最後まで一気に投稿!! と思ったけど。
執筆が間に合わなかったよ。来週に向けて執筆を頑張る。
第52話
もはや、全世界に配信されている映像を見ている者達は、理解が追いついていないだろう。突如出現した城下町や凶悪なコスプレイヤーメルエムの登場が間違いなく混乱の原因であろうが、レイアの知ったことではない。例え、SAN値が激減して死者が出たとしても…私は決して悪くない!! 悪いのはそれを見ている視聴者だ!! 気合が足りん!!
そんな思いを胸に、レイアは城下町の中央に位置する城を目指して全速力で逃げていた。なぜなら、町の人口が一番集まりやすいからね!!
「みんなが足止めをしてくれている間に少しでも遠くに!! そして、肉壁が一番多い場所へ」
この『支配者の祝福』で生み出された一万人の奴隷は、G・Iと同じく念で作られたNPCと同じものである。その為、強度などは人間と同等である…唯一の違いは、一定上の損傷を受けると消えてなくなるという事だ。
だが、それで十分だ。
ズドォォーーン
後ろの方で爆弾でも爆発したかのような音が聞こえた。
足を止めずに振り返ってみると…超ゴンさんのワンパンが街に住人を木っ端微塵にしていた。一撃で、100人は死んだだろう。
ビチャビチャビチャ
血と肉片の雨が降り注いだ。
「あ゛ぁぁぁぁ」
「痛いイタ゛イタ゛イ」
「ママどこにいるの…」
母親役と思われるNPCの腕だけをおった少女が今にも死にそうな顔で横たわっている。他にも何とか生きんがらえた老若男女が苦しみの賛美歌を上げていた。
………
……
…
流石は、世界最高峰の念能力者達が作ったゲーム報酬だぜ!! 作りこみが半端ないわ!!
その超ゴンさんの虐殺劇を生放送で見られる視聴者は幸せだろうね。間違いなく、歴史に残る犯罪者の殺戮現場を生でみられるのだから。
本来なら、その現場をよーく映る場所で高みの見物と洒落込むのだが…生憎とその標的が私である以上、呑気にしている場合ではない。
「かぁぁぁぁぁつぅぅ!!」
離れていても聞こえるほどの、大声がお届いた。
どうやら、また気合だけで念能力を吹き飛ばしたようだ。もはや、人間にできる芸当じゃない。
ズドォォーーン
逃げるさなか、私の背後から緑色の物体が凄まじいスピードで横を通り過ぎ民家を崩壊させた。そして、中から全身に傷を負ったメルエムが現れた。
「ペッ!! まだ、こんなところにいたのか…早く逃げろ。あれは、想像以上の化物だ」
ニヤリ
メルエムは、何やら嬉しそうな顔で飛び出していった。強敵に会えた事が嬉しいようでまさに、感無量といった感じだった。
しかし、超ゴンさんは本気で化物だな。まだ、戦闘開始してから30秒も経過していないのにメルエムに一目でわかるほどのダメージを与えるだけでなく、NPCを軽く3000人ほど消滅させている。
「言われなくても逃げます!!」
ただ、逃げる事しかできない自分に嫌気が刺す事は無かった。適材適所という言葉がある。レイアの能力で超ゴンさんの足止めができるかといえばYesだ。ただし、これ以上の『賢者タイム』の使用は血液量的に考えて死ぬ事になる。殴り合いで止めるという原始的な手段もあるが…あんな化物と殴り合いなど以ての外だ!! 命がいくらあっても足りない。
だが、考えるんだレイア!!
念能力者の戦いにおいて絶対はない。それは、間違いない。実力の差を埋めるためのアイディアがあれば、絶対的な力の差すらも覆せる。
仮に…超ゴンさんからタイムリミットまで逃げ切ったとして、そこで何もかもが終わるのだろうか。考えたくはないが、『死者の念』という言葉がある。生前に恨みや未練を強く残した者がさらに凶悪になって襲いかかるというアレだ。超ゴンさん2とか、Z戦士みたいなオチで襲ってこられては誰も止められん。
城の最上階にて。
そんな不安な未来を考えつつも城の最上階まで到着した。
なぜ最上階まで来たかというと、少しでも移動に時間を掛けさせるためだ。そして、城から飛び降りて逃げる事もできる為、実に良い時間稼ぎになる。いくら超ゴンさんでも自由落下の速度は同じだろうしね。
「超ゴンさんの残り時間は、約45秒…しかし、住民の約8割以上が既に消滅。残り2割も手足が吹き飛びほぼ戦闘不能。ゼノ様とシルバ様は、度重なる念能力の使用と超ゴンさんの攻撃で重体。ネテロ会長は健在だが、戦闘への参加意思はない。メルエムは…左腕を粉砕骨折に加え、内臓に深刻なダメージを負っている」
城の窓から城下町の状況を確認した結果である。
ゼノとシルバが民家に埋もれ、メルエムはネテロ会長に支えられてなんとか立っている。しかし、誰しもがこれ以上の戦闘は不可能である。それに対して、超ゴンさんは無傷!! いや、正確に言えばダメージを負ったが回復したのだ。
本当に、3分間に絞った無敵超人である。
そこまでして、私を殺したいのか。
「ネテロ会長…ありがとう。王と二人を連れて逃げてください。ピトー達は、ここから南南西に20km程いった場所にいると思います。………私ですか?
