「知らない天井だ」
「いや、あんた前回の終わり際に自力で起き上がってたでしょ」
お約束を守る横島に冷静にツッコム美神。
「姉弟子に似て非常識な奴、ワタシの霊波砲を受けて無傷なんてちょっとショックなワケ」
「無傷ちゃうわ〜!服がボロボロやないか〜!」
「…それは無傷のうちじゃないワケ?」
「美神さんの折檻なら服が破けたりはせん!」
「………令子………いくら変わった弟弟子だからってなにやってるワケ?」
「い、いや、え〜と」
大体は横島がセクハラするから折檻するのだが、たまに…というか最近日課になってきて折檻せずに一日過ごすとストレスが溜まってしまうのも事実で、横島が修行に来なかった次の日に問答無用にシバイてしまった事もあるので完全否定をし損ねる。
「こうなったら身体で払ってもらう!」
そう言ってKYな横島はエミに跳びかかる。
「キャーーー!」
悲鳴を上げながらも手近に置いてあったブーメランに手に取り、顔面に叩き込む。
「ぷっ、エミがキャーだって」
美神は先ほどの失点を取り返すかのように爆笑する。
それを見てキッと睨むエミ…だったが少しして止める。
「まあ、オタクが日頃から何をされてるか分かったワケ…でもオタクじゃなくワタシに跳びついて来たって事はワタシの方が魅力的だって事なワケ」
「何いってんのよ!この根暗肌黒呪術師!」
「器用貧乏の癖によく言うわけ!」
一体誰だこの二人を同じ部屋にしたのは!と叫びたくなるいつ自分達が巻き込まれるのか心配で仕方ない隣室のクラスメート達の思いなど知るはずもなく、逆に過熱していき集合時間2分前まで争っていたそうな…ちなみに横島が復活して跳びかかる→叩き落とす→それをネタに更に燃え上がる…という悪循環のループが形成されていたとさ。
余談だが現在資産が少ない美神は道具を上手く使えてもそれを用意する事ができないので器用貧乏なのである。
「その様子なら横島クンを撃退する事には成功したようですね」
美神とエミ睨み合い、そしてロープで縛られている横島の三人の姿を見てほっと溜め息を漏らす唐巣神父。
「え、横島クンまたなにかする気だったんですか?」
「おや?どういうことだい?」
「いや〜美神さんの部屋まで匂いを追ってたどり着いて」
「「「匂い?!」」」
「それで鍵が閉まってたんでピッキングで開けて」
「「「ピッキング?!」」」
「で入ろうとした所で霊波砲を喰らっちゃいました」
いや〜まいったまいった、と笑う横島に比べて三人はそれぞれ驚きと苦笑と呆れを表す。
「もしかして先生何かしました?霊力がちょっと減ってるようですけど…」
「いや〜横島クンを止め様としたんだけど」
「それで止めれなかったのね」
「いや、面目ない」
「神父が止めれないって…本当に非常識にもほどがあるワケ」
「「まあ、横島(君)(クン)だし」」
一流GSの唐巣神父と当人達は認めないだろうが自分とジャンルこそ違えど同等の力を持っている美神の言動で頭を抱えるエミ。
「あ、もう時間だわ。ほら、逝くわよ」
「なんでワイまで!」
「あんた放置しとくと絶対トラブルが起こるからよ!」
シクシクと泣きながらも女性の誘い…例え地獄への道だと分かっていても断れない横島はついて歩く。
「………とりあえず唐巣神父の髪の毛の危機っぽいワケ」
「……………」
男は言葉ではなく背中で語るものである…哀愁しか読み取る事が出来なかったが。
「と言うわけでGS補佐実習なんてよく分からない授業が始まったわけだ」
「誰と話してるのよ」
ただいま傾斜がきつい森を十数人のGSインストラクターが先行し脇に登山用の荷物より一回りほど大きく重そうな荷物を背負っている女子高生が2、3人付いて歩いている。
そして横島はと言うと監視を理由に唐巣神父、美神令子と共に行動する事となった。
ちなみにエミも同じ班なので巻き込まれていたりする。
それを横島に告げると「まあ、監視されんのも…お二人みたいな美人が一緒なら本望だけど」と世辞が混じらないその言葉に二人はちょっと赤くなって照れ隠しで折檻を行った事は唐巣神父には内緒である。
「ところでこんなに大人数で何を除霊するんすか?」
