本編は過去話です
中学1年時分の内容となりますのでお気をつけください
番外編1
「かったるい……けどまぁ、偶には良いか」
「ごめんね、我侭言って」
「アキラがお願いするなんて滅多にありませんからね」
「ん〜楽しそうだけど、ちょっと変な感じ」
「保護者同伴必須ね、そう保護者、私は桜子ちゃんたちの保護者」
中学一年の学園祭、今日はその一日を使って学園のイベントに参加する事になりました。
中等部に進学してからは、私はみんなと学舎が別れてしまいましたが、千雨ちゃんとアキラは桜子ちゃんは同じ中等部に進学し、クラスも同じになりました。
特に桜子ちゃんは、幼馴染だと言う柿崎さんや釘宮さんとも同じクラスで大喜びでした。
で、学校は分かれてしまっても何だかんだで接点はあるんですが。学園祭では最低でも一日は一緒に回ろうという約束をしました。
そして、せっかくだからと思い出作りをしたいとアキラが言い出して。
「図書館島探索トライアルね……滝登りでもしろってのか」
今回の学園祭の目玉イベントの一つでもある、図書館島探索のレコード記録挑戦に参加する事になったわけです。
最低でも参加賞はもらえますし、良い所まで行ければ、みんなで共通の景品がもらえるということで。形ある何かが欲しかったみたいですね。
「つか、朱雀は学祭中、図書館島には近付かないんじゃなかったっけか」
「黒歴史を思い出しそうになるんでやめてください、あの界隈には絶対近付きませんからね」
嘗て、二度も参加させられた『麻帆良祭(秘)コスプレコンテスト』……あの記憶は……記憶は……
「■■■■■■—■■■■■■■——■■—■■■■■」
「あ、久しぶりだね影羅、最近見かけなかったから心配してたよ」
「アキラ、やめてやれ、もう追い討ちはかけないでやってくれ……ま、まぁ、うん。朱雀はあのイベントには近づかないほうが良いぞ、うん」
……えぇ、HPで参加するかもとか書かれてましたよね。
例えトラウマを掘り返される事になろうと、絶対隠れて見に行きますよ。
ふと、メディアさんと視線が重なって頷きあいます。
この瞬間、私達には共通のシンパシーが生まれました。
「そろそろ出発だって」
「あら、そうなの、行きましょうか」
基本的には、本当に危険な場所には入れないようになってるらしいので、割と気兼ねなく足を踏み入れます。
そして、感じるのは僅かな魔力……メディアさんも気付いたのか、少し眉をしかめます。
「ん〜……こっちぃ」
そして、先導していくのは桜子ちゃん。
アキラも千雨ちゃんもこういう自己主張はあまりしませんからね。自然桜子ちゃんがルート取りをするようになり。
「んー……あれ、こっちじゃなかった、あっちだ」
突然方向転換して来た道を戻り始めます、
少し怪訝に思いましたが、桜子ちゃんが駆けていくので追いかけて……
「あれ、微妙に道の雰囲気が変わってるような」
「……朱雀、少し警戒しておきなさい」
……そう言えば、この図書館島には厄介な司書長がいるはずですね。
学祭期間中だけ、魔法世界の英雄の力を取り戻す愉快犯が。
密かに仮契約カードからアーティファクトを取り出します。
見た目は古めかしい一冊の書物……なんですが。
「……何だそれ」
千雨ちゃんが、私が取り出した書物に注目します。
いえ、気付いて欲しくはなかったんですが。
「いえ、大したものではないんですが……」
「朱雀の切札みたいなものよ、桜子ちゃん、あんまり先に行かないでね」
メディアさんの言葉に千雨ちゃんの眼が優しいものになります。
「……そっか……でも、そう言うのは誰にも見られないよう、部屋の隅にしまっておいたほうが無難だと思うぞ」
何か凄く嫌な想像をされました。
所謂、中二的な設定ネタ帖とか思われてませんか。
「いえ、違うんです、これはそうじゃなくてですね」
「そうだな、うん、フルネームで私の名前を書くのとかもやめてくれな」
