第三百五十九話
「孫策の方は終わったようじゃのぉ」
「やっぱり暴徒如きに負けるようなたまじゃありませんね~」
「孫権の方も随分と落ち着いてきたようじゃし、揚州は安定するかのぉ。……しかし、孫権と関羽を引き上げる時期が問題じゃな」
「ですねー。迂闊に動かすとまた元通りということになりかねません」
関羽を動かすのはともかく、孫権を動かすとそうなる可能性が高いのぉ。なにせ孫権による粛清で落ち着いたようなもんじゃからのぉ。
「むう……孫権を手放すつもりはないんじゃがのぉ」
「じゃあ引き上げちゃいますか?揚州の情勢なんかよりお嬢様のお気持ち第一ですよ!」
「個人的には帰ってきてほしいが……ここは孫権を成長させるためと涙を呑んでしばらくは袁遺の補佐を頼むとしよう」
「一応本人の意思も確認しておく方が良くないですか?ひょっとしたら帰って来たがってるかもしれませんよ?」(下手をするとお嬢様に捨てられた~なんて勘違いもあるかもですし)
「ふむ、そうじゃな。自身が望まぬ成長を押し付けるのもなんじゃしの。ではそのようにしてたもれ」
吾の教育方針は自由に伸び伸び、じゃからの。
「それにしても意外でした。お嬢様はこのですまーち?を継続する気なんですねー」
「……ハッ?!そうじゃ。孫権がおったらもっと仕事が減るではないか!」
いかんな。寝不足で頭が回っておらんようじゃ。こんな基本的なことを見落とすとは。
「でも、まぁ孫権が揚州にいた方が良いと判断したならそれを優先するようにの。孫権を呼び戻してまた遠征など仕事がまた増えることになるんじゃし」
「ではそのように手配しますねー」
それにしても一番最近発生した揚州の叛乱が最初に解決するとはのぉ。まぁ意味不明な叛乱じゃったからこんなもんか?そもそも情勢が不安定で起こす叛乱ならともかく、平穏な状態では民もなかなか付いて来んからのぉ。むしろ健闘した方か。
烏桓の連中は華琳ちゃんと激戦を繰り広げておる。
華琳が追い込んで狩ったり、烏桓が警戒網を潜り抜けて村を襲ったり、前線都市がいくつか出来上がって警戒網が厚くなったり、そもそも襲われる村に防衛設備がある程度整い始めておったりと北側の戦いと発展が激しくなっておる。
ちなみに華琳ちゃんから関羽を派遣しろという私欲に塗れた要請も届いておるが、もちろん却下して変わりに蜂蜜と袁家縁の人材を送っておいた。大体は素気なく送り返されてきたが、幾人かは頭だけになって送り返された。どうやら華琳ちゃんに暴言を吐いたようじゃ。ちなみにこれ、華琳ちゃんの独断ではなく、この頭だけになった奴らに持たせた書状に無礼したら相応の処罰をしてもいいと書いておるから問題にはならんぞ。
まぁ頭だけになった者達の親族が文句を言ってきたがついでに頭だけになってもらったのじゃ。こやつら、吾が偉くなったからと色々とやらかしておるからのぉ。せめて前もって相談があったならこんなことにもならんかったじゃろうに。
ついでに言えば華琳ちゃんからの抗議の書状が追加されたが更に縁者を送り込んだら抗議がなくなったのじゃ。まだまだ不良品はいっぱいあるので遠慮なく言ってくれていいんじゃぞ~。
「本当に華琳ちゃんは関羽のことが好き過ぎるのぉ」