絶賛スランプ中です。
何を書いても面白くなく、目標の文字数にすら届きません。
困ったなぁ。
第百六十八話
袁術・曹操連合の先頭を切るのは夏侯淵である。
しかし、切り込むという意味でならより武に偏る夏侯惇や関羽の方が適任、ならなぜ夏侯淵が選ばれたのか。
それは、弓兵の統率が一番優れていたからだ。
弓兵……袁術の提供によりほとんどが弩兵となっているが、指揮にはあまり差がなく夏侯淵は見事に役割を果たす。
「……これは私の知っている戦いとは違うわね」
その戦いを見て、曹操は溜息を漏らす。
この時代の戦争はまず弓矢や投石などの遠距離、矢玉が切れると突撃し近距離、もしくは矢玉を盾もしくは速度をもって掻い潜り突撃、これが戦いの基本だ。
だが、曹操の目の前で行われているのは——
「まさかろくに近寄らせず、一方的に攻撃するだけなんて……」
大軍同士の戦いである。
陣形は崩れ、敵味方が入り乱れ、地獄絵図になることこそが悪くとも正しい戦場のあり方のはず……だが、夏侯淵の部隊の統率が取れた矢の群れは反袁術連合の持つ盾を……普通であれば何ら問題なく矢を防ぐ盾が砕かれ、貫通し、バタバタと屍を量産する。
更に井闌車からも追撃し、投石機から放たれる岩が陣形を乱し、指揮系統を乱す。
それでもいつか矢玉が尽きるだろうという思いを刃に、前進を続ける反袁術連合だが——
「この消費量では投石機の方はともかく、矢に関していえば一日中射ってもなくならないのよね」
運んできた弩と矢はそれだけ用意されていたし、何より未だに続く輸送隊が明日の分の矢玉を運ばれてくる。それが五日間予定されている。
五日というのは兵站の限界、ではない。五日以内に決着が付くからである。
つまり、反袁術連合の刃は届かないのだ。
「これが美羽の戦い方、なのよね」
渡された物資の内容を知った時には想像はついていた。
だが、いざと現実となると思って以上の空恐ろしいものであった。
兵士のほとんどは袁術のものでも指揮している将のほとんどは曹操の臣下であるため全てが同じとは言えない。
問題はこの戦い方に将の質はほぼ影響しないということだ。もちろん全く影響がないわけではない。
夏侯淵が率いる部隊の評価を十とすると関羽が八、夏侯惇が七と差はある。
しかし、猪のように突撃をすることが得意で、他は不得意な夏侯惇が七で、どのような戦闘でも優れている関羽が八なのだ。
不得手の者と優れている者の差が一程度である、ならばある程度の能力を持った将であるならばほぼ変わらない戦いを行うのならば袁術と曹操の軍でもそれほど大差がないと言える。
「つまり美羽と戦うとなると麗羽と同じ状況に立たされることになるわけだけど……」
戦略レベルではまだ何とかなるだろうと思っているがこの戦いのような戦術レベルの話になると曹操をもってしても勝てるとは言える心境にはなかった。
いつ降り止むかわからない矢の雨と岩の雹は正面から相手するとなるとさすがにきついだろうと曹操は思っている。
「それでも兵站を叩けたら問題ないでしょうけど」
この戦い方の最大の弱点は物資の消費の速さであることは当然気づいているため、それを狙えば機能不全を起こすことはわかっている。
ただし、それは袁術側が攻勢に出ている場合であって守勢であったなら兵站を途切れさせるようなことはない。もしできたとしてもそれ相応の被害を覚悟しなくてはならないだろう。袁術も魯粛もそのような弱点は最初から承知の上なのだから対策がなされないわけがない。
「少なくともこちらから攻勢を仕掛けるとなるとかなり厄介なことになるわね。いっそ決戦みたいな大規模な戦いはすべきではないでしょうね」
もし戦うのならいくつかに軍を分けて袁術に兵力集中をさせないことで数で補っている部分を攻めてやればある程度有利な戦場になるだろう。