注意事項 登場人物は殆どが8歳児です
10話突破……投稿を始めたのが9/4なので2週間で10話いってしまいました、ユニークアクセスも30000突破……
拙作に過剰なご期待有難うございます、まだまだ行きますのでお付き合いお願いします……えぇ、来週中は大丈夫。執筆できる更新できる。
10話
「海だーーっ!!」「暑ぃ……暑いっていうか熱ぃ……」「……水着だよ」
澄み渡る蒼穹の空と視界一杯に広がる大海原、そして砂浜を飾る可愛らしい少女達。
……小学三年生の夏。みんなで海にやって参りました。
「海だ海だーっ」
ピンク色の可愛らしいセパレート水着の桜子ちゃん。楽しみすぎてテンションが上がったのかきゃっほーとか叫んでます。とても可愛らしいですが、原作より天真爛漫度が上がってる気がするのは……きっと気のせいです。
「暑ぃ……」
逆にテンションが下がりに下がってるのは自他共に認めるインドア派の千雨ちゃん。肌の露出の少ないタンキニの水着に薄手のパーカーを羽織り、麦藁帽子も被って日焼け熱中症対策も完璧の模様ですが、既に前のめりに倒れこみそうです。
「……今回は水着回だよ」
何処かからか電波を受信された様子のアキラはスポーティな競泳水着タイプ。全力で泳ぐ気満々な様子ですが……桜子ちゃん千雨ちゃんと並んで立つと、抜きん出てしまうのはそのスタイルの良さ。絶対に8歳児の体型じゃないです、頭一つ抜きん出て原作時期の片鱗を見せ始めています。対面すると目の前に胸があってちょっと目のやり場に困ります。
「やけに人が多いわね」
それと、この辺りに人が多い最大の元凶となっておられる引率者。メディアさんは千雨ちゃん同様に露出を嫌ったかタンキニにパーカーに帽子を被ってられます。
……この人は大人しくしててくれれば普通に美人ですからね。この砂浜は麻帆良学園の生徒が殆どの様ですが、男子生徒の視線を集めておられます。
そんなメディアさんはきょろきょろと辺りを見渡して空いている場所を探し。
「あの辺りが空いてるわね」
……女性陣の荷物持ちとしてパラソルやらクーラーボックス等を抱える私は言われた通りにビーチマットを敷いてパラソルを立てます。
こればかりは男の仕事なので仕方がありません。アキラが私も持つよと言ってくれましたが拒否しました。これは男としての矜持です。
「ふぅ……」
ビーチマットにパラソルで影が出来ると間も置かずに千雨ちゃんが座り込みます。クーラーボックスから飲み物を取り出して一心地ついてます。ここまでの移動だけで大分疲れてる様子です。
反対に桜子ちゃんとアキラはきらきらした眼で海を見ています。今にも飛び出して行きたそうです。
「さてと……監視員も多いし、確かに安全そうな海水浴場ね」
監視員と言いますか、どちらかと言うと学園でよく見かけるようなライフセイバーが散見されます。えぇ、魔法先生の方々も居られるようで。
遠く見渡せばデスメガネ辺りに遭遇したのか、空を舞う、ちょっとやんちゃな方々も見受けられます……若い子が一気に押し寄せてるはずですからね、ナンパ目的な方もさぞ多く、悉く魔法先生に伸されるのでしょう……そのせいで魔帆良の名が広まる気がしますが。
「麻帆良から何人くらい来てるのかしら」
「直通のリニアバスを無料で何十台と往復させてるはずですからね、こんな機会が無いとなかなか海水浴なんて出来ないですし……2組とかはクラス全員で行くって聞きましたよ」
事の起こりは隣の県の一都市の町興しの一環だったはずです。環境資源の少なかった町に人を呼び込もうと海水浴場を大増設。その上で集客を求めて麻帆良学園に夏休み中のリニアバスの運営を持ちかけたとか。
……麻帆良学園と言えば住まう殆どは学生です。夏休み中ならば時間の融通が効いて、来年・再来年以降の再訪が期待できます。
ある意味賭けに出たとも言いますが。それに悪ノリしたのか学園長は快諾して夏休み期間中の子供だけでの海水浴の推奨だの、警備員の派遣だの、浴場の更なる増設だの……麻帆良のノリを外に出すのは危険だと思うのですが……実行したようです。
……見たところ、認識阻害結界の緊急展開準備までしているようですし。麻帆良で汚染する気ですかこの海水浴場を。
結果として、麻帆良学園に付属海水浴場が出現しました……えぇ、目の前のノリは最早、そう評するしかありません。
海水浴場に麻帆良の生徒が来たではなく、麻帆良が割りと近い海水浴場を飲み込んだ感じですね。
「……つくづく、ノリと勢いが好きな学園ですね」
