ゴンさんが、レイアに追いつくまでのお話です@@
第47話
死をも厭わぬ重い制約を代償に手にいれた絶対的な力…しかし、その力を振るう対象がその場に存在しておらず、若干独りよがり状態のゴンであった。
「……くっそおおおぉぉぉぉ!!」
ズドン
ゴンの足踏みで屋敷が震えた。
一瞬でも、アイツ等を信用した俺が馬鹿だった。こうして、まんまと騙されるだけでなく、カイトをゴミのように放置していったアイツ等が憎くて堪らない。ゴンの中でどす黒い感情が渦巻いていた。
だが、この場にいつまでも留まっていられないことはゴンも十分に理解していた。これほどの力が長時間継続出来ない事実を理解していたからだ。
「ごめんねカイト…必ず、アイツ等をぶちのめして戻ってくるから、もう少しこのままでいてね」
床に横たわるカイトに別れを告げて、ゴンは屋敷を飛び出した。無論、ターゲットであるレイア達の元へ向かったのだ。ゴンが走ることで地面がエグれる!! 常識はずれた脚力で、走る速度は念を用いたキルアの全力にも匹敵する程の速度であった。
ドドドドドドドドド
ゴンとて馬鹿ではない…目標が追いかける為に探るべく匂いを辿ったのである。時間が経過したせいで大分匂いが薄れているが、ピトー達を相手にしつつレイアを抹殺できるレベルにまで進化したゴンは当然…嗅覚も常軌を逸したレベルにまで進化していた。進化前ですら犬にも匹敵する嗅覚を備えていたのだ。それが進化すれば当然、このような芸当は用意にこなす事ができる。
カイトを治療する約束を破ったレイアを自らの拳でカイトを同じ苦しみを味あわせる事を楽しみにゴンは前へ前へと進んだのだ。
………
……
…
数分後。
国外へと逃亡する為に国境あたりに向かったものだと思っていたが、予想外なことだった。匂いとたどって着いた場所は…最初に居た王宮へと逆戻りしていたのだ。
そして、一室の前で足を止めた。
クンクン
…間違いない、この部屋から一番濃い匂いがする。『円』に対象が掛からないのは疑問であるが、何かしらの能力かもしれないとも考えたが、ゴンは気にせず扉をぶち破った。どのような罠があろうとも突破できる確固たる自信があったのだ。
ズゥドーーン
いかなる攻撃にも対応できるように警戒を怠らず侵入してみたが・・・徒労に終わった。
バサバサバサバサ
レイアが住んでいた部屋のベランダに、ピトーやタマモを含む洗濯物が干されていたのだ。風に乗り匂いを振りまいていた正体であった。全くの偶然であったレイアの日頃の行いがゴンさんの足止めに功をなしたのだ。
ゴンさんは、洗濯物に歩みを寄せ…一枚の三角の白い布切れに手を伸ばし、奪った。レイアの手によって匠の刺繍がされた逸品物であり、神字まで施されており一般人の理解が及びつかない代物である。刺繍でピトーの名前が縫い込まれている。
スゥーーーーーーーー
今度は、姑息な手に騙されぬようにゴンさんは、大自然の空気を吸うかの如く三角の布切れに鼻を当てて匂いを覚え込んだ。ゴンさんの超越した嗅覚を用いて風に乗って流れてくる極微量の匂いから対象を選別していった。
………
……
…
「…………見つけたあぁぁぁぁぁぁ!!」
風上から確かに匂ってきたのだ。
そして、ベランダから中庭へ飛び降りた。一秒でも早くたどり着くため…カイトの敵を打つために…。
ズドン
「ゴ…ゴンなのか…」
「メレオロンか…ちょうどいい、一緒に来い」
メレオロンの能力は、まさに王すら出し抜ける極めて希少な能力である。その能力をもってすれば、ピトーの円を掻い潜り渾身の一撃をもってレイアを葬ことが可能だとゴンさんは目論んでいたのだ。
レイアが着込んでいうG・Iアーマーの性能は分かっていないが…それを考慮しても一撃で粉砕できる確固たる自信がったのだ。そのために、命すら投げ捨てて進化したのであるから。
