第百八十一話
「プププ、張松ざまぁ……というと袁紹ざまぁと被るか、あれと一緒にしては袁紹ざまぁが可哀想じゃな」
吾の私情によって陥れることとなった張松は狙い通り、劉備勢の中で孤立することになり、益州組と南荊州組との溝が若干埋まって一枚岩……とまではいかなくともそれなりにまとまりを得たのじゃ。
そして議題であった北郷勢との同盟はしばらく続けることを決定したようじゃ。
諸葛亮達が苦虫を潰したような表情を浮かべておったそうじゃ。まぁハッキリと分かる失策じゃからのぉ。
ただし、先程言った通り、まとまりを得たことで内政は捗っておる。
「さすが諸葛亮孔明、内政はお手の物じゃな」
次々と豪族達を説き伏せて改革を行い、中央集権化を目指しておるようで水面下で豪族達の弱体化を画策しておるようじゃが……協力してもらっておいてやっておることがえげつないのじゃ。
特に吾を真似ておるらしい街道整備(真似ている根拠は道幅や作業工程などがほぼ同じだからじゃ)がえげつないぞ。
人足(信者で格安)は出すから金を出せ、とヤクザのようなやり口で金を吐き出させておるようじゃ。
「益州の豪族を借金漬けにして傀儡化しているお嬢様ほどではありませんよー」
「いやいや、吾としては益州の豪族達なぞ敵以外の何者でもないから当然の処置じゃろ」
味方を弱くしようなどしたことないぞ。
それにまだ五十に届かん程度じゃからな。
裏商会では規模が小さすぎて(袁術主観)なかなか捗らんのじゃよ。それにあまりやり過ぎると徳政令の発動なんてされては困るしのぉ。
後、この街道整備が進めば商家の往来が激しくなる。それを見込んで中小商家に豪族達を紹介するという名目で仲介料を手にしておる。こっちはせこいのぉ。
それだけ財政が圧迫しておるということじゃがな。
最近、劉家に纏わる品々が商家に次々と売りに出されておるが……察しの良い者ならばすぐにわかったと思うが、劉焉から劉璋に引き継がれた家宝などなどじゃ。
正直、吾には必要ないのじゃが、小間使——ゴホン、帝が確保して欲しいと言っておったので表商会を使って買い占めたのじゃ。
さすがに裏商会では買える金額でもないし、何より競売、つまりオークション式であったから何とか買うことができたぞ。
しかしじゃな……劉家に纏わる品々の中に、明らかに安物の茶碗や箸などがあったのでそれはさすがに買わんかった。
どうせあれじゃろ?劉家は劉家でも劉備が使用した茶碗や箸なんじゃろ?そんなもんいらんわー、というかこれはもう詐欺ではないか?いくらでも量産できるんじゃから。
……ただ、箸に関しては物凄い値段になっておったが……あれは……いや、考えるのはやめておくのじゃ。色々と汚れてしまいそうじゃ。
さて、劉備達のことはとりあえずおいておくとして——
「ふむ、まさかの華琳ちゃんが袁紹ざまぁに我慢比べで負けるとは思わんかったのぉ」
華琳ちゃんは今まで、吾の物資を頼り戦力を失わずに勝つ方法を選んでおった。
まぁ損害が少ない方がいいのは当然ではあるがの。
しかし、まだ期限があるとはいえ、不測の事態などを考えるとそろそろ本気を出さねばならんと思ったらしい。
よほど手弁当(実費の兵站)で戦はしたくないようじゃの……まぁこれも当然か。
しかし、春ちゃんが文句を言いつつも我慢しておるのに華琳ちゃんが先に音を上げるのはどうなんじゃ?史実ではそういうところも見られるが……さすがに、のぉ?
戦いそのものは始まったばかりで詳細は入っておらんが、とりあえず春ちゃんや許猪や典韋など武断派はかなり気合いが入っているようじゃ……いや、荀彧や郭嘉などもそれなりにやる気になっておるじゃろうな。
今までは戦略も戦術も捻りようがない戦い方をしておったからの。これからが軍師の腕の見せ所じゃな。
唯一見せ場が充実しておったのは秋ちゃんじゃろうな。間違いなく。
「うむ、働き過ぎで疲れたじゃろうから労いに蜂蜜でも贈ってやるかのぉ」
(あれだけ拒否されてまだあげる気になるお嬢様は凄いですよねー……蜂蜜に関しては真剣なので口にはしませんけど)