麻帆良祭で理解したつもりでしたが、近隣都市全体飲み込む気じゃないでしょうか。
「良いじゃない、私は楽しめそうよ」
今回は何時も通り桜子ちゃんが行きたがり、引率にメディアさんが名乗り出て、アキラと千雨ちゃんも巻き込んで海水浴と相成りました。
「くそ、来るんじゃなかった」
そして、速攻で後悔した様子の千雨ちゃん。麦藁帽子を目深に被って音楽プレイヤーのイヤホンを耳に当てます。
偶には外に出てきなさいと母親から強制参加を言い渡されたみたいです……まだ家暮らしですからね、小学校卒業後に千雨ちゃんの引き……インドアライフが始まるんでしょう。
「……泳ぎに行ってもいいかな」
わくわくと、広大な海を眺めながら今にも駆け出しそうなアキラ。
泳ぐの好きですからね、部活に入れるようになったら水泳部に入ると断言してます。体育の授業でも一番早いですしね。私と2人、25mプールは狭いと意見が合います。小学校低学年のうちはこれ以上は駄目らしいです。
「千雨ちゃんは引き篭もって、メディアさんは……影から出る気はなさそうですね」
夏場の太陽光はお肌の大敵ですしね、メディアさんは基本あそこに……
「何が言いたいのかしら?」
ニコニコと、笑っておられますが桜子ちゃんが傍にいるので、然程プレッシャーは感じません。
「朱雀はどうする?」
桜子ちゃんは砂遊びに興味を持ったのか、近くの子が作ってる『砂の城』を眺めながら真似を始める模様です。
……えぇ、近くに居るあのお下げの女の子。凄い砂の城を作ってますね……機械とかを多用して……メディアさんも、そう言うのが好きなので興味が有りそうです。
千雨ちゃんは写メ撮って、ネットに上げていいか交渉してます。それくらい凄くて、一般常識レベルの範疇の『砂の城』です、余程綿密に耐久設計したんでしょうね。あの眼鏡で白いパーカー羽織った同い年くらいの女の子。
……えぇ、おでこが広くてスクール水着に『はかせ』と書かれてますが、突っ込みませんよ。
「私も泳ぎに行きます、少し身体を動かしたいですし」
ディルムッドに能力を預けて弱体化しましたが、まだまだ一般人レベルではありませんので学園の25mプールは狭くて窮屈でしたし、思う存分泳いできましょう。
「競争しますか」
「うん、いいよ」
くすりと、僅かに微笑み交わして海辺へ走り出します。
足がつかなくなった辺りから泳ぎだして。
「よーい、どん」
アキラの合図で泳ぎだします。勿論全力を出せば勝てるでしょうが、そこまで大人気ない真似はしません。
ある程度に手加減して……して……
「ちぃぃっ、ぬおおっ」
前言撤回です、全力出し切ります。力の限り水をかいて。力の限り蹴り出します。
忘れてました、学園のプールでは私達は全速を出さないまま25mを泳ぎきります。
今は泳ぐ距離は数十倍に長く、何より波があります。
すいっ、すいっと人魚のように波の流れに逆らわず綺麗なフォームで殆ど蹴り足での波飛沫も立てずに前へ前へ進んでいくアキラ、とても楽しそうで綺麗な泳ぎ方です。
ドバァッツ
対して、力任せに水を蹴ってとにかく前へ進むことしか考えない私がいます。ドババァッともの凄い勢いで私の背後にバタ足の爆音が鳴り響きます。
英霊クラスのスキルは持ってるんですが、今の私の身体の基本はギルさんです。果たしてギルさんが自分で泳ぐような真似をしたでしょうか……神輿に乗って渡るくらいは経験してそうですが。水泳のスキルはゼロでしょう。
要するに、力任せに水を蹴るくらいしかできません……幸い肺活量には自信があるので息継ぎを捨てて潜水で追いすがることは可能です。
しかし、それでもじわじわ引き離されてる気がします。クスクスと息継ぎの合間に笑われてるような気もします。
まさか、水泳がココまで技術を必要とする競技とは、とにかく力任せにバタ足すれば追いつけると思ってたんですが……思惑を完全に外されました。
……とにかく能力任せしか私には出来ません。力任せに水を蹴ります。それで漸くアキラと並び、アキラの反対側に別の影が浮かびます。
「……え……」
アキラも三人目に気付いたのか、少し息を呑んで。
影も潜水でここまで追い縋ってきたのか、一度口元だけを水面に上げて息を吸い込むと。潜り込んで一気に前に向かって泳ぎだしました。
表の最速レベルの競争に釣られたチャレンジャーですか……麻帆良には比較的よく居るタイプです。
「……負けない」
そして、アキラも全力を出したようです。
