第二百四十一話
うむ、違う意味で桃源郷が目の前にあった……が——
「なぜ七乃と魯粛と孫権と紀霊は裸なんじゃ?!ここは水着着用必須と説明してあったじゃろ?!」
そう、この大浴場はさすがに男女別にするほどの土地が用意できず、男女混合、つまり混浴となっておるのじゃ。
しかし、性の乱れは風紀の乱れ故に、男女共に水着着用を義務付けておるのじゃ。
……というのは表向きの理由で、関羽や周泰など吾のことを知らぬ(性的な意味で(性別的な意味じゃぞ?))と共に入浴するための口実なのじゃ。
いやー、正直言うと、関羽等原作組と風呂を入りたかったのじゃよ。別にイヤラシイ意味ではなくて、原作を知っておる転生者としてはこのようなイベントを行いたいと思うのが普通じゃろ?
本当は馬超や馬岱は前歴の関係で、華琳ちゃんや春秋ちゃん達は仮想敵で仕方ないのじゃが、できれば周瑜や公孫賛や甘寧とも入りたかったが、物理距離と別任務で断念したのじゃ。孫策?直感で吾の色々を暴露されそうじゃからのぉ……まぁ神の使いというわけではないので貞操は狙われることはなかろうけども。
「大丈夫ですよー。今日一日この大浴場は貸し切りですから他の方に見られる心配はありませんよー」
「それなら安心……とでも言うと思うておるのか?!」
吾がおるじゃろ?!男の娘がここにおるじゃろ!!
「規則を破るのはどうかと思いますが、張勲の言う通りこのようなものを着ずとも問題ないのでは……」
「身体を洗うにも不便です」
関羽、周泰、ちょっと待つのじゃ!それは盛大な死亡フラグ(吾の)じゃ!
ラッキースケベと喜べるなら吾も百歩譲って楽しむのもありじゃが、今の吾は性欲なんぞほぼないのじゃぞ?!どちらかというと美術品を観て楽しむ的なそれで死ぬのは不本意すぎるのじゃ!
「というか七乃達はともかく、なぜ孫権まで裸なのじゃ!」
七乃は悪ノリ&本気、魯粛はある意味いつもどおり、紀霊は吾に隠し事(色んな意味で)せんからわからんでもないが、孫権……おぬしは違うじゃろ。
「いや、その——フゴッ、お嬢様、そのように近づかれると——刺激が強すぎ……いい匂——フゴフゴッ」
いや、今は吾が照れや興奮するところであっておぬしが興奮するところではなかろう?というかそのキャラは郭嘉のものであったはずなのじゃが。
「ほれ、孫権……大事なところが丸見えじゃぞ」
「————?!」
声にならぬ声というのはこういうものなんじゃろうなぁ、と思っておったら……孫権が倒れた。
どうやらオーバーヒートしてしもうたらしい。
最近、孫権が大丈夫か心配になる今日此の頃じゃ。
「孫権さん大丈夫ですか?!まだお風呂に入ってないのに上せたのでしょうか?!」
「ソノヨウジャノー」
と棒読みで周泰に返しつつペチペチと孫権の額を叩く。
全く、何を考えておるんじゃ……まぁどうせ七乃達が全裸で入ると言い出して張り合った結果じゃろうが……ハァ。
「ほれ、おぬしらもとっとと着替えてこんか」
「えー」
否の声を上げたのは七乃一人ではあるが、魯粛も紀霊もあまり面白くなさそうにしておるな。
ハァ、仕方ないのぉ。
「七乃七乃、ちょっとこっちに来るのじゃ」
「なんですかお嬢様」
その格好で、この話の流れでも関係なく無警戒に寄って来るあたりは可愛いのじゃがのぉ。
なるべく頭から下を見ぬようにして七乃の耳元に顔を近づけ——
「おぬし、■が■■で■■■が■■じゃぞ。■■が少し■■いぞ」
「にゃ?!」
「それに○○が○○で可愛いのぉ。○○○○——」
「にゃーーーーーーーー?!き、着てきます。着てきますから〜〜〜?!」
七乃は今まで見たことが無いほど真っ赤にして叫びながら投げ出していった。
ふっ、他愛もない。
「さて、魯粛、紀霊……おぬしらはどうする?」
そこで、どうしようか、と悩むあたりやはり末期じゃよなぁ。
結局、この後、二人に自主規制ものの台詞を囁いて撃退に成功したのじゃ。ちょっと魯粛には苦戦したがな。
……もちろん目の保養になったのは事実なのじゃが、ちょっと猛毒過ぎるじゃろ。もしこれで吾の一部が反応したら大事になるところじゃぞ?主に関羽と周泰の反応が。