第二百二十六話
「これはどういうことか教えろください!」
教えろください?
「この殺人的物量は新人虐めなの?殺らせてください」
「ちょ?!張春華、落ち着くのじゃ?!」
バン はよ
バン(∩`・д・) バン はよ
/ ミつ/‾‾‾/
‾‾\/___/
みたいな感じで机を叩く張春華をなんとか宥めようとするが——
「睡眠時間三時間!食事も仕事を片手に!毎日湯浴みできるし書物読み放題のは最高だけどおぉ?!」
いえ、うちには虐めなんてありません。それが標準業務です。
いや、むしろ以前に比べたらホワイト環境です。四の五の言わずに黙って働いてください……なんていうと怒るかの?
というかこのネタ、既に鉄板なんじゃよなぁ。
しかし、司馬家が仕える前は徹夜を度々挟まねばならなかったことを考えれば本当に改善したのぉ。
それと口調が崩れてきておるぞ
「聞いているんですかこのちんちくりん!」
とうとう口調が完全崩壊したの。
「ホッホッホ」
「鳩の真似ですか?蜂蜜好きの鳩なんてとっても美味しそうね。〆ていい?」
なんか笑って誤魔化したら食べられそうなんじゃが。
これはこれで司馬懿とは別の意味でマナーの欠如が酷いのぉ。まぁ別に仕事さえきっちりしてくれるなら吾は気にせんがな。
「ふむ、しかし、それは吾に言われても困るぞ?上層部への仕事の割当などは魯粛や七乃の管轄じゃからの」
「もう言ったわよ!でも、これでも新人に対して十分配慮した結果だ、としか返さないのよ?!」
まぁそうじゃろうな。
おそらくじゃが、張春華の処理能力では余裕がないのじゃろうなぁ。
雇う際にはもちろん事前調査を行っておる。張春華も例外ではない。
張春華は、なんというか……知識は豊富にあるのじゃが、どうも書類仕事は苦手なようじゃ。
そもそも字を読む事自体が好きなんじゃろうな。全てを読んで処理するために時間がかかってしまうようじゃ。普通は要点だけ把握して終わりなんじゃがの。
その点、物臭な司馬懿の処理能力は間違いなく吾の配下の中で五本の指に入る速度じゃ。仕事を早く終わらせるために要点を把握する速度と正確さは恐ろしいものがある……が割と早く疲れて垂れてしまうため凄さは半減じゃがの。
要は、張春華は活字中毒ということじゃな。ただし、俗世にはあまり関心が無いようで噂話や世の情勢などはあまり把握していないようじゃ。
なにせ黄巾の乱はさすがに知っておったが反袁術連合のことは知らなかったようじゃからの。普通、活字中毒なら商会が発行しておる新聞などで知りそうなものなんじゃがまさかの新聞を知らぬというほどであったからの。
だからこそ吾に、文字通り権威ある太傅として接し、敬意を払わない司馬懿にあれほどの激しい叱責を行ったわけじゃ。
所謂箱入り娘というやつじゃな……こういう使い方であっておるかどうか微妙ではあるが。
「太傅様聞いてます?!」
「うむ、聞いておる聞いておる」
ここで唯一太傅という役職名で呼ぶ者じゃからのぉ……にしては司馬懿同様距離が近いんじゃが?
あ、こやつ、もしかして司馬懿とは別の方向でコミュ障なのではなかろうな。
「……少し質問があるのじゃが、おぬし、友達はおるか?」
「一人もいませんが何か?」
おい、司馬懿は友達では無いのかや。
「あれは塵です」
……いと哀れなり。
これはコミュ障というより、最初から拒否して……いや、仕官に抵抗がなかったあたりそういうわけでもないのか。
……こやつ、司馬懿以上に難物なのではないか?