番外編2
桜子ちゃんが福引を引きました。
最早説明は不要かと思います。
……ともあれ、景品は家族で行く3泊4日のスキー旅行だったそうです。
3名分の宿泊料とリフト券等が無料で楽しめるのだとか、普通に考えればご両親と3人で楽しんでくるのでしょうが。
「千雨ちゃん達と行ってみたい」
「良いわよ、行ってらっしゃい、あぁ、メディアさんを誘うと朱雀君も来ると思うから、頑張って落としなさいね」
「うん、あの人なら警備も万全だしな、けど、落すのはあんまり頑張らなくてもいいからな」
「はぁい」
以上、5秒で終わるご両親の説得でした。
勿論、中学一年生の女の子3人のみで旅行などと言う無謀な挑戦が麻帆良以外で許されるはずもなく……一部ウェールズに自家用機で旅立つ強者も居るが、あれも財閥から警備的な意味の保護者が居ただろうし……保護者が必要になり。
当然のように、暇と財力を持て余しているメディアさんが名乗りをあげ。
「私達は高速道路を走っているのですと」
「何だかよく分からんが、逃避してたのかお前」
ぼんやりと景色を眺めていたせいで少しばかり回想モードに入ってしまいました。
ちなみに、千雨ちゃんは携帯電話でネットに繋いでモバイルPCを弄ってます。
桜子ちゃんとアキラは車に積み込んだ大型のテレビモニタでゲームをやっているようです。乗車定員8名の大型車なので、運転席の後ろにモニタを持ち込んでも余裕があります。
メディアさんもゲームに混ぜてもらっているようです。
まぁ、ちょっと車酔いしてそうですが……アキラと桜子ちゃんは全然平気そうです。
ちなみに、何故車での移動になったかと言うと、CMを眺めていたメディアさんが『ファミリーワゴン』と言う言葉に心惹かれたかららしいです。
運転手とおまけ一名に不満はあるようでしたが、出発してから暫くは『私のファミリーワゴンに3人が……』等とトリップしてました。これで運転手があの人ならとかぶちぶち言ってましたが。
で、不満を持たれた運転手は。
「皆さん、もう直ぐSAがありますが、休憩は如何ですか」
その為だけに魔法世界からの臨時参加となったディルムッドが努めています
実はこれまで、千雨ちゃん達と会うのは可能な限り避けてきたんですよね……理由は分からないでもないですが。
ただ、今のクラスの今後を考えると危険度増大は間違いないので、今後危険があるかもしれない旨伝えると、顔合わせのためにも参加を承諾しました。
「私は平気だけど」
「渋滞してないうちは走った方が良いんじゃねぇ……ですか、まぁ、この面子は渋滞には無縁な気がしますが」
実際、麻帆良を出発してから渋滞等に引っかかったことは一度としてありません。ニュースでは結構混んでる道も有るはずなんですけどね。
とりあえず、スムーズな交通状態のお陰で特に問題は無いようで。
「……むしろ、ディルムッドさん大丈夫ですか? 運転しっぱなしで」
出発からずっと運転を続けているディルムッドに千雨ちゃんが声をかけます。
目的地は仙台なので、それなりの運転時間になる予定で。
「ご心配なく、体力と運転技能には自信がありますので」
それに、むしろ誇らしげに応えるディルムッド。
ちなみに、今私のクラスはライダーで、ディルムッドのアーティファクトでそれを与える形になっています。
【騎乗】 A+ は基本なんでも乗りこなせるスキルです。
「メディアさんは運転とかは出来ないの?」
ふと、気になったのか後部座席で一緒にゲームをしているメディアさんに尋ねる桜子ちゃん、ただまぁ……
「う……操縦するのは得意なんだけど……運転は」
その操縦は間違いなく『人を』ですよね、うまく望む方向に動かす的な意味で。
私が会社を放置してたら、権力を好きに使っていいかと聞いてきて、許可を出したら直ぐに頂点に上り詰めました。
人を使うのは本当に上手いみたいです。
「ま、まぁ、もしもの時は朱雀に運転してもらうということで、あの子、運転は凄い上手だから」
「……って、お前、免許も無しに運転したことあるのか」
それはまぁ、【騎乗】なんて技能を手に入れたら乗りこなしてみたくなるじゃないですか、モンスターマシンを。
……えぇ、ZEROに出てきたモンスターマシン、懐事情に余裕が出てきた頃に作らせて見ました。もの凄く楽しかったです。
いい機会なので、四輪車とか小型飛行機も試してみましたが、本当に何でも運転できるんですよね。
「知り合いの私有地で、ですけどね、バイクと車、両方運転できますが……免許も無しに公道で運転はまずいでしょう」