大丈夫ですよ、さすがに覚悟を決めました」
ネテロ会長から最後に達者でなと言われた気がする。
そして、超ゴンさんがただのジャンプで一気に城の最上階まで飛び乗ってきた。残り時間を消費さたかったが生憎と身体能力を考慮していなかった。
ズドン
残り時間は30秒。
「待たせたな。今度こそ、お前を守る者は誰もいない」
待たせたな…いえ、待ってないです。そのまま、自滅するまで一人で遊んでいろと言いたいわ。
「この高さをジャンプで来るとは予想外。人間を止めているなクソガキ…いや、その容姿でクソガキは失礼だったな。流石は化物だ」
「無駄な時間稼ぎだ。苦しまずに殺してやろう」
流石に話し合いで時間を潰そうと思ったが、予想通り無理があった。
ならば、最後に見せてやろう!! このレイアの生き様を!!
『命令コマンドを実行します。G・Iアーマーをパージ』
バラバラバラバラ
「…なんのつもりだ?命乞いでもするつもりか?」
「命乞いをして見逃してくれるなら、ここまで追ってこないだろう。このG・Iアーマーは非常に高価でね。持ち主に返さなきゃいけないんだ。だから、壊されるわけにはいかない。それだけだ」
超ゴンさんの攻撃で木っ端微塵に破壊されるなんてイベントは回避したい。生憎と、ピトーの円が解除する情報を教えた際の報奨金は全てゾルディックへの依頼金できえたから弁償するお金がない。
という、冗談はさておき、ちゃんと理由はある。
「一瞬偽物かと思ったが、いい心構えだ。全力でやらせてもらおう」
超ゴンさんの直感と嗅覚、そして円を騙すことは難題である。他にも影武者切符で住民を入れ替わりも考えたが…できなかった。念の人形相手には、使用できないらしい。
「覚悟を決めたといっただろう。これ以上、私の為に仲間を巻き込むわけにはいかない」
「この期に及んでよく言う」
「遺言くらいカッコつけてもいいだろう。最後に君に一つだけ教えておく…世の中に絶対なんて無いんだよ」
全国放送されているんだし、最後くらいカッコつけさせろよ。これで、間違いなく私の人気は鰻登りになるだろう。
ゴゴゴゴゴゴゴ
「さいしょは、ぐうぅぅぅぅーーー!!」
部屋を…城を…街すら覆い尽くすような圧倒的なオーラが超ゴンさんに圧縮された。超ゴンさんにとっても念願の一撃、そしれ最後の一撃でもあり、その気合の入り方は半端なものではない。
残り時間7秒。
……やはり、無理か。
「じゃん!! ケーーーーン!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
部屋だけでなく、大気すら震えている。そして、超ゴンさんの手には常識はずれのオーラが集まり、念能力者でなくても手が光って見える程だ。
キメラアント編に来るまで本当に苦労した…ミルキと友達になり…念を覚え…旅団から逃げ…グリードアイランドで奮闘し…キメラアントの巣で下っ端として働き…タマモを貰い…デイーゴと友達になり…ピトーを手に入れた。
思い起こせば、悪い人生じゃなかった。今回に関して言えば、原作主人公であるゴンでなければレイアに勝敗が上がっただろう。
まじ、主人公補正とか死ねよとレイアは思い、目を閉じた。
「ぐぐぐぐぐう゛ぅぅぅぅぅぅーーーー!!」
一切、避ける行動をせず超ゴンさんの拳がレイアを直撃した。
残り時間3秒。
未練・執念…いい言葉ですよね。