第62話
レイザーと愉快な仲…じゃなかった、レイザーと14人の悪魔を討伐する為に目的地までやってまいりました。
前回は、原作組が頑張ってクリアした所を報酬だけ奪うという裏技を使ったが、今回は正面から攻略するのだ。実力的に、我々を除いたG・Iプレイヤー達ではクリア不可能だろうし、仕方ないのよ。
しかし、レイザー達には申し訳がないと本気で思う。
メルエム、ネテロ会長、ピトー、タマモ、ミルキ、キルア、デイーゴ、レイアの通常メンバー8名に加え、イベント発生条件である人数合わせとして、ミルキにお願いして執事の方を数名ほどレンタルさせて頂きました。ちなみに、ゴドーさんやワジマさん、カナリアも混ざっている。
まぁ、その執事達だが・・・まさか、メルエムを直視した瞬間に心肺停止するとは想定外で、開いた口が塞がらなかったよ。適切な処置が遅れていたら、死亡判定でゲームの外へ除外されるところであった。
そんなイベントもあったが、我々メルエムと愉快な仲間達は、計画通り灯台へと到着した。
「うーーん、前に来た時は酒場にレイザーの仲間が屯っていたが、なんで誰もいなかったんだ」
キルアが前回と今回のイベントの異なる点を上げた。
そう、キルアの言うとおり、今回NPC達は揃って酒場に海賊たちがと言っていたが現地に言ってみれば無人であったのだ。無論、数日前まで人が居た気配はしていた。
「まぁ、考えても仕方ありません。入手条件も分かっておりますし、現地に行って直接話しましょう。ピトーによれば、この要塞の中にいるのは間違いないとのことですし」
間違いなくこちらのメンツ知った上で、逃げているのだろう。しかし、凶悪な円をもつピトーを相手にそれは無意味だ。そして、入口は電子ロックがされており扉は固く閉ざされているが、その程度障害になるようなメンバーではなかった。
「時間稼ぎつもりか…笑止!!」
ズゴゥーーン
厚さ60cm以上ある分厚い鉄板をメルエムがワンパンでぶち壊した。キメラアント編の時より間違いなく強くなっている気がする。その原因は、このゲームで出てくる念獣をたらふく食した事なのだが…全く、いい迷惑である。容姿だけではなく本当に人類が手に負えるレベルを超越しそうで困る。
そして破壊された扉をくぐり一同はゾロゾロと要塞内部へ進んでいった。
先頭には、真っ赤なドレスを来たメルエムが優雅に歩いている。可哀想なことに、今回の勝負戦わずして勝利してしまう可能性が大になった。
私は、これから犠牲になるであろう名も知らぬ囚人たちに少なからず同情した。うまくいけば、生きているうちにシャバの空気が吸えただろうが、これでは絶望的だ。
「メルエム様、その扉に向こうにレイザーと14人の海賊がおりますニャ」
そして、入口同様に固く閉ざされた入口がメルエムによって破壊された。
要塞内部にいる連中は外の世界にでも逃げたかったが…生憎とそれは叶わなかった。GMとして特別なカードが使える事を条件に自分たちに挑むプレイヤーがいた場合には戦わねばならないという重い制約をかけているのだ。故に、訪れるのを諦めさせようと必死の抵抗が今までの妨害工作(笑)である。
そして、メルエムが最初に一歩を踏み込んだ。
一流の念能力者でも呼吸する事すら困難な程の重圧を掛けるだけでなく、SAN値へのダイレクトアタックだ。
ガタガタガタガタ
生まれたての子鹿のように立っている事すら叶わない状態で、三半規管は完全に麻痺をして自分の状態すらマトモに把握できていないような海賊たちがそこにはいた。既に、脳内の血管が破裂して、耳や目から血が出ている者もいる。
こちらのコンディションが完全で、相手の状態は最悪である。間違いなく実力の10%も出せないだろう。
「わ、我々も負けでいい…。だから、カードを持ってそのままお帰りください」
ズサーー
レイザーの英断による神速の土下座外交。
これは、状況を鑑みて一番正しい選択であるのは間違いない。勝負しても負けるのはわかっている上に、なくす可能性があるのだ。自らの命を天秤にかければ、当然答えは出てくる。
だが、レイザーの心とは裏腹に我々一同は興ざめである。
私としては正直、カードをもらって早々に最後のカードを手にいれて帰りたいのだが…今回に限っては間が悪かった。なぜなら…
「余は、次の仕事で様々なスポーツに参加するのだ。その準備運動も兼ねて今回のイベントにはそれなりに期待しておる。故に、棄権など許さぬ。死にたくなければ、死合せよ」
そういうことである。メルエムの次の仕事であるアイドル事務所対抗の大運動会でメルエムチームはマラソンやバレーなど騎馬戦などの様々なスポーツ競技に参加するのだ。本番前の準備運動も兼ねており、メルエムのやる気は満ちていたのだ。
