71話
「アスナ……アスナが頑固なのは知っとるけど、うちはもうこんな真似して欲しくない」
宴の後、木乃香は機会を見て明日菜を呼んで話す機会を作っていた。
ネギのパートナーとして、何時の間にか魔法の世界に足を踏み入れていた明日菜、魔法の世界の危険さをメディアから聞かされている木乃香にすれば、親友が魔法使いのパートナーとして魔法に関わるのが心配で。
明日菜の頑固さと言うか、言い出したら聞かない点を熟知しているため、今までは控え目に注意するだけであったが。
「大丈夫、大丈夫、この怪我も明日には治るって言うしさ」
「怪我したことは変わらへんやろ、治らへんかったかもしれへんのやよ。何でアスナが魔法使いのパートナーなんて危ない事せなあかんの」
「危ないって、ネギの手伝いするだけでしょ」
「……アスナ、魔法の世界はアスナが思っとる程、安全やない、特に……ネギ君の周りは」
不安そうに表情を沈める木乃香。
メディアからネギ……英雄の息子の立場と言うものは教えられており、恐らくはネギ自身よりもしっかりと理解している。
それを考えれば、つい数ヶ月前まで一般人だった親友が魔法使いのパートナー……それも、英雄の息子のパートナーをしていると言うのは見過ごせるものではなく。
「何、そんなに危ないことがあるの?」
「……ネギ君のお父さんはな、魔法世界で有名な人なんや……たくさんの人を助けて、魔法世界の戦争を終結に導いたとも言われとる」
「あ、うん、ネギが憧れてるって言う、マギステル・マギってやつよね」
「せやけど……その分敵も多いんや、英雄の息子だからいう理由で襲われることもあるくらい……」
ぎゅっと、拳を握って明日菜を見つめる木乃香、親友のことを思うが故に、言わなければならない事があり。
「今回のことで分かったやろ、魔法の世界に足を踏み入れたら、死んでしまうかも知れへんのやよ、危ないところなんよ」
「いや、其処までは」
「茶化したら駄目やアスナ、本当のことなんや」
「このか……」
笑って済ませようとする明日菜の手を掴んで言い切る。
真剣な眼差しで見つめる木乃香に明日菜の声が詰まる、その目は笑って誤魔化すことを許さず……
「……そんな危ないところに、ネギはずっと居なきゃいけないってコトよね、このかも」
「……そうや、うちもネギ君も生まれつきに強力な魔力を持っとる、関りたくなくても、常に狙われてるんや……うち等は魔法からは逃れられへん宿命を負っとるんや」
「そっか……ごめん、このか」
そんな木乃香に、明日菜は笑みを浮かべて応えた。
「私、ネギもこのかも放っとけないわ。危ないかもしれないけど、ネギやこのかが危ない目に遭ってるときに何も出来ないなんて嫌だもん」
「アスナ……」
分かっていた、近衛木乃香と神楽坂明日菜は親友だ、親友だからこそ、明日菜が退いてはくれない事を、木乃香は知っていた。
「大丈夫だって、ネギもこのかも私が守ってあげるから」
「……うん、そやな……」
諦め混じりに、息をつく。
親友の頑固さはよく分かっているため、これ以上何を言っても無駄と悟ってしまった。
「……少し冷えてきたな、部屋に戻ろか」
「そうね」
二人並んで廊下を歩き始める。
「あた」
その途中で明日菜は何かに頭をぶつけてしまう。
薄暗い部屋から何かが突き出されているようで、思わず目を向ければ。
「な……何よ、コレ……せ……石像? こんなのあったっけ?」
それは、部屋から逃げ出そうとしている巫女の姿を象った石像達。
今にも動き出さんばかりのリアリティで、視界に入る中でも8体くらいはある……その中には、昼間に接待をしてくれた巫女の顔をしたものもあるように見え。
ほぼ同時に、明日菜にネギから仮契約カードによる念話が届く、それによって敵の襲来と、大広間での合流が明日菜に伝えられる。
「このか、また敵が来たみたい、私と」
「『
明日菜の様子から、事態を悟った木乃香もまた、行動を取る。
仮契約カードを手にすると念話した後、それを掲げ。
木乃香が仮契約カードを振るって呪文を唱えると、廊下の床面に魔法陣が輝き描かれる。
其処からは一人の人影が生み出され、当然の如く木乃香に傅く剣士が現れる。
即ち、夕凪を携えた木乃香の従者である桜咲刹那が。
「か、仮契約カードってそんなことも出来るの!?」
「お嬢様、この気配」
「敵が来たみたいや……アスナ、ネギ君は何て?」
「あ、えっと、大広間で合流しようって」
