第57話
まさかのキルアとの同盟でグリードアイランド攻略に挑む事になったレイアです。
確かに予想外だったが…予想外だった事が他にもあったのだ。私とミルキのG・Iアーマー稼働の為にグリードアイランドに居た執事達が全くといっていいほどカード集めをしていなかったのだ。
だが、文句を言う筋合いでもないから何も言えない。そもそも、二回もグリードアイランドに来ること自体想定外だったのだ。その為、ミルキと一緒にゲーム攻略した際にSSランクのカード達も消失して、再取得する必要があるのだ。
要するに…一からスタートと思ってもらって間違いない。
「いいじゃん、最初から集めたら。お互い二周目だし、最初から本気で行けば結構すぐ集まるぜ」
まぁ、キルアの言うとおりである。だが…キルア達と違いミルキと私のコンビのカードは大半が強奪したカードなのだ。もちろん、趣味に走ったキワモノのカードは、ほとんど自力で集めたがね。
「仕方ありません。では、一から集めるとしましょう。手始めに…こちらに向かってくるアホを処理することから始めましょう」
「カモがネギと鍋まで背負ってきましたよ、ご主人様~」
「へぇ~、あれがスペルカードか。本当に人間が空を飛んでいるニャ」
早速、新兵器を出番ときましょう。まずは、手持ち武器の中でもかなり平和的で試し打ちする。
「念能力者相手に、念を使わずとも十分に対応出来ることを証明してあげよう。ゾルディックの武器庫から拝借してきた、この火炎放射器の威力見せてくれよ!!」
「マトモに戦うんじゃないのかよ!! なんで、うちの倉庫にそんな物あんだよ!?」
キュイーーーーーン
こちらに空から近づいてくる野郎のニヤケ顔がマジでうざい。どうせ、我々をゲーム初心者だと思い込み、自らが優位になるようなスペルを着けておこうという一般的な作戦だろう。まぁ、美少女であるピトーとタマモが目当てだという可能性も少なからずあるがね。
「キルア様…勝負なんて勝てばいいんですよ。それに、私の力量ご存知でしょう。言っちゃ悪いが、今こちらに来ている念能力者とガチで勝負したら負けますよ」
G・Iアーマーがある時ならば、負けることはないが。現状では防御力が紙切れに等しい。だから、勝つために先手を打つのは当然でしょう。
「まぁ、危なくなれば僕等が助けに入るから問題ないニャ」
「いや、俺はそういうことを言いたいんじゃなくて」
キルアが何やら釈然としない御様子だが。大人の世界は、汚いのだ…その現実を教えてあげよう。
「ぎ「汚物は消毒だ!! ヒャッハー!! よく燃えるぜ」ぎあ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
プスプスプス
地面に着地するより早く、飛来してくる人間に業火をプレゼントした。移動経路固定のスペルカードを多用するからいけないんですよ。当然、相手もオーラで防御しつつ、即座に脱出すべくスペルカードを使おうとするが、業火の中で喋る事は出来ない。口を開ければ内臓からコンガリ丸焼けになるのだ。
近代兵器の威力を甘くみないでもらおう!! この火炎放射器は、液体燃料を使用しており粘着性が高い特殊な物を使用している。これにより、対象に付着して更に燃え続けるのだ。
わずか数秒で消し炭のようになった人形の何かが出来上がった。そして、グリードアイランドの世界から退場した。
「そこまでやるか普通。殺さずにカードだけ奪ったほうが得じゃん」
「いえいえ、ここまでやるのが普通です。こちらに害意をもって接近してきたのですよ。当然の報いです。それに、ピトーやタマモ、キルア様の実力すら把握できない連中が入手困難なカードを持っているとは思えません。カードなら今死んだ奴のお仲間から貰えばいいんですよ。ピトー出番ですよ」
それに、そのセリフは殺し屋であるキルアが言っていいセリフなのかと疑問でもある。殺すなら綺麗に殺せってことかな…もし、そういう意味なら、次は細菌兵器をばら蒔くことにしよう。
「見張りが二人いるけど、どっちを捉えるニャ?」
「遠くの方をピトー。近くの方をタマモ。生け捕りにしてきてね」
バン
