第三百三十二話
なんとか孫権を宥めることに成功した……まぁ引き換えに今度一緒に街へとお出かけすることになったが、正直罰などではなくご褒美でしかないから問題にもならん。何処に行こうかのぉ。
それはともかく、金も人も物もない劉備が今更北郷の土地を手に入れてもメリットが少ない、もしくはデメリットが上回るように吾は思っておったが、改めて調べてみるとそれなりにメリットがあったようじゃ。
元々劉備達が苦境に陥っておるのは吾が裏商会を撤退させたことによる経済崩壊が理由じゃが、その中で一番打撃を受けたのは経済によるものよりも吾が買い占めた奴婢、つまりわかりやすく言うと奴隷の買い占めをしたことで労働力……特に4Kで高画質ではなくて、きつい、汚い、危険、拒否権がない作業を担う下働きが不足してしまったことじゃ。
きつい仕事の代名詞、水汲みから始まり、畑を耕す、薪を集める、崖にある燕の巣の収穫、蜂蜜の採取、火の番などなど、奴婢に頼っておる面が多かったが使っている者達はその依存度を軽視して高値で買取していることをいいことに調子に乗って売り過ぎた……とも言えんか?相場の十倍以上で買い取っておったから多少不便になるとわかっておっても売らん方が少数か。
ただし、これらの事情は北郷の領地は適応されんのじゃよ。
なぜかというと劉備のところは庶民派を謳いながらも庶民とは距離が遠い……まぁ領地が広いし、立場が違うので仕方ないと言えば仕方ないんじゃが……関係で事態の把握に時間がかかってしもうたんじゃな。諸葛亮達は舞い込んでくる政務で忙しかったことじゃろうし。
それに比べて北郷達は忙しいは忙しかったじゃろうが距離が近かったんじゃよ。それでおかしな値段で奴婢の買取をした際に詐欺かもしれないし、皆で売れば人がいなくなって大変なことになる、と説明して回った結果かなりの奴婢が残っているのじゃ。
こう考えると北郷達は結構頑張って統治しておったんじゃなぁ……むしろ劉備勢が残念なだけかもしれんが。
「だからって奴婢を徴収するとは……劉備達も手段を選ばんのぉ」
他にも北郷統治時に比べると罪人に対して処罰が厳しくなったし、取り締まりも強化されておる。
こう聞くと住人にとっていいことのように聞こえるが、事実は鞭打ちや留置所で済まされる軽犯罪ですら奴婢に落とされておる。
ちなみにこれは北郷旧領地だけに行われているのではなく、益州全体で既に行われていることなので特別冷遇されておるわけではないぞ。
「それだけ貧しいってことですねー。でもでも自分達の生活は鑑みようとは思わないあたりが救えないですねー」
まぁ吾が貧しい環境に陥っても蜂蜜を止める気にはなれんからそれはツッコミ辛いのぉ。
もちろんこれだけなく、今まで北郷が治めていたことで手が出しづらかった周辺の異民族の取り込み……取り込みというか人狩り?をしておる。というかこちらがメインというべきか。
劉備はなんというか……さすが皇族の末裔を自称するだけあって異民族には厳しいのぉ。
そういえば原作の蜀ルートのエンディングでは異民族が攻めてきたから三国力合わせて守りましょう!なんていう意味わからん理論でまとめ上げておったな。
ん?そういえば西側の交易路開拓の際には取引するみたいなことを言っておったがもしかすると略奪する気だったか?確かにそんな金銭的にも物資的にも余裕があるとは思えんし可能性は高いの。
「それで満足するのか、それとも更に欲深く先を目指すのか……」
「さすがにあれだけで満足することはないですよー。全然人数足りてませんよー。それに食料の方はむしろ悪化してますし」
「次回の収穫期まで粘れれば或いは……」
「そんなに耐えられるなら略奪なんてしませんよ」
「じゃよなー」