74話
『あ、龍宮か……非常事態だ、手を借りたい』
大阪食い倒れツアーを満喫し、ホテルへ戻った龍宮の携帯電話に刹那からの着信が入る。
それも、仕事用の方に……先ほど見かけた、副担任であるネギは見るからに作り物であり、何かあったのだろうとは思っていた……
「何かあったか、刹那」
『敵の襲撃だ、お嬢様が浚われた』
それは、凶報と言うに相応しい内容のものだった。
刹那が護衛している近衛木乃香、ルームメイトである龍宮は、刹那がどれほど木乃香を大切に思っているかをよく……いや、思わず砂を吐いて辟易してしまうほどに理解している。
これだけ冷静に状況を述べられるだけでも立派だろう。
「仕事料はツケにしてあげるよ、刹那……直ぐに行く」
故に、龍宮はルームメイトの助力になる覚悟を決め。
『いや、その前に頼みたいことがある……この電話をメディアさんに繋いでくれ』
「……なるほど、確かに強力な助っ人になるな……だが、受けてくれるかは分からないぞ……むしろ、跳ね除けられる可能性が高い」
龍宮は現状、超に雇われている。
最近、超はさらに羽振りが良くなっており、今年一杯は年次契約を結ぶ事にしている。
その関係で、GFと関西呪術協会の関係についても良く知っている……だから言える、彼女が関西呪術協会の利になる事はしないと。
『お嬢様はあの人に気に入られている……知れば、動いてくれる公算は高い……頼む、龍宮』
「……確かに、あの人は身内と趣味優先だろうが……まぁ、良い、今日は一日行動を共にして、性格も確認できたからな……深入りすると私も危ないから取次ぎだけだぞ、それと、電話を壊されると困るからプライベート用の方にかけ直してくれ」
最悪、握り潰されることも考慮に入れて、プライベート用の携帯電話にかけ直させる。
……出来ればこちらも無事であって欲しいものだが、それも限りではないだろう。
可能な限りのメモリの抜き出しを行いつつ、居るであろう部屋を訪れる。
彼女がホテルを乗っ取って女将をして居るくらいは知っており。
扉を軽くノック、『どうぞ』と言う声を確認して入室する。
「申し訳ない、少し頼みが……春日……と……」
一瞬にして後悔した、刹那の頼みを快く受けた数分前の自分を殴りたくなるほどに。
その光景は、即座に龍宮をして戦術的撤退を選ばせるに十分なものだった。
「あら、あなたも何か用かしら?」
「ふもっふ?」
「……タスケテ……」
応接室か何かを私室に改造したのだろう、ボトルシップや模型等が飾られた雰囲気の良い部屋……壁にかけられている少女趣味のドレスが多少の違和感を発しているが、許容内だ。
その部屋の中心に立ち、艶やかに微笑むメディアの姿。
昼間と同じく、ジーンズにラフなシャツと言う装い、耳がぴこぴこ動いてる……其れは良い。
壁に背を預ける人間サイズの、帽子を被ったファンシーな熊のぬいぐるみ……口が有る辺りから、昼間行動を共にしたセクストゥムと言う名の少女の顔が見えているから、着ぐるみか何か着せられているのだろう、ひょっとしたら寝巻きなのかもしれない……この際、其れも良い。
入り口近くに居る、ガクガクと震えながら携帯電話を差し出す、正座した春日……
既に涙目どころか失き……いや、床に滴るほどに汗をかいている、冷や汗だろうが……とにかく、怯えきった様子で。
昼間に、それなりに良好な関係だった気配は微塵も感じられない……その手の携帯電話が最大の問題だろう。
魔女は確かに、春日に向けて威圧感を発しており。
「あぁ、その子は気にしないで良いわよ、電話を取り次いでくれてるだけだから」
にこやかに微笑むメディアこそが、龍宮には怖ろしい。
『だ、誰か来たのかの』
春日が手にした携帯電話からは聞き覚えのある声が響いてくる。
スピーカーフォンモードで、相手の声を流しているのだろうが。
……間違いなく、学園長の声で。
そして、龍宮の手の中でもプライベート用の携帯電話が着信音を響かせている。
「電話、鳴ってるみたいね、出てあげたらどうかしら」