ピトーとタマモが居た場所の地面が抉れて消し飛んだ。遠目で見ている者にとっては、消えたかのように思える程の加速だ。特に、ピトーの移動速度がマジでやばい…長距離でなければ間違いなくスペルカードの移動速度を越えている。相手も不幸だよね…こちらの戦力が理解できないばかりに。
………
……
…
「キルア様…ピトーもタマモも今はおりませんよ。私を殺すなら今を除いてありません。そして、殺した後に受付嬢にセクハラをすれば国外に飛ばせてもらえます」
ミルキ様が実証済みだからね。まさか、カードなしでゲームから脱出する方法があるなんて知る人は少ないだろう。
「なんで、そんな事をするんだよ。あれから、一人で色々考えたんだぜ。カイトが死んだ事やキメラアント達の事とか…でも、どれだけ考えてもアンタが正しいって答えに行き着くんだよ」
「理解していても、納得はできないと言う事でしょう。キルア様の友達のゴンを殺したのは確かに私です。言い訳などしませんよ。恨みを果たしてキルア様が満足するのでしたら、私の人生も悪い物ではないでしょう。弾は入っております…引き金を引くだけで簡単に私を殺すことができるでしょう」
キルアにミルキ様お手製の大口径拳銃を握らせた。嘘ではなく、本当に弾丸が装填されている。
「あんたは、両親を助ける為にここに来たんじゃないのかよ。俺が殺したら、両親をどうするんだよ!!」
「SAN値低下による昏睡です。時間とともに回復するでしょうし、私が死んでもピトーとタマモがきっと何とかしてくれるでしょう」
銃口がレイアの頭に向けられた。
できることは全てやった。今後、生涯通じてキルアの不意打ちを警戒するより、お互いに全てをぶちまけて綺麗な関係になりたい。そうでもしないと、私の胃が持たない。
「………アンタの読みだと、俺が撃たない可能性はどのくらいだ」
「8割撃たないと考えています。この短いやり取りでも、キルア様は私の人柄をよく観察なさっておられました。少なからず、私がどういう人間が伝わったと理解しております」
レイアは、悪人と善人の二択で表現するならば善人に分類されるだろう。言葉を交わすことでキルアもその事は理解できただろう。ただし、レイアはかなり二極な考えをもつという問題点もあるが。
「はぁ~、やっぱり俺は、アンタの事嫌いだわ。なんか、完全に手の内で踊らされている気がするし。それに、俺もいつまでも過去に囚われず、未来を見ていこうと思ったしね」
「いい考えです。キルア様は、まだお若い。これからの人生、友達は沢山できますよ」
「できるかね…俺、ゾルディックだぜ」
ゾルディック…だけど、それが問題かと言われれば受け取る人次第である。現に、私の様は奇人変人のような人物だっているのだ。
「では、手始めに私とお友達になりましょう。ゾルディックとか、私は気にしませんよ」
「ははは、そう来るか。アンタと友達なんて嫌だね…精々、知り合いといった関係だろう」
「それでも構いませんよ。そのうち、友達にランクアップしてみませますので。では、知り合いからと言うことでよろしくお願いします。キルア様」
キルアに握手を求めた。
友達からではなく、その手前の知り合いからスタートしようという私の提案にキルアは『こいつ馬鹿だろう』という視線が気になってたまらない。今の話の流れを聞いたら、誰だってそうなると思っているのだが…私が異常なのかと思うレイアであった。
「あぁ、とりあえずそういう事にしておいてやるよ」
ニギニギ
キルア様となんとか和解に成功した。
では、早速ミルキ様にご報告せねばなるまい。
『ミルキ様!! やりましたよ、キルア様が友達にはなれませんでしたが、知り合いからスタートしてくれると!! これで、冬コミの鉄砲玉は確保できました』
『よくやった。キルアの足の速さがあれば、大手三ヶ所は回せるだろう。デイーゴにも連絡しておこう。今年は忙しくなるぞ』
ミルキに事務報告をしたら、キルアがまるで私を下賎な豚を見るような目で見てくる。何が問題だったのか、まるで検討がつかない。
「あれ~?キルア様、なぜそんな怖い顔を!? というか、銃口を再び私に向けるのはやめてください。もし、引き金を誤って引いたらどうするんですか!?」
「主に俺の平和を守るために、アンタの様な頭のいい馬鹿はこの場で亡き者にしたほうがいいんじゃないかと思ってね」
酷すぎる!!
