新章を見切り発進してしまう作者がここにいる。
だが、問題ない…いつものことだと思い執筆作業に入るお。
第54話
人生でこれ以上苦労する事はありえない程の死線をくぐり抜け、レイアの幸せは絶頂期である。
ハンター協会、今世紀…始まって以来の大惨事から一週間。
世の中も、私自身も凄まじく多忙であった。なぜなら、ハンター協会に出頭命令が出たのだ。ゾルディック家に匿ってもらっていたのだが、なぜか位置バレしており私宛に書簡が届いたのだ。
身の安全を考慮して、ピトーにタマモ…そして、ミルキにも来てもらった。そして、念には念を入れてハンター協会本部のある町の数カ所に「貧者の薔薇」をセットしておいた。万が一、相手がよからぬ企みをする時は巻き添えすら厭わない考えであった。
だが、それとは反して実に有意義な会話ができた。
『ゴン君の事は、残念だけど仕方ないね。あれは、完全に正当防衛だしね。若干、納得してない人もいるけど…ハンター協会の総意として、レイア君には一つ星を進呈する事になった。おめでとう』
『あ、ありがとうございます。てっきり、【貧者の薔薇】やゴン殺害の件でお咎めを受けると思っていましたが…』
『何を言っているのかね。君は、国家転覆を企む凶悪なハンターから国を守った英雄だよ。キメラアントなんて種を操り本当にロクデナシのハンターもいた者だね』
その瞬間、全てを悟った。今回の大惨事、想像の遥か斜め上を行く程になってしまいハンター協会は、ゴンに全ての責任を押し付けて真実を闇に葬る気だと悟った。
だが、これが世界規模の大組織である。逆の立場でも当然、同じ事をするだろう。だから、批難しない。というか、この場合は、闇に葬った方がマシだという極めて希な事例だろう。真実は、最低な人間の自己中が引き起こした悲劇だからね。
『ピトーとタマモの処遇については?』
『コスプレをした美少女でしたっけ?あなたの恋人でしょう?』
『その通りです副会長様!! あ、これ私のホームコードです。外的要因の治癒が必要な際は何時でもお呼び下さい』
『えぇ、必要の際は連絡させてもらいましょう。それと我々のスポンサーがね、レイア君が作った彫刻を大変お気に召したようでね』
『復元や贋作、新規作成までお引き受けいたしますよ』
『そうですか。それは、ありがたいことです。あ、これは私のホームコードです。必要な際は、何時でも連絡してくださいね』
と、いうやり取りが私と副会長の間で交わされた。
常識人で話の通じる人って大好きだわ。そして、後日ハンター協会から世紀の犯罪者ゴンの死亡のお知らせと…それに伴い、甚大な被害を受けたNGL各国にはハンター協会が復興に全面的に協力する旨が正式に発表された。
ということで、私はデイーゴに激励の品を送るべくゾルディック家に用意してもらった私設スペースにてリアルフィギュア作りに勤しんでおります。
「ご主人様…デイーゴの持っている人形がご主人様謹製だと聞いていましたが、冗談なしでハンターじゃなくて、そっちの道に進んだほうが楽で儲かるのでは?」
「もうこれ、フィギュアってレベルじゃないニャ。完全にその遥か先を進んでいるとニャ」
私の作業場所に、コタツをゲーム機や漫画本を持ち込んでエンジョイしている二人が率直な感想をくれた。正直、自分でもこの道に専念すれば、良い意味でも悪い意味でも名前が売れそうだと思うが、こういうのは本業でなく趣味でやるから面白いのだ。
「お金儲けなんてどうでもいいさ…ハンターライセンスを取った時点で金などなくても暮らせるようになったしね。それに、こういうのは趣味でやるから面白いんだよ」
「そういう物なのかニャ…それで、その人形はデイーゴが使っていたのとは違うようだけど、新作かニャ?」
ふふふ、よくぞ聞いてくれた。
これはでデイーゴにサプライズ用として作成している新作である。無論、超ゴンさんによって破壊された二体分はすでに人工子宮搭載型で作り終えている。これは、完全に趣味で作っているのだ。