ちなみに、中身を確認されたらまさしくそんな感じの内容が綴られていますから、確認してもらうわけにもいきません。
1P目からセイバーとか 能力値とか 宝具とかの項目がありますからね。
えぇ、中身はどっからどう見ても『僕の考えたかっこいいサーヴァント』ノートです。
弁解は余計な傷を作るだけと判断して黙り込みます。
「……影羅はそのノートの中に居るんだね」
「微妙に当たってますが勘弁してください。千雨ちゃん、アキラにネタギャグを仕込むのはやめてください」
「アキラが言うから効果が高いんだよ……て言うか、知らん間に随分奥まで来てないか」
えぇ、罠があったりと危険度も上がってきているようです。
先頭を行く桜子ちゃんは何かを探すようにきょろきょろ視線を彷徨わせていますが。
「アキラー、あれが取りたいんだけど取れない?」
壁の上の方を指差します、結構高い位置に青いリボンが飾られています。
ただ、さすがにアキラや私でも背の届かない高さですが。
メディアさんがひょいと、指を振って魔術で取り寄せようと……偶然落ちてきたように見せかけようと……しますが、何らかの対魔処置が施されているのか動きません。
無論、きちんとした術式なら通用するんでしょうが……
「私がアキラに肩車してもらって、アキラが朱雀の上に乗ったら届きそうだよね」
その乗るは、まさしく肩とか頭の上に足を乗せる的な乗るですよね。
そして既にアキラと桜子ちゃんは肩車を始めてますね……やるんですか、そうですか。
「……眼は閉じててね」
「絶対に上は見ませんよ」
スカート姿の女の子を肩に乗せた状態で上を見るほど愚かではありません。
と言うか、私やアキラならジャンプしたら届きそうなんですけどねぇ。
……壁に向かって手をついて目をつぶっていると、アキラが肩に手をかけて、軽い掛け声と共に肩の上に乗ります。
女の子二人分の重さが肩にかかるわけですが、然程苦にはなりませんね。
「ん〜、取れそうで取れない……」
「大丈夫、高いから気をつけてね、あぁぁ、けど頑張ってる桜子ちゃんも可愛いし」
「……あんま無茶すんなよー」
声から察するに、リボンには手が届いたようですが引っかかってるのか取れないようです。
それでも、何とか力を込め。
ふと、魔力を感じました。
「きゃっ」「うわっ」
その直後、肩に乗っていた重みが突然軽くなって、桜子ちゃんとアキラの悲鳴が聞こえました。
慌てて上を仰ぎ見て。
「ぶっ……」
「あっ……」
「わっとっと」
……最初に目に飛び込んできたのはアキラの太股と、白い布キレに覆われた何処か、そのまま顔に激突してきました、アキラの背中を抑えて辛うじて踏みとどまります。
直感で桜子ちゃんの墜落ルートを察知して、抱え込むように掴み取る……一瞬で此処まで対処できたのですから私なりによくやったと思いたいです。
「…………/////////////」
問題は、立ったままで、落ちてきたアキラを受け止めた結果。肩車のような状態でアキラを受け止める事になったこと……通常の肩車とは、アキラの体制が前後逆で。
それでアキラの背中を抑えてるので、自分からアキラのスカートの中に顔を突っ込んでるようになってしまっています、顔の横にはアキラの太股があって、目の前には……
もにゅもにゅ
後、アキラのスカートに顔を突っ込んでるので見えませんが、桜子ちゃんを受け止めた手がとても柔らかい膨らみを鷲掴みしています。
「……あう、ちょっと恥ずかしい……」
一体何処を揉んでるんでしょうかって。
「何時までその体制で居やがるっ」
千雨ちゃんの怒声と共に蹴りが入ったので慌てて桜子ちゃんを解放して、アキラを下ろします。
そして、この後訪れるだろう、メディアさんの叱責に……
「……良い度胸ね」
……何だか珍しく、メディアさんは私に怒りを向けていません、と言うか寧ろ。
別の誰かを敵認定したようです。えぇ、良い笑顔で笑っておられます。
そう言えば先程、アキラ達が体制を崩す寸前に魔力を感じました……バランスが崩れたのは、その誰かの介入だったのかも知れません。
