第59話
グリードアイランドを初めて、早くも三日…順調すぎて笑える。強くてニューゲムに近い状態とはいえ、こうも簡単にカードが集まるとは笑いが止まらないぜ。
あれから、自力でカードを集めつつ、カードの入手情報を売ることで指定カードがいい感じに集まってまいりました。現在、指定カードの枚数は46枚。もっとも、Aランク以下が大半を占めているのが問題ではあるが、気にするようなことではない。なぜなら、SSランクの指定カードでもあろうが、このメンバー的に考えて難易度は低いと言える。
そして、どうでもいい事だが…胸騒ぎがする。なぜかと言われれば、はっきりとは言えないが…メルエムが、人妻新人グラビアアイドルとしてデビューを果たして、初の写真集を持ってくるようなそんなキチガイな予感がしてならない。
自分でも何を言っているか分からないが、そんな気がしてならない。万が一それが現実の物になるなら『世界がヤバイ』。
「さぁさぁ、ご主人様。こんな所で止まってないで、早く温泉行きましょうよ」
「美白効果のある温泉があるとは…なんでもありニャ」
「はいはい、今行きますよ。……キルア様、先ほどからお疲れの様子ですが、どうしました?」
今回の我々の目的は、指定カード04の美肌温泉というもので、効果はその名のとおり美白効果ある温泉である。その為、ピトーもタマモも無駄に元気である。ピトーはネコ科なのにお風呂好きとか最高だろう…まぁ、以前も一緒に入ったことあるんだけどね!!
「いや、なんつーか虫の知らせというか胸騒ぎがするというか。俺にとって、とてつもなく理不尽な出来事が起こるんじゃないかと気がしてならなくてな」
理不尽も何も私に言わせてもらえば、ゾルディックであり、プロハンターであり、将来有望の念能力者であるキルアの存在自体が理不尽なんだけどさ。
「気のせいでしょう」
山を登ること十数分後。
やっと山頂にある、温泉宿に到着した。
ここに来る前に幾重もの罠を掻い潜り、襲い来る獣達を殴払ってようやく到着した。もっとも、罠の解除も敵の排除も私は一切働いてないがな!! むしろ邪魔にならないように大人しくしていた。
だが、そこに待ち受けていたのは温泉ではなかった。
「遅かったの~少年。待ちくたびれたぞ」
「余の予想より二分も遅い。精進が足りん」
………
……
…
あ、あまりの衝撃的な出来事に一同言葉を失った。
ミルキやデイーゴなら可能性としてはあったので、まだ理解できた。しかし、これは予想外だ…まさか、ネテロ会長とメルエムがグリードアイランドに参戦とか。真っ赤なドレスを靡かせるメルエムのSAN値アタックは、疲労困憊の体には堪える。
まぁ、最も私は既に慣れたがな!! この程度の攻撃などダメージ入らんわ。
伊達に、王のスリーサーズに合わせて衣服や下着を作っていたわけではない。ちゃんと、着ける人を想像して………そう、わかってくれるかこの苦労。まじ、作っている最中に何度か発狂したよ。
「き、奇遇ですね。こんな場所でお会いするなんてメルエム様」
「アイドル活動で忙しいと風の噂で聞いたニャ」
風の噂と言っても、情報源はミルキなのだがね。先日、メルエムがアイドル事務所に所属したとか理解できない狂言を言っていたので流石の私もミルキに『お疲れのようですね。私の事は気にせず静養してください』と本気で言ってしまう出来事があったのだ。
「ほほぅ、情報が早いな。その通りだ。余は、つい先日ヴェーグルプロダクションな所属のアイドルとして活動している。駆け出してある為、仕事は一つしかしていないがな」
この発言を聞いて、この場にいる全員の考えが完全一致した。『どこの奇人変人が経営している事務所だよ。世界征服を企む秘密結社に所属した方が、納得するよ』と。
………あれ?今、仕事をしたとか言ってなかった!?
場の空気を読む力を無駄に発揮したキルアが言ってはならぬ発言を口にしてしまった。
「へ、へぇ~一体、どんな仕事をしたんだ?」
ちなみに、キルアも王がネテロの洗脳下にある事を知っている。
それにしても流石は、ゾルディックの有能株だ。キルアが王と対面するのは、ほぼ初めて…以前はキメラアント討伐部隊に所属していた時にセイバーリリィのコスを着た王を遠目で見た程度だからね。それなのに、こんな間近で王の華麗なドレス姿を見ても耐え忍んでいるあたり凄まじい精神力。
「その言葉を待っていたぞ キルア少年。実はな、今日は儂のメルエムの初仕事の成果物をお主等に贈呈しようと思ってここまで来たのだ」
「確かにその用事もあるが、余がここに来た理由は他にもある。レイアよ…なぜ、両親が昏睡状態であり、それを救う為にこのゲームのクリア報酬が必要だと相談をせぬ?」
ハンター協会の会長から貰える物だというのに激しく貰いたくない!!
だが、それよりも大事な事は王が私の両親の現状を知っていることだ。私のポジションは一応、王の臣下なので、王に対して許可なく長期休暇みたいなものを取得してはいけないということなのだろうか。
「メルエム様は、何分お忙しそうでしたので…」
「馬鹿者が!! レイアの両親と余のアイドル稼業とどちらが大事だと思う? 無論、レイアの両親である。故に、お主が余に対して協力を仰がなかった事を非常に残念に思っている。余がそんな軽薄は存在に思われていたかと余自身が恥ずかしいとすら思える。よって、これより余とネテロはグリードアイランド攻略に助力をしよう」
えっ!! まじで!?
