今回は、嘘予告と称して…女性だけが扱える兵器のあの世界を書いたプロローグを載せてみた。
第50話
目の前のゴンさんが、最低の感電を食らっている最中…なぜか、とても寒気がするレイアです。具体的には、会長がメルエムを手込めにして、ふたり仲良く私の元へ向かっている気がしてならない。しかも、メルエムの服装がセイバイーリリーのコスプレをしているという最悪の予感がだ!! 万が一、それが実現したら、全世界にネット配信されているので視聴者全員のSAN値が激減し、死人がでるのではないかと思うくらいに。
だが、今はそれより…目の前で本気で困惑しているキルアをどうにかしてあげたいと思う。先程から、ゴンさんと我々を交互に見つめ必死に思考を巡らせているようだ。
「……ミルキ様、キルア様に現状の説明をしてあげなくてもよろしいのですか?」
「してやりたいのは、山々なんだがな。この状況をどうやって説明していいものか…」
ミルキの一言に完全に同意する全員である。この場の状況を説明したとしてもキルアが素直に受け入れるとも思えない。だが、心優しい私は助け舟を出してあげる。
「キルア様…ナイスサポート!!」
………
……
…
一瞬にして、私の考えを読み取った味方全員がフォローに回った。
「危なかったです。えーーっと、キルア様?のサポートがなければ、タマモ死んでしまっていました。本当にありがとうございます。これで以前に命を助けた貸し借りは無しにしましょう」
「さぁ、一緒にレイアの為にその不届きものを討伐するとしようじゃないか。キルア」
「見事な一撃!! 後で、国家を代表して表彰させてもらおう」
颯爽登場したキルアに花を持たせてあげようという私の思いが、完全に皆と一致した。そして、ピトーの一言によりそれが完璧なモノとなった。
「ナイスサポートニャ。事前に打ち合わせていた通りで助かった………それと、カイトを巣まで案内してくれて本当にありがとう。いい暇つぶしができて感謝感激ニャ」
ニヤリ
ピトーが実にいい笑みで微笑むと、キルアの顔は真っ青になった。そして、ゴンさんから不穏な気配が漂ってきた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
劣化ウラン弾で体に穴を開けられた穴が急速に塞がった…体を貫通していないことから体内に弾丸を残したままで。そして、衰えていたはずのオーラが更に爆発的に増えた。間違いなく、王を凌駕する…そう誰しもが感じ取った。
「信じていたのに…キルアも…キルア゛あぁぁぁぁぁ!!」
ボコボコン
ゴンさんの体が今まで以上に膨れ上がった。その容姿は、どこぞの100%中の100%だというあの人にソックリになっていた。
この時…ゴンさんは、自分に残された時間を3分に短縮することで更なる高みへと上り詰めたのだ。そして、超ゴンさんへ進化を遂げた。
当然、私も完全に予想外である。こんなゴンさん原作でも知らない!!
無論、この場にいる全員も流石に驚きを隠せないでいた。まさか、あの状態から更に高みに登るなど誰が思っただろうか。
「てめぇぇら!! デタラメいうんじゃね!! ゴン…俺は味方だ!! 頼む信じてくれ」
「無駄ですよキルア様。既に、あれは言葉が通じる次元じゃありません。それに、キルア様は元々ピトーの討伐に乗り気出なかったのは明白…王宮で、ゴン君の足止めさせて私と契約するように仕向けたのはキルア様ご自身でしょうに。カイトが死んでいて既に治せない事すら承知の上でね」
ズドンズドン
超ゴンさんが、一歩進むたびに地響きがする。
念能力者同士の戦いに絶対はないとは言え…流石に、超ゴンさん相手に真っ向から勝負するにはこちらの戦力でも心もとない。
「レイア…撤退すがあ゛ぁぁ!!」
………えっ!!