「この山は日本有数の地脈があって妖怪や悪霊が力を得ようと集まるのよ。だから定期的に除霊しないと大変な事になるわ」
「と言っても人間が除霊している事を頭のいい妖怪知っているからこんなところに来たりはしませんから基本的には悪霊ですね。もちろん油断は禁物ですが」
「へ〜まるで結○師みたいっすね。やっぱり結!とか滅!とかで払うんすか?」
「はいはい、同じ出版社だからって程々にしないと怖い人が来るわよ」
「大丈夫とは思うっすけどね…そんな事言ってたらこのSSだって…ゴホゴホ…ところで美神さん」
「なによ」
「そちらのエロい格好をした女性はどちらさんですか?」
結局喧嘩をしている所しか見ておらず『エミ』という名前しか分からないので聞いてみた横島に気だるげに答える。
「エミ」
「な、何よ」
妙に真剣な表情の美神にちょっとどもりながら次の言葉を待つ。
「あんた…フルネームなんだっけ?」
周りが静寂に包まれる。
いくら仲が悪いからって名前ぐらい覚えないのか?という周りの思いとは別に話は先に進む。
オタクまた喧嘩売ってんの?
いや、まじで忘れたのよ
それなら尚悪いわ!
といういつもなら口喧嘩か実力行使かに移るのだがとりあえず自己紹介をすることになったらしい。
「ワタシは令子と同じ班の小笠原エミ、これでも呪術師なワケ。呪って欲しい人がいたら言ってくるワケ」
美神より大人な分、社交辞令というものが分かっている。
「ハハハ、今の所呪って欲しい人なんていないっすけどね(親父辺り不能にして落ち着いて欲しいけどそれはいくらなんでも無理そうだし…まあ、一応男としてやってはいかんラインだろう)…俺は横島忠夫ッス。一応唐巣神父の弟子をやっとります」
「若いのに痴呆症な姉弟子を持って大変だろうけど頑張るワケ。呪って欲しかったらいつでも言いに来るといいワケ」
「なんですって!」
結局喧嘩勃発…するかと思われたが唐巣神父を始め、美神にエミ、そして徐々にだが全体的に雑談の声が少なくなり、そして沈黙の世界が訪れる。
「み、美神さん。背中がゾクゾクするんすけど…」
「横島クンも中々いい霊感してるじゃない」
生徒の中には自体が飲み込めずおろおろしている者もいる中横島はまだ素人に毛が生えた程度にも関わらず六道の生徒より敏感に反応する。
横島の場合は霊感っていうより生存本能の一つである。
どうしてこんな物が備えられているかと言うと…絶対存在GMと元祖煩悩人に因るところが大きい…もちろん自業自得の部分もあるが。
自分がナンパしている事が発覚し折檻、親父がナンパしている所を放置した罪で折檻…「おかんが止めれんのにワイが止めれるわけないじゃねぇか!」という言い分も聞き入れられなく、そして次第に親父がナンパする際は近くから離れるという自己防衛本能を見出し、それが生存本能の強化に繋がったのである。
「正体はあれ…の…よう…ね」
悪霊の気配が一、二、つ…
「なんか…途轍もなく嫌な予感がするワケ」
三十、三十一、三十二、三十三…
「奇遇ね。私もよ」
八十、八十一、八十二、八十三…
「これは…ちょっと尋常じゃありませんね」
百、百一、百二、百三…
「す、凄い数っすね。この——」
百三十、百三十一、百三十二、百三十三
「サル」
「ウキキー」
そう、サルの群れが自分達を囲むように…まるで戦の常套手段を心得ているかのように陣取っていた。
「まあ、所詮猿公——」
「そうでもないみたいですよ」
猿は各々手近にある物…拳サイズ石から自分より大きい岩、他にも先の尖った木の枝などを持ち——
「皆さん木の陰に隠れてください!」
今投擲された。
そして対応が遅れる横島。
「横し…ま…クン?」
つい唐巣神父の言葉に反応してしまい隠れてしまってから気づいた。まだ素人の域を出ない弟弟子の存在を…そして美神の目に入ってきたのは…
「NOoooooooooo!」
情けない声を上げながらも飛んでくる攻撃を回避し続ける姿だった。
「ワタシの気のせいじゃなかったら間接が曲がらない方向に曲がったような気がするワケ」
「大丈夫よ。私にもそう見えてるから…あ、今度は木を歩いて登り始めたわね」
実は唐巣神父が助けようと動いた頃には自分で回避行動して追いつけなかったというのは…まあ余談か?
