第二百九十八話
皆も知っての通り、吾の職場は勤勉勤労を尊ぶ者が数多くおる。
それを証拠にガッチャポンは連日連夜大行列ができ、皆仕事が増えることを泣き叫んで喜んでおるぞ。
「くそがあああぁぁああ!」
「娘の誕生日を共に!」
「寝たい寝たい寝たい寝たい」
「俺……休暇を取ったら皆の前で爆睡してやるんだ」
「何が出るかな、何が出るかな……タヒね」
……まさかとは思うが一個しか入っていない一等(一日休暇)狙いではあるまいな。ガッチャポン一台に五十個入り、三十台の中に一個じゃぞ?千五百分の一じゃぞ?しかも書類一束(約五十cm)増えるんじゃぞ?(外れは書類一束だが他の当たりでも景品+書類一束)一応事前に教えたし、悪徳企業の闇ガチャとは違ってちゃんと景品表にも個数は書いておるんじゃが……ちゃんと見えておるよな?
いやほんとそこまで休みが欲しいわけが……欲しいわけが……欲しいじゃろ!むしろ吾も欲しい!でも残念!官位が上の方のものは無効なんじゃよ!替えがきかんからの!休めるなら後半に買い占めるんじゃがのぉ。
ちなみにガチャッポンはそれぞれ最終賞……まぁわかりやすく言うとラストワン賞が設定されておって、定時で帰ることができるのじゃ。更にガチャッポン全体のラストワン賞として半日休暇となっておる。
「くっ、残念です。朕もできるなら国庫を枯らしてでも回し続けたものを……」
ガチャッポン、国を狂わす!なんて恥を歴史に刻まれなくてよかったのじゃ。
まぁ現代日本の政治はガチャで決めた方がいいんじゃないのか?と思うような政策ばかりじゃったが……。
ちなみにこのガチャッポン、実は落とし穴が存在する。
勘が良い者は気づいておるかもしれんがガチャッポンに回数制限は設けておらん。つまり何度でも回せるのじゃが……回せば回すほど書類が増え続ける。
そして休暇を勝ち取るとするじゃろ?しかし書類が増えておるのは変わらんわけじゃから結局後日には我が身に降り注ぐということになるのじゃよ。
盛大な爆死じゃな。
あ、ちなみに金に関しては高く設定しておるが働いても使う暇がない奴らばかりじゃから求めるままに課金しておるわけじゃ。
「あ、後一回だけ……まだ食費を切り詰めればなんとか……」
「誰か保証人になって」
「後には退けねぇ。もう五百回してんだぞ。せめて最終賞ぐらい引かにゃ俺は……誰か誰か金を、弾をくれえぇ?!」
……やはりカプセルトイは闇が深いのぉ。
ついでにいえば別に金儲けのためにこんなことを始めたわけではないぞ?そもそもこんな綱渡りな方法で稼ぐ必要なんて吾にはないからの。
というかこれ、もしかせんでもまた倉が増えるんじゃなかろうか。
「これ、本当に一等入ってんのか?!」
あ、とうとう言い始めたの。
こういうことをやり始めると必ずこういう輩が現れるんじゃよなぁ。
予想しておったからこそ吾はここで待機しておったんじゃがの。
「馬鹿め、吾が何ためにこんなことをしておると思う」
「それは……俺達の金を……」
「ハッ、こんな端金を手に入れて何になるというんじゃ。外にある倉の一つ分程度にしかならんわ!」
(周囲のイラッ度が上昇した)
「じゃあなんでこんなことを始めたんだよ!」
「それはもちろん連日連夜働く皆に娯楽を提供してやったんじゃ!ありがたく思うがよいぞ!」
(周囲のイラッ度が上昇した)
「ついでに爆死しておる姿を見てにまにまするのも一興じゃ!」
(周囲のイラッ度がかなり上昇した)
「あ、ちなみにガチャッポンで追加される書類は既に手配されておるから安心すると良いぞ!」
(周囲の精神が死亡した)
「次よ……次こそは出る気がするわ」
「いえ!私のところに……」
(一部はかなり沼っていた)