第二百十四話
とりあえず孫権のご冥福をお祈りしますなのじゃ。
あの後しばらくお腹をナデナデされてそろそろ厠に行きたいなぁと思ったあたりで、オーガを背負った周泰にドナドナされていったのじゃ。お経でも唱えたほうがいいじゃろうか?
さて、周泰の問題が解決しておらんが、今はそれどころではないだろうからとりあえず仕事に戻るとするかの。……そういえば孫権……仕事は大丈夫じゃろうか?吾は既に軽く死にそうなぐらい溜まっておるんじゃが。
劉備達が度々襲ってくる西側の異民族討伐に乗り出したそうじゃ。
いい加減火の車であるのに更に出兵とはご苦労なことじゃな。まぁそうでないとバラマキ政策による民衆の不満が蓄積されておる現状では無理もなかろうな。
後、おそらく新たな貿易ルートの確保のためというのもあるじゃろう。南側の貿易ルートは袁紹ざまぁが着任したことで流れが大きく変わってしもうたからのぉ。主に吾のせいであるが。
そういえば袁紹ざまぁといえば、着任したというても正確に言えば田豊と沮授が太守であって袁紹ざまぁは追放され、監視されておるとはいっても基本的には自由の身であるから商売を始めたようじゃ。
ただし、商売というても金貸しのようじゃがな。ちなみに袁紹ざまぁが面接して人を見て、顔良が会計士、文醜が取り立て屋という布陣じゃ。
元々袁紹ざまぁは相手を下手に信頼せねば人の見る目はなかなかある。しかし、どうもそれが家臣や身内になると途端に目が濁るんじゃよなぁ。なんというか……釣った魚に餌を与えすぎてデブらせ、その収まらぬ食欲で共食いを発生させてしまうような感じかのう?
本人らは袁紹ざまぁに忠誠を誓っておったのは間違いないのじゃが、派閥争いで田豊や沮授が仲裁にかなり苦労したようじゃな。
……余談は置いとくとして、これがうまく機能しておるのか、袁家由来の黄金律でなのかは知らんが、順調に資金を増やして贅沢三昧をしておるそうじゃ。
ただし、これには色々と問題が発生しておるようじゃがな。
吾と同じように必要以上に資金を集めてしまっており、袁紹ざまぁ達の浪費では追いつかず、市場に貨幣不足になってきておるそうで、田豊や沮授が頭を抱えておるそうじゃ。
しかも、金貸しはその性質上、生産性はないので袁紹ざまぁが浪費すると市場から物資が消えるので物価の上昇が起こってしまい、更に金貸しが繁盛してしまうという負のスパイラルに陥ってしまうことになる。
……もしかしてこれは袁家の宿命なんじゃろうか?
とりあえず、陰ながらの支援……というかこのままだとさすがに民が哀れじゃから劉備達の妨害も兼ねて益州の物資を集めて流しておくことにする。
これで吾が引き抜いたことで人が減って起こった物資余りも解消されるじゃろ!(そんな事実はない)
え?劉備のところの民に容赦がなさすぎる?吾は敵味方をきっちり分けるのじゃよ。
「華琳ちゃんは……苦肉の策じゃのぉ」
吾に巨額の負債ができたことで赤貧になっておる。
その打開策、というか応急処置として屯田兵を採用したようじゃ。いや、正確にいえば屯田兵ではないかの。
屯田兵というのは駐屯地にて兵站軽減を目的に開墾を行うことを言うが、華琳ちゃんが行っておるのは常備兵を派遣して開墾を行い、国営農地を増やすことじゃ。
これは平時の常備兵の維持費を少しでも軽減させるための効率的な策の一つではあるのじゃが問題がいくつかあるが大きくは二つじゃな。
一つは士気じゃ。
常備兵というのはエリート層である。特に華琳ちゃんのところぐらいになると精鋭中も精鋭であるため、下民が行うような仕事を行うのは口にはしないじゃろうが不満は溜まるじゃろう。
そして二つ目は練度の低下じゃな。
農作業に時間が割かれ、体力トレーニングにはなるじゃろうが、戦闘能力を維持、もしくは向上させるには明らかに悪手じゃ。
しかし、これは吾にとっては大きなメリットじゃな。華琳ちゃんのところの戦力を少しでも落とせたのじゃから。
「それに食料の生産が増えてくれるならば吾としてもありがたいしの」