第二百十五話
孫策達については……特に何もしておらんようじゃな。
それに吾等も妨害などはしておらん。
よくよく考えたんじゃが、孫策達は吾の下から去ったが、敵ではないんじゃよな。
原作知識と実際に話しておることから照らし合わせると劉備や華琳ちゃんとは違って孫策達はあくまで母の、孫堅の治めておった揚州を取り返したいだけなんじゃよな。
別に吾としては孫策が州牧になってもいいんじゃが……その実力と器を示せばの。
ただのぉ、問題は群雄割拠の世では既に無いからすっごい微妙な能力なんじゃよなぁ。
少し前までまだまだ華琳ちゃんや劉備がおるし、原作知識から見ても仮初めの平和じゃと考えていたんじゃよ。しかし……よく考えれば国内に対立する派閥が存在することなんぞ国ならば普通じゃし、中国ならその規模は言わずもがな。
つまり、今の状況は仮初めの平和などではなく、既に太平の世であったのじゃ!
まぁ、一番の要因は華琳ちゃんに多額の負債を抱えさせたことで首輪を付けることができたからじゃがな。
華琳ちゃんはプライドが高いからのぉ。踏み倒すための戦争などという不名誉な戦いを起こすなど多分ないじゃろ。もっとも史実曹操の顔が出てこんとも限らんがな……もっと雁字搦めにしておきたいのぉ。
話は逸れたが、そういうわけで孫策達はほぼ放置しておるのじゃ。
孫堅と孫権への配慮がないと言えば嘘になるがの。
「そういえば西方の国からの移住者達はどうなっておるんじゃろ」
異国からの移住者を受け入れ始めたのは最近のことで、距離を考えるとまだまだ希望者が来るとは思っておらんかったんじゃが思った以上に早く、それは訪れたのじゃ。
どうやら羌族は西方、つまりヨーロッパ圏(厳密にはどこの国かはわからんが)との繋がりがあり、有力者やその家族を代価を貰った上で匿ったり預かったりしていたらしいのじゃが、義理や人情で付き合っていたがいつまでも帰国(帰ってくれない)できそうにないということでこちらに連れて(面倒を放り投げに)きたそうじゃ。
ちなみにその裏にはその国で略奪をする際に一々気にし無くてはならないという点もあったそうじゃ。それに何より移住者を連れてきた場合の報奨(塩や唐辛子など)を欲したのも多分にあるようじゃが。
そしてその移住者達自身も放牧生活にうんざりしていたらしく、定住することができるならと割りと前向きであるようで吾等としても面倒は少なくて助かっておる。
一応危険な習慣がないか調べたり、言葉などを調べたりして特に問題なく進んでおるらしいが……首狩り族みたいな奴らが紛れ込んだら洒落にならんからな。
「とは言ってもこの移住者は五百人に満たん数なんじゃが……予想外と言うかなんというか」
というのも移住者が有力者の家族であるため、それ相応の教養を身につけておるのでなかなかに役に立つ……というか、ここを追い出されたら困るため真面目に働く上に、吾の肝いりで行った貸借対照表や損益計算書を導入したことで見方さえ学べば比較的容易に短期間で習得でき、実際習得してしまった結果、プライドだけは一人前で古い方法にいまだに好む面倒な漢人よりも使い勝手がよいため……何人かは既にそれなりの重職に就いてしまっていたりするのじゃ。現在の政府は実力主義じゃからの。
それゆえにいつもは脳天気なフリをしておる吾へのヘイトが増々じゃが……ま、それは今更じゃから気にせんがな!
それよりも吾的には有能な人材が増えるのは嬉しい……が、やはり実力主義であっても異民族に対しての風当たりは強いらしいからの。
虐められておらねばいいのじゃが。
(実際のところ、虐め云々以前に仕事漬けの毎日でそんな時間すらないのだが、袁術はそれを知らない……というか自覚がない)
まぁ今度からこのようなことはないじゃろうな。今回は初回ボーナスというやつじゃな。
そういえば羌族は今度から人間も獲って来ると言っておったが……人身売買大いに結構なのじゃ。
そもそも国内でも人身売買をしておるからの。海外との取引に戸惑う理由はない。
しかし、国内の人身売買もそろそろ限界が来ておるからのぉ。
人身売買は最も多いのは子供なのじゃが、バラマキ政策の弊害というか……今まで捨てたり売ったりしていたものが価値を持ってしもうたため、数が減っておるんじゃよ。なんという皮肉。