第三百十八話
自分で考えた企画ではあるがやっとすべて終わった。これでゆっくりかき氷が食べられるのじゃ。
もちろんシロップは蜂蜜、そしてトッピングに蜜柑や桃で彩っておる。
「んー、美味いのぉ」
現代では氷の希少性なんてなかったし、シロップの味しかせんからあまりかき氷は好きではなかったが、あれ、おそらく氷もシロップも不味かったんじゃろうな。
専門店のかき氷なら違ったのかもしれんが、かき氷があまり好きではないのだからわざわざ専門店に行ってまで食べようなどと思うわけもないために本当のところは現代のかき氷の味は不明じゃが、少なくとも目の前にあるかき氷は美味い。
「お嬢様の芸術を眺めながら頂くのは乙ですね。これを残せないのは残念ですけど」
「その儚さも込みで完成した芸術じゃからの」
一応氷室に保存しておけば置いておくことはできなくはない。しかし、氷で作った芸術は溶けてこそだと思うんじゃよ。
多くの人間は永遠を好み、価値を見出すことが多いが、その場限りの一瞬にはそれ以上の価値がある。
これもその類じゃと思うんじゃよ。
……それに氷像の方はともかくフローラルアイス?は、とりあえず芸術品と言えるものにはなっておるが吾としてはイマイチなんじゃよなぁ。
もう少し修練すればもっといいものが作り上げられるじゃろう。なにせまだ三回目じゃからのぉ。残しておくには稚拙すぎて恥ずかしいのじゃ。
まぁそんな作品でも七乃達にとっては吾の成長記録的な意味があるんじゃろうけども。
「それにしても本当に雅だ。水ではなく、氷に沈む蓮とは……袁術の感性は素晴らしいの」
現代のもろパクリで、李典の努力のおかげじゃがの。
「そういえば劉備さんのところの情報が届いていますよ」
「む、何か動きがあったのかや。確か交易路の開拓に専念しておったはずじゃが」
というかそれ、結構優先順位が高い知らせではないのかや。
今思い出したという感じで話す内容ではないぞ。
「動きと言っていいんでしょうか。実は益州で小さな地震が発生したようでして、その地震の影響で交易路の一部が崩落してしまったようです」
「……小さい地震で崩落?随分不安になる行路じゃの?誰か工作したか?」
「いえ、ただの突貫工事によるしわ寄せですわ」
魯粛がバッサリと切って捨てる。
うん、まぁ劉備達にそれほど余裕がないのは知っておるし、そもそも交易路の物流を作り出しておるのも魯粛じゃから魯粛がそういうならそうなんじゃろうな。
もしかすると妨害するまでもなかったかの?
「それで劉備さん達は方針を変更すべきか会議を開くそうです」
「いや、方針変更もなにもそんな余裕はなかろう……あるとすれば増税か徴収か略奪か侵略……」
「どれもろくなことになりませんねー」
「本当にの」
「降伏してくる可能性もあるのでは?」
それはあるかもしれんが、降伏とは受け入れられてこそ成り立つことじゃからなぁ。吾が面倒な劉備達を受け入れるという選択肢はない……んー、直々に北郷の首を持ってきたら考えんでもないか?
怖いのは原作キャラパワーじゃからの。主人公である北郷を討ってくれるなら吾がいらんリスクを背負わんで済むから考えんでもない。