第二百三十八話
「ところで関羽よ」
「なんでしょうか」
「吾が劉備を討伐するというたらおぬしはどう思う?」
「お嬢様のためならまとめて斬って捨てます!」
「いや、孫権には聞いておらんから」
答えたのは関羽ではなく孫権であった……というか言い終わる前に食い気味で答えておったぞ。
孫権が……あのクソがつくほど真面目であった孫権が……暗黒面に堕ちてしもうたorz
「私も孫権殿と同意です」
「良いのか?」
「天ある限り、他は人。天は二つにあらず」
「ふむ、つまり関羽は吾に万が一のことがあった場合の予備として劉備を利用しようとしたわけか」
これ、そんなに殺気立つでない。孫権。
「天は時に晴天、時に雲天もありましょう。しかし雲天が長きに渡れば苦しむのは人、天の安定は時に忠すらも上回るものです。ただ……」
「ただ?」
「劉備殿の理想であれば、晴天であれば人の身でいるだろうと思っていたのですが……」
あー、なるほど。
確かに劉備の理想は世の乱れが正された時には不要な理想、そして今は仮であるものの世は正され、関羽風に言えば晴天とは言えぬが安定した天である。
「こうなっては私の行ったことは利敵行為といえば利敵行為でしょう」
「まぁそれは吾の心一つじゃろ。よって無罪」
「いいのですか?」
「うむ、そもそもな話し、あやつらがあの不安定な時期にこちらに刃を向けなかったのは関羽の功績とも言えるしの」
反袁術連合の際に劉備等が連合に参加せんかったのは他にも事情があったであろうがあの時は吾は知らなかったが、関羽は既に吾に仕えることが決定しておったことも影響しておるじゃろう。
劉備のところにおった関羽がどのような立ち位置であったかというと原作とは心理的距離には違いがあったがほぼ変わらず、尻拭いを……いや、むしろ義姉妹ではなく、新米で他勢力からの出向ということもあって発言力がない状態なので原作よりも苦労しておったが人脈が築いておったのじゃから影響して当然じゃろう。
関羽が吾に仕える気であったことは知らんかったが!!(大事なことなのでry)
「とはいえ、劉備には頑張ってもらわねばならんことがあるからまだ先のことじゃがの」
「……仮想敵であることを重々承知の上で言わせてもらいますが……あまり酷い(むごい)ことは……」
「それは劉備次第じゃな」
「では……」
「生き残るのも死ぬのも劉備次第じゃ」
今降伏してきたなら——
「吾の親類にでも嫁がせてやるかの。光栄なことじゃろ?」
「私でしたら相手を斬り、自裁します」
「関羽の意見に同意です」
「ちなみに張飛、諸葛亮、鳳統はロリコンに嫁がせるぞ」
二人はロリコンの意味が理解できないようだが、とりあえずろくでもないことだけは理解したようで顔が面白いことになっておる。
酷い扱いに見えるかもしれんが、官位、領地の専横は重罪じゃぞ?これでも軽い罰…………軽い?…………まぁ死罪ではないから。(目を逸らす)
まぁ簡単に言えば張三姉妹の罰と同じじゃな。
ぶっちゃけ女性の地位が高いこの中華において、夫とはステータスである部分が多くある。
その点『だけ』をみれば親類、つまり袁家に嫁ぐのは良縁にみえるのじゃ。
もっとも袁家の男子……まぁ女子もじゃが……は色々と酷いんじゃがな。それこそ生き地獄と言えるぐらいには。
それに袁家に入ることになれば劉備は吾に刃を向けることはできぬ。そのようなことをしてしまえば大義が立たぬからの。
あ、無理やりな婚姻は大義にならんぞ?この中華ではそれは当然の習慣じゃから……むしろ袁家に加わるならたんまりと結納が必要なぐらいじゃから恩を感じても良いぐらいじゃぞ?実際は怨を抱くじゃろうがな。
「もしもう少し恩赦がほしいなら吾や周りの者が納得がいく手土産が必要じゃな」
吾は劉備、張飛、諸葛亮、鳳統、趙雲を生かしておくつもりは今の段階ではない。ちなみに生かすというのは生命か社会的なものかのどちらかで死んでもらうということで、先程言った婚姻は後者にあたり、討伐は前者じゃな。
この五人は野放しにした場合、庶民にまで落としたとしてもいざ何か行動を起こそうと思えば起こせてしまえるだけの能力があるからの。
だからこそ、何らかの形で死んでもらわねばならんのじゃ。
もっともこの程度のことは諸葛亮や鳳統なら察しておるじゃろう。だからこそ仮初めの平和に妥協せず、自分達の天下を目指しておるのかもしれんの。