第三百三十七話
「結局孫権のやつ行ってもうたの~」
「雑魚なんてほっとけば勝手に関羽さんがやっつけてくれるんですけどねー」
孫権は吾等の制止を振り切って豫州の七千の援軍は既に出発しておるため、徐州の七千と合流して揚州、上海を目指して旅立っていったのじゃ。
孫権……大丈夫じゃろうか。
なんだかんだ言って吾と同じように孫権も世間知らずに分類されると思うんじゃよ。
なにせこっちに来てからはほぼほぼ吾の近くに侍っておったからのぉ。感覚が既に染まっておると思うし、なにげに孫家のお嬢様じゃしな。
まぁ吾よりは耐性はあるじゃろうけどの……吾が田舎になんぞ行こうものなら食事だけでも苦労しそうじゃ。その点だけは孫権が有利かの、揚州で育って現地の食事も慣れておるじゃろう。
「無理をする理由はわからんでもないがの」
個人の武であれば孫権も随分と鍛錬を積んで強くなったのは知っておる。なにせ時間さえ合えば恋ちゃんや紀霊、関羽などと鍛錬しておるんじゃから当然といえば当然じゃな。多分戦闘経験を除いた実力では原作の孫権よりも強いじゃろう。しかし原作の孫権に劣るであろう能力もある。
それは――
「まぁ軍を率いるというのはこんな機会でもないとまず出来んからのぉ」
軍を率いるだけなら行軍訓練などでもできるが、本当の意味での軍を率いるというのは経験できぬ。やはり実戦でなければの。
そして吾が政権を握ったことで群雄割拠にならんかったせいで戦闘らしい戦闘は中央では殆ど起こっておらん。個人や一族を滅することはあったけども。
「幸いなのは相手が同時蜂起なんて計画的な行動をしたくせにその後は計画性がないことじゃな」
そう、なぜか叛徒共は同時蜂起なんてしておきながら未だに散発的というか無計画にというか各自バラバラに動いておるようなんじゃよ。
さすがにバラバラ過ぎて罠かと吾等も現地の関羽も疑って慎重に動いておったんじゃが……三つほど豪族を叩いても変わらんからおそらく戦術的なものではないとは思う。
それに三つ潰した後は焦ったように集まって随分と大軍になっておるそうじゃ。そのおかげで侵略と言う名の略奪行為が収まったようで結果的に助かったが……一つだけ疑問がある。自分達の地元で略奪なんてして先があるんじゃろうか?恨みを買って、吾等を万が一奇跡的に退けることが出来たとしても後々現地民に袋叩きになるだけじゃと思うんじゃがの。
「一体何が目的なんじゃろうなぁ」
「蜂起前に劉備さんとこの厳顔さんが接触したそうですけど、それにしては劉備さん達に行動が無さ過ぎるんですよねー」
「むしろ慌てて情報収集をしておるから想定外のはずじゃ」
というか劉備達は揚州と取引しておったんじゃなぁ。厳顔なんてわかりやすい人物がおらんかったら気づかんかったぞ。というかひょっとせんでも今の劉備の生命線じゃろうな。
……随分遠くと交易しておるんじゃのぉ。その割には規模が小さい……おかげでこっちの情報網に引っかからなかったんじゃな。さすが伏竜鳳雛じゃの。こっちの経済制裁によって翻弄しておるから軽く見そうになるがさすが某ゲームの公式チートじゃな。これからも気を抜かんように気をつけるとしよう。
「しかし、本当に何が目的なんじゃろうな?」