46話
腹部の鈍い鈍痛を耐えつつ、ピトーたちの元へ駆けつけた。
駆けつけてみれば、その場はまさに戦場と化していた。地面はエグレ、ミルキが乗っていた車は大破。メレオロンは、ミルキの手によって既に亡き者にされていた…綺麗に三枚おろしにされており、その切断面はミルキが身に纏っているG・Iアーマーの備え付けられた直刀によるものだろう。完全ステルスとは言え…機械の前では形無しということだろう。
そして、何より問題なのはピトーやタマモの衣服がうまい具合に破れて実に際どい格好になっている。
マジでそれが狙いではないかと疑いたくなるくらいだ…まじ、けしからんな。
そして、ついでに男性陣営…間違った、ミルキとデイーゴは多少傷ついているようだが軽傷といったところだろう。そして、デイーゴの人形は…見るも無残な姿になっていた。
なのは人形は、ゴンさんの熱い抱擁により背骨あたりから曲がってはいけない方向にへし折れている。そして、フェイト人形はゴンさん右足で踏まれて地面にめり込み大破している。ちなみに、戦闘が原因かは定かでないが…人形が全裸なのが非常に気がかりである。そして、絵面的に完全にゴンさんに暴行されたように見える。
そうそう、言い忘れたが…ゴンさんも最後の砦だったズボンがなくなっている。それがどういうことを意味するか分かるよね。
『ハンター協会に通報 及び 動画サイトにリアルタイム投稿しました』
G・Iアーマーより無情なお知らせが届いた。
無論、暴漢がゴンさんである事がわかるようにプロフィールまで添えての投稿である。ゴンさんとの勝負…万が一こちらが敗北したとしてもゴンさんの人生は間違いなく真っ暗であろう。
まぁ、既にハンター十か条を犯しているのだからゴンさんに未来などないがね。
シクシク
血の涙を流すデイーゴを見て、新しい人形をプレゼントしようと決意した。
だが、デイーゴが人形を失うほどの自体なっているとは想像以上だ。これだけの戦力で包囲して殲滅にあたっているのにこちらの方の被害が大きすぎる。ゴンさんの性能が原作以上なのか?それとも、私がゴンさんの力量を過小評価し過ぎたのか…。
だが、どちらでも良い…社会的にも死んでもらおう。
「ふぅ、やっと到着したニャ ご主人様。あれ…はっきり言って異常ニャ。さっきから、何度もダメージを与えても直ぐに回復するニャ」
強化系の十八番か…純粋に治癒能力も極限まで高めていると見える。ただし、タマモのようなメモリーを消費した能力でなく純粋な身体能力に依存した物なのだろう。
「だが、確実に最初よりオーラが衰えている…このままのペースでいけば遠からず枯れ果てるだろう。……さて、ゴンさん。私を殴り飛ばした言い分を聞かせていただこうか」
レイアの接近には既にゴンさんは気づいていた。しかし、ピトー達の包囲網を力技で破れなかったのだろう。この面子を相手に一瞬の隙でも見せれば命取りだからね。
「カイトを治すって言ったのに嘘を付いた…だから、カイトと同じようにしてやる」
「……え!? もしかして、そんなくだらない理由で私を殺しに来たのかい? 同じハンターであるというのに。それに、死者を生き返らすことなど不可能だよ。その程度の知識もないのかね」
「そんなの関係ない!! お前らが…カイトを!! カイトをあんな姿にするからいけたかったんだろ!!」
じゃあ、見た目だけ元通りに戻せばよかったのだろうか。それでも文句を言ってくるだろうね。
「そんな姿と言われても、その人間は、ボクらを殺しに来たんだろう? 僕らだって死にたくはないさ、それに抗って何がいけないのかニャ。それとも、無抵抗で殺されろって事かニャ」
「そうですよ〜。私達なんて、まだ生後一年にも満たないというのに一体何の罪があるって言うんですか。言っておきますけどね…あなた方が保護したキメラアント達はたくさんの人間を誘拐して捕食しています。それに比べて、私は誰ひとり殺してもいませんし食べてもいませんよ。ピトー様は…どうだか知りませんが私の知る限りそんな事をしているのを見たことがないですよ」
ピトーもタマモも良いことを言う。実にその通りである。討伐部隊の連中が保護したキメラアントの方が間違いなく、行った犯罪は多いだろう。
「ごちゃごちゃ理屈ばかりこねるなあぁぁぁぁ!! お前らがカイトを殺したことには変わらないんだぁぁぁぁぁ!!」
ゴォォォォォ
ゴンさんから、一般人でも分かる程の熱気が立ち上った。
「気をつけろレイア…手負いの獣程、厄介なものはないぞ」
「余の…余のフィギュア達がぁぁぁぁぁ」
油断などしないさ…ゴンさんにきっちり対応してみせるさ。あと、命より大事なフィギュアを失い嘆いているところ大変申し訳ないけど、更に嘆いてもらう。
「ミルキ様、デイーゴ…お二人に確認したのだけど、テレビ局関係に強いコネとかある?」
「国家元首である余のコネは、かなりの物ですぞ…今も機能しているかは怪しいが」
「●日テレビの筆頭株主だが…」
二人共かなりのコネがあるようで…というか、ミルキは既にコネとかそういう次元じゃない。完全にテレビ局を我が物にしている。どれだけ、お金稼いでいるんだよ。
「G・Iアーマーが動画サイトに現状をリアルテイムでアップしているからニュース速報で流してください。もちろん、視聴率が取れるように改変していいですよ。そして、今から『賢者タイム』でゴンさんの人生に終止符を打ちます」
なのは と フェイトの人形は、知らない人間がみたら間違いなく幼女に見えるだろう。その幼女が全裸されて、同じく全裸の巨漢が抱きしめていれば間違いなく巨漢は社会的に抹殺される!! しかも、これからその幼女がホワイトソース塗れにされるのだからね。
うまくいけば、ハンター協会が自らの立場を守るために、キメラアントの一件は、全てゴンさんのせいにしてくれる可能性もある。
まさに…世論を味方につける完璧な作戦だ。
「ごめんねデイーゴ…新しいフィギュアを用意するから。まずは、社会的立場から殺してやる…滅びよ『賢者タイム』!!」
ドプドピュピュピュ!!
ゴンさんの息子が信じられない位にサイズになり、最低の物を撒き散らした。
私の攻撃が来ると思い身構えていたようだが…全くの無意味!! 私の攻撃を防御できる男などこの世に居らぬのだ。
「あぁっ!!」
今までに経験したことがない感覚に襲われ、ゴンさんに隙が生じたが…その隙を狙い攻撃をする味方は誰もいなかった。流石の私も、ピトーとタマモに攻めろとは言えなかった。
近づきたくないだろう…常識的に考えて。
この瞬間、ゴンさんの最低な行為が世界中へと拡散した。
こんな勝負でいいのかと思われる人もいるでしょう…いいのです!!
さて…物理的に殺しにかかるとしようかな。