第三百十一話
「あの玉璽どうするんじゃ?」
「袁術、いる?」
「あんな使えない玉璽いらん。そもそも玉璽は皇帝が持つもの――ハッ?!さては吾に皇帝を押し付けるつもりじゃな?!」
「……もう……書類ばかりみるのは疲れた」
ああ?!帝が煤けておる?!しかもなんかガチっぽい!!これはなんとかせねばならん……が――
「――皇帝だけは断るッ!」
「そこをなんとか!朕の持っておるもの全部譲ってやるから!」
「それって書類込み込みじゃろ?!そんなことで騙されると思うてか?!」
「今なら座り心地が微妙な玉座もつけるぞ!」
「やっぱりあれ、微妙なのかや」
高級な木材と大理石で作られた玉座なんじゃが、座面のクッション性がイマイチそうじゃと思っておったが本当にそうじゃったのか。
「仕方ないのぉ。座り心地が良い玉座を用意しておくぞ!」
「そういう話じゃない!」
「なんじゃったらお菓子でできた玉座でも用意するが?」
「………………………………そういう話でもない」
めっちゃ悩んだの。というかこの前まで自棄食いタイプじゃったがすっかり食いしん坊キャラが板についてきたのぉ。
まぁお菓子の玉座で喜ぶなら用意するのじゃ。ついでに麩菓子の玉座も作ってみるか。
などとくだらない話をしていたら待ち人が来たのじゃ。
「久しぶりじゃのぉ。華陀」
「おう、久しぶりだ。いつも手厚い支援感謝している。おかげで助けられる命が多くなった」
「うむうむ、おぬしらゴッドヴェイドーはちゃんと金を使ってくれるから助かるのぉ」
「そんなこと当たり前だろう。そして相変わらず素晴らしい発音だ」
それが当たり前ではないから世の中不正がなくならないんじゃよなぁ。
働き詰めで金なんて使う時間がないほど忙しい現状でも普通に不正をする輩もおるからのぉ。…………せめて金ぐらい貰えないとこんな仕事やってられねーって気持ちはわかりはするが、それなら先に給料アップの交渉をして欲しいものじゃな。そのあたりの査定は現代のバブル期を超越するほど超緩々なんじゃし。
まぁそんなことをする輩はそもそも能力が低く、能力に見合わない報酬を求めるのじゃがな。
その点五斗米道ことゴッドヴェイドーは支援をする代わりに監査員をつけておるんじゃが大きな不正が報告されたことはないのじゃ。
唯一問題があるとすれば手続きを忘れる者が結構おることじゃな。
彼ら曰く「書類?そんなことよりも治療だ!!」なんだそうじゃ。簡単に言えば職人気質、愛すべき馬鹿というやつじゃな。
現場でも注意はするがそのあり方を認められて、ほとんど形だけのものに成り下がっておる。というか吾がそうしたんじゃがな。
職人には彼らにしかできんことをやらして他の誰かができることは他がやればいいんじゃよ。
「それで俺を呼んだんだ?」
「うむ、実はこの駄本……太平要術の書なんじゃ――」
「なんだと?!太平要術の書だと!」
「む、知っておるのか」
「詳しくは知らないがゴッドヴェイドーで封印指定されている書物だ」
「おお、ならこれを封じることができるのか」
ならば安心――
「封じることはできない!」
「ええ~、今封印指定と言ったじゃろうが」
「封印指定されているが封印できるとは言ってはいない」
いやいや、それなら危険物とかでいいじゃろ。
「それだと焼いてしまう者がいるかもしれない。その本は焼いたところで復活してしまうのだから封印が正しい」
「言いたいことはわかったが封印はできんのじゃろ?」
「その本は内蔵する気を一定以上消費すると灰になり、そしてどこかで復活してしまうのだが、その気の消費は存在するだけでも少しずつ消費されるが、特に本を捲られることで消費量が増える。つまり――」
「これを放置しておけば長い間同じ場所に居続けるというわけか」