「ふーん、私達の歳でも運転できる場所があるんだ」
桜子ちゃんが興味を持っているようです。
そう言えば、やってるゲームは配管工がカートに乗って前を走るカートにミサイルをぶつけたり、地雷を撒いたりするゲームでしたね、興味を持ったんでしょうか。
「桜子ちゃんも興味があるの? ああ言うのは男の子だけだと思ったけど」
実際、見物していたメディアさんは即飽きましたからね。
私は凄い楽しかったんですが。
「ちょっと興味あるかも」
「そう」
にこにこと微笑むメディアさん、ゲームが一段楽したところで、『ちょっとごめんなさいね』と断って携帯電話を取り出します。
……まぁ、大体想像はつきますが。
後、電話してる中の単語の幾つかに不穏な響きがあって、千雨ちゃんも思わずメディアさんに眼を向けます。
「……みんな、最終日はちょっと早く帰りましょうか、その日に知り合いの私有地が借りれそうで、乗り物も用意して貰えるって」
即断即決は大したものです。
いえ、本来その権力を使うのは私とか桜子ちゃんの筈なんでしょうが。
「カートとか?」
「えぇ、子供でも運転できる大きさで……何キロくらいで走るんだったかしら」
「80kmくらいですかね……体感速度はもっと速いはずですが」
モンスターバイクで時速300キロを叩き出した事があるので、私的にはそれほど早いとは思えませんが。
普通は十分な速さのはずです。
とりあえず、桜子ちゃんとアキラが乗り気になったようなので、私有地でのカートの体験は確定のようですが。
「……メディアさん、その私有地って……何処に有るんです?」
引きつった表情をしてるのは千雨ちゃん。
「帰り道の途中よ、茨城県にあるって言ったかしら」
「……さっき、筑波とかサーキットとか口にしてませんでした?」
「えぇ、その私有地はそんな名前らしいわね」
それは私有地では在りません、れっきとした日本が誇るレース場です……
たぶん借り切ったんだろうなぁ……どれだけ凄いコースかまるで理解してないで、何か良い所は無いか先輩とかに無茶振りして。
「……おい、朱雀……この車見たときから思ってたんだが、メディアさんてかなりの金持ちか」
千雨ちゃんが小声で話しかけてきます。
えぇ、千雨ちゃん達を迎えに行ったこの車、納品は昨日でオプション全部乗せの新車ですから。新車特有の臭いは嫌ったメディアさんがさっさと取っ払いましたが、雰囲気までは消せませんから。
とりあえず、ファミリーとか名のついてたオプションは全部優先的につけられました。
チャイルドシートはさすがに外して、大型テレビを備え付けましたが。
「かなりじゃありません……とんでもない、です」
私と桜子ちゃんも、ですが。
あんまりお金持ちらしい暮らしって興味が無いので、身の回りのものは、そんなに高級品じゃないですけどね。
唯、使う時は一気に使います。この車然り。
「なんならこの車も運転してみる? ディルムッドか朱雀を助手席に乗せておけば安全だから」
それはまぁ、事故っても運転席から救い出すくらいの事は出来ますが。
たぶんディルムッドは身を引くので私の役目に成るんですよね。
「ぶつけたら……」
「良いわよ、この旅行が終わったら飾るだけだから」
旅行の記念品ですね、むしろメディアさん的には傷がついたほうが喜ぶかもしれません。
とりあえず、呆れた千雨ちゃんはモバイルに向き直り。
主を乗せて目的地へ走ると言う役目を帯びたディルムッドは嬉しそうにハンドルを握っています。
目的地仙台ははまだまだです。
その後、SAを物色しつつ仙台入り。
一日目は移動だけでも疲れるので、スキーをするつもりはありません。
二日目、三日目はどちらも朝から晩まで楽しめるわけですしね。
と言うわけで、仙台市内に入ればまずは食事。
厚切り牛タンを堪能します……実際分厚いですからね。
「すいません、写真撮ってもいいですか」
HPにスキー旅行をする予定だと書き込んでいた千雨ちゃんは料理の写真を撮らせてもらっています。
どんな旅行記になるか楽しみにしておきましょう。
「食事のお金とかは」
「子供はそういうことは気にしなくていいのよ、お姉さんに任せておけばいいから」
けど、財布を預けられたのは私とディルムッドなんですね。
まぁ、確かに男の仕事だと思うので良いんですが。後ディルムッド……行く先々で店員の女の子やら通りすがりの女の子の目を引きますが。
メディアさんが傍にいるせいで妬みの視線がメディアさんに……まぁ、気にもしていませんが。
美男美女で並んでると絵になるんですけどね、実際傍目にはカップ……すみません、もの凄い目つきで睨まれたので今の思考はカットします。
