第48話
野外だというのに最低な臭が充満しており、若干…いや、本気で目眩がしてきた。
能力の代償により、レイアの血液が激減していたのだ。常識の範囲ないで済むならば良かったが…流石はゴンさん。いろんな意味で超越していたのだ。おかげでこの日に備えて貯めていた500cc輸血用三パックを全て失った。
これでレイアは、ゴンさん相手には『賢者タイム』は使うことは出来ない。失血多量で死ぬ事が間違いないからである。
だが、輸血パックを全て失ってもそれに似合うだけの効果は間違いなくあった。
「…最低だニャ」
「つくづくご主人様が敵でなくて良かったと思いますよ。性的な意味で…」
「親友の為とか青春してみたが…帰ろうかな」
「独裁国家の国家元首も真っ青な位の恐ろしさだ…レイア殿が味方でよかった」
各々様々な反応だが…これが大人の戦い方だ。子供のように力任せで戦うなどナンセンス!! 金と権力で対象を社会的に抹殺する。そしてそれを用いて、物理的にも抹殺する。
ハンター協会の会長ですら、権力を前にして膝を折るのだ。自らの心臓に爆弾まで積むだけでなく、汚名までかぶることを厭わないほどに権力とは偉大なのだ。
「最低なのは、私でなくゴンさんだろう。キメラアント討伐の最大の功労者である私も無慈悲に殺しに来たんだ。この程度当然の報い!!」
今更だが…私は、王の双子も殺したという大成果もあったのだ。よって、会長が王を討伐したとしても私の成果を超えることはありえない。よって、今回の最大の功労者は私で決まりである。
ゴンさんの放出が終わり、まだ余韻が抜けていないようで顔がアヘ顔になっているあたりが実にキモい。これが全世界に放送されているとなれば、もう生きてはいけないレベルである。
今頃、ゴンさんの生家やハンター協会あたりは、苦情の電話が鳴り止まない状態だろうが知ったことではない。子供の躾もできない親の当然の報い!! ハンター協会にとってもいい薬になるだろう…誰ふり構わず免許をばら蒔くからこうなるのだ。肉体面も当然だが、もっと内面を重視すべきだろう。
さて…アヘ顔ゴンさんに誰も攻めようとしないから、私が先手を切ろう。こういう時のための遠距離武器!! ミルキからいただいた大口径の銃にダムダム弾を装填した。
動かない的など私でも当てられるわ!!
ダダダダダダダダン
ダムダム弾は、国際条例で禁止されている。なんせ、当たれば内臓がズタボロにされるため、人道的でないと理由からである。しかし、ハンターである私はそんなの関係ない!!
ダムダム弾が打ち尽くされ、硝煙の匂いが良い感じでゴンさんの青臭い匂いが薄れた。
「………確実に全弾命中したというのに、なにあの丈夫さ。笑えないんですけど」
避ける事もせずゴンさんは全弾を肉体で受け止めた。被弾箇所から若干の血が滲んでいるが、瞬く間に回復している。これが強化系の再生力か…恐れ入る。
「弾丸が当たる瞬間に『硬』を用いて被弾箇所の防御力を飛躍的に向上させている。いくら、その弾丸とは言え、あれに致命傷は与えられんぞ。そもそも、その程度の弾で倒せるならデイーゴのスターライトブレイカーが直撃した時に殺せていたわ」
アヘ顔になってもオーラの攻防は、完璧…そして、並の念能力者なら殺せるほどの弾丸でもかすり傷程度。というか、デイーゴの必殺技を受けて生きているのかよ…だから、全裸なのか…衣服は流石に消滅したか。
「という事は、弾速を上回る速さのオーラの攻防が可能だということ?」
初速が音速を凌ぐというのに、それを超えたというならマジ…最終手段に出るしかない。
「それは違いますなレイア殿。あれは、銃口とレイア殿が引き金を引くタイミングを見て防いでいる」
私には、そんな様子さっぱり見えなかったし理解できなかったが、この場にいる全員はそれが良く理解できているようだ。流石は、超一流の念能力者だ…身体的なスペックが段違いだ。
「あの状態でも、こちらに対しての警戒を怠らないなんて恐れ入るわ。まぁ、そういう事なら、いくらでも対応の仕方はあるさ…タマモいけ」
「え゛!! 今の話の流れ的に非常に不安なのですが…というか、何をやりたいか薄々分かっちゃっているので、出来ることなら行きたくないのですが」
流石は、私のタマモだ…ご主人様の意図をよく理解している。
「大丈夫だ…弾丸はちゃんと変えておく。タマモもあれと同じ強化系!! そして、回復力ではあれを上回るのだ。何ら問題はない」
ウルウル
………
……
…
タマモが捨てられた子犬のような目で懇願してくるが、私も心を鬼にしよう。あれに勝つためだ、多少の犠牲は仕方ない。
そして、ついにタマモが折れた…ネット中毒だけあってリアルorzをやっている。この様子が全世界に放送されているというのに際どい格好で実に大胆だな。
「ムキイィィーー!! いいですよ!! やってやりますよ!! このタマモ、ご主人様に全てを捧げている身…ご主人様の命令とあらば火の中水の中…暴漢相手でも戦ってみせますよ!!」
ご主人様にすべてを捧げたって…まじ、それを全国放送で言うなんて私が後ろから刺されるだろう!! タマモの容姿は、間違いなくTOPクラスの美少女…それが全世界放送で全て捧げたとか…ゴンさんとは別の意味で社会的に抹殺されそうだろう。
ニヤリ
タマモの口元がニヤリとしている…こいつ!! 絶対にどうなるか分かっていて今の発言をしたな!! ゴンさんへ挑ませた私への嫌がらせか!!
