第二百八話
ヨーロッパ圏の人間はちゃんと人間であるそうじゃ。
ちょっと安心したぞ。しかし、ただの人間でもないらしいがの。
具体的に言えば身長が男女共に大体三メートルを超えるんじゃと。
元々アジア圏の人間は身長が低いのは確かであるが、大陸に限って言えば大体平均身長百七十を若干超える程度と史実よりは大きいのじゃが、それに合わせて大きくなったのかのぉ。
……戦争になったらやばそうじゃのぉ。まず間違いなく兵士の質では負けてしまうじゃろうな。
身体が大きければ大きいほど筋肉量が増えるので間違いなく、劣勢じゃ……呂布などの例外を除けばの。
もしや万里の長城よりもヨーロッパ圏からの侵略を防ぐための壁を作るべきなのではないか?いや、よく考えれば西側は自然の壁が存在し、それ抜ける道には万里の長城ではないが虎牢関や汜水関などのような大型の関が設置されておるあたり、西側からの侵攻にも備えてあったようじゃ。しかも大体が始皇帝が考えたものらしい……さすが古代で世界有数の面積の国を作り出したチートじゃな。そう考えれば三国志……恋姫の世界で良かったのじゃ。現実ではあるが日本的な考えが随分反映しておるからの。
万が一キングダムの世界で秦以外の国に生まれ変わっておったらとてもではないが生きていける気がせん。
「それはともかくとして……益州からの引き抜きは結構順調なようじゃな」
「はいー。益州の各地から奴婢を引き抜いているのでまだあの偽善者さん達は気づいていませんねー。私達が本気を出せば偽善者さん達の倉庫を空にすることぐらい簡単にできるのですから当然ですけどー」
資料では七万人ほど引き抜きに成功しておるようじゃ。
しかも言ったとおり奴婢であるため、全て吾等が好きに使える労働力が手に入ったということじゃ。
これで軍備拡張!!……なんてするわけもなく、とりあえず、またほとんどを公共事業に突っ込むことになるのじゃ。
具体的にはトイレの増設や風呂の増設、それらの管理などに回すことになる。
いやー最初は別の者達にやらせておったんじゃが、労働力不足で本当に最低限の人員しか配備できておらんかったから援軍要請が矢継ぎ早に行われておったんじゃよ。
それにしても……トイレと風呂の管理に七万人がほぼ消えるというのだから改めて中国の大きさを思い知るのじゃ。というか、現代の中国が周囲に外敵をわざと作って統制を保とうとしておる気持ちがよく分かるのじゃ。あまりに大き過ぎる国土、人種も様々、人口と比例するように存在する光と闇、天才と愚者……うむ、文明、文化が発展してしまっておる中国でまともに統制できる気がこれっぽっちもせんぞ。
今が三国時代という文明も文化も発展途上である大陸だからこそ権力と金で発展に力を注ぐ形にしてなんとか統制しておるのが現状じゃ。
しかも、吾等はまだ大陸を制覇したわけではない……いや、本当に、大陸なんて制覇したくないのぉ。これ以上の仕事は勘弁なのじゃ。
「異民族さん達への打診もしてみましたけど、結構いい手応えが返ってきてますよー。まだ色々調整が必要だとは思いますけど」
異民族の勧誘が成功した場合、重要性の低い郵便物の輸送を任せようと思っておる。なにせ彼らの馬さばきは大陸どころか世界屈指のレベルじゃからな。それらを利用せん手はないじゃろ。
もっとも重要性が高い食料や金品の輸送には使えんがな。さすがにそこまで信用するわけにはいかんからの。まぁ文化の違いがあるから仕方ない部分もあるがな。
「そういえば涼州で異民族さん達が帰化しているそうですからそちらの方々を引き抜いてはどうですか?」
「ふむ、董卓に聞いてみるか」
ついでに確か、周泰が呂布達に世話になっているはずじゃから土産も用意せねばならんの。
ちなみに周泰の武者修行は順調なようで、呂布のそれなりのやる気状態と打ち合うことができるようになり、隠密行動も磨きがかかっておるそうで眼の前におっても気づきにくいほどの領域に踏み込んでおるらしい……ほんまかいな。
それが本当であったらひょっとすると個人の武では紀霊や関羽を上回っておる可能性があるぞ。