えぇ、今まで手を抜いてたみたいですよ……私が追いつけるギリギリで泳いでいたアキラは突然の乱入者が猛スピードで振り切ろうとするのを追いかけていきました。
……置いてきぼりですね。
とりあえず、眼はいいので全力を出したアキラと、乱入者の影を眼で追って、じわじわとアキラが差を詰めています。
……身長とか発育具合は同じくらいに見えますが、アキラは同年代では抜きん出て背が高くて発育が良いですからね、二つ三つどころか中学生でも不思議ではないんですが。
……何でしょうかね、水着が特徴的ですね……水着と言うか、胸に布を巻いて褌な気がするんですが。まさか見間違いでしょうね、時代錯誤な忍者でもない限りそんな格好の筈無いですし……
後すいません、真面目にとんでもない速度と……何よりアキラのフォームに波飛沫が殆ど無いです。
挑戦者らしき影が水をかくたび飛沫が起こります、それは当然なんですが、アキラはそれが殆ど見えません。所謂理想的なフォームと言うやつなんでしょうが。
水中と言うのは通常に比べ遥かに抵抗の大きい空間です。通常の動きが数倍から数十倍に遅くなるくらいの、自力の差がどれだけ大きくても、抵抗のロスはさらに大きく影響するんです。
そして、抵抗が大きいほど疲労も溜まりやすいです。
現に、眼に見えてアキラは先行するチャレンジャーとの差を詰めていき。
そして、負けそうになった乱入者は、アキラに追い抜かれて負けが確定した時点で勝負を諦めたのか……海面を駆け抜けてアキラを追い抜き返しました。そして後頭部を打ち抜かれました。
「……いや、それはさすがに無いでしょう、一応麻帆良じゃ無いんですから……」
まだ幼いだろう、細目の少女は追い抜かれた瞬間に咄嗟に水面に手をかけて海面に駆け上がると。そのまま走り出しましたからね。
えぇ、水面を走り出しましたよ。
そんな海上走行する忍者娘に砂浜から居合い拳が放たれたようです……かなり距離があるので威力は殆ど削がれたようですが、こんな距離届くんですかアレ、豪殺ですかね。
褌少女はいきなり押されたせいで前のめりに倒れて大回転。ぷかぁっと浮かんできます。
アキラも泳ぎの手を止めて立ち泳ぎでいきなり卒倒した少女を見てます。
「……何?」
「熱中症でしょう……シンクロのようにいきなり海面に飛び出しましたから」
普通に拳圧で後頭部を打ち抜かれたんですが、態々説明する気にはなりません。
「……さっき、この人、走ってた?」
まぁ、間近で見てしまった以上、仕方ないことではありますが。
「アキラも熱中症ですか? この子と2人、砂浜まで背負っていきましょうか」
敢えてシラを切ります。
「……当ててんのよ……するよ?」
誰ですか要らない知識をアキラに植え付けたのは、千雨ちゃんですね、たぶんきっと。
「では、堪能させていただきましょう。当ててください」
一気に真っ赤になって胸の辺りを手で隠します。いや可愛いですが。
普通に膨らみがあるんで、万一当てられたら私も動揺するでしょうけどね、何だか背伸びしてる感じがあるアキラには良いクスリでしょう。
ふと、チャレンジャーがぷかぁっと浮かんでいた辺りを見ると、居なくなってました……代わりにシュノーケルのように細い木の筒が一本遠ざかっていきます。
「……とりあえず、戻りましょうか」
何時の間にか随分と砂浜から離れてしまいました。
全速で泳いだせいで息も上がっていますので。ひとまず砂浜に向けて泳ぎだします。
「それにしても、アキラは速いですね」
「うん……水の中の方が調子いいかも」
かなりの力持ちで裏の人間でも目を見張るほどの瞬発力を持ってたはずですからね。クロールから背泳ぎに泳ぎ方を移しますが殆ど速度が変わりません。
「……これからは、毎年来ましょうか、海」
「……行けると嬉しいかも……」
1人で海に来るのは大変ですし、性格的に旅行を立案する事も無いですからね、私の方から企画してみましょうか。
……一番の問題はインドア派が深行の一途を辿る千雨ちゃんですが。
「……ねぇ、あれって」
砂浜が近付いた辺りで目立ってきた光景にアキラが指を指します。
「……きっとティーヴィーチャンピオンのサンドアート王決定戦でもやってるんですよ」
……私達がパラソルを挿した辺りに有った砂の城が進化を遂げています。と言いますか、隣に新たな城が建設されたようなんですが。
「むむっ、そんなバランスでは柱が崩れますよ。建築の際には基礎工事が最終的な耐震構造にも結びつきます。私の計算ではそのバランスを保つにはg単位の正確な整合性が必要と考えられ」