えぇ、何も考えてませんよー
さて、仙台市内の観光も終えて雪山へ。
滑りやすい路面もすいすいと登っていきます、この辺りはさすがにファミリーワゴンと名がつけば後は採算度外視した最高級車ですね。
……と言うか、本当に採算度外のため、エンジンにターボつけたらしいですからね、見た目はファミリーワゴンですが、アクセルを踏み込めば何処までもいくモンスターらしいです。
どんな羊の皮を被った狼ですか……
ふと、雪がチラホラと降り始めた頃から桜子ちゃんたちも景色を楽しむようになり。これから3泊を過ごす旅館に着きました。
旅館『嵐山 仙台』……何処かで聞いたような気がしないでもないですが……気のせいですかね。
直感が、思い出さないと大変な事になると叫びつつも、まぁそれはそれで有りだがと叫んでるような気がします。
見た目からして高級旅館っぽいから危険等無さそうなんですが。
「あら、良さそうな旅館ね」
「あれ、メディアさんが選んだんじゃないんですか?」
「桜子ちゃんが此処が良いって言った場所を何とかしただけだもの」
えぇ、歓迎の立て看板に『椎名様ご一行』しかありませんものね、駐車場も空いてますし、旅館の人全員でお出迎えですからね。
ここも貸切ですか、そうですか。
「まぁ、良いですが……私とディルムッドで荷物を運び入れておきますので、先に部屋に行っててください」
「えぇ、あ、当たり前だけど男部屋と女部屋に分けたわよ」
「当然ですね……ディルムッドは……」
「貴方との同室は避けるかもしれないわね、まぁ、部屋なら幾らでも空いてるでしょう」
魔法世界で主とのあらぬ噂のあるディルムッドと同室は少し気がかりですしね。
常に一歩引いた態度の彼なら、それくらいはありそうですし。
私達は荷物を運び入れ、一旦は其々の部屋に入ります
当然、私はディルムッドと2人きりになり……
「朱雀殿、失礼ですが、私は別の部屋を使わせていただいても」
「あ、やっぱり、そう言うか」
ちょっと安心したのは内緒です。
「はい、どなたかを部屋に招かれる際にも私が居ては不快に思われるでしょうし」
ちょっと、とんでもない理由も飛び出してきましたがスルーで。
いえ、誰も招きませんよ。何と言うか……ディルムッドの中では幼馴染達は私の伴侶候補となっているようで、彼の認識だと主君たる私はこれくらいの年齢ならそれくらいは当然で……うん、スルーしますよ。
「あぁ、まぁ……いいですが」
寮ではルームメイトも居ますが、施設では1人部屋でしたし。慣れてますし……間違いなく、1人で寂しいなんて思う暇は与えられないでしょうし。
「はい、それと直ぐに食事の準備との事でして、メディアからこの部屋に料理を運び込ませても構わないかと」
宴会場では広すぎるでしょうし、この部屋でも5.6人の家族が過ごせるくらいは広いです。
私と千雨ちゃん達、メディアさんとディルムッドでも6人……十分すぎるでしょう。
「それと……一応、酒の注文はしてありますが、朱雀殿の貯蔵する宝も出して欲しいと言っておりました」
「そろそろ溜まりましたかね……酒器自体が宝具なんで放っておけば増えますが……あぁ、十分そうですね、二人が飲むにも……」
「……宜しければ、朱雀殿も如何でしょう……」
主従で酒を交し合うというのはディルムッドの望みに適うでしょうね。
えぇ、お酒は二十歳になってからですが、これは謎の空間から現われた謎の液体ですしね。
陽気になって、悪酔いせず、二日酔いもなく、少しでも眠れば直ぐに爽快な気分で目覚められる奇跡の液体です。そう決めました。
……酔いどれモードでスルメ装備の千雨ちゃんをもう一度見たいとか考えてませんよ、えぇ……ちょっとしか。
私が見たいのは、ほろ酔いモードの千雨ちゃんです。
「さて……」
見れば、許可を請う間もなく次々と料理と、幼馴染達が部屋に流れ込んできます。
温泉を楽しむのは食後でも良いですか。
湯煙珍道中、何だかんだで前中後編になりそう
いや、前がこれで 中でほろ酔い&湯煙 後でスキーして ……ネギマカートまでいくから4編構成になるんですかね
……今日、期待外れだったゲームを売りに行った
知らぬ間に、昔ド嵌りした砂糖と香辛料の2が出ていたのを発見した
このときの私の感情を三十文字以内で述べなさい
例『更新なんて忘れてド嵌りできる良作でありますようにっ』
とりあえず、ノータイムで買っておいた
月末の祝福のみが楽しみでしたが……果たして
あ、更新止まったらそのせいです(ぉぃ