人外最強と『発』を失った元人類最強が来てくれるのであれば…もう、過剰戦力にも程があるぞ。というか、強くてニューゲームどころかステータスALLMAXから開始に近い。
「ありがとうございます。ありがとうございます。メルエム様の臣下で本当によかった。もう、困ったことがあればなんでもお申し付けください。星の裏側にいても、すぐさまやってまいります」
王の心意気に、心底感謝した。まじ、イケメンすぎる。本気で世界征服してくれないかと思ってしまうぜ。臣下の両親のことまで気にかけてくれる王なんて世の中いないぜ。
「ほっほっほ、いい感じに纏まったようだな。では、お主等全員にこれを贈呈しよう。布教用 観賞用 保存用の合計三冊じゃ。大事にしろよ」
「ありがとうございます!! 両親が目覚めた際には是非、一冊プレゼントさせていただこうと思います」
「あ、ありがとうございますニャ」
「だ、大事に致しますね」
「お、俺の分もあるの…いえ、ありがたく頂戴いたします」
私以外の全員が、まるで放射能汚染物質でも受け取るかのごとく慎重に受け取っている。全く、もしそうなら放射能汚染物質に失礼だろう!! …あれ違ったか。
しかし、たった三冊の本だというのに私の腕がもげるほど重たい気がする。これでも数トン単位の重さの扉を開けることができる程鍛えているのに本気でそう感じる。他にも、持っているだけで冷汗が止まらない…さらに、心拍数が妙に高くなり、オーラというか生命力が本に吸われている気がする。
まだ、袋詰めされた状態でこれだぞ…表紙を見たら死ぬんじゃないか。
きっと、世界が異なっていれば『ネクロノミコン』、『ルルイエ異本』、『ナコト写本』に匹敵する魔道書になっただろう。
………
……
…
場の空気が止まっている…これは、間違いなくこの場で中身を確認し、感想を言えとの無言の圧力!!
ピトーやタマモに先陣を切らすのは悪いから…キルアに目で『無理のない範囲でなんでも言うことを聞いてくれるんだろう。早く、中身を確認して感想を言え』と言ってみた。そうしたら、『無理のある範囲だろ!! ふざけるな俺に死ねと言うのかよ。絶対に、俺はみねーからな』と目で返事をくれた。
となれば、グリードアイランド攻略に手を貸してくれるという大恩がある私が見るしかないだろう…常識的に考えて。まぁ、この場で一番適任なのは私だろうし…最悪、発狂程度で済むだろう。
ビリビリ
本屋の袋を破り、中から一冊の本を取り出した。
『狂気の人妻新人アイドル!! これで人妻だぜ…うらやまけしからん』
見出しが三流のゴシップ記事見たいになっている。だが、私が想像していたよる何千倍もマトモである。表紙を飾るは、正真正銘の超がいくつも付くような美少女達だった………あれ?
「ティファニア?沙耶?ディズィー?」
「……知っているのか?彼女等は、余と同じくヴェーグルプロダクションに所属するアイドル達だ。経営者の親族で、全員子供持ちだそうだ。しかも、沙耶とディズィーは、ティファニアの実の娘と聞いている」
知っているが…この世界に居ていい人たちじゃないぞ。それに完全に畑違いの原作キャラ同士が親子同士だと!? どうなっている!! しかも全員が人妻で子持ちとか…夫の方を殺したくなるな。
「いえ、全く知りません。ただ、名前は……表紙に書いてありましたので」
この本なら、余裕で売れそうだ…恐らく、プレミアがつくのも時間の問題だろう。これほどの逸材が写っているのだ。値段など気にしないで買うアホどもが沢山いるだろう。
この表紙の三人の写真なら是非見てみたいと思い、早速表紙を捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
捲った。
………
……
…
ツーーーー
「ご主人様が鼻血!! 誰かティッシュ持ってないかニャ!?」
「大丈夫ですかご主人様!?」
ピトーが心配するさなか、私は地面に膝をついた。すぐさま、タマモが支えてくれてなんとか起き上がれたが…これは凄いわ。
「メ、メルエム様…素晴らしい写真です。このレイア、写真集で鼻血を出したのは初めてです」
「そうじゃろう、少年には少し刺激的過ぎたかのう」
「流石は、余の見込んだ者だ。よく理解しておるな。余も少し過激であったかと思ったが、グラビアとはそういうものだとカメラマンがいうのでな」
マジ…刺激的すぎた。表紙以外全て、メルエムのグラビア写真集なんだぜ…詐欺どころじゃないぞ。ネテロを除き、人類で一番SAN値攻撃に対して耐性があると自負している私でなければ、脳内の血管が数本切れただけじゃ済まなかったよ。
やばい…もう一度読んだら間違いなく死ぬ。
「とりあえず、目的も果たしたことだ。わしらは先に部屋に行くとしよう」
その目的は、私を殺すことなのだろうかと質問したくなった。
そして、ネテロと王が宿の奥へ移ったのを確認できた。
「あんた…漢だよ。最後まで見るなんて」
「ピトー様、早く治療を!!」
「脳の治療だと…もっと清潔な場所じゃないと」
ピトーの言うとおりだ、脳の血管の手術なんてこんな夜空の下でやるものじゃない。
『Jud.それならばこの宿のスイートルームがいいでしょう。レイア様』
「万が一に備えて、無菌室などの医療設備じゃ準備してある。よく生き残ったレイア」
………なぜ、こいつらが!!
「どうりて、ネテロ会長達が私たちの場所を正確に把握できるはずだ。助けるならもっと早く助けてください。ミルキ様!! デイーゴ!!」
ネテロとメルエムに引き続き…ミルキとデイーゴも参戦した。
表紙だけ美少女とか表紙詐欺もいいところだよね。
さて、少し無理矢理感もありましたが…レイア陣営が勢ぞろいw
次回、キルアご乱心!? の予定。