第二百六十二話
「うーん、これは好き嫌いが分かれそうですねー」
七乃がところてんを口にした感想で、他の者も頷いておる。
「微妙なのですぅ」
どうやら陳宮の口には合わなかったようじゃな。
ところてんの味付けは三杯酢やのり黒酢など様々な味付けを用意しておるがカロリーと塩分控えめと身体に気を使ったものであるため味に決めてに欠けておる。美味いは美味いがの。
「そして安定の蜂蜜ウマーなのじゃ」
「……今だけは殺意が止まらないわね」
孫権さんが何やら物騒な声を言っておるがスルーしておく。嫉妬されてもこればかりはどうしようもないぞ。
「そもそもこれと蜂蜜って合うんですか?」
「んー、中の中……いや中の下ぐらいかの」
いやー、蜂蜜は美味いがさすがにちゃんと作ったものよりは劣るからのぉ。某CMで言っておったとおり、美味いものは脂肪と糖でできておるというのは真実じゃ。後は塩分も加えれば完璧じゃな。
「それで南荊州はどんな感じだったんじゃ?」
「やはり乱れがあった冀州と比べると住民が少なく、文化の違いも大きかったですね。南に行けば肌が黒い人が増えますし」
「孫権のような?」
「そうですね。ただ、南に行けば行くほど黒さが濃くなっていきます」
ほうほう、孫権達より黒い者達がおるのか。
まぁ孟獲達のような獣人一歩手前みたいな存在よりは不思議ではないがな。前世では存在したしの……ちなみに商会の情報ではあの使い回し南蛮兵……量産型獣人も存在しておるのは確認しておる。
そういえば話が逸れるが吾がせっせと劉備達の婢を引き抜きまくったことで人材不足となり、量産型獣人を労働力として使うということになったそうじゃが、なかなかに大変なことになっておるようじゃぞ。
なにせ奴らの燃費は悪い。そりゃ恋ちゃんや張飛などよりはマシっぽいが、最低でも一般人の倍は喰うらしい。
しかも繊細な作業ができず、畑仕事も種や成長途中の蔓や草を食べてしまうので向いておらんと使用用途が限られておるので使い勝手が難しいようじゃがの。
最近は治水工事と道路整備、狩りによる肉の調達、鉱山採掘、街の美化活動(ゴミ掃除(糞尿も含まれる))という見事な奴隷の出来上がりじゃ。
ちなみに狩りが出来て畑仕事が出来ない理由は獲物を分けるという考え方はできるが植物を育てるという考え方はできんかららしい。まぁ奴らはそこら中に好きなだけ食べられる果物が存在した世界で生きておったのじゃから理解するまでには時間がかかるじゃろうな。鳥あたまならぬ獣あたまじゃからな。
まぁ消費者が増えれば食料の値上がりも当然で、劉備達は必死に大量購入で安く済ませておるようじゃが……いつまで保つかのぉ。
こちら側から仕掛けるならともかく、勝手に暴発されても困るので最低限の食料は輸出しておるが、吾等もそれほど余裕があるわけではないからのー。
「そういえば南荊州では変わった地形がありましたね。槍のように尖った石が山のような高さで多数並び壮観でした。霧が掛かるとまた変わった美しい風景ですし」
それって世界遺産の武陵源ではないか?しかし、あの辺りはまだ未開の地ではなかったか?
「そうです。しかし、未開の地ではありますがそれは漢民族という意味であり、異民族がそこに暮らしていました」
ほう、そうなのかや。てっきり本当に自然しか存在せんものだと思っておったのじゃが。
「南荊州の四郡は人口が少ないので少しでも人が欲しかった劉備殿は異民族とも話し合いを希望していたので私は護衛としてお供しました」
まぁもともと南荊州は海と面しないせいでこの時代の中国の最南端に当たる交阯よりも田舎じゃからの。
それに黄巾の乱が小規模で収まったことで人口の移動が史実よりもグッと少なくなったから南荊州では大した人口はおらんじゃろうよ。
ちなみにおそらくじゃが史実の劉備が益州を取るのに急いだ理由はその人口増加による食糧難を解決するために口減らしも兼ねてのものではないかと思う。
「あ、南荊州は主食が米なんですよ」
「米か、となると炒飯かのぉ」
「いえ、お粥です」
結局粥なのかや?!そりゃ食べんではないけど……実は関羽、粥が好きなのか?
「そういうわけではないのですが、やはり貧しい地域ですと腹に溜まることが優先と言いますか……」
…………。
「明日、出発前に一杯美味いもん食べるとしようかの」
「え、いや、別に今もそんな食事をしているわけではないですよ?!」