誰しもが目を疑った。超ゴンさんまでの約20m程あったにも関わらず、一瞬で眼前まで移動された。しかも、一撃でミルキを遥か彼方まで吹き飛ばした。
ミルキの能力で自身を狙った攻撃は外れると特性がある。それを強引に力でねじ伏せての一撃!! 能力に絶対の自信のあるミルキにとってしても、想定外の攻略法であった。
「あれは、マズイニャ。咄嗟に防いだ両腕のG・Iアーマーが砕け散っただけでなく、骨も粉々になってるニャ」
たった、一撃でG・Iアーマーを身に纏ったミルキを戦闘不能に追い込んだ。
これは本気で撤退も視野に入れようと思う。今の一撃と同等の攻撃が私に来れば、G・Iアーマーを身に纏っていても間違いなく死ぬ。あれは、ミルキ程の超一流の念能力者だから生きているんだ。
………
……
…
「いくら、G・Iアーマーを着込んでいるからといって、そのやり方はちょっと酷いんじゃないですかね。ピトー、タマモ、デイーゴ…キルア様と後ろの大破した車の中で引きこもっているミルキ様の戦利品を回収して、先に撤退してくれ」
「ご主人様は、どうするニャ?」
「あれから、まともなやり方で逃げられんよ。それに、私がここにいれば全員逃げられるでしょう」
超ゴンさんの標的は間違いなく私だ。私が逃げれば間違いないく追ってくる。仲間を逃がすならば、ここに残るのがベストだ。
無論、私も無残に殺されるなんて真っ平御免だ。まだ、切り札は残っている。上手くやれば出し抜ける。そして、レイアの切り札の一つが上空よりやってきた。遂に、世界一の殺し屋として名高いゾルディックの参戦である。
無論、超ゴンさんもそれを警戒してミルキを撃破後動かずに待機していたのだ。
「『龍星群(ドラゴンダイヴ)』」
「小僧、動くなよ」
シルバの攻撃は、無論、私を巻き込んでの素晴らしい攻撃だ。相手を確実に仕留めるには間違っていない方法ではあるが…クライアントを巻き込んでの攻撃は、お仕事としていいのだろうか。
しかし、シルバの攻撃を前にしても避けようともしない超ゴンさん…不気味で仕方がない。
そのおかげで、私の仲間は見事に撤退に成功しているがね。
スゥーーーー
「かぁぁぁぁぁつ!!」
パーーーン
シルバの念能力を…超ゴンさんが気合だけでかき消した。もう、何を言っているかわからないと思うが、目の前で起きている現象に私は不意に…冨樫!! 原作者が同じだからってやっていい事と悪いことがあるんだぞと思ってしまった。
「男子三日会わざれば…という諺があるが、たった数時間で成長するもんじゃな」
「親父、冗談を言っている場合じゃないぞ」
間違いなく仕留めたと思えた一撃を軽々の凌いだのだ。表情には出していないが、内心では動揺していると思える。
「元、同じハンターの俺から見て…今のお前に足りないものがある…危機感だよ。お前…もしかして、まだ自分が死なないとでも思っているんじゃないか」
気づけばゼノとシルバを平然と素通りして、私の眼前に立ちふさがり超ゴンさんが圧倒的な威圧感で私に言い放った。
この時、レイアは初めて思った…こりゃ、死ぬわ。
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嘘予告!!
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女性だが扱える兵器がある世界か…その世界こそ、私が送り込まれた世界であった。無論、この世界に来る際に、当然だが特典を貰っている。
『男性で唯一その兵器が扱える様にしてやる』
先ほどのやり取りが鮮明に思い出せる。
「それにしても、ここは何処だよ…見渡す限り砂漠とか冗談じゃないぞ」
私の記憶が確かなら女性だけが扱える兵器…ISと呼ばれる物である。記憶が確かならと言うっている理由は…正直、原作を読んだ事が一度もなくSSなどで知った知識しかない為である。
更に、記憶をたどるならば…日本がメインステージのはずだが。ここは、どう見ても砂漠である。日本には、鳥取砂丘という場所があるが、流石に地平線の先まで砂しか見えないという事はないだろう。
更に!! 更に!! いうならば、男性で唯一ということは、原作の主人公に憑依物だと思っていたのだが…それもハズレのようだ。
「カヲル君の容姿とか、マジワロス…」
だが、今はそんな容姿を気にしている暇じゃない!!
