第三百五話
「雨じゃのぉ」
「雨ですね~」
「ジメジメするのぉ」
「ジメジメしますねぇ」
「というわけで掃除なのじゃ!」
「また突然ですね」
「雨の日の掃除は埃が舞いにくいからいいんじゃぞ!」
「そうですねー。でも忙しいですよ?」
「忙しい時こそ掃除がしたくならんか?」
「なりますねぇ」
「ということで掃除をするのじゃ!」
「わっかりましたぁ!」(七乃)
「準備を始めますね」(魯粛)
「では道具を持ってきます!」(周泰)
「お嬢様、お召し物が汚れてしまいますのでこちらをお掛けに……」(孫権)
「うむ、良きに計らえ!なのじゃ!」
「前々から思っておったがおぬしら自由過ぎやせんか」(帝)
帝が妙なことを言っておるので異議を唱えるのじゃ。
「こんなに机に縛られておるのに自由なわけがないじゃろ」
「体ではなく心の方じゃ」
「心まで縛られてはやってられんじゃろ。普通に死んでしまうぞ?あ、孫権もう少し絞りを緩く……うむ、ちょうどよいぞ」
孫権に割烹着を着せられ……というかなぜ吾にピッタリの割烹着があるんじゃ?それにこの割烹着の蜂さんは誰がデザインしたんじゃろ?可愛すぎるじゃろ。孫権さんグッジョブじゃ。
「ところでいつまで帝はぼさっとしておるんじゃ?」
「え、朕もやるのか」
「当然じゃろ。ここを使う仲間じゃろ」
「女官が掃除しておるのに必要があるのか?…………仲間か…………悪くない響きじゃ」
吾が言うのもなんじゃが、こんな帝に育ててしまっていいんじゃろうか?これ、万が一吾が失墜でもしたら帝が可哀想なことになりそうじゃ。
「ついでに模様替えでもするかの」
「本当にどこまでも自由じゃな」
「やらねばならぬ仕事があるのに意味もないような掃除をする……なかなかの背徳感じゃろ?」
「やはり意味がないのか」
「ないような、じゃ。ひょっとしたらあるかもしれんじゃろ?」
……と九割は冗談で言っておったんじゃが……。
「なんか別の意味ができてしもうたのじゃ」
模様替えをしておったらあることに気づいたんじゃ。
吾はあることに違和感が生まれたんじゃよ。
よく推理モノの小説やマンガで部屋に謎の空間があるという話があるじゃろ?まるでそのような感じで部屋と部屋の間に空間があるようなんじゃよ。
周りを調べて見ると壁になっておるんじゃが他の部屋の柱の配置から察するにここにも部屋があるんじゃと思う。それに明らかに叩いた感触が軽いんじゃよなぁ。
それにここって宮殿の中でも最奥に近い位置じゃ。何かあっても不思議ではない。
「普通に考えれば秘密の抜け道ってところですよねー」
「次点は宝物庫あたりですか」
七乃と孫権が妥当な推理をする。
吾も十中八九それじゃと思うが他のものならもっと面倒なことになるやもしれんぞ。牢獄とかの。皇帝というのは口にすることも憚られるような趣味を持っておる者が多いと聞くしのぉ。
「どうやって開くのか」
帝がめっちゃ目をキラキラさせておる……気持ちはわからんでもないが……せめて気分が悪くなるようなものが出んことを蜂蜜に祈っておくのじゃ。