第二百二十九話
「ふふふ〜ん♪ふふ〜ん♪ふんふんふふふん♪」
最近は寝る時間以外にも自由な時間ができるようになったので少し変わったことをしてみることにしたのじゃ。
「お嬢様、随分快調に鼻歌を奏でて御機嫌で————な、何事ですか?!」
「ん、七乃か。どうじゃ?この格好は?似合っておるか?」
ふと思い至って男の格好をしてみたのじゃよ。
いや、まぁ気分転換というやつじゃな。実はこの世界、結構男装をする女性がおったりする。
特に上流階級の者は護衛を連れ歩くのが面倒で男装して出歩くことが多々あるので吾が男装しても問題ないのじゃ!……まぁ本来の性別通りの格好をしておるだけんじゃがな。
「お、お嬢様は何を着ても可愛いです!どちらかと言えばいつもの方が神々しいですが!!」
いや、郭嘉以上の鼻血を吹き出しておいてそのようなことを言っても説得力が無いぞ?というか郭嘉のような特殊体質ではないのじゃから失血死するぞ?!というか吐血までしておらんか?!
【しばらくお待ち下さい】
「フゴフゴ……萌え殺されるかと思いました」
「まさか男装するだけで死者が……いや、重傷者が出るとは思いもせんかったぞ」
「お嬢様が可愛すぎるのがいけないんです!」
そこまで言われて悪い気はせんが……そこまでか?
「そ、それに……その丈の短い袴は卑怯ですよ!」
あ、やっぱりこれかや。
いやー、吾自身もやはり男の娘の要素を抜いてもショタっ子であるという自覚があるからの。ショタっ子といえば短パンじゃろという安直な考えで選んだのじゃが、まさか殺傷能力があるとは思いもせなんだ。
……というか七乃さんや、先程から吾の足をガン見し過ぎじゃろ。
もしや脚フェチかや?
そういえば日頃は丈の短い物を履く機会がなかったの。
以前にも言ったが、ミニスカはパンツを見せても問題ない者が履くものじゃと思っておる。吾の場合、パンツを見せた日には貞操の危機じゃから履かんからの。
「そんなに見られると照れるぞ?」
と言いつつ足を組んでみる。
「ゴフッ」
あ、また吐血したの。目は離しておらんけど。
掃除が大変そうじゃなー。と思いつつも足を組み替えてみると——
「——」
「こわっ?!」
まさかの血涙?!……あ、倒れたぞ。表情は幸せそうじゃが……これ、放置してしまうと死んでしまうのではないか?
「ってボーッとしておる場合ではなかったのじゃ!!大丈夫か七乃!!」
「お嬢様、どうし——」
「孫権!良いところに——」
「……」
「あっ」(察し)
「——」(バタン)
「やっぱりかや?!」
くっ、吾の側近達は吾が好き過ぎる件についてスレを建てるぞ!
(またしばらくお待ちくださ——)
「お嬢様、先程から物音が——」
「なんでこういう時に限って?!」
「——お嬢様」
お、紀霊は大丈夫なのか、良かった。
「できれば、髪を上げて……そう、そのようにそしてこれで留めて……はい、ありがとうございま——ゴフッ」
「やっぱりかや?!というか紀霊、おぬし自分の好みに合わせてから逝きおったな?!」
そして新事実が発覚。
紀霊はうなじ派のようじゃ。
……しかし髪を束ねて一点に集中させると結構重いのぉ。
(しばらくお待ち下さい)
「……あれ?ここは……お嬢様の部屋?それに私は……そうだ。お嬢様がお嬢様ではなかった?!」
目が覚めた孫権が妙なことを言っておるな。
「いや、吾は吾じゃからの?」
「あ、お嬢様……本当……お嬢様ね」
吾を上から下まで見てがっかりしたように項垂れておる姿に苦笑いを浮かべる。
あまりに被害が大きいので着替えておったのじゃが……この様子じゃと判断は間違っておらんようじゃな。
それにしても本当にこやつら吾が好き過ぎるじゃろ。
おかげで仕事がまた溜まってしまったではないか……自業自得ではあるがの。
「まぁ機会があればまた見せてやろうかの」
後で見損ねた魯粛に攻めに攻められたのじゃが、魯粛が倒れるとさすがに大事になるので我慢してもろうたのじゃ。