が多いな。
「チっ、気づいてやがったか」
柱の後ろから、狼タイプのキメラアントが一匹現れた。
自信満々のその様子は、よほど自分の念能力に自信があるのだろう。相手の念能力すらわからないというのにある意味褒めてやりたい気分だ。
相性は最悪だというのにな。
「師団長のウェルフィン。念能力は、卵男(ミサイルマン)と黒百足(クロムカデ)だったかな」
その言葉を聞き、すぐさま念を発動し臨戦態勢に入った。
ウェルフィンの表情は、焦りと驚愕が見える。初対面の相手に教えてもいない名前や念能力がバレていたとなっては当然の反応ではある。
「き、貴様!! どうしったか知らねーが、ここで死んどけ!!」
ドゥンドゥン
卵男が二発発射された。対象に命中するまで追いかけるという執念深い攻撃であるが故にミルキにとっては驚異にすらならないのであった。狙った攻撃などミルキに当たることなどない。ミルキに当てるにはスパロボでいうMAP兵器が必要になる。もしくは、レイアのように対象を狙わずにも使えるような能力や流れ弾といった不幸の一発が必要である。
『不幸の衣』…ミルキが絶対の自信をもつ能力である。
ミルキに当たる前に弾が逸れ、壁に命中した。
「どうした?必中の技じゃなかったのか、俺は動いてないぞ。よく狙え…」
「ば、馬鹿な…俺の卵男が…っ!!」
それからのウェルフィンの行動は早かった…自分の能力が完全に通じないことを悟り、生きるための逃亡。だが、人類最強クラスであるミルキ方が早かった…。逃げ出す直前にミルキに距離を詰められ頭を鷲掴みにされた。
「男の娘じゃなくて残念だったな、貴様は不合格だ」
メキメキメキ
「たすげぇ……」
グシャ
この程度の蟻たちに苦戦する討伐隊とは、どうなのかとミルキは疑問に思ったが。自分たちには関係ないと思い気にするのをやめた。
「さて、連れて帰ったらレイアのピトーとタマモと合わせてアイドルデビューでもさせるか。無論、ゲームで培ったプロデューサーの手腕が火を噴く時か」
リアルアイドルマスター計画を画策するミルキがここにいた。これが実現するかはまた別の話である。
ピトーとタマモのキャラ付けが難しい…似ているが語尾にニャをつけて誤魔化すぜ。
さて…カイト(笑)を治療すっかな@@