「お、おちつけゴン………さん。まだ、中庭でナックルが護衛兵と戦っている。だから行くわけにはいかない」
「そんなのどうでもいい」
護衛兵…王の近衛として、極めて高い戦闘力を誇っているとの話だがゴンさんはそれを疑問視し始めていた。プフは、念能力者として最下層に近い能力者であるレイアに瞬殺された。そして、ピトーは同じく無抵抗で手篭にされたのだ。そんな連中と同等の護衛兵相手に、手間取っている討伐部隊に連中に嫌気がさしていたのだ。
一刻も早く確実にレイアを始末するためにゴンさんは、メレオロンに提案したのだ。
「一撃だ…一撃で沈める。それから、俺と来い」
「わ、わかった」
あのユピーを一撃で沈めるなど信じられないが…いまのゴンさんから溢れる濃厚な殺意を持ったオーラをみてそう言わざるおえなかった。
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ナックルを模した複数の煙を使った分身が見事にユピーを攪乱していた。ユピーにピトー程の精密な『円』やプフの様のオーラから相手の考えていることが分かると念能力を持っていれば、容易に本体を見つけられただろう。
いいだろう…一撃はくれてやる。代わりに命を貰うがな。
力押し一変であったユピーであったが、今回の戦闘の中で圧倒的に自分が優位だが、相手を押しきれない事で学んだのだ。『肉を切らせて骨を断つ』…目の前にいる連中の力量を想定し、例え一撃食らっても相手を殺せるならば問題ないと考えたのだ。
無論、その考えは間違っていない。
だが…相手が目の前に写っている連中ならばの話だ。
最中、偶然を装い隙を見せつける…そして、その周囲を覆うオーラを減少させることで相手にとって二度とないチャンスを曝け出したのだ。
「(さぁ…来い!!)」
餌に魚が引っかかるのを待つ…実に良い気分だ。例え、相手は罠と分かっていても攻めて来るだろう…二度とないチャンスだ。
そして、ついに獲物が掛かった!!
相手が後一歩でも近づいてくれば串刺しだ!! 間違いなく殺せる!!
そう思った瞬間…
『ジャン…ケン…グウ゛ゥゥゥゥ』
ズゥパーーーーン
ユピーの肉体が脇腹に大穴が開いたのだ。
無論、ゴンさんがメレオロンの能力を使い接近して攻撃した結果である。おまけにオーラでの防御を緩めていたせいで致命傷を負ったのだ。
その場を見ていた誰しもが唖然としていた。傍からみたらユピーの体の一部が消し飛び、後方にあった王宮激突したのだ。そして、度重なる戦闘によってボロボロだった王宮がついに崩壊した…中にコムギがいるにも関わらず。
ズゴゴゴゴゴゴン
崩壊してくる王宮の破片を振り払い再び中庭へと戻った。
「ぐぉぇ!! い、一体何が起こったんだ!!」
体組織の30%以上が一撃で消し飛ばされ、流石のユピーも焦りが生じた。無論、命の危険に対してではない。この力が王へ向けられるのではないかという危機感からだ。
そして、目の前にいるゴンさんをみて思った…「こいつはココで殺さねばならない」。
『利息が付きます…』
しかし、ナックルのハコワレの能力により…最悪のタイミングでユピーが破産したのだ。
身に起きた異常をいちはやく理解したユピーは、祈った。ほかの護衛兵が王を守りきれる事を…そして、王が世界を制することを。
「あとは、お前等で十分だろう。いくぞ、メレオロン」
「お、おぅ。ゴンさん」
裏切り者のキメラアントとゴンさんがその場を立ち去った。
「ま、まてゴン!! 一体、その体どうしたんだ!! …くっそ!! こんな時に充電切れかよ」
侵入者達の意味不明はやり取りがユピーがみた最後の光景だった。
次回は、会長の恋の行方でもご紹介をしようかな。
愛って…実るものだよね!!