第三百四話
蝗の佃煮の開発は吾が思った以上に熱心にされておるようじゃ。
吾はまだ見たこともない……というか生まれてから蝗害はまだ発生していないらしい……が、日本で言うところの台風と地震並に恐れられているようじゃ。
その存在を知るだけの吾とそれを経験しておる者達との温度差で微妙な心境になるがそれでも災害を防ぐことができるならいいじゃろう。
聞いた話によると蝗害は本当に厄介で、蝗が食物を根こそぎ食い荒らして荒廃した土地が残るだけなんじゃとか。
ちなみに蝗害が起こったら帝の資格なしとして世代交代をさせられることもあったそうじゃ。まぁ大体は当時の権力者が都合の悪い帝を処分するためだったり更に権力の強化に使ったりするのが本当のところのようじゃがの。
それはともかく、そんな災害であるがゆえに民の関心も強く、試作の段階で民に公開して蝗を食べるということに抵抗を持たせないように、そして積極的に取り組むことを期待して民達にも美味い料理を開発したものには賞金を出すなどした。
「のはいいんじゃが、今度は無断で人の田畑に侵入する輩が増えてしもうたのぉ」
蝗料理開発のために蝗を探し回る者が増えた。それ自体は歓迎されるものなんじゃが問題はその中に農作物を踏む荒らしたり盗っていったりする不届き者が続出しておる。
理由ははっきりしておるんじゃがの。
今の漢は経済がよく回っておる。だからこそ平均所得が上昇し、蝗を集めようとする者は未だに残る貧困層か穀潰しか子供か農家の小遣い稼ぎかぐらいじゃろう。つまり半数以上は配慮に欠ける奴らということじゃ。
じゃがそういったトラブルという程度で終わらせられるものが増えた一方で治安は若干良くなっておったりする。
蝗そのものを買うということを始めたことで底辺の者達が手軽に金を手に入れることができるようになったおかげで重罪である強盗や殺人などを減らすという結果になった。
「何がどう作用するのかわからんもんじゃのぉ」
「本当ですねぇ~。それにどうやら曹操さんのところまで波及しているそうですよ」
「なるほど、冀州か」
穀倉地帯が多くある冀州は収入の多くは農作物であるので特に神経質になっても不思議ではないからの。