「これくらいかな」
「そんな、崩れませんでした、今の一瞬で不必要な砂の重量を計算して必要量だけをそんなスコップだけで削り取ったと言うのですか」
「え、何となく、これくらいかなって」
……ギャラリーの中心で桜子ちゃんとお下げの子がやり取りしてます。
魔法先生とかも感心して見てますので近付くつもりは有りませんが、ちなみに砂の城の砂を積み上げるのはお下げの女の子が夏休みの自由研究で作った自動砂積み上げマシーンとか使ってるらしいですがスルーです。
メディアさんはあっちに憑いてるみたいですね、荷物を置いたビーチマットには千雨ちゃんだけのようです。
「ふぅ、一泳ぎしてきましてけど……千雨ちゃん?」
パラソルの下では千雨ちゃんが目頭を押さえて考え込んでます、千雨ちゃん的に麻帆良の有り得ない光景を見たときに良くしてる行動ですが。
……左手には何を見ていたのか双眼鏡……
「……千雨ちゃんも熱中症ですか?」
「そ、そうだな、右足が沈む前に左足を出せば良いとか迷信だしな、うん、ちょっと幻覚が見えた」
「大丈夫? 頭冷やす?」
「いや、良い、それは死亡フラグだ」
OHANASHIですね。
「そっか、海に入ると涼しいよ?」
「無茶言うな、あんなスピードについていけるか、て言うか……足がつかない」
千雨ちゃんは泳ぎがあまり得意ではありません。まぁ、小学三年生で遠泳できる私とかアキラとか謎の忍者さんの方がおかしいんですが。
これを麻帆良だからで周りが許容してしまうんで尚更千雨ちゃんは不機嫌です。
「そっか、浮き輪あるから膨らますね」
用意しておいた浮き輪をアキラが息を吹き込んで膨らませます。かなり大きいサイズなんで大変そうですが。
と言うか、遠泳で往復してきた後ですしね、半分くらい膨らませたところで息が詰まったのか一旦、膨らませるのをやめます。
「代わりますよ、アキラ。1人でその大きさは大変でしょう」
「ぐ」「え……え、あ、え……」
現に、アキラの顔は真っ赤です。少し無理をしたんじゃないでしょうか、真っ赤な顔で千雨ちゃんと私を交互に見たあと、半分くらい膨らませた浮き輪を見下ろして。
「……よ、よろしくお願いします」
真赤な顔のまま浮き輪を差し出してきます。吹き出し口を塞いでいた指を代わると、大きく息を吸い込んで一気に息を吹き込みます。
すぐに浮き輪はパンパンに張りますから、破裂しないよう適度に息を調節します。
「ふぅ、こんな物ですかね」
久しぶりに触るものなので加減がわからないのでアキラに渡して確認してもらいます。真っ赤な顔のアキラは何故か浮き輪の吹き出し口を凝視して。
「……は、長谷川も膨らませる?」
「……何でだよ、いいからさっさと浮き輪よこせ」
真っ赤な顔のアキラと、何故か急に仏頂面の千雨ちゃん。浮き輪を渡してもらった千雨ちゃんは何故か不機嫌そうに海に歩き出してます。
……実は、ちょっと精神的に疲れたんで休憩したかったんですが、まぁ、体力的には平気ですし行きますか。
……ただ、少し喉は渇きました……
「千雨ちゃん、一口貰いますね」
アクエリオンと言う、運動時に最適な飲料水をクーラーボックスに入れておいたんですが、一口程度の水分補給がしたかったもので一本開けるつもりはありません。
ただ、幸いと言うか、さっきまで千雨ちゃんが飲んでたらしいソレが、ほんの僅か残ってましたので頂く事にします。
「ん?何を……って、ぅお……ぃ……」
パラソルの下から出たせいか千雨ちゃんまでアキラと同じく真っ赤になってます。
早めに海に入れたほうがいいですね、浮き輪が有れば麦藁帽子のままでも大丈夫ですし。
「さて、行きますか……」
「……こ、この天然ジゴロは……」
「……椎名も、やられるのかな」
何だかディルムッドの渾名が聞こえた気もします。彼も呼んであげれば良かったですかね……メディアさんほど力の隠匿が得意でないので魔法先生の前には出しずらいのが問題なんですが。
ともあれ、まずは千雨ちゃんを海へ連れ出す事にしましょう。
「じゃ、行きましょうか、2人とも」
2人とも顔が真っ赤ですからね、早く海に入ったほうがいいでしょう。
夏の海は楽しいですね。
……参考までに、9/24に作者が心の底から心待ちにしている某ゲームのファンディスクが発売されます。
……そこで急に更新速度が落ちる可能性がありますので……申し訳ないので先に宣言しておきます。
更新が滞ったら良作に巡りあえ、当たり前のように更新してたら……慰めてください(ぉぃ