眼を閉じていた私はともかく、メディアさんはそれを察知したのでしょう。
「て、桜子ちゃん、アキラ、大丈夫でしたか」
「あ、うん、ちょっと恥ずかしかったけど、仕方ないよね」
胸を押さえている桜子ちゃん、えぇ、緊急事態でしたから、仕方なかったんです。
「あう、あう、あう……」
怯えた様子でスカートを抑えて後ずさるアキラ、えぇ、非常に申し訳なかったです、とても柔らかかったです。
「ええと、緊急事態でしたので咄嗟に抑えてしまいました、不幸な事故だったんです、申し訳ありません」
「……本当に不幸だったと思ってんのかね、ラッキースケベが」
千雨ちゃんの仰るとおりです、思ってません、役得でした。後、何故にそこまで不機嫌でしょうか。
「朱雀、今回は怪我なく済ませたから構わないわ、それより召還しておきなさい」
召還……つまりはディルムッドを呼んでおけと言うことでしょうが……
「これからは探索じゃなくて、狐狩りよ」
すいません。余計な悪戯を仕掛けてきた誰か……恐らくは司書長……
自業自得ですから諦めてください。
「ランスモード……いえ、まったく別人の姿をさせますが」
「勿論よ、前に言ってた魔改造フルスペックモードだったかしら、アレで呼びなさい」
ネギ少年村襲撃事件で密偵させていたときのモードですね。
まぁ、千雨ちゃん達が居る以上、私が表立って動くわけには行きませんし。
「……メディアさん、召還って何ですか? それに、魔改造って」
ふと、横で話を聞いていた千雨ちゃんが不思議そうに聞いてきます。少しまずかったかと思いますが。
「朱雀の特技よ」
すいません、普通に頭痛い人にしか聞こえない回答です。
「メディアさんが付き合ってやるから悪化するんじゃ……いや、私も受け入れるべきなのか」
後、千雨ちゃん、もう少し小さい声でお願いします。
私のハートが傷つきます。
後、アキラはそろそろ落ち着いてきたようで。
「……あ、当ててたのよ」
「だから、アキラにネタギャグ仕込むのはやめてくださいって、と言うかアキラも、さらに恥ずかしくなるんだったら言わなくてもいいでしょう」
「桜子ちゃん、どっちに行けばいいのかしら」
「ん〜 こっちぃ」
そこのマイペース2人はさっさと先に進みます。
まぁ、下手に立ち止まってるから余計なことを考えてしまうんです。桜子ちゃんのナビで先に進んで。
……影でこっそりディルムッドを召還しておきましょう。
「ん〜、この先に行きたいんだけど」
ふと、閉ざされた扉の前で足を止めます。
扉の鍵は閉ざされているようで、何かを入力して開錠するような仕組みになっているようです。
表面には古めかしい魔方陣が飾られていますが……こっちの世界の魔法の勉強は続けていますが、見たことがないような様式ですね。
メディアさんも首を傾げています、けど……何処かで見たことがあるような。
「……よ、要は、この暗号を解けばいいのか」
「うん、この先に何か居そうだから」
有りそうじゃなくて居そうですか。
桜子ちゃん、最初からそれを追いかけてたんでしょうかね。
「千雨ちゃん解けるんですか?」
「……たぶんな」
暫く魔方陣を眺めた後、深く溜息をついて—————「こんなネタ仕込む辺り、作ったやつは間違いなく性格悪いぞ」—————入力する部分に何事かを入力します。
鍵はガコンと景気のいい音を立てて開き。
扉を開けたその先にはエレベーター。
先程拾ったリボンと連動して動き出す仕組みのようで……一瞬、メディアさんが3人に見えない位置から凶悪な呪詛を放ちます。
……たぶん隠れて見てたんでしょうが、掠めましたね。ディルムッドも追跡を開始しました。
「さぁ、行くわよ……ふふ、私から逃げるなんていい度胸ね」
青いリボンに反応するようにエレベーターが動き出します。
狐狩りはまだまだ続くようです……
アキラタンとサクラコタンが足りなかったから書いた(ぉ
たぶん続かないw