「横島クンの事は気にしなくてもよさそうね…そんな余裕もなさそうだけど」
自分達の倍以上の数を包囲しれている状態で相手しなくてはならないのだ。
「令子なんか打開策ないワケ?」
「あったらとっくに動いてるわよ」
「そりゃ〜包囲されたら一点集中!突破したら迂回して各個撃破!これぞ戦国シミュレーションの基本ッス!」
「あ〜それしかないか…」
「じゃあとりあえず他の人達にも…」
「では、不肖ながら応援するッス!」
「「………」」
「「あんた(オタク)いつの間にここに?!」」
「いやいつって言われても…」
戦場…に近いこの状況でコントのようなやり取りに緊張感を持て!と言いたくなるがぐっと堪える美神達。
「まあいいわ。来ちゃったものは仕方ないけど先生も私達も忙しいから横島クンは結界でも張って——」
「フレ〜フレ〜みっかみさん!」
既に立地が良い…背後が取られないよう大木を背にしてお手製の結界の中で応援団が振るような大きな旗を振って応援を開始する横島。
「まあ、邪魔されるよりはいいけどね。あんたはそこで大人しくしてるのよ!」
そう言い残し唐巣神父と一緒に混乱に陥っている現状を打開せんと走り出す。
「な〜んか危険な気がするな〜主にお姉様方が」
一生懸命応援している横島は穏行結界(結界を張った事を認識した者には効かない)+対悪霊結界でサル達は見向きもしないのだが生徒達とプロのGSですら気づかないので安心して居られるのだがパッと見て状況は思わしくない。
包囲の突破を試みようにもどうも足並みが揃わない…どうやらここで問題なのはプロのGSの質の差らしい事は横島の目にも分かるほどであった。
良い例は唐巣神父は担当以外の生徒を率いてもまだ余裕がある。
これは実力があるからと言うのもあるが何より美神とエミ、二人の優等生の奮闘振りが伝染して上手い感じに作用している事も大きいと言うのもある。
そして悪い例が、自分の事で精一杯のGSが少数、足手まといなGSが極少数存在している事だ。
そういう奴に限ってプライドが高くて人の言う事を聞かない…と漫画やアニメではお決まりでその例に漏れず頑として動かずに戦闘したり、逃げ惑うて余計な混乱を広げたりと敵より味方の筈の者に苦戦しているようだ。
「むむむ〜女性の味方たる我が身…けど俺が行ってもな〜」
さっきまで使っていた陰陽術を使えばいいのに…と思うかもしれないがそこは横島、逃げる、囮、時間稼ぎ用に開発したので除霊に使えるとは考えていなかったのである。
「戦いとはいつでも準備不足である…か、確かにちょっと甘く見てた」
そして霊符の在庫を確認して先ほど美神に返した本に書かれていた一文を思い出して納得していた。
「おお、忘れとった!これなら何とかなる…か?ダメで元々!」
地面に式神符を並べて地脈から霊気を吸い上げ、その中に自分の雀の涙ほどの霊力を流し込んでいく。
「不浄なる者を浄化せんとする使者よ。今ここで目覚めよ!」
そしてお決まりの小規模爆発。
「ちょっと洒落になんないわね」
「そうね…こんなにバラバラじゃ霊体撃滅波でも効率が悪いワケ」
身体能力(霊体能力?)が高い上に数が多いサル達。
この場合はエミの霊体撃滅波…つまり広範囲攻撃がいいのだが広範囲にも限界はあり、個々が離れすぎている為回数を撃たないといけないので霊力的にも溜め時間的にも余裕がない。
日頃は仲が悪いが除霊中は実に…
「それぐらいコントロールしなさいよ。他に何も出来ないんだから」