まぁ、その程度許してやろう…ご主人様は寛容だからね。
「はぁ~、ではいってきます!!」
ズドン
流石は、キメラアント…一足でゴンさんとの間合いを詰めた。ゴンさんより劣るが実に素晴らしい脚力である。そして、タマモのオーラを一点に集中させて蹴り技が放たれた。
「見事な蹴り技…だが、タマモ一人では分が悪いな。最小限の動きで回避している、あの状態でも超一流には代わりないという事か。レイア、俺も出るぞ」
ミルキが褒めるほどのタマモの猛攻にも関わらず、ゴンさんが全裸でキモいパフォーマンスをしながら回避している。
「大丈夫ですよミルキ様。本当の目的はコレですから!!」
弾丸を劣化ウラン弾に装填し直して、改めてゴンさんにお見舞いした。
ズドドドドドドドーード
タマモの体でゴンさんの視界から私が消えた瞬間にタマモの体ごとブチ抜いた。劣化位ウラン弾はもとより貫通力にすぐれた弾だ。人間一人くらいの体をぶち抜いたところでその威力は衰えない。無論、タマモには当たる瞬間に弾が通過する場所だけオーラを完全に絶ってもらっている。
本来なら、こんな芸当をやれば肉壁役は即死するかもしれないが…そこはタマモの念能力で超回復である。
流石のゴンさんもタマモの猛攻を回避しつつ、タマモの肉体からぶち抜かれる弾丸を避けきれなかった。一瞬にして、タマモの全力の攻撃を受けるか弾丸を防ぐが計算して…最終的にタマモの攻撃を防ぐ事にしたのだ。決して間違った判断ではない。念能力者の攻撃は付加能力があることがおおいから防げるなら防ぐべきだ。
「あれは痛そうだニャ。だけど、効果抜群だ…だけど、もう回復し始めているニャ」
「なるほど…肉壁を利用した攻撃手段。流石はレイアだ…エゲツナイやり方で右に出るものはいない」
「流石の余も自分を慕う者をあのように扱うのは…いや、だが有効的な手段ではあるな」
と、とりあえず褒め言葉として受け取っておこう。
タマモは、既に完治済みでゴンさんが回復している隙にさらに猛攻を仕掛けるべく動いた。しかし、その瞬間、G・Iアーマーの対人センサーに反応があった。移動速度が尋常じゃない。
「タマモ!! 避けろ!!」
タマモの頭上に神速で駆けつけたキルアが既に攻撃態勢に入っていた。間違いなく、雷を落とす気だろう。
バチバチバチ
キルアより攻撃が放たれる直前にぎりぎり回避が成功した。流石のタマモも雷より早くは動けんからな。
プスプスプス
「ふぅ~…危ないところでしたご主人様。というか、この肉壁戦法はオーラの消費量が半端ないので無理です。ご主人様だけがこの手段を使うならまだしも…ピトー様は他の方々までやられると流石に死にますって…本当に…いや、マジで!!」
ミルキが直刀を残念そうに鞘に収めた…間違いなくタマモを盾に貫く気だったのだろう。ピトーも爪を隠した。
「それにしてもレイア殿…なぜ、あれは一人で感電しているんですかね」
「大方、キルア様が放った落雷で感電したのだろう。本来ならタマモに直撃する予定だったが回避したからね…床に撒き散らしたホワイトソースが原因で感電したのだろう」
最高にかっこいい登場をしたはずのキルアが本気で困惑した顔をしていた。
「……どうなってんだよコレ。誰か説明してくれよ」
逆の立場でも同じことを思うだろう…この場にいる一同がキルアに同情した。
キルアが颯爽登場!!
だが…この状況をひと目で理解できる人など存在しないでしょうね。
さて、次回こそは会長の恋の行方とハンター協会でのお話を載せようかと思います。
副会長ってレイアと気が合いそうじゃありませんかね。