「……いや、部屋を間違えた」
此処は選択を間違えた、此処は最後に来るべきだったのだと龍宮は理解する。
まずは穏便に話が分かるだろう朱雀、もしくは溺愛する少女たち……いや、この重圧に慣れているだろう超を頼るべきかもしれないと、そこまで考え。
「男子の泊まってる別館に女子が入ろうとすると、部屋に強制送還だから気をつけてね、色々付随効果もあるから……それと、あなた、それなりに頭は良さそうだと思うのだけど、ねぇ……分かるわね」
クッと一転、それまでの微笑とは別種の笑みを見る羽目になった。
朱雀を頼る道は絶たれた、溺愛する少女達は……逆効果になるのが眼に見えている。
超? 既に部屋に逃げ込んで布団に包まって震えてる姿が想像できる。
……魔女を背後に、足を止める、それしか出来ず。
「そう言えば、あなた傭兵よね」
「……ああ……」
「私が雇うわ、それでその電話の相手の声を聞いてあげる」
迷わず首肯する、年次契約中の超でも理解してもらえるはずだ……
嫌なら交渉は彼女としてくれ、少なくとも契約金を全額返金する覚悟はある。
「……渡しても?」
「声が聞こえる状態で、其処の固定台の上に乗せて頂戴、私に馬鹿な老害の声を届けた固定台に」
指差すのはガクガクと震えて、両腕を差し出し、その両掌に学園長が発信してるだろう携帯電話を手にする春日。
……無言のまま、その両掌の上にプライベート用の携帯電話を置く。
「…………」
助けを求める眼差しを向けられてもどうにも出来るわけも無い。
……この瞬間、魔法生徒の身の上で無い自分の立場の有難さを深く噛み締め。
おそらくは、最も安全地帯に近いだろうふもっふ……もとい、セクストゥムの隣に移動する。
魔女は牽制しながらもそれを容認し。
「で、そっちは鳥女かしら……このかちゃんが浚われたって話なら、もう聞いたわよ、手を貸してほしいというのも……本当に、役に立たないわね」
『は、はい、申し訳ありません……その、助力をいただければと……』
「気が向いたらね」
興味も無さそうに言い切られる。
その返答に思わず刹那も絶句する。
魔女は、弟子である木乃香を大切にしているはずで。
「何で、関西呪術協会のいざこざに私達が巻き込まれないといけないのかしら、仮にも関西を統べるというくらいなら自力でどうにかしなさいな」
『いえ、その、お嬢様のことはあなたも……その、弟子な訳ですし』
「そうね、ちゃんとホテルに帰って、戻ってきてたら、全力で護ってあげたわね……本山に留まったのは、関西呪術協会を頼るという意思表示でしょう? 頼られたなら頑張りなさいな……頼りにされなかった私は、健闘を祈るばかり」
『っ……いえ、あ、その、そんなことは無くっ!』
其れは刹那と木乃香が魔女よりも本山を選択したと言う、絶対の意思表示。
……長に請われてと言うことがある、神鳴流に属する刹那にそれを拒むことは出来なかった。
確かにそうだが……彼女達は、魔女の魔城よりも関西呪術協会の本山を選択した。
「可愛い子は好きだけど、それで私が都合良く使われるのは好きじゃないの……話は聞いたから、気が向いたら助けに行ってあげるわ……けど、残念ね、結構好きだったのに」
元より、関東魔法協会・麻帆良学園とは不干渉の約定を結び。
関西呪術協会とは犬猿の仲である。
京都へ呪的干渉をしたことで、修学旅行中の一般人の保護くらいは受け持つと学園長と約定を交わしたが。
関西呪術協会の手落ちで浚われた、呪術協会、長の娘の救出の助力をそれに含めるのは過大解釈過ぎるだろう。
まして。
『ちょっ、長っ、ネギ先生と神楽坂さんをしっかり抑えててください、これ以上機嫌を損ねるわけにはっ』『ふざけんじゃないわよちょっとっ』『このかさんを助ける気は無いんですかっ』
刹那の声の他に、機嫌を損ねるために頑張ってますと自己主張してるような耳障りな声も聞こえてくる。
……最早相手にしているのも馬鹿らしくなるような主張で。
「……ねぇ、鳥女、あなたは私の機嫌を損ねるために電話してきたのかしら」