ここが砂漠のど真ん中であり…食料や水が一切ないのだ。しかも、ISの展開方法などもさっぱり分からず、まさに死が迫ってきているのだ。
この場に留まっていても状況が好転することはないと考えたので、とりあえず歩くことにした。幸い、砂漠に適した服装で助かった。
歩くこと、一時間。
砂漠のど真ん中で、一人の男が息絶えそうになっていた。
「み、水をくれぇぇぇ~」
この世界に送り込まれて、一時間足らずで再び神の元へ送り返されそうとしていた。神様も、送り込むならせめて場所を選んで欲しいと切実に思う。もし、神の元へ行くことになったら、私と同じような被害者が出ないように提言しようと思う。
………
……
…
ブロォォォォン
遠からともなく、エンジン音が聞こえた。
「おや~、砂漠のど真ん中だというのに行き倒れですか…若いのに可哀想に」
「何処の何方か知りませんが水を~…お金でのお礼はできませんが、必ずご恩返しをさせてもらいますので」
今は、生憎とお金の持ち合わせなどはないが…世界で唯一の男性IS操縦者だから、私の価値はそれなりにあるだろう。どこかの機関に就職して必ずは受けた恩を返そうと思う。
「人助けなんて似合わないなんて言われそうですが、いいでしょう。この水筒を差し上げましょう。ついでに、街まで送って差し上げますよ」
「おぉ…あなたが神か!!」
いかにも、胡散臭いおっさんだが…今の私には神に思えた。これは、本気で恩返しを考えねばなるまい。
ゴクゴクゴクゴク
胡散臭い、おっさんから水筒をもらい一気に飲み干した。体によく冷えた水が染みわたり、もう感激のあまり涙が出そうであった。
「ぷっはぁ~~、ありがとうございます。一時はどうなるかと思いましたが、おかげで助かりました」
「いえいえ、タダの気まぐれです。それでは、乗りなさい」
「おぉ、捨てる神あれば拾う神ありといったところでしょうか。私は、…渚カヲルといいます」
「ご丁寧にどうも、私はジョン・スミスといいます。街までの縁になりますがよろしく」
咄嗟に、容姿から渚カヲルと名乗ったが…問題あるまい。どうせ、適当に名乗ってこの世界に戸籍がないのは同じなのだ。それに、相手もジョン・スミスとか…匿名希望みたいなお名前だしね。
それから、しばらくスミスさんとお話をしながら街へと向かった。田舎者という事を前面に出してこの世界の情勢についていろいろ伺ってみたが…どうにも腑に落ちない。私がしっている原作の情報と大幅に乖離があるようで、もう何がなんだがさっぱりである。
数分後。
ズドンズドン!!
「スミスさん…これは一体どういう状況なんでしょうか」
「いやはや、見つかってしまうとは思いませんでしたね。手持ちの戦力もありませんし、これはさすがに年貢の納めどきでしょうかね」
スミスさんと二人で砂漠をドライブしていたら、突如、上空にレオタードを着たお年頃の女性が空から我々目掛けて攻撃してきたのだ。しかも、重火器でなく、よくわからない兵器でだ。
原作を読んでいないため、アレがISだと言われればそう思えるかもしれないが…何か違う気がする。もっと、機械的な感じだったと思ったのだがね。
そんな事より、今は、私の命の恩人が危機に晒されているのは間違いない。今こそ、恩を返す時でしょう…常識的に考えて。
『あぁ、言い忘れました。能力の発動法ですが……と叫びなさい』
突然、頭の中にメッセージが届いた。言い忘れとか、ありえないでしょう。仮にも神様がそんなミスなどするはずもない。むしろ、わざと言い忘れた思える。
「スミスさん…ここは、私が相手をします。あなたは逃げてください」
「これを持って行きなさい、無いよりマシでしょう」
スミスさんが、懐から拳銃とりだし、こちらへ差し出してきた。なにやら、私が生身であの空に浮かんでいる女性に喧嘩を売ると思っているようだ。まぁ、訂正するのも面倒だから、ありがたく受け取っておく。
そして、車から飛び降りた。
「あら…あなたもシュバルツのお仲間かしら? まぁ、あれと一緒にいたんですから無関係では無いでしょうがね。とりあえず、死んでもらえます」
「私の命の恩人を殺そうなど許すバズがないでしょう。全員、戦闘不能にしてくれるわ!! 『マテリアライズ!!』」
その瞬間、体内のナノマシンが活性化して身を守るローブを形成した。
「へ、変態だ!!」
変身した私の姿をみた一言がそれだとはひどい!! 男性の私が変身したのだ、もっというべき言葉があるだろうに。
一応、私も自らの容姿を確認してみた。
「へ、変態だ!!」
まごう事なき、変態…いや、変態仮面の容姿になった私がそこにいた。
超ゴンさんを前に敗北する仲間たち…そして、次回は、会長とメルエムが参戦予定w
レイア「この戦い…誰かを犠牲にしなければ勝てない」
犠牲になるのは誰でしょうか!?
正解者には…メルエムの熱い抱擁が待っています。