「そういうなら下僕らしくワタシが撃つまで守るワケ!」
やっぱり仲が悪かった。
そこへ空気を読まない五匹のサルが襲い掛かる…が二人が対処しようとした瞬間。
「イナズ○キーック!」
「火中天津甘栗○!」
「アー○パーンチ!」
「天○龍閃!」
「断○剣!」
ちっこい何かが五つ走り抜け、サル達を一掃する。
「あれはなんなワケ?」
呆然としているエミの隣で、溜め息一つ漏らす美神。
またあの馬鹿は自分の使ってる術の価値も分からず…と愚痴を漏らす。
「…まあ、見た目で分かるけどあんた達なんなのよ」
「美女が呼ぶ!」
「美少女が呼ぶ!」
「助けてと誰かが呼ぶ!」
「その声聞きつけ」
「やってきた!」
「「「「「美女、美少女の味方!」」」」」
「激しく全開!レッドボンノウ!」
「粘り強く!グリーンボンノウ!」
「動かぬ心!イエローボンノウ!」
「求めに求める!ピンクボンノウ!」
「静かにソッと!ブルーボンノウ!」
「「「「「五人揃ってSD戦士ボンノウレンジャー!只今剣山!」」」」」
ちっちゃい横島五人が決めポーズをするとその後ろでいつ仕掛けたのか爆発が起こる。(内緒だが破魔札の安物で演出)
それぞれバンダナが名前のカラーになっている。
「いやそうじゃなくて…というか凄く痛そうな誤字があるけど…」
「あ、少々お待ちを」
美神のツッコミを華麗にスルーしてボンノウレンジャーは会議を始める。
あーでもないこーでもないと1分ほど話し合い、どうやら話が決まったようでレッドが号令を掛ける。
「ここは私が残る、他の者はマスターの意向に基づき任務を遂行せよ」
「「「「イエッサー!」」」」
そしてレッド以外の者はバラバラに移動し始めた。
「さて、事情を——あぶ、ぐるじぃー」
「私を無視するなんていい度胸じゃない!」
レッドを捕まえて握りつぶさん勢いだ。
「ご、ごれいじょうやられだらだえられない、ぐえ」
「令子、それぐらいにしないと本当に消えるわよ」
「ちっ」
珍しくエミが仲裁に入って美神は手を離させることに成功した。
「ゲホゲホ…ゴホン、ではご説明します。我らは創造主…あの変態生命体の式神です。美神殿が見た前の式神とは違い霊的格闘が出来るようになっています」
「変態生命体って…あれでもあんたの主人でしょ?」
「まあ、『美女と美少女達を守れ』との命令ですので特に本人は気にしないとは思いますけど…」
そこで美神はあることに気づく。
「も、もしかして横島クンに支配権は」
「ありませんよ。前提条件が提示され、それを受け入れるかどうかは自由です。もっとも我々も多少創造主の影響受けますからよほどの事がない限りは合意するとは思いますが」
「な、なんて事するのオタクの弟弟子!下手したら暴走所か最初から敵の可能性があるじゃないの!」
そりゃまさか自分の意にそぐわない事には従わないなんていう式神を使う霊能力者がいるとは思わなかっただろう。
「それはほら、創造主の煩悩が成せる技といいますか…ちなみに登場シーンも創造主指定です」
後半は血の涙を流しながらの独白。
レッドはいやだったらしいが多数決で敗北したせいでやる羽目になってしまったらしい。
「横島クンの式神とは思えないまともさね」
爪の垢でも煎じて飲ませたいところよ。とは美神談。
この式神が切欠でちょっとは良い方向に言ってくれれば…とは唐巣神父談。
「その言葉に私の心は救われた!」
拳を天に突き出し感激のあまり涙を流す。
「てこんな事やってる場合ではなかった。我らは大して戦闘能力がないので主に避難所までの誘導となりますので皆様頑張られよ!」