『い、いえ、けしてそのような事は』
『その、刹那君、話は聞いておる、此方も何とか助っ人を送るので』
『は、はい……』
春日の両掌の中で、重ねてある携帯電話からは学園長の声も響く……その春日は最早、何も聞きたくないという状態だが。
「……話は終わりかしら、耳障りだからさっさと消えて欲しいのだけれど」
メディアの、最後通牒と言うべき言葉に、刹那のほうの携帯電話から異議が入る。
『……そ、その……言わないと駄目ですか……はい、その、もう一点……ネギ先生の魔法の発動体が破損してしまいまして……代わりになる物が無いものかと』
刹那の方の携帯電話からはどたばたと慌しい音も聞こえてくるが、それでも長に請われたか、メディアと学園長に聞こえるように、もう一つの苦境を口にした。
それを、メディアはどうでも良さそうに聞き流しながら。
「その子、魔法使いでしょう、発動体くらい持ってるんじゃないの」
携帯電話を支える固定台……もとい、春日美空を指差す。
一刻も早くこの地獄が終わることのみを望む春日にすれば、突然指差されて戸惑うばかりで。
「…………ま、ままさか、わ、私っすか、私が何かしでかしましたでしょうか」
「魔法の発動体、持ってるかしら」
「……え、あ、はいっ」
ガタガタと携帯電話を取り落としながらポケットから伸縮式の魔法の発動体を取り出す春日、悪戯等に用いるため普段から持ち歩いており。
それは魔法の発動体に違いないのだが。
『あ〜そのなぁ、ネギ君の持つ魔力は非常に強力で、市販されているような物ではとてもではないが魔力の許容量が足りんのじゃよ……最高品質の発動体でないと……と言うか、本当に壊れてしまったんかい、 あの杖が』
床に落ちた携帯電話から、学園長が口を挟む。
事実、闇の福音との戦いの際には全力の魔法を放つだけで発動体は破損し。
そして、ネギの手にあるのは、紅き翼の英雄が手にしていた、最高品質の代物すら越える、一品物の筈だった。
「……鳥女、この会話、そちらの全員にも聞こえてるのかしら」
『は、はい、一応……ね、ネギ先生とアスナさんは抑えてますので、其処はご安心を』
魔女に文句を叩きつけようとする問題児達は取り押さえられた様子で。
「そう……最高品質の発動体ならあるわ、このかちゃんの魔力にも耐えられるレベルなら満足かしら」
木乃香に魔法を教えるということは、当然その無類の魔力にも耐えられる発動体を用意する必要もあり。
そもそも、メディアや朱雀といった桁違いの魔力に耐えられる発動体もまた、必要なのだ。
それら、桁外れの魔力にも耐えられる発動体ならば、手元にあり。
『その……お貸し、いただけませんか』
「……ねぇ、鳥女、そう言えば、昨晩のゲーム……何で千雨ちゃんやアキラちゃんが参加しかけてたのかしら、私達に不干渉は、学園との取り決めの筈なんだけど」
『フォ?』
魔女は、不快に思っていた事実を口にした。
修学旅行後にきっちり問い詰め、マホネットの機密情報公開サイトにぶち撒けようと思っていたものだが。
「ついでに、昨日の朝と今朝、わざわざ千雨ちゃんに声もかけてたわよね……よりによって、関西呪術協会の本山に誘おうとしてるように見えたんだけど」
『ね、ネギ君!? ま、まさか』
学園長が狼狽した声を上げる。
よりによって長谷川千雨に干渉……それは、学園長にかつての【闇の福音】の悪夢を思い起こさせる。
あの時は、関東魔法協会が揺らぎかねない事態に発展した、それを怖れての不干渉だが。
「ねぇ、鳥女……あなたのご意見は?」
『そ、その……お、お言葉添えを、お願いできればと思ったのでないかと……』
刹那にすれば、虚言がそのまま木乃香の死に直結する、それ位に値し。
「それで、次は助力の嘆願に高価な発動体の無心……良い面の皮よねぇ……近衛近右衛門、もう一度言い含めてもらえないかしら」
魔女は笑む、ただ……これが最後通牒であることが分かってもらえれば良いと思いつつ。
これで駄目なら……諦めようと。
