第二百七十三話
「吾!完!全!復!活!なのじゃ!!」
ババンッ!と入場して宣言してみる。
すると突然にも関わらず驚きもせずに拍手が起こる。
「快復、おめでとうございます」
「渡せなかったお土産です」
「本当によかった。袁術にもしものことがあったら朕は……」
そう言って歓迎してくれたのは既に長期休暇から帰ってきておった帝と司馬懿、張春華じゃ。
出発前にも思ったが、帝のこの好感度の高さは何なんじゃろうな。まぁ嫌われておるよりは良いが。
司馬懿は長期休暇で顔色がよくなって……おらんな。むしろ悪くなっておらんか?どうせ宿に作らせた図書館に篭もっておったんじゃろ。
「だってあんな稀書ばかりあって寝れるわけがないじゃないですか!!まさに天国!今すぐ帰りたい!」
うん、実はそんな気がしておったんじゃ。魯粛なども若干その傾向があったからの。
もっと酷い司馬懿ならそうじゃろうな。
もし陸遜じゃったら……うん、吾は絶対近寄ったら駄目じゃな。多分喰われる……男の娘じゃから大丈夫など思えん。
張春華はこちらと違ってリフレッシュできたようじゃな。
「ええ、この子の面倒を見なくて良かった分ゆっくりできたわ」
オカンかな?
「でも見なくなったら見なくなったで心配なのよね」
やっぱりオカンかな?
「まぁやればできる子だから大丈夫だとは思うんだけど」
親ばか疑惑浮上じゃな。
……ところでお土産が熊の置物というのは勘弁してくれんかのぉ。
そもそも吾が土産の定番としてパクった……ゴホン、開発したものを貰っても嬉しくないぞ。
ちなみに熊自体は吾の天敵じゃ。なにせ奴ら、蜂蜜を貪っていくからの!まぁ奴らは奴らで貴重な食料になったり、漢方薬の材料になったりするからただの害獣とは言えんが。
「あ、その悪趣味なのはあの屑が選んだものだから。私のは張勲に渡してあったはずだけど……」
あ、いつもの張春華に戻ったの。……というか熊の置物を悪趣味言うでない。
それと確かに張春華からの土産はもう受け取っておったな。見事に洋菓子まみれであったが。
そんなに美味かったのかや?
「生凝乳(生クリームのこと)って至高よね」
そんなもの土産の中にはなかったがな。
まぁ冷蔵庫もなく、冷蔵庫があったとしても日持ちするものではないので仕方ないがの。
「あ、朕も土産があるぞ」
いや、帝から土産をもらうのは普通恐れ多い……というのはウチでは今更か。
そして渡されたのは……ネタで開発した美少女フィギュア……じゃな。
え、これが土産?と救いを求めるように張春華や司馬懿に視線を向けてみるが、二人揃って目どころか顔ごと逸らす。
「何処かで見たことがある造形だから勢いで選んだのだが……誰だろう……」
いや、まぁ……うん、似ておるな。これ……本当に似ておるぞ……帝に。
本人じゃから分かりづらかったんじゃろうなぁ。
ちなみに美少女フィギュアという概念を植えたのは吾じゃが、この造形に関してはノータッチじゃぞ。
それはそうと……これ、どうしろと?部屋に飾るのかや?見る人が変な誤解しそうで嫌なんじゃが、だからと言って粗略に扱うわけにもいかんし。
「そろそろ現実逃避も終わりましたかー?」
という七乃の声が響く。
実のところ吾の登場を堆く(うずたかく)積まれている書類から逃れる口実に使わただけだったり――
「一体誰なんじゃろ」
――約一名は本気だったようじゃが。
仕方なしに三人はいつものデスマーチへと戻り、吾もそれに加わるため席に付く。
それにしても七乃の声に元気がなかったような?
更に言えば孫権の出迎えもなかったのぉ。どうしたんじゃろうか?
「「くしゅん」」