第百八十七話
「今ここに、天子様の御力によって世の乱れを正されました」
民衆の前で堂々と宣言をする魯粛の姿はいつもは何処かおっとりしている雰囲気(実情は違う)とは異なり、凄く凛々しくてかっこいいぞ!濡れる!(蜂蜜で)
え?普通は吾がするものではないのかって?嫌じゃよ。面倒じゃし、せっかく吾はあまり知られぬようにしておるのにこんなところでバレては自由に城下を歩けなくなるではないか。
魯粛のように護衛を沢山付けてぞろぞろと歩くのは吾の趣味ではない。
見目麗しい方が民衆達にもウケが良いしのぉ。実際、今もワーワー騒いでおる。
「これで反董……じゃなかった反袁術連合も終いか」
思えば感慨深いものじゃ。
ゲームでは群雄割拠全盛期であるから一、二を争うシナリオを終わらせたわけじゃ。
勢力図的には司隷、北荊州、揚州を支配し、曹操と陶謙と董卓と同盟関係、劉備が中立状態……意外とまとまっておるのぉ。
漢王朝が滅亡しておらんし、内乱は規模こそ大きかったが実際は完全防衛成功して逆侵攻で鎮圧まで至っておるから当然といえば当然なのじゃが。
「懸念しておった袁紹ざまぁ達も無事保護されたしの」
公孫賛が同級生である袁紹ざまぁのピンチに探索に力を入れた結果、発見、捕獲できたのじゃが……捕獲した場所が賭博場だったらしいというから笑うしかない。
聞いたところによると手持ちが無くて餓死しそうだったので自分達の身体を担保に賭博をしていたそうじゃ。
まぁ袁紹ざまぁや顔良達は見た目も良いから担保としては申し分はなかったじゃろう。
もちろん、賭博の元締めはいいカモがきたと喜んだそうじゃが……まぁうん……袁家の力が爆発して逆にカモにされ、運営資金のほぼ全てを巻き上げられて暴力に打って出ようとしたところで公孫賛が捕獲したのじゃが……これも袁家の運の力じゃな。
万全な状態であれば顔良達がそのような輩に遅れを取ることなぞありえんが、空腹状態であり、戦う力がほぼなかった状態であったらしいから公孫賛に助けられたという。
やはり強運の持ち主じゃのぉ。
もっとも他の袁家縁者達は半数以上を討ち取ったことから分かる通り全員が運が良いわけではないがの。
「袁紹さんがこちらに来るまでにはもうしばらく掛かるそうですよ。途中で温泉によって温泉まんじゅうと温泉卵を食べたいそうです」
負けたというのに自由な奴らじゃのぉ。
お土産を期待……するのは無理か、満足な防腐剤なんぞないこの時代にまんじゅうも卵も長期輸送に耐えられるものではない。超特急便を使えば問題ないが、それでは袁紹ざまぁの土産ではないから意味はないのぉ。
ちなみにこの温泉まんじゅうも温泉卵も吾が広めたものであるし、袁紹ざまぁが立ち寄っておる温泉も商会が経営しておるところというのは分かりきっておる余談じゃな。
「そういえば孫策さん達は周家に援助してもらえるようになったようですよ。厳密に言えば私達が許可したから、でしょうけどね」
「周家は律儀にもこちらに話を通してきたからの……まぁ厚遇しておったのにも関わらず突然出奔した者達に何も言わずに援助するような家ならそれなりの対応をするつもりではあったがな」
これで一応は吾から贈った資金も合わせると満足な活動資金を得たわけじゃ。
周瑜がどのような政策を行うのか楽しみじゃなぁ。
勝ち馬ならぬ勝ち蜂に乗ることをせんかった周瑜がどのような政策を行うか、本当に楽しみじゃなぁ。
「お嬢様、実は結構恨んでますよね?」
「恨みとはちょっと違うと思うぞ。吾自身どういう感情か説明できんが」
多分一番近い感情は拗ねている、じゃろうな。恥ずかしくてとても口にする気にならんけど。
「そろそろ涼州の道路整備の報告が入ってくる頃ですね。これが終われば通常業務に戻れますよ」
「七乃、そういう言い方は駄目じゃ」
明らかにフラグじゃぞ。
そんなこと言っておると——
「あ、丁度報告が届きましたよ。はい」
「…………気のせいか?いつも受け取っておる報告書より倍以上あるんじゃが?」
「言われてみればそうですねー」
なぜそんな能天気なのじゃ!明らかに何かがあったということじゃろ!吾等の休みの計画が……ん?実は七乃、寝ぼけておるか?
「そん、なことありませんよー」
「無理せず休んで良いぞ。ここのところこの鎮圧宣言の準備で忙しかったが、それも終わり、この報告書で多少忙しくなったところで何とかなるじゃろ。多分、きっと」
さて、中身を確認………………うわー、面倒事じゃ。
董卓からの報告では道路整備は順調なようじゃが、なんと涼州どころかこの時代の大事な労働力である馬の流行り病が確認されたとある。
今の所は死ぬほどの症状はなく、熱と食欲低下、体力が低下、座って寝ることが多くなることぐらいしか確認できておらんようじゃ。