『ネギ君、聞こえておるかね、何度も言うが彼女達には魔法関係では不干渉じゃこれ「これを破ったら、そうね……少し痛い目にあってもらおうかしら、構わないわよね」
近右衛門の言葉を遮るように魔女が言葉を発する。この点でおいて、携帯電話越しの会話である以上、メディアの声はより大きく響き。
『……そ、その、今は切羽詰った状況じゃし、その話は後日』
「そう、まぁ良いわ……鳥女、発動体の指輪はあげるわ、本山に届ければ良いかしら……ちょうど、運び人も目の前にいるし」
春日美空を見つめつつ、言い切るメディア。
その笑みは……朱雀たちなら迷わず逃げ去る其れで。
「あ、まさか、私っすか? え、大戦の英雄が苦戦するような敵がいる場所にあっしも行くんすか」
魔女と学園長の会話を聞かされていた春日が拒もうが、それが許されるはずも無く。
発動体を用意してくれると言うメディアの言葉に、刹那が感謝の言葉を返す。
『は、はい……その、ありがとうござい』
けれど、その言葉もまた遮られる。
「ひっ、ひひひぃっ、な、何してるんすかメディアさん、いえええ、メディア様、何すかこの魔法陣はぁっ」
「っ……なるほど、刹那の警戒も当然か……これほど」
「……すごい」
春日が突如悲鳴を上げる、龍宮や幼い少女までが感嘆の声を上げる。
携帯電話で音声しか聞こえぬ者達には、事態が伝わらず。
メディアは懐から一つの指輪を取り出すと、それに魔法をかけた。
ただ、それだけのことだ……けれど、目の前で目の当たりにした三人にすればとんでもない光景が繰り広げられていた。
何せ、部屋の壁一面に文様と魔法陣が浮かび上がったかと思ったら、未だ嘗て感じたことの無いほどの魔力がメディアに集まったのだから。
そして、その対象は小さな指輪一つ。
「別に、発動体に魔法をかけただけよ」
「あの……参考までにどんな……」
それを、これから運ぶ事になっている……むしろ、運ぶ役目にされた春日にすれば非常に気になることだ。
そもそも、発動体の指輪は既に完成しているものの筈だ、それにわざわざ魔法を重ねがけする必要は無いはずで。
「……嵌めなければ害は無いわよ」
「嵌めたら害があるんすか」
「参考までに、私も知りたいです」
ふと、ボン太……の着ぐるみを纏ったセクストゥムが声を上げる、それを聴けば途端に上機嫌になり。
「あら、気になったの? 単純に言ってしまえば呪いね、これを嵌めて私の身内に馬鹿な真似をしたらちょっと痛い目に遭うの、そんなに大したことは無いんだけど」
セクストゥムが関心を示したため、途端に声を明るくして説明するメディア。
それまでの冷淡な良い様とはまるで異なる声色だが……発した内容は、けして明るくなく。
「……外して接触とかするんじゃ」
「一度嵌めたら外れないようにしてあるわ」
抜け道を探そうとする春日に軽く言い放つ。
その指先には、最高品質の魔法の発動体でありながら、同時に呪いの指輪にもなった指輪が光り。
「……万一誤ってあっしが嵌めてしまった場合は」
「指を切り落とせば良いでしょ、心配しないでもちゃんと繋ぎ直してあげるわ……あぁ」
そう言えばと、ふと何かを思い出したような声を上げるメディア
携帯電話の向こうでは其々が呪いと言う言葉に呻いているようだが。
「指と言えば、一昨日にディルムッドが切り落としてきたのがあったわね、木乃香ちゃんを狙った呪符使いの……そうね、助けに行くかどうかは気が向いたらだけど。手間でもないから呪詛の一つくらいならかけてあげても良いわよ、呪殺でも良いし、敵全体の動きを制限するようなのでも良いけど……選ばせてあげるわ」
思い出したように、奥の引き出しにしまっておいた、千草の指の一片を手元に置く。
実際、最早価値もないため死蔵していたのだが。
封を解けば血が流れ出すようなそれに春日は再び悲鳴を上げ。
『ほ、本当ですか』
刹那は喜色を浮かべた。
「捨てるのも勿体無いし……ただ、ディルムッドの話だと、鳥女と一緒に居た魔法使いとそのパートナーが難色を示したそうじゃない、一応確認よ、私はこの指を使ってどうすれば良いのかしら」