この時のレイザー含めた海賊たちは、心の底から絶望していただろう。意図的に負けることすら許されぬ…かといって、まともに勝負すれば間違いなく敗北するのだ。しかし、そんな海賊達にも生き残る希望の星があったのだ。
「わ、わかった。その代わり、対戦相手の指名権と競技の選択権はこちらがもらおう」
「それが落としどころであろう。かまわぬ」
………
……
…
あ、今、とっても嫌な予感がした。
「では、競技は1:1のキャッチボールだ!! 対戦相手にはレイアを指名する!!」
レイザーが真っ先に私をご指名してきた。
「き、きたねーぞ」
「あいつは俺の獲物だぞ」
「実力的にアンタがあのバ…リーダー格を相手にすべきだろう」
そう、レイザー含めた愉快な仲間たちが生き残るには、対戦相手の中で一番雑魚を確実に倒すことである。やり方は間違っていないが、本当にクズの所業である。
当然、海賊連中も最弱であるレイアに目をつけており、真っ先に試合をする予定でいたのだ。
「やり方が汚いにも程がある。GMのクセに私のような最弱を相手にして何が面白いんだよ!!」
「面白い、面白くないの問題ではない!! 生死がかかった問題だ…そんなクソみたいな感情など知ったことか」
不覚にも同意してしまった。生死がかかっているのであれば、仕方がない…逆の立場であるなら同じことをするだろうし。
「メルエム様、棄権とか意図的に敗北しても…」
「余の臣下であるレイアがそのような事を申すはずがなかろう。万が一、そんなことがあれば臣下の枠に空きができるという事だ」
「全力で挑ませていただきます!!」
この場にいる海賊達は、司会開始と同時にレイザーによる攻撃でレイアが死ぬ未来が見えていた。それ程までに実力差があるのだ。しかし、メルエム陣営は一方的な死合になるとは予想しているが、決してレイアが負ける未来は見ていなかった。
「キャッチボールをするにあたり、ルールを説明して欲しい」
「いいだろう。キャッチボールのルールは簡単だ。お互いの距離を10mとり、相手が投げてくるボールを取るだけだ。ボールを避けたり、当たって死んだ場合には敗北とする」
メルエムが敗北を許さぬとなると、必然的に回避禁止となる。まじで、えぐい。…まぁ、レイザーのボールを回避できるとは思えないがね。
「…あれ?ボールが直撃して、相手が生きている場合は敗北じゃないの?」
「いいや、生きている以上続行だ。万が一生きている場合には、ボールの受け手側に投げる権利をやろう。また、ボールは30秒以内に投げなければ敗北とみなす」
これは、メルエムから敗北を許されていない私にとってはまさにデス・ゲームである。要するに、レイザーが敗北条件を満たさぬ限り私は死ぬまでレイザーの全力の球を受けねばならぬ。
マジふざけるなよ。
「念能力等による相手への攻撃はありですか?」
「当然だ。俺も念能力を使う。なんでも使って構わない」
…ならば、勝てるな。既に仕込みも終わっているし。この部屋の規模だと、恐らく2分程度で充満するだろう。
私はレイザーに見えぬように、服に仕込んでおいたとある兵器を開封した。その様子を見てメルエム含む私の仲間達は、即効で部屋の隅にまで移動し防毒マスクを付けた。
ゾルディック家の武器庫より頂戴した化学兵器…ミルキによれば即効性で精神伝達系に異常をきたすものらしい。無論、国際条例で禁止されている兵器であるが、そんな事は些細な問題である。
致死性の化学兵器を使わないあたりは、私の優しさである。
コフーコフー
「さて、試合を始めようか」
流石のレイザーも我々の様子をみて瞬時に何が使われた理解したようだ。しかし、この手の兵器への対抗策を用意しているほど準備万端ではなかった。何でもありとは言え、せいぜい出てくるのは重火器程度だと考えていたのだ。
「何でもありとは言ったが、非人道的じゃないか。それは…」
「対戦相手に私を選んでおいて何を今更。安心しろ致死性じゃない…せいぜい、生涯ベッドの上で過ごす程度のものだ」
そのやり取りを見て、他の海賊達も理解したようでこの部屋から逃げ出そうとするも入口はメルエム達によって封鎖されている。ほかに出口はなく…部屋の隅に移動して毒ガスが回ってくるのを恐る恐る待っている。
「ならば!! 全力でレイアを潰して、そのマスクを奪わせてもらおう。キャッチボールで事故死などよくある話だろう」
グォーーー
レイザーほどの使い手ならば、無呼吸で5分…いや10分ほど行動することは容易いだろう。だが、それでも十分。
レイザーの念能力で作られた審判が登場した。
先手を決めるために、ジャンケンをすることになり、非常に残念ながら負けてしまったよ。ゴン同様にジャンケンの必勝法を用いてきやがって…私の反応速度では太刀打ち出来なかった。
本当に大人のやることじゃねーよ。