「分かった、せっちゃん」
「はっ、
右手に夕凪を、左手に仮契約カードから生み出された古風な剣を手にする刹那。
それこそが木乃香との仮契約で得たアーティファクトであり、強力な木乃香の魔力を十全に発揮するための手段である。
「あ、そっか、私も
刹那に習って、仮契約カードよりアーティファクトを実体化させる明日菜。その姿はハリセンにしか見えないが、実態として強力な式返しの効果があることが分かっている。
「まずは大広間へ……長達も無事なら良いのですが」
そのまま、警戒しながら大広間へ移動する3人。
幸いにして大広間までは無事に辿り着く……屋敷は非常に広いため、ネギ達が辿り着くにはまだ時間がかかりそうで。
「アスナ、ネギ君にそっちには誰が居るか聞けるか?」
「え、あっ、ちょっと待って……長さんとクーフェイさん、それに……夕映ちゃんが居るって」
「……夕映は無事やったんやな」
言外に、宮崎のどかと早乙女ハルナには何か有ったことも確かだと理解するし、少し気落ちする。
……その頭上に、刹那と明日菜の、それぞれの得物での一閃が振るわれた。
其処には背後から木乃香へと迫っていたフェイトの顔があり、明日菜のハリセンと刹那の夕凪での一振りを受けて大きく顔全体を歪ませる、其れはまるで水のように砕け再び顔を取り戻し。
「っ、効いてない?」
「すごい、神鳴流はともかく、こっちの子も訓練された戦士のような反応だ……でも、お姫様を守るには役者不足かな、君達も眠ってもらうよ」
「お嬢様っ」
フェイトが小声で呪文を唱えるのに気付き、刹那は慌てて木乃香の腰を抱えて数歩下る。
直後、明日菜がいる辺りを中心に砂を含んだ煙が巻き起こる。
それは、触れた明日菜の衣服を石へと変えていき。
明日菜をマッ
「!?」
「やあん、何よコレ」
咄嗟に胸元を抱えてしゃがみこむ明日菜、羞恥のあまり武器であるハリセンさえ捨て置き。
「アスナ」「お嬢様っ、魔力を」
明日菜を心配する木乃香の背後に、フェイトによって召喚された巨大な悪魔が迫る。
悪魔は3m近い巨体をもって木乃香に手を伸ばし。
「はぁぁっ」
刹那が左腕を振り上げる事によって、その悪魔の身は二つに断たれて消える。
手には、魔力を帯びたことでその刀身を3m近くまで伸ばした刹那のアーティファクト、剣の神・
「お嬢様に……このちゃんに、指一本も許すものかっ」
夕凪と
魔女に木乃香が師事して以降、魔女達のアドバイスで刹那に求められたのは気による全身の強化、そしてアーティファクトを媒介にしての木乃香の魔力の有効活用だ。
木乃香は極東随一とも言えるほどの強力な魔力を有している、けれどそれを使いきれるだけの精神力をまだ備えては居ない。
その魔力を有効活用する手段として、刹那のアーティファクトは役に立つ。
マスターからの魔力供給により、その魔力を刀身として実体化させるアーティファクト、剣の神・
最大で、全長5m近い巨大武器でありながら、刹那が手にする分には羽根のように軽く。
「はぁっ」
そして、強力だ。
大きく横凪に振るわれる其れは、魔法障壁を突き抜けフェイトへと直撃する。
直ぐにフェイトが下ったため軽く掠めた程度だ、その部位は再び水のように崩れる。
だが、刹那の手には確かに痛撃を与えた感触が残る。
「ダメージが抜けてきた……厄介なアーティファクトだね……いや、この場合は近衛木乃香の魔法力が桁違いなのかな」
木乃香の前に立ち、夕凪と
僅かに緩んでいた気構えを正し、広域攻撃を加える……その寸前。
「ハッ」
「っ、斬撃?」
背後の襖を切り裂いて斬撃がフェイトへと飛来する。
辛うじて身を逸らすが、その斬撃は魔法障壁をすり抜け、フェイトの左腕を肘の辺りから斬り落とし。
切り裂かれた襖の奥には、英雄と呼ばれた男が立つ。
「神鳴流奥義 斬魔剣 弐の太刀」
「近衛詠春……まさか無事だったとは」
襖の奥には、野太刀を構えた詠春の姿、愛用していた夕凪は今も刹那の手にあるが、其処は本山、武器の備えはあり。
「刹那君、前後から仕掛ける、良いね……今だ、ネギ君っ」
一瞬、刹那のアイコンタクトを交わしてタイミングを合わせると。
備えていた後衛に指示を出す。
「
それは、詠春の影に隠れるようにして呪文を唱えていた幼い魔法使い。
敵と刹那の交戦の気配を察知した詠春は、長い戦闘経験で培われた戦闘勘で奇襲の好機を悟り。
ネギと即席のコンビネーションを決行した。事実、気配を隠しきって放った一撃はフェイトに深手を負わせ。