「よくぞ聞いてくれた!! だれも聞いてくれなかったから、悩ましかったんだよ!! 骨格にはナノカーボンを用いて、医療の最先端である人工筋肉や人工心臓、人工肺に加えて新しい試みである人工子宮も搭載している。バスに轢かれても、トラックが激突してもほぼ無傷という強度を誇る!! そして、目玉には世界7大美色と言われた緋の目を採用した。更に、IPS細胞の応用で切り傷程度の怪我なら二日程度で完治する。更に更に!! 念能力者の血液を循環させる事でデイーゴの念能力使用の負荷軽減も図ってみた!!……最後に、この子の名前は今週から新アニメとして世の中に公開されるアニメキャラの鹿角である!! 流石はミルキ様だ…わずか一週間でテレビの放送時間だけでなくスタッフもみんな揃えてくれるなんて、その手腕恐れ入る」
希少な緋の目の入手経路は…ネテロ会長とゾルディック、デイーゴと多方面に裏ルートをもつお友達のおかげですんなり手に入った。クラピカに狙われるかもしれないとも思ったが…知ったことではない!! だが、美の探求者である私に妥協はない!! ちなみに、その両目で軽く20億ほどしたのだが…ゼノとシルバが依頼できなかったので一割の50億も返してもらえた。本来なら、依頼主である私が死亡したので返却自体行われないのだが…サービスだそうだ。まぁ、いろいろ詰め込んだおかげで末端価格が30億を軽く超えたがな。
デイーゴの能力ならば、鹿角の能力再現も不可能ではあるまい。汎用性が非常に高い能力だがその制限も大きいのが難点だがね。
と、説明が長くなったがこれがサプライズプレゼントだ。
すでに、衣服も出来上がっている。王に作ったものと同様の特別仕様である。
パチパチパチ
どこからか拍手されたのでそちらを見てみると…ネテロ会長とメルエムがそこに立っていた。説明に熱が入り全く気がつかなかった。
「理解不能なくらい凄いの…もちろん、いい意味でじゃ」
「余も多方面に才能はあると自負しているが、こちらの道では臣下であるレイアに勝てる気がせぬ。その才能を誇るといい!! ………余の新しい服は、出来ているな?」
そう…私は、超ゴンさんによってスタボロにされた王の替えの服も同時に作っていたのだ。もう、寝る時間も無いくらいに忙しいが死にたくないから頑張った!! まだ、若いから三徹位ならまだ行ける。
「もちろんでございます王!!」
私は、すぐに奥の部屋からメルエム用に新調した真っ赤なドレスを持ってきた。デザインは、ネロ・クラウディウスが来ているドレスそのものである。
「うむ!! 完璧な仕上げだな…褒めてつかわす」
服は、私が作ったのだから完璧である。それを着る王も完璧超人である。だが……いや、それを言うのはやめておこう。
「では、目指すとしよう!! トップアイドルを!!」
………
……
…
部屋から出ていく際に飛んでもない言葉が聞こえたかもしれないが、気のせいだろう。最近はよくあることだ。
ジリリリリーーーン ジリリリリーーーン
王が仕上がった服を持ち部屋を立ち去ろうとした時、レイアの元に一本の凶報が届いた。
『はい、こちらレイアです』
『レイア様ですね。ようやく、連絡先を見つけられました。落ち着いてお聞きください…ご両親が意識不明の昏睡状態です』
『はぁ!?』
『大至急、お越し下さい。場所は……』
相手が何を言っているか、動転してよくわからなかったが…とりあえず、病院名と場所をしっかりと聞き取った。レイアは知らないが、その病院は本来ゴンさんが入院するはずの場所であった。
この時、レイアは公開していた。定期的に実家へ顔を出すべきだった…今回は色々あり過ぎて、ほとぼりが冷めてからと思ったのが間違いだったのだ。どういった要因で昏睡状態になったから知らないが…私への嫌がらせができなくて両親を狙うようなクズ野郎がいた場合には、産まれた事を後悔させてやると心に誓った。
「ピトー!! タマモ!! すぐに出発するぞ」
「了解ニャ」
「了解です」
まさか、レイアは想像すらしていなかった…両親を昏睡状態にした犯人が、見知った人物だったとは。
演技・歌・踊り・話術・知識・肉体美・カリスマ…そのどれをとっても王は、世界一なのは間違いないだろう。
色々間違っているが間違いないはず。ネテロプロデューサーがきっとトップアイドルにしてくれるはずだ。