「ふっふっふ、先手は頂いた確実に!! 一撃で落とす!!」
レイザーがオーラを一点に集中させた。まさに、洒落にならない威力になっている。ゴンに全力で投げたボールと同等とみて間違いないだろう。原作では、ゴンとキルアとヒソカの三人で受け止めた程の凶悪な一撃だが、私はそれを一人で受けないといけないとか酷いわ。
まぁ、こちらも人のことは言えないような事をやる予定だし文句は言えないね。
「まぁ、キャッチボールだし一撃なら問題ないかな。うん…いつでも来ていいよ」
「くたばれ!!」
ズキューーーン
その言葉をきっかけにレイザーが美しいフォームで全力投球してきた。威力・速度・オーラ、そのどれをとってもまさに一流に恥じないものである。この弾を正面から受け止めるには強化系でなければ難しいだろう。
そんな事を考えているうちに、レイザーの剛速球がレイアに直撃した。
ズドォン
トラックに激突されたかのごとくレイアは、見事に反対側の壁まで吹き飛ばさて壁に綺麗に人型の後を作った。
「あれ?ご主人様、今の一撃じゃなかったんですか?」
「無理じゃないかニャ。ご主人様の反応速度を完全に超えていたニャ。まぁ、あの程度で死ぬなら僕たちを手篭にできてないニャ」
パラパラパラ
ギャグ漫画の如く人型の穴からようやく抜け出せたレイアが多少の打撲があるにせよ、ほぼ無傷でいることに誰しもが驚愕した。
先に気がついたのはレイザーであった。流石は、GMである…自分のゲームのことをよく知っている。
「まさか、飛んでくる俺のボールをカード可するなんてありかよ」
「ゲームの仕様通りだ。有りに決まっているだろう、最も体に触れていないとカード可できないので一瞬触れただけであの衝撃とは…一歩間違えば死んでいたわ」
私は、こうみえても眼だけないいのだよ。レイザーのボールが体に触れた瞬間、カード可をするのは、正直肝が冷えたがね。
「毒が完全に回りきる前に、私を殺し切れますかねレイザーさん。お互い、全力を尽くしているのだ卑怯とは言うまい」
「ぐぬぬ」
時間が経てば経つほど私に有利になる。全力が出せる初手で殺しきれなかった以上、レイザーにとっては厳しい勝負になる。
約10分後。
紳士的なスポーツとして厳正なルールの下、レイザーはレイアの前にひれ伏すことになった。一撃一撃確実にレイアにダメージを与えるが…『大天使の息吹』で完全回復されてしまい手も足も出ない状況である。暴挙にでる愚行もメルエムの前では許されるはずもなく、あえなく敗退。
その他の競技も同様にメルエムと愉快な仲間たちによって蹂躙されていった。ボクシングでは、海賊の頭が吹き飛び…相撲では、海賊の胴体が真っ二つになり…リフティングでは、海賊の頭をナイスシュートしたり…本当にどっちが悪党なのか分からないような惨状であった。
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最近は、何が正しいのかがよくわからなくなってきた。
なぜ、俺がこんな事で迷わないといけないかといえば、間違いなく兄貴とレイアのせいである。いや、デイーゴのせいでもあるな。
今更だけどさ…カナリアって本当に女なのだろうか。久々に会ったのだけどさ…カナリアが女って言われても信じられないんだよね。
容姿的に考えてさ、男性であるピトーやタマモより間違いなく格下じゃん。人形である鹿角よりも当然。だから、少しゴツイ男じゃないかと思うんだよ。
メルエムやビスケ100%が女性なんだよ…だから、本当に性別ってわからなくなってきたよ。
………
……
…
「可愛いいは正義!!」とそんなバカの事をいう野郎いわく、性別なんて些細な問題だ。要は、自分が好きか嫌いかで判断基準は十分だ。人の数だけ愛はあると…
天使キルア『そのような考えは間違っています!! 同性愛など不潔です。見た目で人を判断するなど言語道断です』
悪魔キルア『何を言っている。傾国のブスより傾国の男の娘や傾国の美少女(人形)の方が遥かにいいに決まっているだろう。天使キルアは、この二択なら傾国のブスをとるのか?』
天使キルア『傾国のブスって…そりゃ、可愛い方を取るに決まっ…』
この時、心の中の悪魔と天使が手を結んだ。
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こんな勝負でいいのだろうかと思うが、問題ない!!
次でカードが揃いようやく現実世界へ…その際に、くだらない陰謀が明らかにw
さて、作者のどうでもいい話ですが。最近、美醜反転のSSとか楽しくていろいろ読んでいるんですよね。
そういうSSもありかなと最近思ってきました。無論、まだ次回作の候補というわけではありませんがどうしようかなと考え中です。