第二百八十七話
「いや~、まさか袁術が曹操を動かしてくれるなんて思わなかったな~」
普通とか影が薄いとかを払拭したかったけど、さすがにこれ以上はな~。
皆頑張ってくれているけど幽州の発展と烏桓の相手なんて私の能力じゃ土台無理な話だったんだよな。悲しいけど。
せっかく王修とか董昭とか蒲公英とか派遣してくれたんだけどなー。やっぱろ私はそんな器じゃないのかなぁ。
「ごめんね。白蓮さん、お姉様がいればもっとできたのに……」
烏桓との戦いは数が優位の場合は追い込み漁の様相になる。
気付かれると逃げ、逃げた先に周り込み、再び逃走を図る烏桓を更に周り込み……と続けるんだけど……私と蒲公英と張燕の三人じゃ手数が足りなかった。
「仕方ないさ。あまり無理をすると蒲公英達に後はないだから」
「うん、気をつける。でも袁術様って寛容だよね。正しい手順を踏めば普通に対応してくれるし」
確かにいつもなら何をするにも金よこせ、物よこせ、人よこせって言っておいて手に入れたら一応話を通しとく(本当に話をするだけで無視が当たり前)ってのが普通なんだけど、袁術が漢王朝を支配――って言ったら本人から怒られそうな気もするけど――してから申請の類が多少の付け届けが必要だけど受理されて何らかの反応があるようになった。
無論、そっけない反応もあるが大体そういうのはこちらが悪かったりしなければ次回には人事移動ですぐに解決されることが多い……これってもしかして袁術達が手を回してくれているんだろうか?いや、さすがに漢のほとんどを統治する袁術達がそこまでしているはずないよな。そんなことしてたら過労死するし。
「けどさ、烏桓達相手に戦わなくてもよくなったけど、これって結局忙しいのに変わりないよねー。むしろ戦って心労が発散できて楽だった気がする」
「ははは、否定できないな」
袁術から曹操の支援を頼まれたのはいいんだけど、内容を大きく言えば兵站を担うことなんだけど……この兵站って明らかにおかしいんだよ。
兵糧の輸送とかはわかるし、集積陣地の構築とかもわかる……けど、なんで街まで作ることになってんだ?囮も兼ねるとか贅沢な餌過ぎて烏桓の奴らだって襲わない……なら完成させて本当に街として作って前線基地も兼ねるってんだから凄い壮大な計画にみえるのは私が普通だからなのかなぁ。
「そんなことないよ。蒲公英もびっくりしたし、王修も董昭も固まってたもん。張燕は豪快に笑ってたけど」
しかもこれ……大規模三、中規模五、小規模八の街を同時進行で作ろうってんだから計画者の頭はおかしいと思う。(袁術発案である)
ちなみに劉虞様のところでも同じ感じの作戦が命じられたらしい。
「……ねぇ。これってさ、まだ始まってない段階でこの書類の量だけど……始まったら……死なないかな?」
「……やばい気がするな」
あまり考えていなかったけど蒲公英の言う通り……これ、絶対部屋が書類で埋まる……いや、宮殿が埋まるぞ。
「やばい。袁術に誰か借りられないかな」
「それより曹操から借りた方がいいんじゃないかな。今回は一蓮托生な感じだし、距離も近い、それに優秀な人がいっぱいいるって話だから少しぐらい貸してくれるかも」
「よし、打診してみるだけしてみようか」