第二百九十五話
能力試験を受ける者達の熱意は高い。
一は全、全は一。
一人の効率が上がれば全ての者に影響があり、全てが上手く行けば一人の休む時間が増えるのじゃから張り切って参加する……これが新世代の社会という奴じゃな。しかも別に金のためではないらしいぞ?現代では考えられん話じゃな。(目を逸らしつつ)
「ふむふむ、集計途中ではあるが随分と皆習熟しておるのぉ。これなら一山は確実に削れ……いや二山は削れるじゃろうな」
睡眠時間単位にすると約一時間半と言ったところか?人によっては一時間かもしれんがの。
「それにしても帝は思った以上に成長しておるの~」
「随分上位にいますからね~。お嬢様の躾の賜物ですよ?」
「仕事を押し付けたのは吾じゃが面倒を見ておったのはほとんど七乃じゃったじゃろ」
最初の頃こそ帝という存在ゆえに吾が教育係を担当(官位である太傅はそもそも教育係じゃしの)しておったが、これでも実質国を束ねる吾は忙しいので皇帝の権威?なにそれ美味しいの?を地で行く七乃に任せたんじゃよ。権威に負けるような奴では帝を、その周りを増長させかねんからの人事じゃった。
「今考えると、よく帝は捻くれんかったのぉ」
「お嬢様、誤解してはだめですよー?」
「ん?」
「どうでもいい存在に手間暇掛けるほど私はお人好しではありませんよ?」
おっと、何やら孫権さんのとは質が違う、ナチュラルなダークフォースを感じたぞ。言っておることはいつもどおりじゃけどな。
「孫権さんのものまねをしてみましたけど、どうでしたか」
「んー……十点じゃな」
「十点満点?」
「百点満点じゃな」
「辛い!お嬢様、超辛いです!」
「闇の深さが孫権を上回っておったからの」
「あちゃー、それなら仕方ないですねー」
いや、仕方ないのか?
「……ところで袁術。ちょっと聞きたいことがあるのだ」
「なんじゃー」
先程からなにかを言いたそうにしておった帝がやっと口を開いたの。
「一体いつになったら仕事が減るのか」
なんじゃそんなことか。
「んー、大体三ヶ月ぐらいは掛かるかの」
「がーん……そ、そんなに掛かるのか」
「集めた情報は上手く活かせねばただの混乱する材料でしかないのじゃ。そして情報を基に計画を立て、現実に落とし込むとなるとそれ相応に労力と時間が掛かる……のは帝もわかっておろう?」
もう結構経験を積んだ帝がこの程度のことをわかっていないわけがなく、実際「それはそうなのだが」と返答しておる。
書類仕事ばかりでなく近場の現場にもいくらか足を運んでおるからわからんわけがないか。
まぁ帝の気持ちはわからんでもないがの。
「……袁術は能力試験は受けていないのか?」
「一応受けておるぞ」
(試しに聞いてみただけだったんだけど受けてたのか?!)
「ちなみに吾の成績は非公開じゃがいつもどおりなら上位五位以内じゃぞ」
「え」
「今回は司馬家がおるからどうなるかわからんが十位以内にはおると思うぞ」
「……袁術って凄かったのか」
「吾のことを帝がどう見ておるのかじっくり話し合う必要があるようじゃな」
「あわわわわ」
「そう慌てんでもカツ丼ぐらいは出してやるぞ?」
「……お新香もつけてくれるか?」