第二百三十五話
……なぜか撤去されるはずであった壁が、いつの間にか撤去区域から外されておる件について。
まぁ理由は吾等のことを知っておれば誰でも想像がつくことなんじゃが、いつもの如く四天王から嘆願(独断で計画変更したのだから嘆願ではない)が受理されたわけじゃ。
それどころか何やら大きな壁をわざわざ新たに用意されていたりする……各四天王の部屋の前に、の。
「明らかに邪魔じゃろ……これじゃせっかくの庭園が見えんではないか。しかも日当たりが悪くなるじゃろうに」
鈍感系主人公ではないから何を望んでおるかぐらいはわかるが、そのために壁を用意するというのは何か違う気がするのじゃ。
絵画自体は結構な数をやっておるんじゃがなぁ。薄い本のような内容を希望された時にはどうしようかと思ったがの。ちなみにその手の内容は描いておらんぞ?誰が好き好んで自分自身を題材にした本など描きたいというのか……しかも、なぜ、吾が受けなんじゃ?普通に考えて攻めが吾じゃろ?!
あ、念の為に言っておくが孫権からはそのような要望はなかったぞ。こういうノリ的な要素では四天王唯一の良心じゃからそのままでいて欲しいのじゃ。……真っ赤な顔をしてちょっと興味があったようじゃが、まぁそこは目を瞑るとしよう。孫権もいい年じゃからの。
「そういえば北郷の近況があがってきておったな。確認せねばならんな」
なぜ後回しにしたのかというと……四天王がおるところで北郷一刀の名前を出すとダークサイドに堕ちるからのぉ。迂闊な行動は控えておるんじゃよ……だってダークサイドに堕ちておる間は仕事なんぞせんからの。
さて、どうなっておるんじゃろうな。
「……ふむ、さすがエロゲー主人公、と言ったところかの」
今まで目立った動きはなかったのじゃが、どうやら統治と人脈構築は順調に進んでおるようじゃ。
特に相手が女性である場合、洗脳でもしたかのように好意的な態度で協力していると書いてあるの。
念のために諜報員は全て男にしておったが功を奏したようじゃな。
そして、実のところ劉備達よりも順調に統治体制を整え、民心を掴み事に成功したようじゃ。
領土の大きさの違いや支配していたのが親子二代の劉焉劉璋と他所から来て間もない新参者であった劉表こと、劉備達は借金があったり徐州派と益州派の派閥争いもあって上手く纏まりきってはおらんのに対して北郷達は李確郭汜の涼州軍と劉表の配下を率いておるわけじゃが、こちらは逃げる場所が無い者達の集まりであるし、吾等が適度に支援しておるから纏まりが良いのじゃ。
「しかし……黄忠との密会のぉ」
北郷と黄忠の密会……普通に考えれば黄忠の寝返り、と見せかける諸葛亮か鳳統の策などが思いつくが、さて……さすがに幹部クラスが直接動くとなると得られる情報が限られて面倒じゃのぉ。
「ふむ……何かできないぐらい忙しくしてやるかの」
今まで益州から奴婢を引き抜いておったが、それは劉備達のところであり、北郷達のところからは抜いておらんかったのじゃが、ちょっと厳しく行くかの。
北郷は現代育ちであるゆえ、ひょっとすると経済の動きを察する可能性があって控えておったが、まぁ別によかろう。気づかれたところで何かできるわけでもないからの。
もし気づかれたなら……裏商会を全て撤退させるだけじゃ。ちょうどあまりにも富が集まり過ぎておるしの?