第百四十八話
益州攻防戦の報告を読んでる途中に速報が届いたのじゃ。
その内容は……孫策達が南蛮との貿易交渉に成功したというものであった。しかもその内容も載せられておったのじゃが——
「これはなかなか悪どいのぉ」
貿易と言っても貨幣など存在しない南蛮には金はほぼほぼ価値はない、つまりほぼ物々交換なのじゃがその比率がなかなかえげつないのじゃ。
例を一つあげると背負籠一つとその背負籠一杯の果物という明らかに不平等な取引が行われているようなのじゃ。
確かに果物ならば南蛮には自然にいくらでもできておるが、さすがに背負籠と交換はなかろうに……ん?猫(南蛮人)と背負籠?……まさか籠に入るのじゃろうか?猫籠か?そうなのか?それなら是非見てみたいぞ!スマホは何処じゃ!誰か写メを!SNSにアップして欲しいのじゃ!ネット環境なんぞないがの!!(錯乱)
それはともかくとして、これで劉備軍の最大の問題であった食糧不足は若干ではあるが改善されたようじゃな。
もっともそれでも足りぬのじゃがな……孫策達が中抜きをしておらんかったらもう少しマシであったろうが、野心ある者に任せてしまった諸葛亮や鳳統が悪いのじゃ。
まぁ南蛮まで自力で辿り着ける練度と士気、交渉をまとめる外交力を求めた場合、孫策達は有力な選択肢なのは間違いないがのぉ。
ちなみになのじゃが、孫策達が手に入れた果物は高値で取引されている珍品であるから一旦商人に売却し、それで得た金で食糧を購入という手順であり、その商人とは孫策達に着いて行っておった者達じゃ。
ここまで言えば察する者もおると思うが、この商人は裏商会の所属じゃ。もっとも気づかれ難いように裏商会はいくつにも分割して運営しており、その中の中規模のものの一つじゃ。ただ、今回はその規模故にこうして連絡が遅くなってしもうたのじゃがな。
そして、また吾等は交易が増えて資金が集まってくるのじゃ……最近は洛陽にも金蔵を作ったことで多少余裕ができておるが、南陽の方では異様に立ち並ぶ金蔵が噂を呼んで、実は殺した死体が隠されている、蜂蜜で埋め尽くされている、愛人を住まわせている、牢屋であるなどと言われておるらしい。……まぁ蜂蜜は入っていないでもないがな。
それはともかくとして、これにより劉備軍は士気を持ち直すことになるじゃろう。
それに孫策達はどうやら南蛮から成都へと侵攻するつもりでいるようじゃな。もしこれで劉備達が勝利した場合、孫策達が戦功第一になる可能性が高いのぉ。
兵糧の危機、劉備軍が苦戦する中での南蛮からの挟撃……これを評価せぬなら劉備達の先はないじゃろう。もっとも史実では戦に関してはイマイチ、内政はピカイチの諸葛亮がおるからそんなことにはならんじゃろうがの。
さて、益州攻防戦の続きを読むとするか。
戦いは劉璋軍有利のまま二時間ほど続き、劉備軍は打開策を打てないのか打つ気がないのかはわからぬが被害が拡大していく。
消耗戦と考えた場合、数字だけ見れば劉璋軍が先に兵が尽きることになるが、劉備軍が今消費しておるのは劉備軍の中でも黄巾の乱より従える者達と南荊州で十分な訓練を施した精鋭達である。今のまま推移すれば間違いなく劉璋軍よりも先にこの精鋭達が消耗してしまうため途中から形勢はひっくり返ることになるじゃろう。
などと考えておったら細かな変化はあったが大きな変化はなく双方撤退して報告書は終わってしもうたぞ。
「……これで第二戦は終わりなのかや?」
念のために他に報告書がないか探ってみたが……ないようじゃな。
普通の戦とはこういうものなんじゃろうか?よく考えてみれば吾等が経験した戦というのは戦とも呼べぬ賊狩りと賊狩りとはとても言えぬ黄巾の乱と真っ最中である袁紹ざまぁ達との戦と種馬家による奇襲ぐらいじゃ。
前二つは正規軍との戦闘ではないし、後二つは籠城戦と野戦ではあっても奇襲な上に相手が騎馬しかおらぬという特殊な軍との戦であった。
普通に考えれば奇策を連発するような戦がそう簡単に起こるわけもないしのぉ。吾も原作の世界と過大評価しておったか?やはり手堅く戦うことが一番なのじゃろうな。
「馬岱も頑張っておるようじゃな」
次に取った報告書には馬岱が幽州に着いてからの行動が書かれておった。
戦闘自体は烏桓は騎馬民族であるため機動力に優れているのじゃがそれは公孫賛もであり、軍としての戦いではやはりよく訓練されておる公孫賛が優位ではある。
しかし、問題は軍としての戦争ではなく、規模の大きな賊程度の数に分散して略奪にあった。将の数が少ない公孫賛達にとって戦線(戦争と言えるかどうか微妙ではあるが)が増えることによって将が足らず、略奪を防ぐのにかなり苦戦しておったようじゃ。
そこで馬岱が加わったことで一つの軍が増えることを公孫賛は馬岱の援軍を喜んでくれたようで感謝の手紙が届いたのじゃ。
そして感謝されるだけの戦果は上げておるようじゃ。
略奪しようとしておった烏桓を三千……それも三回ほど撃退することに成功しておる。
もちろん馬家の兵士だけで行ったわけではないのじゃが、やはり相手は騎馬民族となると常駐できる将や軍は多ければ多いほど良いからのぉ。
それに馬岱の悪知恵も良い方向で働いたようで、烏桓達は馬岱特製の落とし穴に何度も嵌り、それを警戒するようになり、その結果一番の武器である機動力が僅かに鈍らせることに成功したそうじゃ。