第三百三十八話
「あー、なるほど?」
上がってきた報告書の一つに目を通して問題が露呈したのじゃ。
「未だに収まらぬ北(烏桓の侵略)に西(姜維の侵略)に今回の南(揚州南豪族+山越の叛乱)と続けばこうなるのも当然じゃのぉ」
元々北には烏桓対策のために相当な物資、それこそ武具以外にも食料、建築資材、人手を送り込んでおる。それに加えて西と南には北ほどではないにしてもそれ相応以上の物資……特に武具を送り込んでおる。
そうなると起こるのは――
「物資不足、か」
「みたいですねー。致命的なほどではないですけど随分と倉庫が寂しくなったそうなのでお金をぶち込んでおきました!」
剣も弓矢も防具も無くても金があるのはウチらしいのぉ。
ついでに言えば贅沢品は蜂蜜を除けばあまり多くないぞ。色々買ってはおるが幾らかは残してはおるが、基本は西なら東に、北なら南に、逆もしかり、そして中央なら全方位にって感じで運んで売っぱらっておる。
これも吾が推進した交通網がしっかり機能しておる証拠じゃの。もちろん張り巡らすというほどはまだできておらんがの。
それはともかく。
「増産は掛けておるんじゃろ?」
「もちろんです。ですけど、余剰人員も物資も北側に送っちゃっていますからなかなか難しいです」
「ふむ……しかし、無理にでも補充しておらんと不安じゃ。少し徐州に無理をして生産してもらうかの」
「兵を出してもらったお礼に仕事を与えるなんてさすがお嬢様です!」
「そうじゃろうそうじゃろう」
ちなみに今回は仕事の押しつけるが事実として本当に褒美になるので相手にも喜ばれることじゃろう。
以前までの漢王朝のあり方からしたら命令して徴収する感じで終わりだったそうじゃが吾は全部買い取るからの。臨時収入にしかならんじゃろうが特別依頼じゃから結構な額になるじゃろうから喜ばれるじゃろ。
ついでにいうと豫州に言わんのは揚州に向けての軍需物資を既に生産させておるからじゃ。
「しっかし物価の上昇が酷いのぉ。特に金属類と木材が」
「あっちこっちで横領や闇市が行われているようですよ。一応潰しては回っていますが……」
「効果は薄いか」
「効果が薄いというより捕らえた後の人達をどうするか面倒で放置してしまっている感じですねー」
わからんでもないのぉ。
今は何処もかしこも人手不足じゃ。横領する者はもちろん、闇市に参加しておる者もその物品を手に入れるコネを持つほどの者達じゃ。闇市は臨時の職場であり、本来は別の場所で仕事をしておるはずじゃ。
つまり、捕まえて人手が減り、捕まえた者達を管理する人手がいる。人がマイナス、仕事がプラス……そら誰も手出ししたくないじゃろうな。
実際吾も小さい犯罪なんかは見逃して机に縛り付けておる……え?見逃してない?気のせいじゃろ。仕事の山が三つ程度増える程度じゃし、誤差じゃ誤差。