一瞬、前後を挟む刹那と詠春に気を取られたフェイトに、詠春の背後からネギが魔法の矢を解き放つ。
「はぁっ」
「せやっ」
そのタイミングに合わせ踏み込む詠春と刹那。
詠春は野太刀を、刹那はその手にするアーティファクト
「……二本折られるか」
フェイトはその攻撃を、魔法の矢は魔法障壁で。二人の神鳴流剣士の攻撃は、石で作り上げた十一本の剣で受け止めた。
宙を舞い、翼のように蠢く石剣は詠春の剣を防ぎ、数本折られながらも
「甘い、神鳴流は鉄をも斬る」
反撃として詠春と刹那を狙った数本の石剣は、其々が持つ野太刀によって斬り裂かれた。
其れこそが奥義・斬岩剣。
「……師弟で息も合ってる、本当に厄介だ」
さらに踏み込まれる前に、足元から大量の砂を巻き上がらせると、それを目晦ましにさらに距離を取るフェイト。
所詮は過去の英雄と、若輩の護衛……その認識を切り替える。
目の前に居るのは、難敵であると。
「このかさん、大丈夫ですか?」
「ネギ君、それに夕映に、クーフェイも」
「何でアスナは裸アルカ」
「アスナさんが突然、裸になるのは何時もの事なのですよ……いえ、恐らくはこれも」
「放っておいてー」
後衛を務めていたネギは、双方の攻撃の手が一旦止まった瞬間に木乃香の元へと合流し。
詠春と刹那はフェイトを睨む。
神鳴流剣士二名と後衛の魔法使い、そして、木乃香もまたその指に異常な魔力の込められた宝石を握り締める。
足手まといの一般人が3人居ることを含めても、形勢はフェイトに不利だろう。
けれど、フェイトにはもう一人、木乃香達のさらに背後に、見覚えの無い人影が目に映る。
其れが手にするのは、フェイトが何度も見た宝石。
千草や月詠に飲ませたのと同じ宝石を、其れは手に持っており、いまだフェイト以外の誰にも気付かれていない。
「…………じゃぁ、行くよ」
フェイトはその意図を察し、再び、二名の剣士への攻撃を再開した。
アンケートを行います
締め切りは24時間後、16日の22時と言うことで、急ですみません。
フェイトの危機! しかし、其処に颯爽と助太刀の気配。
仮称Sさんがフェイトの味方で参戦予定です。
このSさんですが、たいへん奥ゆかしい方で、正体を隠してフェイトを手助けしようと思っています。
Sさんは変装の名人でどんな姿にもなれますので、誰かに変装しようと思ってますが……候補を決めかねておりましてw
どのような姿で現われるかをアンケートで決めたいと思います。
レギュレーションとして、正体を隠したいので、正体が類推される能力は使えません。
特にせったんは、実はSさんとの戦闘回数が一番多いのでw せったんの前で使った、或いはせったんに使った能力はまったく使えません。
また、フェイト陣営についた際に使用した能力は、本来の姿の時は使えなくなりますw
6年前にも変装をした事がありますが、その姿と使用した能力もNGです。
基本、木乃香を浚うことが目的なので、アサシン推奨、何かいいアイディアがあれば他でも可。
と言うわけで、一応候補を挙げておきますが、木乃香を浚える面白いアイディアがありましたらそれでも大丈夫です。
基本は気配遮断で接近してフェイトに引き渡して、薬味たちの足止めを検討しています。
また、今後も、フェイト陣営で参戦するときはその姿で出るかと思われますので。
その時は派手な宝具を使う機会もあるでしょうw
以上、よろしくお願いします。
①
真名 衛宮切嗣
クラス アサシン
戦闘法 奇襲・不意打ち・銃撃
必殺技 固有時制御
利点 無口タイプなのでぼろが出にくい
銃を使うことで一般人を牽制しやすい
問題点 煙草は二十歳になってから(電子煙草か禁煙パイポになるかも)
②
真名 遠野(七夜)志貴
クラス アサシン
戦闘法 ナイフ・近接戦
必殺技 直死の魔眼
利点 小回りがきくため刹那のアーティファクトには有効
神でも殺してみせる、でも幻想は勘弁な
問題点 普段の姿では直死が使えなくなるw
③
真名 イスカンダル
クラス ライダー
戦闘法 突貫・突撃・粉砕・爆笑
利点 濃いキャラを印象付けて正体を類推させなくするw
王様コンボを使って欲しいという感想を何人もから貰ってるためwww
問題点 はいてない
6年前に使用してるので、戦車が使えないwww ペガサスに跨って駆け抜けろ王様www
④
その他
基本多数決、もしくはあまりに面白いアイディアがあれば採用します。