「戦闘能力がないってさっきのでも十分だと思うんだけど?」
レッドは首を振り否定する。
「確かにあれが常時使えるならばそうでしょうが…我らはあれを二分に一回しか放つことしか出来ませんから緊急時に使うぐらいにしか役に立ちません」
「そういう微妙にヘッポコな所は横島クンの式神らしいわね」
「ぐは」orz
凄い凹みようにうわ、地雷踏んだ?と思ったが改めてそれ所じゃないと思い直して意識を戦闘に向ける。
「ほら、落ち込んでないでこの子達をその避難所…てまさか横島クンがいる結界じゃないでしょうね?」
もしそうならシバクよ?と言葉じゃなく雰囲気で伝える。
「まさか!そこまで私も落ちぶれてはないですよ。ちゃんと創造主からパク——ゴホン、借りましたよ」
なんと言うか何処までも自分の創造主を敬わないレッドであった。
バラバラに分かれて活動している式神達は各地で活躍していた。
「ライダー○ック!」
「さあ、早くこちらへ」
ブルーがサルを撃退してピンクが疲労困憊している生徒を避難所へ誘導する。
「よし、やっとチャージ完了。じゃあブルー、後は頼んだ」
「了解」
霊力補給するのに安全な結界内で休憩するブルーに一人の生徒が話し掛けてきた。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「ん?喉でも渇いた?水なら汲みに行って来るが…」
なんとも親切なブルーにありがとうとお礼を言ってけど違うと否定する。
女性への気遣いを欠かせないのは横島の式神所以か、はたまたただの性格なのか。
「それでお願いって言うのは〜」
ヤバイ、なんか嫌な予感がする!とブルーは結界の境界線ギリギリまで後退、それと同じぐらい詰め寄られて汗をダラダラと流す。
「な、何かな?」
「それは…」
まるで勇気を振り絞って告白するかのような雰囲気の中、しばし沈黙の間の後、決意したのだろう、今までちょっと伏し気味だった顔を上げて言った。
「抱かせてください!」
…
…
…
「はいぃ?」
某パートナードラマの何某京さんみたいな声で返事を返す。
「いや、その…ちょっと遠慮させて——へぶ!」
何もレッドだけが特別ではなくブルーもまた創造主たる横島とは似ていなく、至って真面目な性格であり、むしろ生真面目と言っていいぐらいの性格なので遠慮したかったがそれよりも早く女生徒に捕まり、抱きしめられる。
「んーー!んー!」
横島なら泣いて喜びそうな女性の胸の谷間に挟まれて抱擁中…なのだが今のブルーは生死に関わる…いくら式神でも息が出来なければ死あるのみ。
「ああ、やっぱり和む〜…あんっ!」
何やらイケナイスイッチを摘まんで脱出に成功したブルーはゼハーゼハーと酸素を求めて深呼吸する。
「スー、ハー…い、一体何がどうなってるんだ?なんで急に——」
言い終える前に自分の霊感が疼き慌てて飛び退く。
「チッ」
「いやいやいや、女の子が舌打ちとか駄目!せっかく可愛いんだから!」
新たな刺客…じゃなくて捕縛者はブルーに可愛いって言われても〜とか言っているがしっかり顔がちょっと赤かったりするのだが…その手は止まる事はなくブルーを捕縛せんと動く。
「誰か助けてくれ〜!」
「ここは結界の中だから怖い悪霊はいませんよ〜」
どうやら恐怖のあまりに錯乱している…
「キャ〜可愛い〜!」
はずだ。
「む、なんか式神が美味しい事になってるような…」
と霊感が告げているが…まあ、どうしようもない。