第百六十四話
作者の美羽成分枯渇により流れをぶった切り、脈絡ない話を挟みます。
ご了承下さい。
「お嬢様は……曹操に真名を預けているのね」
孫権が突然妙なことを尋ねてきたが、別に隠しておることでもないし答え難い内容でもないので素直に答えておく。
「うむ、その通りじゃ」
「そう……じゃあ、曹操とはどういう関係なの?」
「む?」
どういう関係?……吾と華琳ちゃんの関係など、どう表せばいいのじゃろうか。
幼馴染(見た目は二人共未だに幼いが)、悪友、親友、蜂蜜の友(一方的に)など色々浮かぶがどれもしっくりせんな。
むむむ。
「……言えないような関係なのね」
む?考えておる内に妙な方向で勘違いされておるようじゃ。
「いや、そういうわけではないぞ。ただ、表現に困っておるだけで……そうじゃな……やはり宿敵という言葉が合うかのぉ」
「宿敵……」
(宿敵……宿敵なのにお互い真名を預け合うなんて……張勲や魯粛様、紀霊様はわかる……でもなぜ宿敵に……そしてなぜ私には真名を預けてくれないのよ)
んー?孫権はどうしたのじゃろ?
何やら闇落ちしそうな雰囲気を醸し出しておるぞ?駄目じゃぞ?紀霊に並んで常識派なお主が闇落ちなんぞしたら吾等の悪ノリを止められる人員がおらんなるではないか。紀霊は吾の悪ノリは止めんしなぁ。
(わかってはいるのよ?真名を預けるというのは何かの切っ掛けがあって預けるようなことがなければ異性だと婚約、もしくは婚姻を意味することぐらいは……でも、主従関係なんだからそろそろ預けてくれてもいいと思うのよ。こうなったら私から……でも女性から真名を預けるのは端(はした)ないことだし……)
……本当に大丈夫か?何やらどんどんダークサイドに寄っているような?
(お嬢様が異性でなければ預けられ……ているのかしら?正直、多分お嬢様は真名を預けるのを忘れているという可能性が高いのよ。もしそうなら異性であろうとなかろうと関係ないわね。というか真名を預けるのを忘れるというのは……いえ、こう考えること自体が恥ずべき行為ね)
「孫権孫権」
「さり気なく、裏で手を回して噂を流して……は、はい!なんでしょうかお嬢様!!」
今、凄く気になることを言っておったような気がするが……ま、まぁ孫権なら変なことではないじゃろう。
「最近は仕事ばかりじゃったから少し休むか?」
ん?また孫権が……というかよりダークサイドに堕ちておるような?!
「お嬢様……私は邪魔なのでしょうか?」
(確かに私はちょっと口煩く言ってしまうところがあるのは自覚しているわ。でも、だからこそお嬢様のお役に立てていたと自負していたのに……やはりあの馬鹿姉のせいかしら?こうなったらなんとしてもあの馬鹿姉の御首をお嬢様に捧げるしか——)
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!なんか誤解しておらんか?!吾はお主に暇を出す……つまりクビにしようと思っておるわけではないぞ!」
「え……あ、はい」
今日の孫権は妙にネガティブなように感じるぞ。何かあったんじゃろうな。
やはりこういう時こそゆっくりするべきじゃ。そもそも今までの吾等の勤務を考えると自立神経失調症になってしまったも不思議はないからのぉ。
「孫権はよく働いてくれておるからの。たまには休暇でもとってゆっくりするといいと思うぞ?」
「ですが多少仕事が多少楽になったからと言って休んで良いほどではありません」
「ふふふ、孫権を休ませるためなら吾も多少は頑張るのじゃよ」
(お嬢様はこれ以上頑張ると死んでしまうわよ。ただ、その心遣いが嬉しく思ってしまう)
「わかりました。なら休暇を取らせてもらいます」
「うむ、手続きはこちらでやっておくから明日から休むと良いぞ」
翌日。
「……なぜ孫権がここにおるんじゃ?休暇のはずじゃろ?」
「ええ、休暇中です?」
「いや、だからなぜここに……吾の部屋におるんじゃ?」
「最近、ゆっくりお嬢様のお世話ができていなかったので休みの間、じっくりお嬢様のお世話をさせていただきます」
確かに最近は皆が皆、忙しくて元々は使用人である紀霊ですらも会う時間が減っておるが……しかし、これは休みじゃないじゃろ。
まぁ……久しぶりに孫権に甘えるのも良いか。
ちなみに後日、七乃や紀霊が休暇をとり、同じように吾の世話をすることになるのじゃが……結局吾の世話をしておるのに吾の仕事を増やすことになっておることに気づいてこれ以降こういうことはなくなったのじゃ。