まぁ、その銃に詰められている弾丸は空弾だけどね!! だから、引き金を引いても鉛玉が飛び出ることは決してないのだ。
こうして、レイアとキルアの仲は綺麗に初期化された。
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右を向いての左を向いても上を向いても下を向いても全て書類で埋め尽くされている。漫画でしか見ないような冗談のような書類の量である。これでもハンター協会より派遣されてきた優秀な事務員が精査した結果、デイーゴ自身が押印せねばならない重要な書類ばかりである。内容は、主にハンター協会から補填や賠償に関する書類であるため見ないわけには行かない。
本日、明朝にレイア殿より届いた激励の品が届き…やる気もヤる気も万全であった。しかし、この量をみたら色々と投げ出してくなってきた。
「デイーゴ様、これも追加の書類です。明日の朝までにご確認をした上で、押印してください」
ドサドサドサ
軽くダンボール4箱分近い書類が山積みにされた。
『わかったの~、明日までに見ておくからそこに置いていて欲しいの』
『なのは~、いつになったら私達は解放されるのorz』
デイーゴは、レイアより届いたフィギュアに対して念能力を用いて匠に操り事務効率を三倍まで上げていた。念で操作している人形より送られてくる視覚情報をデイーゴの脳内で並列処理を行っていた。
もっとも、念を知らない人から見れば…デイーゴの私室にアニメキャラソックリな幼女が事務処理をしているという奇妙な現象に見えるだろう。もしくは、羨ましいと思うかもしれない。
「いつまで、そこにいる。用事が終わったなら下がれ」
一例をして事務員が退出した。
ピロロロン
デイーゴの私用携帯にメールが届いた。
『無事に約束の品は届いたかな? デイーゴの事だから、人形達を破損させる事はないだろうし、破損されるような事態には遭遇しないと思うけど問題が発生したら何時でも連絡してね。
という、前置きは置いて!! ミルキ様に無理をいってデイーゴの為にサプライズプレゼントを用意したよ。今晩放送の深夜アニメ枠を要チェックしてね!! 絶対見てね!! 見逃したら、一生恨むからね』
アニメ情報なら来期分まで完全に抑えていたはずのデイーゴであった。頭の中で本日のアニメ放送されるアニメをピックアップしたが、何の事を言っているか理解できなかった。
すぐに新聞のテレビ欄をチェックした…そして、デイーゴに衝撃が走る!!
ボルビック社の新作アニメ『旋律線上のホライゾン』という新作アニメが載っていたのだ。ボルビック社とは、ミルキが経営する世界規模のアニメ制作会社であり、アニメを見るものでこの会社を知らないものはいないと言う程の物である。
そこの新作アニメが突然、現れたとなれば驚くのは当然である。
仕事を放棄してすぐさま電脳ネットにアクセスして、情報収集を兼ねて同士達と情報交換した。流石の同士達も事前情報がなかったらしく、驚きを隠せないという感じである。しかも、原作原案がレイア殿と言うからには見ないわけには行かないだろう。
「先日まで、あの化物と戦い…余のフィギュア達を作り直していたというのに。一体、どこにそんな時間が。レイア殿もある意味、常識を逸脱しているな。まぁ、そんなことより!! 放送まで後30分もないぞ!!」
デイーゴは、アニメを見るために仕事を投げ出した。
『旋律線上のホライゾン』放送後。
「す、素晴らしい。何てストーリーなんだ…レイア殿は未来に生きていると言っても過言ではあるまい。しかも、メイドさん強すぎだろう!! なんでロボット相手に戦っているんだよ」
メイドか…実にイイ!!
決してメイドが大好きだというわけではないが…このアニメに出てくるメイドさん達最高すぎる。主の為に生きるその様は、オタクの心を打つものであった。
「早速、レイア殿にお礼のメールを…」
「では、自由時間は終わりにして早く書類の……」
アニメ鑑賞後の余韻を邪魔されて、思わず全力で殺気を当ててしまい事務員が床に倒れた。だが、一切悪いとは思っていない。余の大事な時間を邪魔するものは何人たりとも許されない。
事実、アニメ鑑賞中に王が邪魔をしてきて本気で殴りかかったほどのアホであるから。
「はぁ~、デイーゴ様の殺気に普通の人間が耐えられるはずないでしょう」
「身に覚えのある気配がすると思えば、ミルキ殿のところのヒナでしたか。なんの用事ですか? 余は今から、レイア殿にメールを打たねばならないという重要な任務があるのですが。それに、ここに来るなら事前に連絡位は欲しかったですよ」
一刻も早く、この熱をレイア殿に伝えたい。しかし、ミルキの子飼いのキメラアントを門前払いするような不出来な人間ではないデイーゴである。
だが、一番気になるのは、ヒナが担いでいる人間大の柩だ。
円で中を探ろうにも神字で加工されている柩の内部は探れない。
「連絡をしなかったのは、確かに悪いけど…これもミルキ様とレイア様からの命令なんですよ。生き延びるためとは言え、宅配業者の真似事までする事になるとは…」
キュピーーン!!
この時、デイーゴの直感がニュータイプ並に働いた。柩の中身が、見えないが…見えたのだ!! そして、心の底より歓喜した。
「レイア殿もミルキ殿も人が悪い…。まさか、こんな手を打ってこようとは!! レイア殿…あなたの思いしかと受け取りました!! さぁ、今こそ目覚めるのだ『鹿角』」
その瞬間、レイアの手によって作成された『鹿角』が目覚めた。
『Jud.デイーゴ様』
シリアス展開なんて今後もない予定です。
そして、ご都合主義だけど問題ないよね!!
さて、次はネテロPの話に行こうかな。