クスクスと、今までに無い笑みを浮かべて携帯電話へ問いかける。
無論、意趣返しとして……当然のように、幼い魔法使いたちが反発するのを期待して。
『……呪詛を、お願いします、このかを浚った者は仲間のようでしたので、全体の動きを制限できるのであればそれを』
応えたのは関西呪術協会の長、詠春……無論、背後での声が漏れ聞こえる。
当然のように騒いでるようで。
「ちゃんと、問題の魔法使いとパートナーの了解は取れたのかしら……後で文句を言われたくは無いわ、ちゃんと自分たちでお願いして欲しいわね」
『しょ、少々お待ちを』
刹那の方の携帯電話から声が離れ、暫しギャーギャーと喧騒のようなものが聞こえてくる。
大方、ネギと明日菜の説得をしているのだろうが。
『……ネギ君には君たちには干渉しないよう言い含める、それでいいんじゃな』
それを誤魔化すように聞こえるのは学園長の声。
「まぁ、私の指輪を発動体として選ぶなら、強制的にそうなってしまうけどね」
『呪いは、勘弁して欲しいんじゃが』
「なら、その子のを使わせれば良いでしょう」
魔法に耐え切れないだろう発動体と、はっきり呪いをかけたことを明言した強力な発動体、その何れかを選べとメディアは言い切る。
……危地にある関西呪術協会に、選択肢など無いだろうが。
やがて、刹那の方の携帯電話から喧騒が無くなり。
『あの……呪いを、お願いします』
『おねがいします……』
刹那の携帯電話から、不承不承といった感じのネギと明日菜の声が響く。
それ自体は不愉快ではあるが、何を言わせたところで相性が悪い彼等の言葉が心地よく感じられることは無いだろう。
「そう、じゃぁ用件は終りね……魔法の発動体は直ぐに届けさせるわ……通話を切って頂戴」
ぷちっと、電話の固定台として使用されていた春日が携帯電話の通話を切る。
疲れ果てた様子の春日は涙のままに打ちひしがれ。
それにふぅと息を吐くと、メディアは春日に儚げに笑みを向け。
「ごめんなさいね、八つ当たりみたいな事しちゃって」
やさしく、その身体を抱き起こした。
「あ、え、いえ、はれ?」
突然態度を改めたメディアに不思議そうな顔を向ける春日。
「私の機嫌を損ねたのは学園長であって、あなた自身は何も悪くないのに……ついね、ごめんなさい」
少ししゃがみこむと、目線を合わせてヤサシクホホエム。
緊張のし通しで思考能力の落ちていた春日にはじんわりとそれが染み込み。
「本山近くまで転移魔法で送ってあげるわ、それとこれ、転移魔法符よ、あっちに巻き込まれそうになったら直ぐに逃げられるようにね、それと魔法薬、疲れたり怪我したりしたら飲みなさい……あ、そうね、もう既に疲労してるわね……はい、ゆっくり飲んでね」
効果の高い魔法薬を惜しげもなく与える。
実際、其れは途方も無い効果がある魔法薬で。
「はい、はい」
それを飲めば疲労などかき消える。
緊張し通しだった春日にすれば、最良の助けで。
「学園長の無茶振りで大変だと思うけど……ごめんね、私にも立場があるの、本当にごめんなさい」
一気に血糖値諸々が上がってテンションが上がりがちな春日に、とどめの笑みが向けられる。
「明日はね、またご飯食べに行きましょうか」
「ふぁいー」
先までの重圧とは打って変わっての優しい言葉掛けに涙さえ零しながら発動体と、転移魔法符と魔法薬を受け取る春日。
その上で、学園長がどれだけの無茶を春日に求めたのかを諾々と聞かせ。
自身のアレはポーズで仕方なかったと騙り……もとい、語り。
春日はゆっくりと、起き上がるのだった。
「あれも人心掌握術と言うものですか?」
「……どちらかと言うと、悪質な洗脳だな」
龍宮とセクストゥムは呆れたような眼でそれを見つめていた。
エヴァだと悪の魔法使い(笑)になるのに何故メディアさんはこんなにすらすら書けるんだろうw
もう主人公メディアでもいい気がして……あぁ、違う、主人公だった(マテ
後、最近、春日がベネットになってきたwww
三下頑張れ、超頑張れwww