第二百十八話
司馬家はエリート中のエリートであることはわかってもらえたと思う。
そんな家に中途半端な状態でアプローチを仕掛けたところで好転するとは思えんし、反袁術連合中に勧誘すれば足元を見られる……それどころか優秀な一族故に乗っ取りを企てるかもしれんからのぉ。
いや、別に政府を乗っ取られるだけならいいんじゃがの。
うっかり商会のことを計算に入れずに乗っ取りされると困るからのぉ。いくら優秀な者達とはいえ、実際に働いておるわけではなく、聞きかじった情報程度では誤ることもあるじゃろう。おそらく防諜のせいで吾等の情報がほとんど手に入れることができておらんじゃろうし、連合中に乗っ取られることがあると吾は殺される可能性があったからのぉ。
袁紹ざまぁが相手なら吾も殺されぬとは思うが……いや、原作じゃと割とあっさり公孫賛を殺しておったから殺されておった可能性はあったか。
それも世は安定に向かっておるのは間違いなく、今勧誘するのがいいタイミングじゃと思うんじゃ。
これ以降となれば蔑ろにしていると取られてどのような行動に出られるかわからんし、ちょうどいいじゃろう。
「さて、勧誘は吾が直接行くべきか、それとも呼び出すべきか……呼び出す一択かの」
吾が直接赴くには問題が多すぎるのじゃ。
あの司馬家を吾の演技で騙せるかも疑問じゃし、そもそも演技をしておる状態で勧誘が成功するのかという話じゃな。
さすがにいきなり信用して曝け出すのはちょっとのぉ……それに親しい側近しか知らん事実を他の者に語ったところで信用されるかどうか微妙過ぎるし恥ずかしすぎるぞ。
もし七乃が「実は私、超真面目なんです」なんて言い出したら、はいはいワロスワロスと言ってまともに取り合わんぞ。それにこういうことは自分で言うことでもないじゃろ……恥ずかしいにもほどがあるぞ。
「となると使者の人選か」
誰がいいじゃろうなぁ。
能力的に考えれば魯粛が妥当なんじゃが、問題は家格と職業的なことであまり向いておらんのじゃよ。
政権を得てから雇用した者達は力(仕事)でねじ伏せる形で黙らせておるが、元々生産能力が無い商人は儒教的にも世間的にも嫌われておるからのぉ。
まぁ恋姫世界であるから随分と儒教思想が緩々じゃがな。普通なら親が死んだら緊急時でもない限り、最低で十日、最高は一年以上も喪にこもらなければならんのじゃが、この世界じゃと二、三日で、下手をすると葬儀が終わると終了という場合もあるからのぉ。
時間は有限じゃから助かるがな。
話が逸れたが、家格というのも結構重要で、魯粛は商家の出じゃから古くから続く名家にはあまり良い顔がされぬのじゃ。
そういう意味では七乃も駄目じゃな。
向くかどうかは別じゃが、実は紀霊は家格だけ見れば特に問題はないのじゃ。あれでいいところのお嬢さんじゃったりするからの。
孫権も家格で駄目じゃな。良くて田舎者扱い、悪くて蛮族じゃ。
関羽?……平民じゃろ。
……まぁ、実のところこやつらを使う予定はないんじゃがな。だって、馬鹿にされたらサクッと族滅してしまいそうじゃし。